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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q3 FY26

まちまち
AAPLApple·2026年7月30日(木) AMC15

AAPL Q3 FY26 — 過去最強の6月期 (売上 +16% / EPS +29%) で世界一を奪還した3日後に -7.35%。メモリ『100年に一度の洪水』が9月期ガイダンスを削った

Apple の Q3 FY26 (2026年4-6月期) は売上 $109.4B (+16% YoY)・GAAP EPS $2.02 (+29%) と、6月期として過去最高のダブル上振れだった。iPhone $54.25B (+22%)、Mac $10.35B (+29%) は予想を大きく超え、全 5 地域が二桁成長。にもかかわらず翌 US 7/31 (金) の株価は -7.35% ($308.91) と16か月ぶりの大幅安になった。理由は3つ。(1) 9月期ガイダンスが売上 +9-11%・粗利率 47-48% と市場の +12% 超を下回ったこと、(2) サービス $30.74B と中華圏 $18.8B がコンセンサスに届かなかったこと、(3) 7/27 に $336.91 の史上最高値で NVIDIA を抜き時価総額世界一を奪還した直後の割高感。ガイダンスを削った主因は Tim Cook が『メモリ価格の100年に一度の洪水』と呼んだ半導体メモリの供給逼迫で、AI データセンター向け需要が Apple の部材コストに跳ね返る構図だ。CapEx を抑えて『AI 設備投資で売られる』相場を回避してきた Apple が、別ルートで AI ブームのコストを払わされた四半期。Tim Cook にとって最後の決算コールでもあった (9/1 に John Ternus が CEO 就任)。

6月期として過去最強の決算 (売上 +16% / EPS +29%) で3日前に時価総額世界一を奪還した直後、メモリ『100年に一度の洪水』による9月期ガイダンス下振れと中華圏・サービスの未達で翌日 -7.35%。CapEx を抑えてきた Apple が、部材コスト側から AI ブームの請求書を受け取った。

数字サマリ

EPS

$2.02コンセンサス $1.89上振れ

REVENUE

$109.40Bコンセンサス $108.90B上振れ

EPS

コンセンサス
$1.89
実績
$2.02
上振れ

売上

コンセンサス
$108.90B
実績
$109.40B
上振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

四半期推移

EPS 実績
$2.02Q2 FY26Q3 FY26
AAPL の決算 EPS 実績の推移。
売上 実績
$109.40BQ2 FY26Q3 FY26
AAPL の決算 売上実績の推移。

主要 KPI

iPhone 売上

$54.25B

+22% YoY

コンセンサス $53.86B 超。6月期として過去最高。iPhone 17 サイクルが好調

Mac 売上

$10.35B

+29% YoY

コンセンサス $8.74B を大幅上回る今回最大のサプライズ。中華圏でも過去最高

サービス 売上

$30.74B

+12% YoY

コンセンサス $31.22B に未達。粗利率 75.6% は6月期記録だが成長率が焦点に

iPad 売上

$6.19B

-6% YoY

コンセンサス $6.92B 未達。前年の A16 iPad 発売の反動

中華圏 (Greater China) 売上

$18.8B

+22.4% YoY

回復は鮮明だがコンセンサス $19.6B には届かず。Mac は中華圏で過去最高

粗利率

50.1%

前年 46.5%

関税還付が約 2pt 押し上げ。9月期は 47-48% へ低下ガイド

営業キャッシュフロー

$34.4B

+23% YoY

6月期の記録更新。株主還元 $33B の原資

ガイダンス

項目判定補足
9月期 売上成長率+9〜11% YoYコンセンサス未達市場予想の +12% 超を下回る。メモリ供給制約が主因
9月期 粗利率47〜48%下方修正今 Q の 50.1% から低下。メモリ価格高騰のコスト増を織り込み
9月期 為替影響約 -2.5pt据え置きドル高が売上成長率を押し下げ

株価反応

引け値

$333.43

時間外

$318.42

-4.50%

公式情報源

1 行サマリ

ナラティブ パターン: 上振れでも売られた (逆説型)。 Apple の Q3 FY26 (2026年4-6月期) は売上 $109.4B (+16% YoY)・GAAP 希薄化後 EPS $2.02 (+29% YoY) と、6月期として過去最高のダブル上振れだった。iPhone は +22%、Mac は +29% で予想を大きく超え、5 地域すべてが二桁成長。それでも翌 US 7/31 (金) の株価は -7.35% ($308.91) と、16か月ぶりの大幅安で終えた。

