Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

WEEKLY · 2026 / W23

2026 第23週 (6/1-6/5) 作戦プラン — FOMC 前『最後のフルデータ週』、JST 6/4 AVGO + 6/5 NFP の二輪が 9 週連騰・割高相場を試す

今週 US 6/1-6/5 は FOMC (JST 6/16-17) 前の『最後のフルデータ週』。JST 6/6 (土) からブラックアウト入りで Fed 発言が途絶えるため、6/5 (金) 米雇用統計 (NFP、予想 +100K 前後・失業率 4.3%) が利下げ織込 (6月据え置き ~97%) を一手に担う。個別では JST 6/4 (木) 早朝 AVGO (Broadcom、AI 半導体ガイド ~$10.7B) が AI トレード全体の温度計。背景は S&P 9 週連騰・最高値、ソフト月間 +21% の過熱直後、フォワード P/E 21.2 (5/10年平均超) の割高 + Russell 逆行の狭いリーダーシップ。指標一本・決算一本のサプライズが指数を振らせやすい週。

執筆: Daily Stock Strategy 編集部21 分で読了中立

FOMC 前『最後のフルデータ週』。JST 6/4 AVGO で AI、6/5 NFP で金利。9 週連騰・P/E 21.2 の割高 + Russell 逆行の狭い地合いを、二輪のサプライズが試す。

今週のプラン

今週 (US 6/1-6/5) は『マクロで金利、AVGO で AI、二輪が同週に集中する FOMC 前最後のフルデータ週』。JST 6/6 (土) から FOMC (6/16-17) のブラックアウトに入るため、6/5 (金) 21:30 の米雇用統計 (NFP、予想 +100K 前後・失業率 4.3% 横ばい) が、Fed が会合前に見る最後の雇用データとして利下げ織込 (CME 6月据え置き ~97%) の再評価を一手に担う。週内は ISM 製造業 (JST 6/1)・JOLTS (6/2)・ADP (6/3)・ISM 非製造業 (6/3) と労働マクロが密集。個別では JST 6/4 (木) 早朝の AVGO (Broadcom、AI 半導体売上ガイド ~$10.7B・前年比 +約140%) が AI トレード全体の方向を決め、同時刻の CRWD、JST 6/3 早朝の PANW がソフト一斉急騰 (先週 IGV 月間 +21%) の『答え合わせ』になる。背景は S&P 500 が 9 週連続上昇で最高値、フォワード P/E 21.2 (5年平均 19.9・10年平均 18.9 超) の割高圏、かつ先週金曜 Russell 2000 が逆行した狭いリーダーシップ。決算バックドロップは Q1 FY26 が EPS +27.7%・売上 +11.4% の二桁ダブル成長 (裾野も広い) だが、ミスへの市場の罰は 5年平均の約1.6倍と過剰 = 完璧を要求する相場。指標・決算のサプライズが指数を振らせやすい『重みの増した週』。

週初マーケット スナップショット

SPX+1.43%

S&P 500 (5/29 引け)

7,580.06

+106.59

IXIC+2.39%

NASDAQ Comp (5/29 引け)

26,972.62

+628.65

NDX+2.89%

NASDAQ 100 (5/29 引け)

30,333.18

+851.54

RUT+1.75%

Russell 2000 (5/29 引け)

2,919.34

+50.11

VIX9.94%

VIX (5/29 引け)

15.32

-1.69

US10Y+0.00%

10Y Yield (5/29)

4.45

+0.00

USDJPY+0.00%

USD/JPY (週初 JST)

159.26

+0.00

SPX
+1.43%
IXIC
+2.39%
NDX
+2.89%
RUT
+1.75%
VIX
-9.94%
US10Y
+0.00%
USDJPY
+0.00%
主要指数の週次騰落 (%)。中央が 0、緑=上昇・赤=下落で、バー長は変化率の大きさに比例。

主要シグナル

空売り比率 / AD ライン / Put/Call / VIX / 機関フロー など (週次)

