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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

WEEKLY · 2026 / W31

2026/07/27–31 週 (W31) — FOMC タカ派据え置き (9対3) とメガキャップ4社決算の最大の山場を通過。Microsoft +21.8% / Amazon +17.0% と Apple -7.2% / Meta -6.5% に真っ二つ

US 7/27–31 の週は、四半期で最も重いイベントが集中した。7/29 の FOMC は FF金利 3.50-3.75% を据え置いたが 9対3 で3地方連銀総裁が利上げを主張して反対し、同日の原油急騰も重なってダウは -1,153pt と年初来最悪の日に。だが翌 7/30 に Microsoft が Azure 43% 再加速を示して +15.51% (1日の時価総額増 約 $450B は米企業史上最大)、7/31 には Amazon が AWS +36.7% で +15.32% (2012年以来最大) と切り返し、S&P500 は週間 +1.05% (7,489.72) と3週ぶりの上昇週で着地した。一方 Apple は週間 -7.24%、Meta は -6.47%。同じ『AI 設備投資 (CapEx)』というテーマの下で、投資が収益に変換されている証拠を出せた企業と出せなかった企業が、週内に 25pt 以上の差をつけた。FactSet 7/31 時点のブレンド EPS 成長率 +47.4% は歴史的な高さだが、その大半は Alphabet・Amazon の投資評価益による嵩上げで、実力を示す売上成長率は +14.1%。フォワード P/E 19.6 は5年平均 19.9 をむしろ下回っている。来週 (8/3–7) は7月雇用統計 (NFP) が単独最大の山場になる。

執筆: kinjo26 分で読了中立

AI 投資の『収益化を証明できたか』で巨大テックが真っ二つに割れた週。指数は +1.05% でも、内部では 25pt 超の格差がついた。

今週のまとめ

US 7/27–31 は FOMC (7/29 タカ派据え置き 9対3) とメガキャップ4社決算という四半期最大の山場が集中した週。7/29 はダウ -1,153pt と年初来最悪の日になったが、7/30 に Microsoft が +15.51% (1日の時価総額増 約 $450B は米企業史上最大)、7/31 に Amazon が +15.32% (2012年以来最大) と切り返し、S&P500 は週間 +1.05% (7,489.72) と3週ぶりの上昇週。対照的に Apple は週間 -7.24%、Meta は -6.47% で、AI 投資の収益化を証明できたか否かで 25pt 以上の差がついた。FactSet 7/31 時点のブレンド EPS +47.4% は投資評価益による嵩上げが大半で、売上 +14.1% が実力。フォワード P/E 19.6 は5年平均 19.9 を下回る。来週は7月雇用統計 (NFP) が最大の山場。

週末マーケット スナップショット

SPX+1.05%

S&P 500 (週次)

7,489.72

+77.74

IXIC+1.59%

NASDAQ Comp (週次)

25,373.85

+398.03

NDX+0.52%

NASDAQ 100 (週次)

28,274.20

+145.86

RUT+0.05%

Russell 2000 (週次)

2,931.34

+1.34

SOX4.30%

SOX 半導体 (週次)

11,311.08

-507.80

VIX13.94%

VIX (週末終値)

15.99

-2.59

US10Y+1.41%

10Y Yield (週末)

4.74

+0.06

USDJPY3.80%

USD/JPY (週末)

157.40

-6.21

SPX
+1.05%
IXIC
+1.59%
NDX
+0.52%
RUT
+0.05%
SOX
-4.30%
VIX
-13.94%
US10Y
+1.41%
USDJPY
-3.80%
主要指数の週次騰落 (%)。中央が 0、緑=上昇・赤=下落で、バー長は変化率の大きさに比例。

主要シグナル

空売り比率 / AD ライン / Put/Call / VIX / 機関フロー など (週次)