売られた理由は決算の中身ではなく、その先にある。 9月期ガイダンスが売上 +9〜11%・粗利率 47〜48% と市場の想定を下回り、その原因を Tim Cook CEO が「メモリ価格の100年に一度の洪水 (a hundred-year flood on the memory pricing)」と表現した。AI データセンターがメモリを買い占める余波が、Apple の部材コストとして回ってきたのだ。

🎯 要点: 7月相場の皮肉がここに凝縮している。 CapEx を増やした企業 (AlphabetMeta) が売られる中、CapEx を抑えて時価総額世界一に返り咲いた Apple は、部材コスト側から AI ブームの請求書を受け取った。AI の設備投資は、投資しない企業のコストも押し上げる。

総合判断: 強弱混在 (mixed)。足元の実績は文句なしに強く、売られたのは「割高な株価 + 供給制約による一時的な減速」への調整だ。なお本決算は Tim Cook にとって CEO として最後の決算コールでもあった (US 9/1 に John Ternus が CEO 就任)。

数字の中身

EPS / 売上

  • 売上 $109.4B (+16% YoY)。コンセンサス $108.65〜108.9B を上回り、6月期として過去最高
  • GAAP 希薄化後 EPS $2.02 (+29% YoY)。コンセンサス $1.89 に対し約 +6.9% の上振れ
  • 純利益 $29.8B (+27% YoY)、営業キャッシュフロー $34.4B (+23% YoY、6月期の記録)
  • 粗利率 50.1% (前年 46.5%)。製品 40.1% / サービス 75.6%

⚠️ 注記: EPS の「大幅上振れ」には一時要因が入っている。 $2.02 のうち $0.11 は関税還付によるもので、これを除いた実質は $1.91 — コンセンサス $1.89 に対して +1% の小幅上振れにすぎない。粗利率 50.1% も関税還付が約 2pt 押し上げている。見出しの「EPS +29%」だけを見て収益力が跳ねたと解釈すると、9月期の粗利率 47〜48% ガイドに驚くことになる。

セグメント別 — Mac が最大のサプライズ、サービスが唯一の失点

セグメント実績YoYコンセンサス判定
iPhone$54.25B+22%$53.86B上振れ (6月期記録)
Mac$10.35B+29%$8.74B大幅上振れ
iPad$6.19B-6%$6.92B下振れ
ウェアラブル・ホーム$7.88B+6%$7.82B小幅上振れ
サービス (Services)$30.74B+12%$31.22B下振れ

Mac の +29% は今回最大のサプライズで、市場予想を約 18% も上回った。一方 サービスの未達が最も重く受け止められた。サービスは粗利率 75.6% と製品 (40.1%) の倍近い収益性を持ち、Apple のバリュエーションを支える「ハードウェア企業ではない」という物語の中核だからだ。金額としては6月期のカテゴリ記録 (広告・App Store・AppleCare・Music・Video が各記録) を更新しているが、市場が見ているのは水準ではなく成長率の方向だった。

📚 用語: 粗利率ミックス (Gross Margin Mix) とは 粗利率の異なる複数事業を持つ企業で、どの事業が伸びるかによって全社の粗利率が変わる効果。Apple の場合、製品 40.1% に対しサービス 75.6% と差が大きいため、サービス比率が 1pt 上がるだけで全社粗利率が押し上がる。逆に今回のようにサービスが想定より伸びないと、売上が上振れても利益の質は市場の期待に届かない。「売上を見るな、ミックスを見ろ」と言われる理由がこれだ。

地域別 — 中華圏は「明確な回復、だがコンセンサス未達」

地域YoY備考
米州 (Americas)+11.1%
欧州 (Europe)+22.4%新規売上への寄与額が最大 ($5.4B)
中華圏 (Greater China)+22.4% ($18.8B)コンセンサス $19.6B に未達。Mac は中華圏で過去最高
日本 (Japan)+13.4%
その他アジア太平洋+15.6%

