EARNINGS · Q3 FY26
中立COST Q3 FY26 — 純売上 +11.6% / EPS +15% / 既存店 +9.8% の堅調決算も、約 50 倍 P/E に「サプライズ不足」で時間外 +0.4% の反応薄
Costco Q3 FY26 は純売上 $69.15B (+11.6% YoY)、希薄化後 EPS $4.93 (+15.2%、コンセンサス約 $4.92 を小幅上回り)、既存店売上 (SSS) 全社 +9.8% (調整後 +6.6%)、デジタル既存店 (e-commerce) +21.5%、会員収入 (membership fee income) $1.37B (+10.7%)、米国・カナダ更新率 92.2% (過去最強水準)。会員モデルはむしろ過去最強だが、約 50 倍の予想 P/E に対し EPS のビート幅が僅少でサプライズに欠け、時間外 (AH) は +0.4% にとどまる反応薄。
純売上 +11.6%・EPS +15%・既存店 +9.8% の堅調決算もコンセンサス僅か上回りにとどまり、約 50 倍 P/E に対しサプライズ不足で時間外 +0.4% の反応薄。会員モデル (更新率 92.2%) はむしろ過去最強。
数字サマリ
EPS
REVENUE
EPS
売上
主要 KPI
会員収入 (Membership fee income)
$1.373B
+10.7% YoY
営業利益の約 49% を稼ぐ。値上げ寄与は成長の 4 分の 1 強
総有料会員 (Paid members)
82.9M
+4.1% YoY
総会員カード数 148.5M (+4.0%)
エグゼクティブ会員 (Executive members)
41.2M
+9.6% YoY
有料会員の約 50%、来店頻度・客単価とも高い
更新率 (米国・カナダ)
92.2%
+10bp QoQ
世界 89.7%、過去最強水準
既存店売上 (SSS、全社)
+9.8%
調整後 (ガソリン・為替除く) +6.6%
米国 +9.4% / カナダ +10.7% / 国際 +11.2%
デジタル既存店 (e-commerce)
+21.5%
調整後 +20.8%
高成長余地
粗利率 (ガソリン除き)
+1bp
報告ベースは -21bp
コアは -46bp (卵・牛肉などの戦略的値下げ投資)
営業利益率
約 4.0%
営業利益 $2.815B (+11.3%)
ガイダンス
| 項目 | 値 | 判定 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 売上 / EPS ガイダンス | 非提示 | 据え置き | Costco は慣例として正式な業績見通しを出さない |
| 会費値上げ (2024/9) 効果 | 次 Q で一巡見込み | 据え置き | 会員収入成長率の鈍化が論点 |
| 関税 (tariff) 影響 | 調達力で吸収 | 据え置き | 150 日間の流動的なグローバル関税に置換、マージン圧迫は顕在化せず |
株価反応
引け値
$995.20
時間外
$999.18
+0.40%
公式情報源
1 行サマリ
Costco が US 5/28 (木) 引け後 (AMC) に Q3 FY26 を発表。純売上 $69.15B (+11.6% YoY)、希薄化後 EPS $4.93 (+15.2%)、既存店売上 (SSS) 全社 +9.8% と、ほぼ完璧に近い堅調決算でした。会員モデルはむしろ過去最強水準で、会員収入 +10.7%、米国・カナダ更新率 92.2%、エグゼクティブ会員 +9.6%。それでも時間外 (AH) は +0.4% にとどまりました。
これは「ビートしたが買われない」典型例です。EPS $4.93 はコンセンサス約 $4.91-4.92 を僅か $0.01-0.02 上回る程度で、約 50 倍という小売株として極端な予想 P/E (株価収益率) を正当化する「期待を超えるサプライズ」には届かず。会費値上げや特別配当の新発表もなく、株価を動かす触媒を欠きました。
総合判断: 中立。ファンダメンタルに毀損は一切なく (むしろ会員モデルは過去最強)、反応薄の主因は決算内容ではなくバリュエーションの高さ。高 P/E 銘柄は「完璧な決算が必要なのに、ただ良い決算だった」だけで売られる、というミスプライス リスクの教科書です。
