Daily Stock Strategy米国株 デイリー戦略ノート

DAILY · 2026 / W22

2026/05/29 — DELL AI サーバ受注残 $51.3B で時間外 +31%、Core PCE 通過でグロース全面高 / 来週 NFP・AVGO 週が FOMC 前最後の山場

US 5/28 (木) は Core PCE が YoY +3.3% (3年ぶり高水準) も MoM 下振れ + GDP 下方修正で長期金利が低下、SNOW +39.46% (上場来最大) を起点にグロース/ソフトウェアが全面高し SPX / NASDAQ が最高値更新。引け後の DELL は売上 $43.8B (+88%) / AI サーバ $16.1B (+757%) / 受注残 $51.3B で時間外 +31%。来週 JST 6/4 (木) AVGO + 6/5 (金) NFP が FOMC 前最後のフルデータ週。

執筆: Daily Stock Strategy 編集部49 分で読了強気

TL;DR

US 5/28 (木) は『リフレ見出しの裏でディスインフレ確認』。Core PCE は YoY +3.3% (2023年10月以来) / ヘッドライン +3.8% と熱いが、MoM はコア +0.2% / ヘッドライン +0.4% と予想下振れ、GDP Q1 改定は +2.0%→+1.6% に下方修正。利上げ織込が利下げ再織込へ巻き戻り 30Y は 5% 割れ (4.985%)、これがデュレーションの長い高 PER グロースを直接利した。SNOW +39.46% (上場来最大) を起点に NOW +6.5% / PLTR +8.2% / ARM +10.8% / AMD +4.6% が全面高、SPX 7,563 (+0.58%) / NASDAQ Comp 26,917 (+0.91%) が最高値更新。一方 SNPS は上振れ決算でも -8.61% で、ガイダンスのモメンタムで勝者と敗者が分かれる選別相場入り。引け後の DELL は売上 $43.8B (+88%) / Non-GAAP EPS $4.86 / AI サーバ $16.1B (+757%) / 受注残 $51.3B、AI 通期目標を $60B へ上方修正し時間外で一時 +31%。来週 JST 6/4 (木) 05:00 AVGO + 6/5 (金) 21:30 NFP が FOMC (6/16-17) 前最後のフルデータ週。

マーケット スナップショット

SPX+0.58%

S&P 500 (5/28 終値)

7,563.63

+43.27

IXIC+0.91%

NASDAQ Comp (5/28 終値)

26,917.47

+242.74

NDX+0.84%

NASDAQ 100 (5/28 終値)

30,223.89

+250.32

DJI+0.05%

Dow Jones (5/28 終値)

50,668.97

+24.69

RUT+0.57%

Russell 2000 (5/28 終値)

2,936.57

+16.63

VIX3.38%

VIX (5/28 終値)

15.74

-0.55

US10Y0.58%

10Y Yield (5/28)

4.46

-0.03

USDJPY+0.01%

USD/JPY (朝 JST)

159.26

+0.02

SPX
+0.58%
IXIC
+0.91%
NDX
+0.84%
DJI
+0.05%
RUT
+0.57%
VIX
-3.38%
US10Y
-0.58%
USDJPY
+0.01%
主要指数の前日比 (%)。中央が 0、緑=上昇・赤=下落で、バー長は変化率の大きさに比例。

主要シグナル

空売り比率 / AD ライン / Put/Call / VIX / 機関フロー など

今朝の主役

DELL 寄り前 +38%

Q1 FY27 売上 $43.8B (+88%) / AI サーバ $16.1B (+757%) / 受注残 $51.3B、AI 通期目標 $60B + 全社売上 $165-169B へ上方修正。AH +31% → 5/29 寄り前 +38%

市場テーマ

Core PCE 通過でグロース全面高

SNOW +39.46% (上場来最大) 起点に NOW / PLTR / ARM / AMD が同期上昇、SPX / NASDAQ 最高値更新

構造的追い風

30Y 5% 割れ (4.985%)

MoM 下振れ + GDP +1.6% 下方修正で利下げ再織込、長期金利低下が高 PER グロースを直接利した

警戒シグナル

選別相場 + 金利感応の脆さ

SNPS は上振れでも -8.61%、株高は金利低下主因で MoM 再加速なら真っ先に巻き戻すリスク

リスクオン度

8 / 10

VIX 15.74 (-3.38%) / High-Beta 5d +8.38% / Copper-Gold 5d +2.16% / 3M10Y +86.5bp

来週の山場

JST 6/4 AVGO + 6/5 NFP

FOMC (6/16-17) 前最後のフルデータ週。6/6 (土) からブラックアウト入り

市場心理 (CNN F&G)

60 (強欲・二極化)

モメンタム 98 ↔ 株価の幅 33 / ジャンク債 22 = 指数主導で内部の幅は弱い

USD/JPY 警戒

159.26

160 接近、来週 NFP 上振れで突破リスク

関連する決算レポート

この日に発表された決算の詳細レポート

関連するマーケット インサイト

この日のテーマに関連する S&P500 集計レポート (決算スコアカード / バリュエーション等)

この週のウィークリー戦略ノート

この日を含む 1 週間の総括と来週の主要イベント

WEEKLY · 2026 第22週

2026 第22週 — Core PCE ディスインフレ確認 → 金曜ソフトウェア一斉急騰 (月間 +21%・2001年以来最高)、S&P 9 週連騰で最高値 / 来週は NFP・AVGO が FOMC 前最後の山場

短縮週は『Core PCE ディスインフレ → 30Y 5%割れ → DELL/SNOW の AI 決算 → 金曜ソフト一斉急騰』の連鎖。IGV 月間 +21% (2001年以来最高)、S&P 9 週連騰で最高値。ただし Russell 逆行で幅は狭い。来週は NFP・AVGO が FOMC 前最後の山場。

この月のマンスリー戦略ノート

この日を含む 1 ヶ月の総括と来月の主要イベント

MONTHLY · 2026年5月

2026年5月 マンスリー — ソフトウェア『SaaSpocalypse 巻き戻し』で IGV 月間 +21%、S&P 9 週連騰で最高値 / 来月は NFP・CPI・FOMC が利下げ再開の試金石

5月は『AI 設備投資の規模確定 → ディスインフレ → 30Y 5%割れ → ソフト一斉急騰 (IGV +21%)』の連鎖で S&P 9 週連騰・最高値。だが業績記録的・評価過熱・上昇は狭い選別相場。来月は NFP・CPI・FOMC が利下げ再開の試金石。