中華圏は 2024〜2025年に Apple の最大の弱点だった地域で、そこが +22.4% と全社平均を上回る成長に戻ったのは構造的に大きい。ただし市場の期待値はさらに上を見ていた。「回復したが、期待ほどではない」— 決算後の下落を説明する二番目の要因だ。

何が株価を決めたか — メモリの「100年に一度の洪水」

🎯 要点: 実績ではなくガイダンスが、それも Apple 自身の失策ではなく AI 業界の需要が、株価を -7.35% にした。

9月期 (Q4 FY26) のガイダンスは以下だった。

  • 売上成長 +9〜11% YoY — 市場予想は +12% 超だったため、実質的な下方サプライズ
  • 粗利率 47〜48% — 今 Q の 50.1% から 2〜3pt の低下
  • 為替は約 2.5pt の逆風

Cook はコール中、この見通しの背景をこう説明した。

"we're in what I would characterize as a hundred-year flood on the memory pricing with exponential increases in memory prices" (メモリ価格において、私が「100年に一度の洪水」と呼ぶべき状況にある。価格が指数関数的に上昇している)

さらに供給制約の根因について、通常の生産トラブルではないと明言している。

"the root cause of it is not a regular supply issue. It's a demand forecast issue" (根本原因は通常の供給問題ではない。需要予測の問題だ)

つまり AI データセンター向けの高帯域メモリ (HBM) と先端プロセスの需要が業界の予測を超えて膨張し、スマートフォンや PC 向けのメモリまで価格が跳ね上がっているという構図だ。Apple は世界最大級の調達力を持つが、それでも業界全体の需給逼迫からは逃れられない。

📚 用語: メモリ スーパーサイクル (Memory Supercycle) とは DRAM や NAND といったメモリ半導体は、需要増 → 増産投資 → 供給過剰 → 減産 → 品薄、という数年周期の価格変動 (シリコンサイクル) を繰り返す。2026年のサイクルは AI サーバー向け HBM の需要が牽引しており、メモリメーカーが生産能力を高採算の HBM へ振り向けた結果、汎用 DRAM が品薄になった。メモリを買う側 (Apple・PC メーカー・スマホメーカー) にとってはコスト増、売る側 (Micron や SK Hynix にとっては空前の好況という非対称が生まれる。7/30 に Micron が +15〜18% 急騰したのはこの裏返しだ。

CapEx を抑えた企業が、それでも AI のコストを払う

2026年7月の相場を貫いたのは「AI 設備投資 (CapEx) を増額した企業は、好決算でも売られる」というパターンだった。TSMC (7/16)、Alphabet (7/22)、Meta (7/29) が順に裁かれ、その中で CapEx を抑制してきた Apple は「AI 投資リスクのない安全資産」として買われ、US 7/27 (月) に $336.91 の史上最高値をつけて NVIDIA から時価総額世界一を奪還した

その3営業日後にこの決算が来た。皮肉なのは、Apple が AI 支出をしていないわけではないことだ。Cook はコールで明確に増額を認めている。

"we have been growing our OPEX and spending more in AI in general. Quite a bit more." (販管費を増やしており、AI 全般により多くを支出している。かなりの額を)

つまり Apple の下落要因は「自社の CapEx 増」ではなく「業界の AI 投資が生んだ部材インフレ」だった。AI 設備投資は、投資している企業の利益率だけでなく、投資していない企業のコスト構造まで動かす。これが本決算から得られる最も汎用的な学びだ。

株価反応とアナリストの読み筋

  • 決算前: US 7/27 (月) に $336.91 の史上最高値 (時価総額 約 $4.9〜5.0 兆、NVIDIA を抜き世界一)
  • 決算日 US 7/30 (木) 終値: $333.43 (-1.41%)
  • 時間外: -4.5% 前後
  • 翌 US 7/31 (金) 終値: $308.91 (-7.35%) — 盤中は -9% 超、16か月ぶりの大幅安。時価総額は約 $500B 減少

ダウ工業株30種にとっても重い1日で、この日 Apple 単独でダウを約 188pt 押し下げた。同じ日に Amazon が +15.32% でダウを約 208pt 押し上げたため、指数としてはほぼ相殺されて +0.53% で着地している。