今週の地合い

山場通過で切り返し

FOMC ショックの -1,153pt を、決算2社の急騰で取り返した

勝ちセクター

XLY 一般消費財

週次 +6.11%。ほぼ Amazon 1銘柄の寄与

負けセクター

XLU 公益

週次 -4.19%。金利高止まりが直撃

ブレッドス

内部は分裂

ラッセル2000 は週間 +0.05% とほぼ動かず。上げは大型2銘柄が作った

VIX 週末

15.99

週初 18.58 から -13.94%。7/29 の 20.66 が最大値

来週の山場

JST 8/7 (金) 21:30

7月 米雇用統計 (NFP)。コンセンサス +110,000〜117,500・失業率 4.2%

決算シーズン

S&P500 の 61% が報告済

FactSet 7/31 時点。EPS ビート率 86% は5年平均 78% 超

7月の決着

S&P500 月間 -0.13%

ダウ +0.32% で4か月連続上昇。半導体 SOX は -20.61%

決算シーズンの現在地

FactSet Earnings Insight

Q2 2026 · FactSet 2026-07-31 時点

拡大

ブレンド EPS 成長率 +47.4% は 2021年以来の高さだが、その大半は Alphabet・Amazon の投資評価益による嵩上げ。実力を示す売上成長率 +14.1% は着実に加速し、フォワード P/E 19.6 は5年平均 19.9 をむしろ下回る。

ブレンド EPS 成長率

+47.4%

Alphabet・Amazon を除くと +28.8%

ブレンド売上成長率

+14.1%

前週 +13.2% / 6月末 +12.2%

EPS ビート率

86%

5年平均 78% / 10年平均 76%

EPS サプライズ

+31.4%

2社を除くと +9.2% (5年平均 +7.0%)

フォワード 12M P/E

19.6

5年 19.9 / 10年 19.0

通年 2026 予想 EPS

+29.1%

S&P500 の 61% が報告済

  • Alphabet・Amazon の2社を除くと、EPS 成長率は +47.4% → +28.8%、サプライズは +31.4% → +9.2% へ低下 (FactSet が併記)
  • 売上成長率は +12.2% (6月末) → +13.2% (前週) → +14.1% へ段階的に加速。売上ビート率 77% も5年平均 70% 超で、実体は着実に強い
  • フォワード P/E 19.6 は5年平均を下回る水準まで低下。7月のテック調整でバリュエーションの過熱が解消された

出典: FactSet Earnings Insight

来週の主要イベント

経済指標・決算・金融政策・政治イベントを重要度順に。時刻は JST 表記。

★★★ 重要度 (4)
JST 8/3 (月) 23:00経済指標

7月 ISM 製造業景況指数 (ISM Mfg PMI)

前回 6月 49.0 (縮小圏)。50 回復なら景気楽観と利上げ懸念が同居

JST 8/5 (水) 05:00決算

AMD 決算 (US 8/4 引け後)

データセンター GPU のガイド。NVIDIA (8/26) の先行指標

JST 8/5 (水) 23:00経済指標

7月 ISM 非製造業 (ISM Services PMI)

前回 53.6。価格サブ指数が関税インフレの伝播を映す

JST 8/7 (金) 21:30経済指標

7月 米雇用統計 (NFP)

今週最大の山場。コンセンサス +110,000〜117,500・失業率 4.2%。6月は +57,000 と大幅下振れ

★★ 重要度 (5)
JST 8/4 (火) 06:00決算

Palantir (PLTR) 決算 (US 8/3 引け後)