0. 今朝のヘッドライン

  • 🏆 主役: DELL (Dell Technologies) Q1 FY27 決算が記録的なビート。売上 $43.8B (+88% YoY)、Non-GAAP EPS $4.86 (コンセンサス $2.91 の約 1.7 倍)、AI 最適化サーバ売上 $16.1B (+757% YoY)AI サーバ受注残 (backlog) $51.3B。さらに AI サーバ通期目標を $50B → $60B へ、全社通期売上ガイダンスも $138-142B → $165-169B へ上方修正。US 5/28 (木) 引け後 (AMC) の時間外 (AH) で一時 +31% → 翌 US 5/29 (金) Pre-market で約 +38% へ拡大 (答え合わせは §0.5)
  • 🌊 隠れたテーマ: US 5/28 (木) は Core PCE (Core PCE、個人消費支出物価指数 コア) 通過でグロース/ソフトウェアが全面高SNOW (Snowflake) が決算で +39.46% (上場来最大の上昇率) を記録し AI トレードを再点火、NOW +6.5% / PLTR +8.2% / ARM +10.8% / AMD +4.6% が同期上昇。SPX 7,563 (+0.58%) / NASDAQ Comp 26,917 (+0.91%) が最高値更新
  • ⚠️ 警戒: 株高の正体は「インフレ好感」ではなく金利低下。Core PCE は YoY +3.3% (3年ぶり高水準) と熱いが、MoM が予想を下回り + GDP (国内総生産) Q1 改定が +2.0%→+1.6% に下方修正 → 30Y (30年国債利回り) が 5% 割れ (4.985%) へ低下したことがデュレーションの長い高 PER グロースを直接利した。MoM が再加速すれば同じグロース勢が真っ先に巻き戻す金利感応の相場。加えて SNPS は上振れ決算でも -8.61% で、ガイダンスのモメンタムで勝者と敗者が分かれる選別相場入り
  • 📅 来週の山場: JST 6/4 (木) 05:00 AVGO (Broadcom) 決算 + JST 6/5 (金) 21:30 米雇用統計 (NFP、Non-Farm Payrolls)。来週は FOMC (連邦公開市場委員会、JST 6/16 (火)-6/17 (水)) 前最後のフルデータ週で、US 6/6 (土) からブラックアウト入り

0.5. 本日 (US 5/28 引け後) 決算速報 — DELL 時間外 +31% / COST 反応薄

US 5/28 (木) 引け後 (AMC) の主要 2 決算と、その後の時間外 (AH) → US 5/29 (金) Pre-market までの動向を整理します。

⚠️ 時間外 (AH) は薄商いで、翌営業日の寄り付き後に逆方向へ振れて窓を埋める (gap fade) ことが多い。本節は「引け直後の初動 AH (JST 5/29 07:40 時点)」と「翌寄り前 Pre-market (JST 5/29 20:00 過ぎ時点) の答え合わせ」を分けて記録する。

DELL — AI サーバが市場予想を粉砕、時間外で一時 +31%

項目実績事前コンセンサスYoY
売上$43.8B$34.97B (約 $9B 上振れ)+88%
Non-GAAP EPS$4.86$2.91 (約 1.7 倍)+214%
AI 最適化サーバ売上$16.1B+757%
AI サーバ受注残 (backlog)$51.3B前 Q $43B拡大

引け後の時間外で一時 +31%。さらに決算では FY27 通期売上ガイダンスを従来 $138-142B → $165-169B (中間値で約 +$27B) へ大幅上方修正 しており、これは「受注残 $51.3B が単発でなく通期の売上規模を底上げする」という会社側の自信を示します。決算前終値 $317.05 (+3.84%) から大きく上放れしました。詳細は §3.1 と §2 テーマ 1 で深掘りします。

答え合わせ (US 5/29 (金) Pre-market): AH の +31% は gap fade するどころか Pre-market で約 +38% へ拡大しました。受注残の「中身」も具体化し、AI クラウド事業者 IREN がエヌビディア Blackwell 搭載システムを $1.6B 分 Dell から購入することで合意したと報じられています。受注残 $51.3B が実需の積み上がりであることを補強する材料です。

COST — 堅調だが反応薄、時間外は +0.4% 程度

COST (Costco) の Q3 FY26 は純売上 $69.15B (+11.6% YoY) / 希薄化後 EPS $4.93 (コンセンサス約 $4.91-4.92 を僅かに上回る)。既存店売上 (SSS、ガソリン・為替除く調整後) +6.6%、デジタル既存店売上 (e-commerce) +21.5%、会員収入 (membership fee income) $1.37B (+10.7%)、更新率は米国・カナダ 92.2% と中身は堅調。しかし EPS のビート幅が小幅で、約 50 倍の P/E (株価収益率) を正当化するサプライズに欠け、時間外反応は +0.4% 程度に留まりました。「良いが、足りない」型の反応薄です。詳細は COST Q3 FY26 決算レポート を参照。

時間外の個別 (JST 5/29 (金) 07:40 時点)

銘柄5/28 終値時間外コメント
LLY1,126.80+1.34%ヘルスケア物色継続
TXN315.95+1.00%半導体の強さ継続
META635.29+0.90%Mag7 でしっかり
AMD518.09+0.63%5/28 +4.55% 後も底堅い
CRM176.17+0.45%決算後の底固め
ARM335.27AH 下げ5/28 +10.76% 急騰後の利食い (AH -7% 前後)
UAL115.06-2.71%旅行関連で利食い

市場全体の Pre-market 答え合わせ (US 5/29 (金)、JST 20:00 過ぎ時点)

US 5/29 (金) の Pre-market は、DELL の歴史的なガイダンス上方修正を受けても 指数先物は小幅高に留まる展開。S&P 500 先物 +0.1% / NASDAQ 100 先物 +0.1% / Dow 先物 +81pt (+0.2%) と、前日の Core PCE 通過ラリーの後でいったん息継ぎしています。指数を一段押し上げるには、来週 JST 6/4 (木) の AVGO 決算と 6/5 (金) の米雇用統計 (NFP) という次の触媒待ち、という構図です。

地政学では、US と Iran が JST 5/29 早朝に ホルムズ海峡の再開と 60 日間の核協議開始で暫定合意 (tentative agreement) に達したと報じられました。ただし トランプ大統領は未署名 (数日かけて判断)、かつ イラン側は「海峡は引き続き自国管理下」と反論しており、合意の射程は流動的です。それでも地政学プレミアム後退の観測から 原油は下落 (WTI -1.4% $87.66 / Brent -1.3% $92.47)、金は +0.87% ($4,571.80) と小動きでした。

個別では、ADSK (Autodesk) が 保守管理プラットフォーム MaintainX を $3.6B の全額現金で買収すると発表し、Q1 決算自体は上振れたものの買収負担を嫌気して Pre-market で約 -7%。M&A の現金流出をどう評価するかで、ソフトウェアの選別ムードが続いていることを示しました。