今週の位置づけ

FOMC 前『最後のフルデータ週』

JST 6/6 (土) からブラックアウト入り。6/5 NFP が会合前最後の雇用データ = 指標一本の重みが平時より大きい

今週最大の山場

JST 6/5 (金) 21:30 NFP

5月雇用統計。予想 +100K 前後 (機関により ~130K)、失業率 4.3% 横ばい。利下げ織込 (CME 6月据え置き ~97%) を左右

最大の個別イベント

JST 6/4 (木) 早朝 AVGO

Broadcom Q2 FY26。AI 半導体売上ガイド ~$10.7B (前年比 +約140%)、売上 ~$22.1B。AI トレード全体の温度計

継続テーマ

ソフト一斉急騰の『答え合わせ』

先週 IGV 月間 +21% (2001年以来最高)。今週 PANW (JST 6/3) / CRWD (6/4) の実数字でローテの正当性を検証

地合いの出発点

S&P 9 週連騰・最高値

SPX 7,580 で record close。VIX 15.32 は 1/23 以来の低水準・強欲ゾーン

警戒シグナル

割高 + 狭いリーダーシップ

FactSet フォワード P/E 21.2 (5年 19.9 / 10年 18.9 超)、先週金曜 Russell -0.59% 逆行、SPY-RSP 30d +2.11% の大型集中

決算バックドロップ

Q1 二桁ダブル成長・裾野広い

FactSet: EPS +27.7% / 売上 +11.4%、Mag 7 +63% + 他493社 +17%。ただしミスへの罰は 5年平均の約1.6倍

USD/JPY 警戒

159.26

160 が財務省の介入警戒線。6/5 NFP 上振れで突破リスク

決算シーズンの現在地

FactSet Earnings Insight

Q1 2026 · FactSet FactSet 5/29 時点 (97%報告。スコアカード中核は 5/8 89%報告版) 時点

拡大

Q1 は EPS +27.7%・売上 +11.4% の二桁ダブル成長。Mag 7 (+63%) が牽引も他 493 社 (+17%) も 2021 以来最高で拡大の裾野が広い。ただしミスへの罰は 5年平均の約1.6倍。

ブレンド EPS 成長率

+27.7%

3月末 +13.1% から倍増 (大幅上方)

ブレンド売上成長率

+11.4%

2022 Q2 以来の最高

EPS ビート率

85%

5年平均 78% / 10年平均 76%

ミスの市場反応

−4.6%

5年平均 −2.9% の約1.6倍 (過剰な罰)

フォワード 12M P/E

21.2

5年 19.9 / 10年 18.9 (割高圏)

通年 2026 予想 EPS 成長率

+21.0%

Q2 +19.9% → 二桁拡大継続見通し

ビート銘柄の反応

ポジティブサプライズ銘柄 +1.3% (発表前後2日窓、5年平均 +1.0% とほぼ同水準 — 好材料は報われていない)

ミス銘柄の反応

ネガティブサプライズ銘柄 −4.6% (発表前後2日窓、5年平均 −2.9% の約1.6倍 — ミスは過剰に罰される)

  • Mag 7 は EPS +63.2% (2021 Q2 以来最高)、その他 493 社も +17.4% (2021 Q4 以来最高) — 拡大の裾野が広い
  • EPS サプライズ幅 +18.2% は 5年平均 +7.3% の 2.5 倍超。売上ビート率 80% も 5年平均 70% を大きく上回る
  • Q2 2026 のボトムアップ EPS 推定は 3/31 以来 +2.5% 上方修正 (四半期前半としては 2021 Q3 以来最大の引き上げ)

出典: FactSet Earnings Insight

今週の主要イベント

経済指標・決算・金融政策・政治イベントを重要度順に。時刻は JST 表記。

★★★ 重要度 (5)
JST 6/1 (月) 23:00経済指標

ISM 製造業 PMI (ISM Manufacturing PMI、5月)

予想 53.0 前後 (前回 4月 52.7)。S&P Global 速報は 55.3 と既に強含み。50 超の拡大持続なら景気底堅さ → 利下げ後ずれ材料。同時刻に建設支出 (Construction Spending)