米国商用の再加速と通期ガイダンス。高倍率ゆえビートでも売られうる

JST 8/4 (火) 23:00経済指標

6月 JOLTS 求人件数

労働需要の遅行指標。NFP の地ならし

JST 8/5 (水) 21:15経済指標

7月 ADP 雇用者数

民間版の露払い。前回 +98,000

JST 8/6 (木) 05:00決算

Walt Disney (DIS) Q3 FY26 決算

Disney+ の黒字継続とテーマパーク需要

JST 8/6 (木) 21:30経済指標

新規失業保険申請件数

NFP 前日で注目度が上がる

0. 今週のヘッドライン

  • 🏆 今週の主役: Microsoft 週間 +21.75% と Amazon 週間 +17.00%。それぞれ Azure +43%・AWS +36.7% で「AI 投資は収益に変わる」を証明した
  • 🌊 隠れたテーマ: 同じ週に Apple -7.24%、Meta -6.47%。巨大テックの内部で 25pt 超の格差がつき、「Mag7」という括りが機能しなくなった
  • ⚠️ 警戒: 指数は +1.05% でも ラッセル2000 は +0.05% とほぼ動かず。上昇を作ったのは実質2銘柄で、市場の幅は広がっていない
  • 📅 来週の山場: JST 8/7 (金) 21:30 の7月雇用統計 (NFP)。7/29 FOMC で3名が利上げを主張して反対した直後の初の雇用データ

1. 今週の振り返り — 山場に叩き落とされ、決算で這い上がった週

🎯 要点: 週の中日にダウが年初来最悪の -1,153pt を記録しながら、週間では +1.04% のプラスで終えた。落差を作ったのはマクロではなく、2社の決算だった。

週次の数字

指数週末終値週次騰落コメント
SPX7,489.72+1.05%3週ぶりの上昇週
NASDAQ Comp25,373.85+1.59%Microsoft・Amazon が牽引
NASDAQ 10028,274.20+0.52%Apple・Meta の下落で伸び悩む
Russell 20002,931.34+0.05%実質ゼロ。中小型に資金が回らず
SOX 半導体11,311.08-4.30%7/30 の +8.19% を含んでもマイナス
VIX15.99-13.94%週半ばに 20.66 まで急伸した後、16 割れ

今週の 3 大ドライバー

① FOMC のタカ派据え置きが、年初来最悪の1日を作った (7/29)

7/29 の FOMC は FF金利を 3.50-3.75% に据え置いたが、採決は 9対3。3つの地方連銀総裁が「利上げ」を主張して反対に回った。反対票が利上げ方向で3票つくのは2016年9月以来だ。Warsh 議長は「ソフトなインフレ目標は無い、目標は 2% だけ」とタカ派的なレトリックを展開した。

債券市場はこれを「インフレへの対応が後手に回っている」と読み、30年債利回りは 5.21% と2007年以来19年ぶりの高水準へ。同日に Trump 大統領の「イランを叩く」発言で原油が +6.6% 急騰したことも重なり、ダウは -1,153pt (-2.19%) と2025年4月以来の最悪の日になった。詳細は 7/29 のデイリー

📚 用語: タームプレミアム (Term Premium) とは 投資家が長期債を持つ見返りに要求する上乗せ金利。将来の金利がどうなるかという予想 (期待仮説) では説明できない部分で、財政不安・インフレの不確実性・需給の悪化で拡大する。中央銀行が政策金利を据え置いても、市場が「対応が遅い」と判断すれば長期金利は独りでに上がる。7/29 の 30年債 5.21% がまさにこれで、株式のバリュエーションを直接圧迫した。

② Microsoft が米企業史上最大の1日時価総額増を記録した (7/30)

7/29 引け後に発表された Microsoft の Q4 FY26 決算で、Azure の成長率が前四半期の 40% から +43% へ再加速、翌四半期には +45% のガイドが示された。翌 7/30 の株価は +15.51% と2008年以来の大幅高になり、1日の時価総額増加額 約 $450B は NVIDIA の従来記録 ($441B) を抜いて米企業史上最大を記録した。

この日は半導体も6日続落から SOX +8.19% と急反発し、指数は前日の下落をほぼ全戻しした。ただし上昇は情報技術 (XLK) +5.50% の一極で、11セクター中5つが下落する幅の狭いものだった。詳細は 7/30 のデイリー

③ Amazon が「CapEx を増やして買われた」唯一の企業になった (7/31)

7/30 引け後の Amazon の Q2 決算は、AWS +36.7% (18四半期ぶり最速)・営業利益率 39.4% (+650bp) という成長と収益性の同時達成だった。設備投資を通期 $200B → 約 $220B へ引き上げたにもかかわらず、翌 7/31 の株価は +15.32% と2012年以来最大の上昇。