📚 用語: After-Hours / Pre-Market (時間外取引) 米国株のレギュラーセッション (09:30-16:00 ET) の外で行われる取引。引け後 (AMC) の決算発表に対する最初の反応は AH で起きるが、出来高は通常の数 % しかない薄商いで、少額の注文で価格が大きく振れる。DELL の「一時 +31%」のような派手な数字も、翌営業日の厚い板で「適正水準」に引き戻される (gap fade) ことが多い。寄り付き後の値動きで答え合わせするのが鉄則。


1. 昨夜 (US 5/28 木) 引け値レビュー

数字 (簡潔に)

US 5/28 (木) の米国市場は 「ディスインフレ確認 + 決算でグロース/ソフトウェアが全面高」 の日でした。SPX・NASDAQ Comp・NDX がそろって最高値を更新する一方、Dow だけが +0.05% でほぼ横ばい。前日 5/27 (火) の「Dow 単独 ATH」とは真逆のグロース主導の構図です。

指数終値騰落コメント
SPX7,563.63+0.58%最高値更新、グロース主導
NASDAQ Comp26,917.47+0.91%最高値、ソフトウェア / 半導体が牽引
NDX (NASDAQ 100)30,223.89+0.84%3 万台の最高値圏
Dow Jones50,668.97+0.05%ほぼ横ばい、旧経済は置いていかれた
Russell 20002,936.57+0.57%金利低下で小型株も追随
VIX15.74-3.38%リスクオンで IV 圧縮、16 割れ

なぜ 5/28 にこれが起きたか — 3 つのドライバー

① Core PCE 4月 — ヘッドラインは熱いが MoM 下振れ + GDP 下方修正 (3 件同時発表)

JST 5/28 (木) 21:30 の 3 件同時発表 (Triple Drop) は、「見出しは熱いが中身は減速」という二面性でした。

指標実績コンセンサス前月 (3月)
Core PCE YoY+3.3%+3.3% (一致)+3.2%
Core PCE MoM+0.2%+0.30% (下回る)+0.3%
ヘッドライン PCE YoY+3.8%+3.8% (一致)+3.5%
ヘッドライン PCE MoM+0.4%+0.5% (下回る)+0.7%

Core PCE 前年比 +3.3% は 2023 年 10 月以来の高水準、ヘッドライン +3.8% は 2023 年 5 月以来と、年前比 (YoY) では完全にリフレ (再加速) の見た目です。しかし市場が見たのは前月比 (MoM) で、コア +0.2% / ヘッドライン +0.4% と両方が予想を下回りました。同時発表の GDP Q1 改定値は +2.0%→+1.6% に下方修正 (設備投資と個人消費の下方修正が主因)、新規失業保険申請件数 (Initial Jobless Claims) は 21.5 万件 (前週比 +5,000 で 1 ヶ月超ぶり高水準)。「成長鈍化 + 月次インフレ減速」のミックスが、5 月中旬まで一時 50% まで高まっていた年内利上げ観測を巻き戻し、利下げ再織込へ傾斜させました。

📚 概念: 同じ PCE でも「YoY (前年比)」と「MoM (前月比)」で物語が逆になる理由 前年比 (YoY) は過去 12 ヶ月の累積で、基準月 (1 年前) が低ければ機械的に高く出る (ベース効果)。対して前月比 (MoM) は足元 1 ヶ月のインフレの勢いを測る。今回のように YoY +3.8% (リフレ) と MoM +0.4% 下振れ (減速) が同居するとき、Fed と債券市場が重視するのはモメンタムを表す MoM。だから「見出しは 3 年ぶり高インフレ」でも、長期金利は逆に低下し株が上がる、という一見矛盾した反応が起きる。指標は必ず YoY と MoM の両方を見る。

② Snowflake (SNOW) +39.46% が AI トレードを再点火

SNOW (Snowflake) は $175.26 → $238.37 へ +39.46% (上場来最大の上昇率)。Q1 FY27 のプロダクト売上 $1.33B (+34% YoY、前四半期の +30% から加速)、Non-GAAP EPS $0.39 (予想 $0.32)、FY27 プロダクト売上ガイダンスを $5.84B (+31%) に引き上げ、AMZN (AWS) と 5 年 $60 億の戦略提携、AI コーディング エージェント Cortex Code が 7,100 アカウントに到達 — と「成長加速 + ガイダンス引き上げ」を全て満たしました。

この 1 銘柄が AI / データ基盤テーマを再点火し、NOW +6.47% / PLTR +8.17% / ARM +10.76% / AMD +4.55% / CRWD +3.97% / QCOM +4.24% を巻き込みました。ARKK (ARK Innovation) +3.93% / ARKG (ARK Genomics) +6.43% / IGV (Software) +2.83% と、高ベータ / イノベーション系 ETF も全面高です。

③ 決算ギャップアップ組が消費・ヘルスケアにも波及

AI 以外でも、決算を受けた窓開け上昇が消費 / ヘルスケアに広がりました。

銘柄騰落決算の中身
DLTR (Dollar Tree)+17.87%Q1 売上 $4.98B (+7.2%)、調整後 EPS $1.74 (予想 $1.55 を 12.6% 上回り)、既存店 +3.5%、通期 EPS ガイダンスを $6.90 へ引上げ、DoorDash 配送提携
A (Agilent)+16.87%コア売上 +6.3% / EPS +14%、通期ガイダンス上方修正、BofA が Buy へ格上げ
BBY (Best Buy)+15.80%既存店 +2.0% (4 年ぶり高水準)、PC / タブレット +6%、EPS $1.28 (予想 4.3% 上回り)
HRL (Hormel)+12.55%フードサービス堅調

📚 用語: ディスインフレ (Disinflation) と リフレ (Reflation) の違い ディスインフレ = インフレ率が低下していく過程 (物価は上がっているが、上がり方が鈍化)。リフレ = 一度落ち着いたインフレが再加速する局面。デフレ (物価下落) とは別物。今回の Core PCE は YoY で見ると「リフレの見た目」だが、MoM の鈍化は「ディスインフレの継続」を示す。株式市場が好感したのはディスインフレ側のシグナル (= Fed が追加引き締めをしにくい) で、長期金利低下を通じてグロースに追い風が吹いた。