JST 6/3 (水) 23:00経済指標

ISM 非製造業 PMI (ISM Services PMI、5月)

予想 53.0 前後 (前回 53.6)。米経済の約 7 割を占めるサービス業の体温計。価格指数 (Prices Paid) が関税起因のインフレ再燃を測る注目サブ指標

JST 6/4 (木) 早朝決算

AVGO (Broadcom) Q2 FY26 決算 ★今週最大 (US 6/3 (水) AMC)

EPS 予想 ~$2.40、売上 ~$22.1B (前年比 +47%)、AI 半導体売上ガイド ~$10.7B (前年比 +約140%)。次四半期 AI 受注 (XPU / カスタム ASIC) ガイドが AI トレード全体の方向を決める

JST 6/5 (金) 21:30経済指標

米雇用統計 (NFP、5月) ★FOMC 前最後の雇用データ

予想 +100K 前後 (機関により ~130K)、失業率 4.3% 横ばい予想、平均時給 (AHE) +0.2% MoM。上振れ → 利下げ後ずれ・金利上昇、下振れ → 成長懸念だが利下げ前倒し期待。今週の最重要

JST 6/6 (土) 〜金融政策

Fed ブラックアウト入り (FOMC 6/16-17 前)

今週 (〜6/5) はブラックアウト直前の Fed 高官発言ウィーク = 利下げ温度に関する最後の口先材料が出る窓。週明け以降は発言が途絶え、データ (特に NFP) が独り歩きする

★★ 重要度 (5)
JST 6/2 (火) 23:00経済指標

JOLTS 求人件数 (JOLTS Job Openings、4月)

予想 6.80M 前後。求人 / 失業者比率が労働需給の緩みを測る。NFP の前哨戦

JST 6/3 (水) 早朝決算

PANW (Palo Alto Networks) Q3 FY26 決算 (US 6/2 (月) AMC)

NGS ARR / プラットフォーム化契約数。先週ローテで +9.3% 上げたサイバー需要の答え合わせ。同日 GTLB も

JST 6/3 (水) 21:15経済指標

ADP 雇用 (ADP Employment、5月)

前回 4月 +109K。NFP の方向性プレビュー。ブレ大きく単独では振らせにくいが、弱含み継続なら金曜 NFP 警戒を強める

JST 6/4 (木) 早朝決算

CRWD (CrowdStrike) Q1 FY27 決算 (US 6/3 (水) AMC)

EPS 予想 ~$1.07 (前年比 +46.6%)、売上 ~$1.36B (+23.5%)。ARR・純新規 ARR と Falcon Flex 採用が核。期待高く反応はガイド次第

JST 6/4 (木) 21:30経済指標

新規失業保険申請件数 (Initial Jobless Claims、週次) + 貿易収支 (4月)

NFP 前日の高頻度労働指標。継続受給 (Continuing Claims) の上昇基調が続くか、解雇の鈍化が確認できるかが翌日 NFP の前哨

重要度 (1)
JST 6/5 (金) 早朝決算

LULU (Lululemon) / DOCU (DocuSign) 決算 (US 6/4 (木) AMC)