同じ日、Apple は6月期として過去最高の実績 (売上 +16%・EPS +29%) を出しながら -7.35% と16か月ぶりの大幅安になった。理由は9月期ガイダンスで、Tim Cook が「メモリ価格の100年に一度の洪水」と呼んだ部材コスト高が粗利率を 50.1% → 47〜48% へ押し下げるためだ。

🎯 要点: Amazon が CapEx を増額した理由も「メモリ価格高騰」だった。同じ原因が、容量を貸す側には需要の強さの証拠として、製品を売る側にはコスト増として作用した。


1.5 先週シナリオの答え合わせ

先週 (W30) のシナリオ実際どうなったか判定学び
強気: FOMC がハト派的据え置き + メガ4社が「CapEx はピークアウトし FCF は守られる」と示せば、売られた巨大テックが一気に切り返すFOMC はタカ派 (9対3)、CapEx もピークアウトせず Amazon は逆に増額。それでも Microsoft +21.75%・Amazon +17.00% と切り返した前提はすべて外れたが結論は当たった。切り返しの条件は「CapEx を減らすこと」ではなく「収益化を示すこと」だった
弱気: FOMC がタカ派据え置きで、メガ4社が Alphabet・Tesla と同じ「好決算でも CapEx 増額で売られる」反応を続ければ、調整はもう一段深くなるFOMC はタカ派で 7/29 は年初来最悪の日に。だがメガ4社の反応は2勝2敗に割れ、指数は週間プラスで終えた「メガキャップ4社」を一括りに予想した点が誤り。同じ論点でも企業ごとに答えが違う局面では、括りでの予想が機能しない
分岐点: 最大の不確実性は「4社の CapEx ガイダンスへの市場反応」。EPS のビート幅ではなく、CapEx をどれだけ引き上げ、そのリターンをどう説明するかを見るまさにこれが分岐点だった。Microsoft (Azure 43%) と Amazon (AWS +36.7% + 利益率 +650bp) は説明に成功、Meta (FCF 激減) と Apple (粗利率低下) は失敗論点の特定は正確だった。「何を見るか」が正しければ、方向を外しても解釈は間違えない

🎯 要点: 3つのうち2つが △ だったが、原因は同じ — 「メガキャップ4社」という括りで1つの答えを予想したこと。 7月の教訓は、同じテーマに晒された銘柄群でも、答えは企業ごとに分かれるということだった。


2. セクター ローテーション — 「Amazon セクター」が首位

セクター (ETF)週次騰落ドライバー
勝ち: XLY (一般消費財)+6.11%ほぼ Amazon 1銘柄の寄与。「消費が強い」わけではない
勝ち: XLC (通信サービス)+1.83%Alphabet 週間 +11.38% が Meta の -6.47% を上回った
勝ち: XLF (金融)+1.12%金利高止まりが利ざやに追い風
負け: XLI (資本財)-1.54%Q2 GDP 速報 +1.5% の下振れが重石
負け: XLB (素材)-1.62%7/31 単日で -2.34%
負け: XLU (公益)-4.19%金利高止まりの直撃。債券代替としての魅力が低下

情報技術 (XLK) は週間 -0.30% とほぼ横ばいだった。Microsoft が +21.75% も上昇したにもかかわらずセクターがマイナスなのは、Apple の -7.24% がそれを打ち消したからだ。

📚 用語: セクター ETF の構成比集中とは セクター ETF の多くは時価総額加重で、上位数銘柄が全体の3〜5割を占める。XLK では Microsoft・Apple・NVIDIA の3社、XLY では Amazon・Tesla の2社が大きな比重を持つ。「業界に分散投資する」つもりが、実態は数銘柄への集中投資になっていることが多い。この週の XLY +6.11% を「消費が強い」と読むと誤読になる。買う前に上位5銘柄の構成比を確認する習慣が効く。

🎯 要点: 今週のセクター騰落は、業界の強弱ではなく個別企業の決算をそのまま映していた。 ローテーションが起きたのではなく、決算の勝ち負けがセクターに翻訳されただけ。3-12か月の資金の流れを読む材料としては、今週のセクター順位はあまり参考にならない。