前日の振り返り — 構造変化のサイン

前日の数字に潜む、指数からは見えにくい構造変化を整理します。

  • ソフトウェアの「全面高」は見かけ倒し、内部は明確な選別: SNOW +39% は単独ショーで、同日 SNPS (Synopsys) は上振れ決算にもかかわらず -8.61% (出来高 5 日平均比 2.98 倍)CRM (Salesforce) も通期ガイダンスの弱さで軟調でした。IGV (Software ETF) の +2.83% という見出しは強いが、構成銘柄レベルでは「ガイダンスのモメンタム」で勝者と敗者がはっきり分かれている。AI 物色は「成長加速 + ガイダンス引上げ」を満たす銘柄に集中し、満たさない高 P/E 銘柄は容赦なく売られる選別相場入りのサイン
  • 株高の正体は金利低下であって、インフレ好感ではない: 5/28 の上昇は MoM 鈍化 + GDP 下方修正で長期金利 (30Y 5% 割れ / 10Y 4.45%) が下がったことが主因。つまり今の上昇相場は金利感応度が高く、次の指標 (来週 NFP や 6/11 CPI) で MoM が再加速すれば、同じグロース勢が真っ先に巻き戻すリスクを内包する。「金利が下がったから上がった」相場は「金利が上がれば下がる」

2. 今日のテーマ分析 — 市場が何を語っているか

数字を超えて「何が起きているか」を整理します。

テーマ 1: DELL の AI サーバ受注残 $51.3B — AI インフラ需要が「受注」で実証された

DELL (Dell Technologies) の Q1 FY27 決算は、AI インフラ需要が「期待」ではなく「受注 (orders) と受注残 (backlog)」という硬い数字で見えた決算でした。

部門売上YoY内訳
ISG (インフラ ソリューション)$29.0B+181%AI 最適化サーバ $16.1B (+757%)、従来型サーバ・ネットワーク $8.5B (+92%)、ストレージ $4.3B (+8%)
CSG (クライアント ソリューション)$14.6B+17%法人向け (Commercial) $13.0B (+18%)、個人向け (Consumer) $1.6B (+9%)

決算の核心は AI サーバの受注残 $51.3B (前 Q $43B から拡大) と、当 Q の AI サーバ受注 $24.4B。計上された売上 $16.1B を受注が大きく上回っており、「需要が供給 (出荷能力) を上回っている」状態が続いていることを意味します。これを受けて DELL は AI サーバの通期目標を $50B → $60B へ上方修正しました。

📚 用語: 受注残 (Backlog) がなぜ AI 銘柄で最重要 KPI なのか 受注残 = 受注済みだがまだ売上計上 (出荷) されていない注文の累計。売上は「過去の実績」だが、受注残は「これから確実に計上される未来の売上」を示す先行指標。AI サーバのように需要が出荷能力を超えている局面では、当四半期の売上よりも「受注残がさらに積み上がったか」が株価を動かす。DELL の $51.3B は、エヌビディアの GPU 供給がボトルネックである限り、今後数四半期の売上が約束されていることを示す。

長期投資家として覚えておくべきこと: DELL の決算は JST 6/4 (木) 05:00 の AVGO (Broadcom) 決算への先行指標として読める。DELL の AI サーバには大量の AI チップ (エヌビディア GPU + カスタム ASIC) が積まれており、その需要が backlog で確認できたことは、AI チップ供給側の AVGO / エヌビディアの需要が引き続き旺盛であることの傍証。ただし注意点として、S&P Global 集計の 27 名コンセンサス目標株価は約 $212 (株価 $317+) とアナリストの目標が株価急騰に追いついていない状態で、決算後の AH +31% がそのまま定着するかは寄り付き後の値動きで確認する必要がある。

テーマ 2: Core PCE の二面性 — 金利低下が支える相場の「賞味期限」

これが今日最も読み解きの難しいテーマです。Core PCE が YoY +3.3% (3 年ぶり高水準) という「リフレの見出し」を出したのに株が上がった理由は、§1 ドライバー ① の通り MoM 下振れ + GDP 下方修正による長期金利低下でした。

ここで長期投資家が考えるべきは「この金利低下相場の賞味期限」です。

  1. 金利低下は『良い理由』と『悪い理由』の混在: 今回の金利低下には「インフレ鈍化 (良い)」と「成長鈍化 = GDP +1.6% への下方修正 (悪い)」の両方が含まれる。前者だけならソフトランディングだが、後者が強まれば「景気減速 → 業績下方修正」に転じ、グロースの追い風が逆風に変わる
  2. 株式リスクプレミアム (ERP) は依然として薄い: 5/27 時点で ERP (株式期待リターン − 無リスク金利) は 0.17 と歴史的低水準。金利が下がれば ERP は改善するが、株価も同時に上がっているため net では薄いまま。バリュエーションの安全余裕は乏しい
  3. 来週の MoM 再確認が試金石: 来週 JST 6/5 (金) 21:30 の米雇用統計 (NFP) の平均時給 (AHE) と、6/11 の CPI (消費者物価指数) の MoM が、この「ディスインフレ継続」の前提を検証する

📚 概念: デュレーション (Duration) と高 PER グロースの金利感応度 デュレーションは元々「債券価格の金利感応度」を表す概念だが、株式にも応用できる。利益の大半が遠い将来に偏る高 PER グロース株は、その将来キャッシュフローを現在価値に割り引く金利の影響を受けやすく、「金利が下がると上がり、上がると下がる」性質が強い (= 長いデュレーション)。逆にバリュー株や配当株は足元の利益比率が高く、金利感応度が低い (短いデュレーション)。5/28 にグロースだけが全面高し Dow が出遅れたのは、この金利感応度の差がそのまま出た典型。

テーマ 3: 選別相場入り — 「ビートよりガイダンスのモメンタム」

5/28 の決算反応は、同じ「上振れ (ビート)」でも株価の方向がバラバラでした。

銘柄決算評価株価反応分かれた理由
SNOW上振れ + ガイダンス引上げ + 成長加速+39.46%プロダクト売上が +30%→+34% に加速、ガイダンスも引上げ
DLTR / A / BBY上振れ + ガイダンス引上げ+12〜18%通期ガイダンスの上方修正が伴った
SNPS上振れ (EPS / 売上) だが…-8.61%Design IP 部門が YoY 減 (中国の輸出規制)、Ansys 統合リスク、約 75 倍 P/E の割高評価からの利益確定

前日 5/28 の記事 (本ノート) では SNPS を「クリーンな上振れ + 通期上方修正、AVGO への先行指標」と肯定的に書きましたが、市場の答えは -8.61% でした。これは「良い決算でも売られる」古典パターンで、決算前のバリュエーション (約 75 倍 P/E) と IP セグメントの YoY 鈍化トレンドを見ていれば警戒できた部類。今回の反省は明確で、「EPS / 売上のビート」だけでなく「ガイダンスのモメンタム + 割高さの度合い」を組み合わせて読むべきでした。詳細は SNPS Q2 FY26 決算レポート で深掘りしています。