LULU は EPS 予想 ~$1.67 (前年比 -35.8% の減益見込み)、売上 ~$2.4B。北米軟調と関税逆風が検証点。消費の体温計

0. 今週のヘッドライン

  • 🎯 今週の位置づけ: FOMC (JST 6/16 (火)-6/17 (水)) 前の「最後のフルデータ週」。JST 6/6 (土) から Fed のブラックアウト期間に入り、政策に関する高官発言が途絶える。つまり今週 US 6/1-6/5 に出る指標 — とりわけ JST 6/5 (金) 21:30 の米雇用統計 (NFP) — が、6 月会合の利下げ織込 (CME FedWatch では据え置き ~97%) を最終決定する
  • 🤖 最大の個別イベント: JST 6/4 (木) 早朝の AVGO (Broadcom) Q2 FY26 決算。AI 半導体売上ガイド ~$10.7B (前年比 +約140%) が、先週ソフトに飛び火した AI 楽観の「ハード側の裏付け」になるか。同時刻の CRWD、JST 6/3 (水) 早朝の PANW が、先週のソフト一斉急騰 (IGV 月間 +21%) の答え合わせ
  • ⚠️ 警戒: 出発点が過熱 + 割高 + 狭い。S&P 500 は 9 週連続上昇で最高値、FactSet のフォワード P/E は 21.2 (5年平均 19.9・10年平均 18.9 をいずれも上回る割高圏)、先週金曜は RUT (Russell 2000) が逆行し上昇の幅は狭い。決算バックドロップは強い (Q1 EPS +27.7%) が、市場はミスを 5年平均の約1.6倍も罰しており「完璧」を要求している
  • 📅 今週のスケジュール: JST 6/1 (月) ISM 製造業 → 6/2 (火) JOLTS → 6/3 (水) ADP + ISM 非製造業 + PANW6/4 (木) AVGO / CRWD6/5 (金) NFP → 6/6 (土) ブラックアウト入り

1. 先週 (W22) の到達点 — 今週はどこから始まるか

先週 (US 5/26-5/29、Memorial Day 短縮週) の詳細は W22 ウィークリー5/30 デイリー に譲り、ここでは「今週の出発点となる 3 つの状態」だけを押さえます。

出発点の数字 (先週末 US 5/29 引け)

指数週末終値W22 週次騰落今週の含意
SPX7,580.06+1.43%9 週連騰・最高値。続伸の「10 週目」に入れるかが今週のテーマ
NASDAQ Comp26,972.62+2.39%ソフト主導で先行。AVGO で AI ハードが追随するか
Russell 20002,919.34+1.75% (週) / 金曜 -0.59%週間では上げたが金曜に逆行。狭いリーダーシップの修正が今週の論点
VIX15.32-9.94% (週)1/23 以来の低水準・強欲ゾーン。低ボラからの NFP は振れ幅が出やすい

今週の前提となる 3 つの状態

① 過熱: 9 週連騰の「10 週目」

S&P 500 は先週末まで 9 週連続で上昇し、record close (最高値引け) を更新しました。10 週連続上昇は歴史的にも稀で、続伸するほど「いつ息継ぎが入るか」の警戒が積み上がります。今週は NFP・AVGO という明確な触媒があるため、この 2 つが上方サプライズなら 10 週目、失望なら最初の調整の起点になりやすい局面です。

② 割高: フォワード P/E 21.2

詳細は §2.5 に譲りますが、決算は強い一方でバリュエーションは 5年・10年平均を 1 割以上上回る水準まで切り上がっています。「業績は良いが株価がそれを織り込み済み」の状態では、good news が出尽くしと受け取られやすく、わずかな失望が大きく売られます。

③ 狭い: 先週金曜の Russell 逆行

先週金曜、指数が最高値を更新する裏で Russell 2000 は -0.59% と逆行し、ディフェンシブ (COST -3.9%) も売られました。資金は IGV (ソフトウェア) と一部メガキャップに極端集中し、SPY の 30 日リターン +6.31% に対し RSP (S&P 均等加重) は +4.20%、スプレッド +2.11% の大型集中が続いています。今週、物色が小型・出遅れに拡散すれば健全な続伸、ソフト一極集中が続けば脆さが増す——この分岐を毎日チェックします。

📚 用語: ブレッドス (市場の幅) とは 株価指数の上昇に何銘柄が参加しているかを示す概念。指数が最高値でも、上げているのが一握りの大型株だけ (= 幅が狭い) なら、上昇の「土台」は脆い。SPY (時価総額加重) と RSP (均等加重) のリターン差や、上昇銘柄数 − 下落銘柄数 (騰落ライン) で測る。先週末は SPY-RSP スプレッドが +2.11% に開き、幅は狭い状態。