2.5 決算シーズンの現在地 — 「EPS +47.4%」を額面通りに読んではいけない

🎯 要点: 歴史的な高さに見える EPS 成長率の大半は、事業の利益ではなく投資の評価益。実力は売上 +14.1% のほうにある。

ページ上部のスコアカード (FactSet 7/31 時点) が示すブレンド EPS 成長率 +47.4% は、2021年以来の高水準だ。EPS サプライズも +31.4% と、5年平均 +7.0% の4倍を超える。数字だけを見れば空前の好決算シーズンに見える。

だが中身が異常だ。 FactSet 自身が7月末の分析で、この成長率の押し上げ要因を Alphabet と Amazon の投資評価益 (valuation gains) と名指ししている。Amazon の Q2 決算を例に取れば、GAAP EPS $5.75 のうち大部分は Anthropic への投資評価益 $53.4B という非現金の一過性項目で、事業の実力を示す調整後 EPS は $1.97 だった。

FactSet は、この2社を除いた数値も併記している。

指標全社ベースAlphabet・Amazon を除く
ブレンド EPS 成長率+47.4%+28.8%
EPS サプライズ+31.4%+9.2%

たった2社を外すだけで、サプライズは5年平均 (+7.0%) 並みまで落ちる。 集計値というのは平均に見えて、実は少数の極端値に支配されていることがある。500社の平均を語る数字が、実質的に2社の会計処理で決まっていた — これが今シーズンの集計を読むうえでの最重要の但し書きだ。

  • 益成長のフェーズ: 見かけの EPS +47.4% ではなく、売上成長率 +14.1% (6月末 +12.2% → 前週 +13.2% → 現在 +14.1%) が実体を示す。売上ベースのビート率も 77% と5年平均 70%・10年平均 68% を上回る。評価益で膨らむ余地のない売上側で加速しているので、企業活動そのものは着実に強い
  • ビート/ミスの市場反応 — 構造変化のサイン: EPS ビート率 86% は5年平均 78% を大きく上回るのに、ビートした銘柄が報われていないのが7月の特徴だった。Apple は上振れで -7.35%、Alphabet は 7/22 に売上ビートで単日 -$294B。市場は結果ではなくその先のガイダンスと投資効率を見ている
  • バリュエーション: フォワード P/E は 19.6 で、5年平均 19.9 を下回り、10年平均 19.0 をやや上回る水準。7月のテック調整で過熱が解消された格好だ

📚 用語: フォワード P/E とは 今後12か月の予想利益に対する株価の倍率。過去実績ベースの P/E と違い、市場が織り込んでいる将来利益で評価するため、業績の転換点で先に動く。水準だけでは割高・割安を判断できず、その指数自身の5年・10年平均と比較して相対評価するのが実務的な使い方。19.6 という数字は、5年平均 19.9 を下回ったという事実のほうに意味がある。

🎯 要点: 局面判定は「拡大」。 売上が加速し、バリュエーションの過熱は解消された。ただし EPS 成長率の見かけの高さは評価益による嵩上げなので、次回の FactSet Update では「評価益を除いた EPS 成長率がどこにあるか」を確認したい。決算シーズンが終わる8月中旬に、この嵩上げが剥がれた実力値が見えてくる。


2.7 クレジットと流動性

指標最新値直近の変化解釈
HY OAS (高利回りスプレッド)2.84%+0.09pt低水準を維持。信用不安の兆候はない
IG OAS (投資適格スプレッド)0.80%+0.05ptHY との乖離も安定
10Y 実質金利 (TIPS)2.41%+0.15ptプラス圏で上昇。株式のバリュエーションには逆風
ブレークイーブン インフレ率 (10Y)2.28%+0.05pt期待インフレは落ち着いており、金利上昇の主因は実質金利側
RRP (逆レポ残高)$2.15B-0.02ほぼ枯渇。流動性のバッファはもう無い
TGA (財務省一般会計)$910.8B+$30.5B積み上がり。国債発行が市場から資金を吸い上げている
準備預金 (Fed バランスシート)$2,984.6B+$17.7B減少しておらず、銀行間ストレスの兆候はない