長期投資家として覚えておくべきこと: 決算シーズン中盤以降は「ビート (実績 vs コンセンサス)」より「ガイダンスの方向 (引上げか据置か) × 現在のバリュエーション」が株価を決める。①ガイダンス引上げ + 割安 = 最強 (SNOW)、②ガイダンス引上げ + 割高 = 上昇するが脆い、③ガイダンス据置 + 割高 = 売られる (SNPS / COST も反応薄)。次の AVGO / CRWD / LULU 決算も、この 2 軸で評価すると反応が読みやすい。


3. 注目銘柄 — 深掘り 3 社

3.1 DELL (Dell Technologies) — AI サーバ受注残 $51.3B、翌寄り前 Pre-market で +38% に拡大

📎 公式情報源: IR ページSEC EDGAR 提出書類Q1 FY27 決算 8-K (5/28)Seeking Alpha 決算

→ 詳細は DELL Q1 FY27 決算レポート で深掘り。要点のみ:

観点詳細
何が起きたかQ1 FY27 で売上 $43.8B (+88%) / Non-GAAP EPS $4.86 (コンセンサス $2.91 の約 1.7 倍) / AI 最適化サーバ $16.1B (+757%) / 受注残 $51.3B、AI 通期目標を $50B→$60B へ + 全社通期売上を $138-142B→$165-169B へ上方修正 → 時間外 (AH) で一時 +31%、翌 US 5/29 (金) Pre-market で約 +38% に拡大
何の会社かサーバ / ストレージ (ISG) と PC (CSG) のグローバル メーカー。AI ブームで ISG の AI サーバが急成長し、「PC 会社」から「AI インフラ銘柄」へ再評価が進行中
強気の論点受注残 $51.3B が「未来の売上」を担保、AI サーバ通期目標 $60B + 全社通期売上 $165-169B (中間値で前回比 約 +$27B) への引き上げ、ISG +181% で利益構成が高付加価値化、Q1 営業キャッシュフロー $4.1B (記録)
逆風リスク(1) AI サーバは粗利率が PC より低く、構成変化で全社利益率が圧迫される懸念、(2) エヌビディア GPU 供給がボトルネック、(3) 60d +98.8% の急騰後で RSI 過熱気味、(4) アナリスト目標株価 (約 $212) が株価に追いついていない
長期で見るべき指標(1) AI サーバ受注残の四半期推移 ($51.3B からさらに積むか)、(2) ISG 営業利益率、(3) AI 通期目標 $60B の達成進捗、(4) CSG (PC) の企業向け更新サイクル
短期で警戒すべきことAH +31% は薄商いの数字で、寄り付き後に窓を埋める (gap fade) 可能性。決算後の初動を追いかけ買いするのは禁物

長期投資家としての見方:

立場見方
未保有AI インフラの本命候補だが、AH +31% の高値掴みは避ける。寄り付き後の値動きが落ち着いてから、押し目 (SMA20 = $280 前後への調整) を待つのが安全
保有中 (含み益)受注残 $51.3B + 通期目標 $60B が下支え。保有継続、利益率の推移だけ四半期ごとに確認

3.2 SNOW (Snowflake) — AI / データ基盤の成長加速、上場来最大の +39%

📎 公式情報源: IR ページSEC EDGARSeeking Alpha 決算次回決算 IR

→ 詳細は SNOW Q1 FY27 決算レポート で深掘り。要点のみ:

観点詳細
何が起きたかQ1 FY27 でプロダクト売上 $1.33B (+34% YoY、前四半期 +30% から加速)、Non-GAAP EPS $0.39 (予想 $0.32)、FY27 ガイダンスを $5.84B (+31%) へ引上げ、AWS と 5 年 $60 億提携、Cortex Code が 7,100 アカウント → +39.46% (上場来最大)
何の会社かクラウド データウェアハウス (データ基盤) の大手。企業のデータを集約・分析する基盤を提供し、近年は AI / 機械学習ワークロード (Cortex) へ事業を拡張
強気の論点(1) プロダクト売上成長が再加速 (+30%→+34%)、(2) AI 機能 (Cortex) が新たな成長ドライバーに、(3) ハイパースケーラー (AWS) との提携で囲い込み、(4) 消費ベース課金で AI 利用増がそのまま売上増に
逆風リスク(1) +39% 急騰後の高値警戒、(2) 消費ベース課金は景気減速時に売上が振れやすい、(3) Databricks など競合との競争
長期で見るべき指標(1) プロダクト売上成長率 (+34% を維持・加速できるか)、(2) 純収益維持率 (NRR)、(3) Cortex (AI) の収益貢献、(4) 営業利益率の改善
短期で警戒すべきこと決算ギャップ後の急騰銘柄は、数日かけて窓を埋めにいくことが多い。+39% 当日の追いかけ買いは避ける

長期投資家としての見方: 「成長加速 + ガイダンス引上げ」を満たした SNOW は §2 テーマ 3 の「①ガイダンス引上げ + (相対的に) 割安」型の代表で、AI / データ基盤テーマの中核。ただし +39% の翌日以降は時間調整が入りやすく、新規買いは急がない。SNOW 単独より、波及先の NOW / PLTR / AMD を含めた「テーマ」として捉えるのが再現性が高い。

3.3 AVGO (Broadcom) — JST 6/4 (木) 05:00 決算、AI チップの最終確認

📎 公式情報源: IR ページSEC EDGARQ2 FY26 決算予告Seeking Alpha

観点詳細
何が起きるかJST 6/4 (木) 05:00 (= US 6/3 (水) AMC) に Q2 FY26 決算発表
コンセンサス売上 約 $22.1-22.9B (+47% YoY) / Non-GAAP EPS 約 $2.40-2.46 (出典により幅あり、要再確認)
株価の現状5/28 終値 $426.58 (+1.12%)、60d +35.9% / RSI 57 で過熱感は限定的、52w 高値 -3.57%
市場の中心論点AI 半導体売上ガイダンス $10.7B (前年比 +140%) の達成度。前四半期 $8.4B からの加速 (~+30%) が焦点。Hock Tan CEO は「2027 年に AI チップ売上 $100B のライン オブ サイト」と発言済み
強気の論点AI 売上の前期比加速、カスタム ASIC (Google TPU 等) 顧客の多角化、$73B 受注残。DELL の AI サーバ受注残 $51.3B が需要側の傍証
逆風リスクGoogle TPU 依存度 (ASIC 売上の約 78%)、非 AI 半導体の在庫調整

長期投資家としての見方: 決算前のロング新規は禁止AVGO はエヌビディアと並ぶ AI 相場の方向性決定銘柄で、来週最大の個別イベント。DELL (受注残 $51.3B) と SNPS (EDA で先行) の決算が出そろった後だけに、AI チップ需要の最終確認になる。RSI 57 で過熱感は限定的だが、決算ギャップの方向は読めない。決算後の値動きを見てからの判断が安全。