2. 今週の主戦場 — マクロとミクロの「二輪」

今週の値動きは、性質の異なる 2 つの軸が同時に回ることで決まります。マクロ (金利) の軸 = NFP を頂点とする労働指標群と、ミクロ (AI) の軸 = AVGO を頂点とする決算群です。どちらか一方ではなく、両輪が同じ週に集中することが、今週「指標一本・決算一本のサプライズが指数を振らせやすい」理由です。

軸 A: マクロ (金利) — NFP に向かう労働指標の連鎖

JST 日時指標役割
6/1 (月) 23:00ISM 製造業 PMI (5月)景気の底堅さ。速報 (S&P Global) は 55.3 と強含み
6/2 (火) 23:00JOLTS 求人 (4月)労働需給の緩み
6/3 (水) 21:15ADP 雇用 (5月)NFP の方向性プレビュー
6/3 (水) 23:00ISM 非製造業 PMI (5月)米経済の約 7 割、価格指数で関税インフレを測る
6/4 (木) 21:30新規失業保険申請件数 (週次)解雇ペースの高頻度サイン
6/5 (金) 21:30米雇用統計 (NFP、5月)FOMC 前最後の雇用データ・今週の頂点

この連鎖は「ADP・ISM 雇用指数で NFP の方向を予想 → 金曜 NFP で答え合わせ」という流れで読みます。週前半の指標が弱含みなら金曜への警戒が高まり、強含みなら「利下げ後ずれ」観測が金利を押し上げます。

軸 B: ミクロ (AI) — AVGO を頂点とする決算群

JST 日時銘柄役割
6/3 (水) 早朝PANW (Palo Alto)サイバー需要・先週ローテの答え合わせ
6/4 (木) 早朝AVGO (Broadcom)AI 半導体ガイド ~$10.7B・今週最大
6/4 (木) 早朝CRWD (CrowdStrike)ARR・純新規 ARR
6/5 (金) 早朝LULU (Lululemon)消費の体温計 (減益見込み)

先週のソフトウェア一斉急騰は「決算を出していない銘柄が巻き戻しで上げた」ローテーションでした。今週は PANWCRWDAVGO が実際の数字を出すため、「先週の楽観が実需に裏付けられるか」が問われます。とりわけ AVGO の次四半期 AI 受注ガイドは、NVDA 系サプライチェーン全体に波及する「AI トレードの温度計」です。

📚 用語: FOMC ブラックアウト期間とは FOMC 会合前の約 10 日間、Fed 高官は金融政策に関する公の発言を控える慣行。今回は JST 6/6 (土) から開始し、6/16-17 の会合まで続く。この間は Fed からの新情報が途絶えるため、今週の指標 (特に NFP) が利下げ織込を「最後に動かせる」材料になる。指標一本の重みが平時より大きい週になる理由がこれ。

長期投資家として覚えておくべきこと: 「マクロとミクロの触媒が同週に集中する週」は、どちらが主役になるかで相場の性格が変わるAVGO が上振れて NFP が無難なら「AI 主導の続伸」、NFP が大きく振れれば「金利主導でセクター無差別に動く」展開。今週の最初の関門は JST 6/4 早朝の AVGO で、ここで AI ハードが追随できれば先週のソフト急騰が「本物」に格上げされる。


2.5 決算シーズンの現在地 — Q1 FY26 は「広い裾野の二桁ダブル成長」だが完璧を要求する相場 (FactSet)

数値スコアカードはページ上部の「決算シーズンの現在地」カードに構造化表示されます。ここではその数字を繰り返さず、読み筋に集中します。集計の深掘りは マーケット インサイト コレクションに切り出しています。

Q1 FY26 (2026年1-3月期) 決算シーズンは 97% が報告を終え、ほぼ完了しました。FactSet 5/29 時点で、ブレンド EPS 成長率は YoY で二桁の大幅成長、売上も 2022 Q2 以来の高い伸びで、利益・売上の両輪が回る「ダブル成長」局面にあります。注目すべきは「推定の進化」で、3月末に置かれた予想 (+13.1%) を企業が大きく上回り続け、シーズンを通じて倍以上に膨らみました。アナリストが事前に置いた保守的なハードルを超え続けた構図で、ビート率・サプライズ幅が 5年平均を大きく上回っているのがその裏づけです。