注目は実質金利 2.41% とブレークイーブン 2.28% の組み合わせだ。名目金利の上昇 (10年債 4.74%) が期待インフレではなく実質金利側で起きていることを意味し、これは「インフレ懸念」ではなく「財政・需給・タームプレミアム」が主因という 7/29 以降の読みを裏づける。株式にとっては、インフレ主導の金利上昇より厳しい形だ。


2.9 ポジショニング

先物 (CFTC COT レバレッジドファンド)Net ポジション前週比含意
S&P500 先物-297,476+25,389売り越しだが縮小方向。悲観の巻き戻し
ナスダック 100 先物-58,298+16,392同じく売り越し縮小。決算前に買い戻し
10Y 国債先物-2,155,739-90,934売り越しが拡大。金利上昇方向に賭けが積み上がる
円 先物-101,990-5,805円売り越しが微増

⚠️ 注記: COT は US 7/28 (火) 時点のデータで、金曜に公表される (3日遅れ)。 つまりこの数字は FOMC (7/29) とメガキャップ決算の前のポジションだ。週後半の急変動は反映されていない。10年債先物の売り越し拡大 (-2,155,739) は、7/29 の 30年債 5.21% へ向けた地ならしがすでに進んでいたことを示す。


3. 個別銘柄の週次ハイライト — 深掘り 2 社

3.1 MSFT (Microsoft) — 週間 +21.75%、7月月間では +24.58%

📎 公式情報源: Microsoft IR決算記事の詳報

観点詳細
今週何が起きたか決算で Azure が 40% → 43% へ再加速、翌四半期 +45% ガイド。7/30 に +15.51%、週間 +21.75%
なぜ重要か7月を通して市場が問い続けた「AI 設備投資は本当に売上に変わるのか」に、最も明快な回答を出した
逆風リスク四半期 CapEx が $50B 超へ膨張。Azure の成長率が一度でも 40% を割り込めば、同じ CapEx が重荷に転じる
長期で見るべき指標(1) Azure 成長率、(2) Commercial RPO ($678B)、(3) CapEx に対する営業利益率

長期投資家としての見方: 買われた理由は「AI に投資しているから」ではなく「投資の回収速度を示せたから」だ。したがって監視対象は株価ではなく回収速度そのもので、Azure の成長率が減速に転じた四半期が、投資テーゼを点検するタイミングになる。

3.2 AAPL (Apple) — 週間 -7.24%、世界一を奪還した3日後に急落

📎 公式情報源: Apple Newsroom決算記事の詳報

観点詳細
今週何が起きたか7/27 に $336.91 の史上最高値で NVIDIA を抜き時価総額世界一を奪還 → 7/31 に -7.35% で $308.91。週間 -7.24%
なぜ重要か決算自体は6月期として過去最高。売られたのは9月期ガイダンス (粗利率 50.1% → 47〜48%) と、サービス・中華圏のコンセンサス割れ
逆風リスクメモリ供給制約は業界要因で、Apple の努力では解決できない。Cook は9月期に制約が悪化すると警告済み
長期で見るべき指標(1) 粗利率の着地、(2) サービス成長率、(3) 中華圏の回復ペース

長期投資家としての見方: 7月前半、Apple は「AI 投資リスクのない避難先」として買われて世界一に返り咲いた。その物語が、AI ブームの副作用である部材インフレによって崩されたのがこの週だ。フォワード P/E 約 37 倍 (5年平均 28〜30倍) を正当化していたのはサービスの高収益性で、そこが揺らいだことが下げ幅を大きくした。