4. 今週の残り (US 5/29 金) — 経済指標なし、月末リバランスと Core PCE の余韻

今週は実質終了です。US 5/29 (金) は重要な経済指標の発表がなく、月末 (5 月末) のリバランス需要 + JST 5/28 (木) Core PCE の余韻取引 + DELL 決算後の AI インフラ クラスター (HPE / SMCI / ANET / VRT) の反応 + 米・イラン暫定合意を受けた原油・エネルギーの値動きが主役になります。

JST 日付 / 時刻イベント重要度解釈 / 公式情報源
US 5/29 (金) 終日月末リバランス + Core PCE 余韻★★月末のパッシブ ファンドのリバランスでクローズにかけて出来高増。指標発表はなし
US 5/29 (金)DELL 決算後の AI インフラ クラスター反応★★★DELL 受注残 $51.3B を受けて HPE / SMCI / ANET / VRT が連れ高するか → DELL IR
US 5/29 (金) 早朝〜米・イラン暫定合意 → 原油下落★★ホルムズ海峡再開報道で WTI -1.4% ($87.66)。エネルギー株の重し / 航空・消費の追い風。ただしトランプ未署名・イラン反論で流動的 (→ §0.5)

来週 (6/1-6/5) が本番です。詳細は §6 を参照してください。


5. 法案ウォッチ — 議会で議論されている市場関連 7 法案

一覧表

法案ステータス (6/1 週時点)次の山場影響セクター・銘柄株価向き
NDAA FY2027 (HASC マーク)条文公表済、トップライン $1.14T。Patriot PAC-3 / THAAD / AMRAAM / Tomahawk / SM に多年度調達権限を付与JST 6/4 (木) 23:00 HASC フルマークアップLMT / RTX / NOC / GD / HII / LHX🟢
Basel III エンドゲーム再提案3/19 に 3 機関が再提案、資本は「小幅減 (modestly decrease)」見通しで業界寄りに転換6/18 パブコメ締切 → Q3 で最終ルールJPM / GS / MS / BAC / C / WFC🟢 (大手銀)
GENIUS Act 実装 (ステーブルコイン)OCC 案 (5/1 締切済)・FDIC 案・FinCEN/OFAC 案が出揃う、7/18 法定期限へ圧縮スケジュール6/9 (火) FDIC ルール パブコメ締切COIN / V / MA / CRCL / PYPL🟡→🟢
CLARITY Act (暗号資産マーケット構造)5/14 上院銀行委 15-9 で可決、利益相反条項が未解決上院農業委版との統合 → 本会議 (6 月中、利益相反条項合意次第)COIN / MSTR / HOOD / CRCL🟢
CHIPS ITC 拡充 (48D / BASIC Act)OBBBA で 48D を 25%→35% に拡充済、ただし着工期限は 2026/12/31 のまま。BASIC Act が 2030 まで延長を提案着工期限 2026/12/31 が事実上のデッドラインTSM / INTC / MU / AMAT / LRCX / KLAC🟢
NEIDA (Lee/McCormick 原子力)4/14 introduce、上院 ENR 委付託。DOE のテスト炉・燃料サイクル認可権限を新設上院 ENR 委の公聴会・マークアップ日程は未設定 (6 月以降)CEG / VST / SMR / OKLO / BWXT / LEU🟢
AI 連邦プリエンプション立法版は不発 (OBBBA で削除、NDAA からも除外)、大統領令ルートへ移行。36 州 AG が反対行政府が「統一連邦枠組み」立法勧告を準備中、時期は不透明MSFT / GOOGL / META / NVDA / PLTR🟡

今週ピックすべき 3 法案

(1) NDAA FY2027 — JST 6/4 (木) HASC マークアップ ★最優先

今週唯一「日付が確定した議会アクション」。$1.14T トップラインは予算要求どおりで増額サプライズはないものの、Patriot PAC-3 / THAAD / Tomahawk / SM 各種への多年度調達権限が焦点。マークアップで munitions (弾薬・ミサイル) 関連の授権 (authorization) 額が出れば、迎撃ミサイル系の RTX / LMT / LHX に個別反応が出やすい。

(2) Basel III エンドゲーム — 6/18 パブコメ締切に向けたロビー佳境

2023 年の旧提案 (大幅増資) から「資本小幅減」へ 180 度転換した点が重要。締切前 2 週間は業界コメント・報道が集中し、大手銀の自社株買い余力・配当余地のセンチメントに効く。G-SIB (世界システム上重要金融機関) サーチャージの見直しも含み、JPM / GS / MS にポジティブ。

(3) GENIUS Act 実装 — 6/9 FDIC ルール締切 + 7/18 法定期限カウントダウン

ステーブルコイン規制の実装が最終局面。6/9 の FDIC コメント締切を皮切りに、7/18 までに 3 機関の協調最終ルールが出る圧縮スケジュール。決済インフラ (V / MA) とステーブルコイン発行体 (COIN / CRCL) の両方に直結。CLARITY Act と合わせて暗号資産の「規制明確化テーマ」が 6 月に一段と強まる。

📚 用語: 多年度調達 (Multiyear Procurement) 通常は単年度ごとに予算承認される調達を、複数年 (典型は 5 年) 分まとめて契約する権限。メーカーは長期の生産計画・サプライチェーン投資ができ、政府は割引価格を得られる。FY2027 NDAA が PAC-3 / THAAD 等の迎撃ミサイルに付与すると、RTX / LMT の受注可視性が中期で改善する。


6. 来週への布石 (6/1-6/5) — NFP / AVGO 週、FOMC 前最後のフルデータ週

JST 6/1 (月) からの週は 「FOMC (JST 6/16 (火)-6/17 (水)) ブラックアウト前最後のフルデータ週」 + AVGO 決算で AI チップ需要の最終確認」 + 「JST 6/5 (金) 米雇用統計 (NFP) で雇用減速の境目」 が同時に来る、6 月で最も重要な 1 週間です。