拡大の「質」も良い。市場の関心は Mag 7 に集中しがちですが、今 Q は Mag 7 が EPS +63.2% (2021 Q2 以来最高) で牽引する一方、残る 493 社も +17.4% (2021 Q4 以来最高) と、成長の裾野が一部メガキャップに偏っていません。2023〜24 年の「Mag 7 だけが稼ぐ」相場から、利益貢献が広がりつつある兆候です。さらにアナリストは Q2 FY26 のボトムアップ EPS 推定を 3月末から +2.5% 引き上げており、これは四半期前半の上方修正としては 2021 Q3 以来最大。通常はシーズンが進むと推定が削られるため、上方改定が続くこと自体が拡大局面の追い風サインです。

ただし「構造変化のサイン」として重視すべきは、ビート/ミスの市場反応の非対称性です。ポジティブサプライズ銘柄の株価反応 (発表前後2日窓) は平均 +1.3% と 5年平均 (+1.0%) 並みにとどまる一方、ネガティブサプライズ銘柄は平均 −4.6% と 5年平均 (−2.9%) の約1.6倍も売られています。「ビートしても大して報われず、ミスれば過剰に罰される」非対称は、好業績がすでに株価に織り込まれ、相場が完璧を要求する局面の典型的な振る舞いです。今週 AVGO / CRWD / PANW の決算で、わずかな弱さがきつく罰されやすい点は意識しておくべきです。

📚 用語: フォワード P/E とは 今後12ヶ月の予想 EPS に対する株価倍率。「現在の利益」でなく「将来の利益」で測るため、成長期待を反映する。水準だけでは割高判断できず、自身の過去平均 (5年・10年) との比較で相対評価する。現在の 21.2 は 5年平均 19.9・10年平均 18.9 をいずれも上回り、二桁益成長を前提にしても余裕の乏しい割高圏。益成長が続けば正当化されるが、ハードルが上がりきった市場ではマルチプル拡張の伸びしろは小さい。

長期投資家として覚えておくべきこと: 今の局面は「業績ファンダメンタルズは拡大 (expansion)・裾野も広い」が「株価の織り込みは進み、ミスへの耐性は低い」という二面性を持つ。次回 FactSet Update で確認すべきは、(1) Q2 のボトムアップ EPS 上方修正が維持されるか (拡大継続の最重要サイン)、(2) ミスへの過剰な罰がさらに強まるか (リスク許容度の低下加速)、(3) フォワード P/E が 21 倍超で定着するか の 3 点。


3. 今週の注目銘柄 — 深掘り 2 社

3.1 AVGO (Broadcom) — 今週最大の「AI トレードの温度計」

📎 公式情報源: Broadcom IRSEC EDGAR

観点詳細
今週何が起きるかJST 6/4 (木) 早朝 (US 6/3 (水) AMC) に Q2 FY26 決算。EPS 予想 ~$2.40、売上 ~$22.1B (前年比 +47%)、うち AI 半導体売上ガイド ~$10.7B (前年比 +約140%)
なぜ重要かカスタム ASIC (XPU) で大手クラウドの AI チップ内製を担う「NVIDIA 以外の AI 半導体の本命」。次四半期の AI 受注ガイドは、AI 設備投資サイクルが続くかの最も鮮度の高いシグナルで、半導体・電力・データセンター関連の連鎖に波及する
逆風リスク期待が高くフォワードの織り込みが進んでいるため、ガイドが「ただ良い」だけでは出尽くし売りになりやすい (§2.5 のミスへの過剰反応と同じ力学)。非 AI 半導体 (ブロードバンド等) の弱さも論点
長期で見るべき指標(1) AI 半導体売上の四半期ガイドと「3 社目・4 社目の XPU 顧客」獲得有無、(2) VMware 統合後のソフトウェア部門の粗利率、(3) 受注残 (backlog) の推移