4. 来週の経済カレンダー — それぞれがなぜ重要か

JST 日付 / 時刻イベント重要度解釈
JST 8/3 (月) 23:007月 ISM 製造業景況指数★★★前回 6月 49.0 と縮小圏。50 回復なら景気楽観と利上げ懸念が同居する
JST 8/4 (火) 23:006月 JOLTS 求人件数★★労働需要の遅行指標。求人減の継続は「労働市場冷却 → 利上げ不要」の材料
JST 8/5 (水) 21:157月 ADP 雇用者数★★前回 +98,000。弱ければ NFP 悲観が前倒しで織り込まれる
JST 8/5 (水) 23:007月 ISM 非製造業★★★米経済の7割を占めるサービス業。価格サブ指数が関税インフレの伝播度を映す
JST 8/6 (木) 21:30新規失業保険申請件数★★NFP 前日で注目度が上がる
JST 8/7 (金) 21:307月 米雇用統計 (NFP)★★★★★来週最大の山場。下記参照

📚 用語: なぜ雇用統計 (NFP) が最重要視されるか Fed は「物価の安定」と「雇用の最大化」という2つの使命を負っており、金融政策はこの2つの綱引きで決まる。雇用統計は毎月最初に出る包括的な労働市場データで、非農業部門雇用者数・失業率・平均時給を同時に含むため、「景気の強さ」と「賃金インフレ圧力」を1本で読める唯一の指標になっている。特に今回は、7/29 の FOMC で3名が利上げを主張して反対した直後で、この1本が「9月 FOMC で利上げか据え置きか」の重心を決める

7月分のコンセンサスは +110,000〜117,500・失業率 4.2%。6月が +57,000 と大幅に下振れた後だけに、市場は「反発」を織り込んでいる。

  • 上振れ (+150,000 超・失業率低下): 労働市場の底堅さが確認され、利上げ再開観測が強まる。短期金利上昇でグロース株に逆風
  • コンセンサス並み (+110,000〜130,000): 過熱も冷却もせず。株は決算物色に回帰
  • 下振れ (+70,000 未満・失業率 4.3% 超): 6月に続く弱さで労働市場の失速が意識される。利下げ観測が復活して金利低下・株は安堵。ただし景気後退懸念に転じれば反転しうる両刃

5. 来週の決算 — 注目銘柄

US 日付銘柄寄り前/引け後注目 KPI
US 8/3 (月)PLTRAMC米国商用 (US Commercial) の成長率、通期ガイダンスの上方修正
US 8/4 (火)AMDAMCデータセンター売上とガイダンス。NVIDIA (8/26) の先行指標
US 8/4 (火)CATBMO受注残 (backlog) と関税コストの価格転嫁。設備投資サイクルの体温計
US 8/5 (水)LLYBMOGLP-1 (Mounjaro / Zepbound) の売上と通期ガイダンス
US 8/5 (水)DISBMODisney+ の黒字継続、テーマパーク需要
US 8/6 (木)UBER / SHOPAMC総取扱高の成長、GMV とテイクレート

AMD が最も重要度が高い。 7月に「AI 投資の収益化」で巨大テックが選別された流れが、次は中位の AI 半導体へ波及する。データセンター向け GPU のガイダンスは、8月下旬の NVIDIA 決算に向けた市場のセンチメントを規定する。


6. 来週のシナリオ — 強気 / 弱気の分岐点

🎯 要点: 市場はすでに9月の利上げを本気で織り込んでいる。 7/29 の FOMC で3名が利上げを主張して反対した後、CME FedWatch の9月利上げ確率は 57% 超へ上昇し、金利スワップ市場でも約 60% が示された。利上げが単一シナリオとして最も確率の高い選択肢になった状態で NFP を迎える点が、今回の特殊性だ。月初に6月雇用統計の大幅下振れ (+57,000) を受けて利下げが議論されていたことを思えば、1か月で市場の想定が反転したことになる。