JST 日付 / 時刻イベント重要度解釈
JST 6/1 (月) 23:00ISM 製造業 PMI (供給管理協会 製造業指数) 5月★★★前回 52.7。50 維持なら拡大継続、割れでリスクオフ
JST 6/2 (火) 23:00JOLTS (求人労働異動調査) 求人数 4月★★★労働需給の先行指標。求人急減は NFP 弱含みの前兆
JST 6/3 (水) 21:15ADP 雇用統計 (民間部門) 5月★★★前回 +10.9 万。NFP の前哨戦
JST 6/3 (水) 23:00ISM サービス業 PMI 5月★★★★前回 54.0。米 GDP の約 7 割を占める。価格指数 (Prices Paid) が粘着インフレの鍵
JST 6/4 (木) 05:00AVGO Q2 FY26 決算 (US 6/3 (水) AMC)★★★★★来週最大の個別イベント。AI 半導体ガイダンス $10.7B (+140%) の達成度 → IR
JST 6/4 (木) 05:00CRWD Q1 FY27 決算 (US 6/3 (水) AMC)★★★★ARR 成長率、純新規 ARR、障害後のリテンション検証 → IR
JST 6/4 (木) 20:15ECB 理事会 + 記者会見★★★★見方が利下げ→利上げに転換。預金金利 2.00%、中東エネルギー高で HICP 3% へ。タカ派サプライズはユーロ高要因 (要再確認)
JST 6/4 (木) 23:00HASC NDAA FY2027 フルマークアップ★★★$1.14T 国防授権法、防衛・宇宙・造船の物色材料
JST 6/5 (金) 05:00LULU Q1 決算 (US 6/4 (木) AMC)★★★北米既存店 (SSS)、中国成長、関税影響のガイダンス
JST 6/5 (金) 21:30🚨 米雇用統計 (NFP) / 失業率 / 平均時給 (AHE) 5月★★★★★来週最大の山場。前回 +11.5 万 / 失業率 4.3% → BLS

Core PCE 後の NFP — なぜ来週が「FOMC の全インプット」になるか

📚 概念: なぜ来週が「FOMC 前最後のフルデータ週」として異例の重みを持つか US 6/6 (土) から FOMC (JST 6/16 (火)-6/17 (水)) に向けたブラックアウト期間に入り、Fed 理事 / 連邦銀総裁 / スタッフは金融政策に関する公の発言を禁じられる。つまり来週の ISM サービス (6/3) + NFP (6/5) が、6 月 FOMC の SEP (経済見通し) / ドットプロット改定に織り込まれる最後の主要指標。これ以降 FOMC までに出るのは 6/11 の CPI 等の物価系のみ。

戦略的含意: NFP が大きく振れると、その方向のポジションが FOMC まで修正されにくい (新情報・発言が乏しい)。NFP のサプライズはボラティリティ (VIX) を週またぎで残しやすく、今回は特に「ディスインフレ継続」を前提に上がったグロース相場の試金石になる。

解説: JST 6/5 (金) 21:30 米雇用統計 (NFP) のシナリオ

シナリオNFP 結果想定反応グロースへの含意
上振れ+15 万超 / 失業率低下利下げ期待後退 → 金利上昇・ドル高、USD/JPY 160 突破リスク金利感応のグロースに逆風 (ただし景気堅調で株は底堅い両面)
コンセンサス並み+10 万前後ソフトランディング継続、レンジ内ローテーション中立
下振れ+5 万未満 / 失業率 4.4%+利下げ前倒し観測 → 金利低下・ドル安、ただし景気減速懸念でリスクオフも金利低下は追い風だが「悪い理由の金利低下」なら逆風に転じる

June 季節性 — 知っておくべき過去パターン

📚 過去パターン: 過去 20 年の SPX 6 月平均リターンは弱含み (Yale Hirsh "Stock Trader's Almanac" の「Sell in May」5-10 月パターンに含まれる)。過去 10 年 (AI 相場時代) は逆に強含みに転換。典型パターン:

  • 6 月前半上昇 (リバランス需要 + Russell リコンスティチューション JST 6/27 (土) への思惑)
  • JST 6/16 (火)-6/17 (水) FOMC でピーク (SEP / ドットプロット改定)
  • 月末調整 (利確売り)

2026 年特有のオーバーレイ: ① グロース全面高で最高値更新直後、② 株式リスクプレミアム (ERP) が 0.17 と薄い、③ 金利低下に依存した上昇で MoM 再加速リスクを内包。→ 典型パターンの確度は 55-60% 程度、NFP / AVGO 次第で前倒し可能性あり。


7. 今日の学び — 長期投資家として覚えておくべきこと

毎日 1 本のノートで、3-5 つの覚えるべき概念 + 1 つのパターンを蓄積していきます。

用語 / 概念 (今日新しく覚える)

  1. 受注残 (Backlog) — 受注済みだがまだ売上計上されていない注文の累計。売上が「過去」なら受注残は「未来の売上」。AI サーバのように需要が出荷能力を超える局面では、当四半期の売上より「受注残がさらに積んだか」が株価を動かす。DELL の $51.3B が好例
  2. YoY (前年比) と MoM (前月比) の物語の違い — YoY はベース効果で過去 12 ヶ月の累積を映し、MoM は足元 1 ヶ月の勢いを映す。Fed と債券が重視するのは MoM。今回の Core PCE は「YoY +3.8% (リフレの見出し) ↔ MoM 下振れ (ディスインフレの中身)」で物語が逆転した
  3. ディスインフレ vs リフレ — ディスインフレ = インフレ率の低下 (上がり方の鈍化)、リフレ = 落ち着いたインフレの再加速。デフレ (物価下落) とは別物。5/28 の株高はディスインフレ側のシグナル (Fed が引き締めにくい) を好感した
  4. デュレーション (株式版) — 利益が遠い将来に偏る高 PER グロースは金利感応度が高い (長いデュレーション)。「金利が下がると上がり、上がると下がる」。5/28 にグロースだけ全面高で Dow が出遅れたのはこの差
  5. ガイダンスのモメンタム — 決算シーズン中盤以降は「ビート (実績 vs 予想)」より「ガイダンスの方向 × 現在のバリュエーション」が株価を決める

パターン / 経験則

  • 「上振れ決算でも割高 + ガイダンス据置なら売られる」パターン (SNPS 型)SNPS は EPS / 売上を上振れたが約 75 倍 P/E + IP 部門の YoY 鈍化で -8.61%。逆に SNOW は「成長加速 + ガイダンス引上げ」で +39%。ビートの有無ではなく「①ガイダンスが引き上がったか ②現在のバリュエーションが割高か」の 2 軸で反応が決まる。前日にこのノートで SNPS を「クリーンな上振れ」と肯定的に評価したが市場の答えは逆で、割高さと IP 鈍化を軽視した反省点
  • 「金利低下に支えられた株高は金利感応度が高い」パターン — 「金利が下がったから上がった」相場は「金利が上がれば下がる」。5/28 のグロース全面高は MoM 鈍化 + GDP 下方修正による金利低下が主因で、来週 NFP / 6/11 CPI で MoM が再加速すれば真っ先に巻き戻すリスクを内包する。上昇の理由が金利低下のときは、次の金利イベントをヘッジ時計として持つ