アナリスト反応 — 「目標株価は下げても格付けは維持」

ハウス格付け目標株価動き
TD CowenBuy$400 (←$350)引き上げ
Bank of AmericaBuy$380据え置き
Wells FargoOverweight$350 (←$310)引き上げ
Morgan StanleyOverweight$360 (←$364)小幅引き下げ
JPMorganOverweight$340 (←$345)小幅引き下げ
RosenblattNeutral$300 (←$276)目標は上げるも中立維持
BarclaysUnderweight$245 (←$253)引き下げ
GF SecuritiesHold (←Buy)格下げ

平均目標株価は約 $319.82。注目すべきは Morgan Stanley・JPMorgan のように目標株価をわずかに下げながら Overweight を維持した動きで、供給制約を「需要破壊ではなく需要の先送り」と解釈するハウスが主流だった。売れる iPhone が減るのではなく、作れる iPhone が減るという読みだ。

📚 用語: 需要の先送り (Demand Deferral) と需要破壊 (Demand Destruction) の違い 供給不足で売上が落ちるとき、その需要が後の四半期に戻ってくるのが「先送り」、価格上昇や代替品への流出で永久に失われるのが「破壊」。前者なら株価下落は一時的な調整、後者なら構造的な下方修正になる。Apple のケースでアナリストが強気を維持したのは、iPhone の買い替え需要は待てば戻ると見たため。この判定が外れると、9月期の減速は12月期に取り戻せないまま次のサイクルへずれ込む

バリュエーション

  • フォワード P/E 約 37 倍 (7/27 の最高値時点)。5年平均 28〜30 倍を明確に上回る割高圏
  • 時価総額は決算後 約 $4.5 兆前後へ縮小 (7/27 のピークは 約 $4.9〜5.0 兆)
  • 当四半期の株主還元は $33B (自社株買い $25.8B + 配当等 $4B)。四半期配当 $0.27/株 (US 8/13 支払)

フォワード 37 倍という水準は、Apple の過去のレンジで見ると明確に高い。この倍率は「サービス比率の上昇による粗利率の構造的改善」を前提にしているため、サービスがコンセンサスを外し、粗利率ガイドが 50.1% → 47〜48% へ下がった今回の組み合わせは、倍率の前提そのものを揺さぶった。売られ方が -7% と大きくなったのは、決算の悪さではなく織り込み済みの期待値が高すぎたことの帰結だ。

立場別の考え方

立場考え方
未保有フォワード 37 倍は依然として割高圏。9月期の粗利率が 47〜48% ガイドのどこに着地するかを確認してからでも遅くない。供給制約は数四半期で解ける性質のもので、慌てて追う局面ではない
含み益中核保有を崩す理由はない。ただし 7/27 の最高値は「AI 投資リスクのない避難先」という物語で買われた面が強く、その物語は今回半分崩れた。過熱の消化に時間がかかる可能性を織り込んでおく
含み損6月期として過去最高の実績が出た直後であり、事業のファンダメンタルズは毀損していない。売られたのはガイダンスと割高感。狼狽売りより、12月期の粗利率回復シナリオが崩れないかを確認するほうが実益がある

次の四半期 (9月期) で確認すべき 5 つの KPI

  1. 粗利率が 47〜48% ガイドのどこに着地するか — メモリコスト増の実際の打撃度を測る最重要指標
  2. サービス成長率が +12% を維持・加速できるか — 今回のコンセンサス割れが一過性か構造的か
  3. 中華圏がコンセンサスに追いつくか — $18.8B から次の四半期でどこまで伸びるか
  4. iPhone 18 の価格戦略が需要を削がないか — Cook は値上げに言及しており、部材コスト増の転嫁度合いが焦点
  5. 供給制約の解消時期 — Cook は9月期に制約が「significantly sequentially」悪化すると警告済み。12月期に緩むかどうか

決算シーズン全体の中での位置づけ

FactSet 集計では Q2 (6月期) 決算シーズンの S&P500 平均 EPS サプライズが +7〜8% 前後で推移する中、Apple の調整後サプライズは +1% にとどまった。見かけの「EPS +29%・サプライズ +6.9%」は関税還付という一時要因を含んでおり、中身では市場平均並みか、やや下回る決算だったというのが公平な評価になる。

データソース・引用

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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