長期投資家としての見方: AVGO は「AI 設備投資サイクルが続く限り構造的な勝ち組」だが、今の株価は既にそれを相当織り込んでいる。決算当日の値動き (ガイド次第で大きく振れる) は短期ノイズで、追うべきは「XPU 顧客の数が増えているか = 顧客基盤の幅」。エントリーの是非は当ノートの領分外。

3.2 CRWD (CrowdStrike) — ソフト急騰の「実数字での答え合わせ」

📎 公式情報源: CrowdStrike IRSEC EDGAR

観点詳細
今週何が起きるかJST 6/4 (木) 早朝 (US 6/3 (水) AMC) に Q1 FY27 決算。EPS 予想 ~$1.07 (前年比 +46.6%)、売上 ~$1.36B (+23.5%)
なぜ重要か先週のソフトウェア一斉急騰で +8.9% 上げたが、それは決算を伴わない「巻き戻し」だった。今週の実数字 (ARR・純新規 ARR・Falcon Flex 採用) が、その楽観に実需の裏付けがあるかを示す。PANW (JST 6/3) と合わせ「サイバー = AI 時代の構造的成長」の検証
逆風リスク期待が高く織り込み済みのため、ガイドが保守的だと反応はネガティブに振れやすい。2024年の大規模障害以降の顧客維持率も論点
長期で見るべき指標(1) 純新規 ARR (Net New ARR) のモメンタム、(2) 顧客あたりモジュール採用数 (クロスセル)、(3) 顧客維持率 (Dollar-Based Net Retention)

長期投資家としての見方: 先週の急騰は「AI がソフトを食う懸念 (SaaSpocalypse) の巻き戻し」というポジション要因。今週それがARR の実数字で裏付けば本物のトレンド、空振れば一過性の反発に格下げ。判断材料は決算後の ARR ガイドにある。


4. 今週の経済カレンダー — それぞれがなぜ重要か

ページ上部の nextWeek カードに全イベントが時系列で表示されます。ここでは「なぜ重要か」を深掘りします。

JST 日時イベント重要度解釈 / 公式情報源
6/1 (月) 23:00ISM 製造業 PMI (5月)★★★予想 53.0 (前回 52.7)。S&P Global 速報 55.3 と強含み。価格指数 (Prices Paid) の高止まりはスタグフ懸念 → ISM
6/2 (火) 23:00JOLTS 求人 (4月)★★予想 6.80M。求人 / 失業者比率で労働需給の緩みを測る。NFP の前哨戦 → BLS
6/3 (水) 21:15ADP 雇用 (5月)★★前回 +109K。NFP の方向性プレビュー。ブレ大きく単独では振らせにくい
6/3 (水) 23:00ISM 非製造業 PMI (5月)★★★予想 53.0 (前回 53.6)。米 GDP の約 7 割。価格指数が粘着インフレの鍵 (スーパーコア先行) → ISM
6/4 (木) 21:30新規失業保険申請件数 (週次) + 貿易収支 (4月)★★NFP 前日の高頻度労働指標。継続受給の上昇基調が続くか → DOL
6/5 (金) 21:30米雇用統計 (NFP、5月)★★★★★今週最大の山場。FOMC 前最後の雇用データ → BLS

📚 なぜ今週の NFP が最重要視されるか NFP (非農業部門雇用者数) は労働市場の体温計だが、今週のそれは「タイミング」で重みが増す。JST 6/6 (土) から Fed のブラックアウトに入るため、6/5 の NFP は会合 (6/16-17) 前に Fed が見る最後の雇用データになる。これ以降 FOMC までに出る主要指標は 6/11 の CPI (消費者物価指数) 等の物価系のみ。NFP が大きく振れると、その方向のポジションが「修正する新情報・発言が乏しいまま」FOMC まで引きずられやすい。予想は +100K 前後 (機関により ~130K)、失業率 4.3% 横ばい。