監視指標の閾値表 (今日の段階)

指標現在値警戒水域含意
VIX15.74> 20 で警戒、> 25 で守備余裕 (16 割れ)
10Y Yield4.455%> 4.80% で株売り加速余裕 (低下中)
30Y Yield4.985%> 5.25% で構造的逆風強化5% 割れで一服、ただし高水準圏
Core PCE (MoM)+0.2%> +0.4% で利下げ織込後退来週 NFP の AHE で再確認
USD/JPY159.26> 160 で介入リスク注意 (NFP 上振れで突破リスク)
HYG/LQD0.7343 (5d -0.74%)3 日連続下落で防衛一服 (5/28 は HYG +0.12%)
CNN F&G 内部差98 − 22 = 76差が大きいほど上昇が脆い二極化継続 (モメンタム 98 ↔ ジャンク債 22)

8. 主要シグナル サマリ (継続観察)

カテゴリ状態数値解釈
マクロ局面🟢 リスクオン3M10Y +86.5bp、MOVE 69.7、Copper/Gold 5d +2.16%リセッション警戒水域から離れた
クレジット⚪ 一服HYG/LQD 5d -0.74% も 5/28 は HYG +0.12%内部の IG 優位は続くが下げ止まり
ブレッドス🟢 良好9/11 セクター SMA50 超、10/11 SMA200 超、高/低ベータ 5d +8.38%大型集中解消の継続
市場心理 (CNN F&G)🟡 強欲だが二極化総合 60 (1週前 58 → 60) / モメンタム 98・PCR 96・安全資産 81 ↔ 株価の幅 33・強さ 41・ジャンク債 22指数主導の強欲、内部の幅は恐怖 = 上昇の質は脆い
機関フロー (5/28 引け後)🟡 Mag7 集中AMZN +176M / TSLA +175M / NVDA +114M / AMD +101M / PLTR +97M ↔ AAPL -210M / MU -167M / CRM -41Mグロース・Mag7 へ資金集中、半導体メモリは分配
オプション PCR🔴 楽観極限 (再燃)AMD 0.03 / SMCI 0.08 / PLTR 0.09 / AAPL 0.17 / META 0.26 ↔ CRM 1.36 (ヘッジ需要)グロース反発で上値追い極限、短期反転リスク
EPS リビジョン🟢 強気GOOGL FY0 +22.5%、AMZN FY0 +11.7%、META FY0 +11.0%、AMD FY1 +17.6%アナリストの確信は Mag7 + 半導体
インサイダー⚪ 静かクラスター買い: 監視銘柄内ゼロ (DBD, FRPT, AMAN のみ)ボトムアップ サイン無し
SP500 スクリーナー🟢 半導体の強さ + 工業過売りHPE RSI 77 (上放れ) / QCOM 60d +76% / TXNNXPILRCXKLAC (強さ) ↔ ALB RSI 32・AME RSI 35 (過売り反発)モメンタムは半導体、逆張りは素材・工業

9. リスク管理 — 個人投資家向け原則

操作タイミングではなく、今の相場局面での「やってはいけないこと」の整理。

  • DELL / SNOW の決算ギャップを追いかけ買いしないDELL 時間外 +31% / SNOW +39% は薄商いの数字で、寄り付き後に窓を埋める (gap fade) 可能性。決算後の初動を高値掴みするのは最も負けやすいパターン
  • 「金利低下に支えられたグロース」のレバレッジを増やさない — 5/28 の上昇は金利低下が主因。来週 JST 6/5 (金) 21:30 NFP / 6/11 CPI で MoM が再加速すれば真っ先に巻き戻す。金利イベントをヘッジ時計として持つ
  • PCR 楽観極限 (AMD 0.03 / SMCI 0.08 / PLTR 0.09) の銘柄に新規ロングを乗せない — グロース反発で上値追いが極限。5/26→5/27 の半導体失速のように、楽観極限は短期反転の前兆になりやすい
  • AVGO 決算 (JST 6/4 (木) 05:00) 前のロング新規禁止 — AI 相場の方向性決定銘柄で、決算ギャップの方向は読めない。DELL / SNPS が出そろった後だけにサプライズの振れ幅が大きい
  • 「上振れ決算 = 買い」と短絡しないSNPS は上振れでも -8.61%。ガイダンスのモメンタムと割高さの 2 軸で評価し、ビートの一語で飛びつかない

10. データソース・引用

引用 URL

法案ウォッチ 引用 URL

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免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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本記事と同期間に発表された決算で、相場文脈に影響したもの。

DELL · Q1 FY27

DELL Q1 FY27 — 売上 $43.8B (+88%) / AI サーバ $16.1B (+757%) の桁違いビート、AI 受注残 $51.3B で時間外 +31%。ただし粗利率 18.1% への低下が映す「規模 vs 利益率」

売上 $43.8B (+88%)・EPS $4.86 で大幅ビート、FY27 を売上 $165-169B / AI サーバ約 $60B へ上方修正し時間外 +31%。受注残 $51.3B で売上可視性は極めて高いが、AI ミックスで粗利率 18.1% に低下し『規模は出るが薄利』が次の論点。

COST · Q3 FY26

COST Q3 FY26 — 純売上 +11.6% / EPS +15% / 既存店 +9.8% の堅調決算も、約 50 倍 P/E に「サプライズ不足」で時間外 +0.4% の反応薄

純売上 +11.6%・EPS +15%・既存店 +9.8% の堅調決算もコンセンサス僅か上回りにとどまり、約 50 倍 P/E に対しサプライズ不足で時間外 +0.4% の反応薄。会員モデル (更新率 92.2%) はむしろ過去最強。

SNPS · Q2 FY26

SNPS Q2 FY26 — EPS +25% 上振れ・通期ガイダンス引上げでも翌日 -8.6%、Design IP の前年比マイナスと約 75 倍 P/E が嫌気された「良い決算で売られる」典型

EPS +25% 上振れ・通期ガイダンス引上げでも翌 5/28 に -8.6%。Design IP の前年比 -5.8%・中国 Entity List 逆風・約 75 倍 P/E の織り込み済み期待が嫌気された「良い決算で売られる」典型例。

SNOW · Q1 FY27

SNOW Q1 FY27 — プロダクト売上 +34% に再加速、AWS 5年 $60億提携、Cortex Code が業績を押し上げ株価 +39%(上場来最大)

プロダクト売上 +34% に再加速、Non-GAAP EPS $0.39 でビート、通期ガイダンス引上げと AWS 5年 $60億提携で株価 +39% (上場来最大)。AI (Cortex Code) が今期の数字を動かし始めた点が画期的。

免責: 本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。 最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。