  • 強気シナリオ: NFP (8/7) が +110,000 前後の「軟着陸的な数字」に着地し、賃金の伸びも落ち着けば、利上げ懸念が後退して 10年債が 4.7% を割り込む。決算で AMD がデータセンターの強いガイドを出せば、7月に売られた半導体 (SOX -20.61%) の巻き戻しが本格化し、S&P500 は 7,600 台を試す
  • 弱気シナリオ: NFP が +150,000 を超えて賃金が加速すると、7/29 に利上げを主張した3名の論拠が補強され、9月 FOMC の利上げ観測が現実味を帯びる。10年債が 4.80% を超えれば株式のバリュエーションに直接効き、夏枯れの薄商いと重なって S&P500 は 7,300 前後へ調整する。ISM 非製造業の価格サブ指数が跳ねる展開も同じ方向
  • 分岐点: 最大の不確実性は「労働市場の減速が、利下げ材料と受け取られるか、景気後退の兆候と受け取られるか」。6月 +57,000 に続いて7月も弱ければ、市場はどこかで「弱さを歓迎する」姿勢から「弱さを恐れる」姿勢へ切り替わる。その切り替えの目印は、金利低下と株安が同時に起きるかどうかだ

📚 季節性・アノマリー: 8月は 5〜10月のSell in May悪い半年』の後半で、9月と合わせた連月は S&P500 で唯一「連続して平均マイナス」になる暦月の組み合わせだ。9月は1950年以降で上昇確率が50%を割る唯一の月 (平均 -0.7%)。2026 は中間選挙年で、歴史的には年前半軟調 → 秋に底 → 年末反発が定番のパターン。ただしアノマリーは「過去の平均的な傾き」であって毎回当たるものではない。7月がそうだったように、個別企業のカタリストは季節性を簡単に上書きする。夏枯れで流動性が薄くなる分だけ値動きが増幅されやすい、という需給面の注意として押さえておく。


7. 今週の学び — 長期投資家として覚えておくべきこと

今週のキーワードは「括りの解体」。 同じテーマに晒された銘柄群でも、答えは企業ごとに分かれる。

用語 / 概念

  1. 投資回収期間 (Payback Period) — 投じた資本が利益として戻るまでの時間。クラウドのデータセンターは稼働後すぐ課金が始まるため回収が速く、基盤モデルの研究開発や将来プラットフォームへの投資は回収が遅い。金利が高い局面ほど、回収の遅い投資は厳しく割り引かれる。Microsoft・Amazon と Meta の差は、事業の優劣ではなくこの距離の差だった。
  2. 投入コストの非対称 (Input Cost Asymmetry) — 部材価格の上昇は、買う企業には利益率の圧迫、売る企業には収益機会になる。「メモリ価格の高騰」という単一の材料が、Apple のガイダンスを下げ、Amazon の CapEx を押し上げ、Micron を +15〜18% 上昇させた。ニュースを聞いたら「誰が買う側で誰が売る側か」を最初に整理する
  3. 会計上の利益と現金の乖離 — FactSet のブレンド EPS 成長率 +47.4% の大半は Alphabet・Amazon の投資評価益という非現金項目だ。集計データを見るときは「その数字が現金を伴っているか」を必ず確認する。今回は売上成長率 +14.1% のほうが実体を映していた。

パターン / 経験則 (1 つ)

  • 同じテーマで動く銘柄群を「1つの塊」として予想すると外れる局面がある。 先週のウィークリーは「メガキャップ4社」を一括りに強気・弱気のシナリオを立てたが、実際は2勝2敗に割れた。7月の Mag7 は首位 Microsoft +24.58% と最下位 Tesla -26.01% で 50pt 超の格差がついている。テーマが成熟すると、テーマ内部での選別が始まる。「AI 関連」「半導体」といった括りで判断する段階から、企業ごとの証明を見る段階へ移ったことを意識する。

監視指標の閾値表

指標週末値警戒水域含意
VIX15.99> 20 で警戒、> 25 で守備16 割れ。7/29 の 20.66 から正常化
10Y Yield4.74%> 4.80% で株売り加速警戒線に接近。PCE 鈍化でも下がらず
30Y Yield5.21% 近辺> 5.25% 定着で株圧迫2007年来高値圏で高止まり
10Y 実質金利2.41%> 2.5% で株に本格逆風上昇中。金利上昇の主因は実質側
USD/JPY157.40> 160 で介入リスク週間 -3.80% と急速な円高
Put-Call OI 比1.48> 1.2 で弱気株高でも弱気に振れたまま

8. データソース・引用

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