5. 今週の決算 — 注目銘柄

US 日付銘柄寄り前/引け後注目 KPI
US 6/2 (月)PANW (Palo Alto)AMCNGS ARR / プラットフォーム化契約数
US 6/3 (水)AVGO (Broadcom)AMCAI 半導体売上ガイド ~$10.7B / XPU 顧客数
US 6/3 (水)CRWD (CrowdStrike)AMC純新規 ARR / 顧客維持率
US 6/4 (木)LULU (Lululemon)AMC北米既存店売上 (SSS) / 関税の粗利影響
US 6/4 (木)DOCU (DocuSign)AMC課金顧客数 / billings

6. 今週のシナリオ — 強気 / 弱気の分岐点

今週の値動きを左右する「もし X なら Y」を整理します。決め手は AVGO (AI) と NFP (金利) の組み合わせです。

  • 強気シナリオ: AVGO の AI 受注ガイドが上振れ (新規 XPU 顧客の言及) し、NFP が +100〜130K の「無難な数字」に収まる。→ 金利が落ち着いたまま AI 楽観が継続し、物色が出遅れ・小型に拡散すれば、9 週連騰が「10 週目」に入る健全な続伸。リーダーシップの幅が広がるかが鍵。
  • 弱気シナリオ: ① NFP が +170K 超に上振れ → 利下げ後ずれ観測で金利上昇・ドル高 (USD/JPY 160 突破リスク)、高 PER グロースに逆風。または ② AVGO のガイドが「良いだけ」で出尽くし売り → §2.5 の「ミスへの過剰な罰」が AI ハードに波及。割高 + 狭い地合いゆえ、最初の調整の起点になりやすい。
  • 分岐点: 最大の不確実性は NFP の「振れ方向」と AVGO の「ガイドの質」。NFP は +50K 割れの大幅下振れだと「悪い理由の金利低下」で追い風が逆風に転じる両面性に注意。判断材料は (1) JST 6/4 早朝 AVGO の AI 受注ガイド、(2) JST 6/5 21:30 NFP の本数と失業率、(3) Russell 2000 が指数に追随するか (幅の拡散 or 一極集中)。

7. 今週の学び — 長期投資家として覚えておくべきこと

用語 / 概念

  1. ブラックアウト期間と「指標の重み」 — FOMC 前約10日の Fed 発言自粛期間。今週末から開始するため、今週の NFP は「Fed が会合前に見る最後の雇用データ」として平時より重みが増す。データが独り歩きしやすい。
  2. ビート/ミスの市場反応の非対称性 — 好決算が報われず (+1.3%、5年平均並み)、ミスが過剰に罰される (−4.6%、5年平均の約1.6倍) 状態は、相場が「完璧」を要求している = リスク許容度が低下している局面のサイン。
  3. AI トレードの「ハード ⇄ ソフト」連動 — 先週はソフト (IGV) が巻き戻しで急騰したが、今週は AVGO (AI ハード) が実数字を出す。ハードが追随すれば AI 楽観は「本物」、空振れば「一過性」に格下げ。両者の連動を見る。

パターン / 経験則 (1 つ)

  • 「触媒が金曜に集中する週」は週前半が様子見になりやすい。今週は NFP (金) と AVGO (木早朝) という二大触媒が後半に固まるため、月〜水は指数が方向感を欠いてレンジになりやすく、木曜の AVGO で最初の方向、金曜の NFP で確定、という二段構えの値動きになりやすい。

監視指標の閾値表

指標週初値警戒水域含意
VIX15.32> 20 で警戒、> 25 で守備低ボラからの NFP は振れ幅が出やすい。NFP 後の VIX 跳ね方を見る
10Y Yield4.453%> 4.80% で株売り加速NFP 上振れ → 金利上昇 → 高 PER グロース逆風の経路
USD/JPY159.26> 160 で介入リスクNFP 上振れで突破リスク。財務省の介入警戒線
フォワード P/E21.2> 21 倍定着で上値重い二桁益成長でも割高圏。マルチプル拡張の余地は乏しい

8. データソース・引用

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