数字の中身
EPS / 売上
| 項目 | Q3 FY26 | 前年同期 | YoY |
|---|---|---|---|
| 純売上 (Net sales) | $69.154B | $61.965B | +11.6% |
| 総収入 (Total revenue) | $70.527B | $63.205B | +11.5% |
| 会員収入 (Membership fees) | $1.373B | $1.240B | +10.7% |
| 営業利益 (Operating income) | $2.815B | $2.530B | +11.3% |
| 純利益 | $2.192B | $1.903B | +15.2% |
| 希薄化後 EPS | $4.93 | $4.28 | +15.2% |
EPS はコンセンサス約 $4.91-4.92 に対し $4.93 と小幅上振れ。粗利率は 10.97% (報告ベースで前年比 -21bp だが、ガソリン影響を除くと +1bp とほぼ横ばい)。CFO Gary Millerchip は「コア (主力商品) は 46bp 低下した。フレッシュフードと食料雑貨で、卵や牛肉など日用品の価格を下げる投資を行ったためだ」と説明しており、値下げは戦略的な販売政策でコスト悪化ではない点が重要です。
主要 KPI — 会員モデルは過去最強
| KPI | Q3 FY26 | YoY |
|---|---|---|
| 総有料会員 (paid members) | 82.9M | +4.1% |
| 総会員カード数 (cardholders) | 148.5M | +4.0% |
| エグゼクティブ会員 (Executive members) | 41.2M | +9.6% |
| 更新率 (世界) | 89.7% | — |
| 更新率 (米国・カナダ) | 92.2% | +10bp (QoQ) |
| デジタル既存店 (e-commerce) | +21.5% (調整後 +20.8%) | — |
| 倉庫数 | 931 (米 639 / 加 115 / メキシコ 43 / 日 37 ほか) | — |
📚 用語: 会員収入 (Membership Fee Income) がなぜ Costco の心臓部なのか Costco の営業利益の約半分 (今 Q は約 49%) は、商品の売買差益ではなく年会費から生まれる。商品は薄利 (粗利率 約 11%) で売り、会員を囲い込んで会費で稼ぐビジネスモデル。だから投資家が最も重視するのは商品売上より「会員数 × 更新率 × 客単価」。更新率 92.2% (米加) は「一度入った会員がほぼ抜けない」ロイヤルティの高さを示し、これが約 50 倍の P/E を支える根拠になっている。
エグゼクティブ会員 41.2M は有料会員の約 50% を占め、+9.6% 成長と全体 (+4.1%) を大きく上回ります。エグゼクティブ会員は来店頻度・客単価ともに高く、収益の質を押し上げます。会費収入 +10.7% のうち「2024 年 9 月の米国・カナダの会費値上げが成長の 4 分の 1 強を占めた」(Millerchip) とされ、残り 4 分の 3 は会員数増とミックス改善による自律成長です。
既存店売上 (SSS、Same Store Sales)
| 地域 | 報告値 | 調整後 (ガソリン・為替除く) |
|---|---|---|
| 全社 (Total Company) | +9.8% | +6.6% |
| 米国内 (Domestic) | +9.4% | +6.8% |
| カナダ (Canada) | +10.7% | +6.2% |
| その他国際 (Other International) | +11.2% | +5.9% |
📚 用語: 調整後 既存店売上 (Adjusted SSS) の見方 既存店売上 (SSS) は開店 1 年以上の店舗の売上成長率。Costco の場合、ガソリン価格と為替の変動を除いた「調整後」が実力値。報告値 +9.8% に対し調整後 +6.6% の差 (3.2pt) は、主にガソリン売上と為替の押上効果。本当のトラフィック・客単価のトレンドを見るなら調整後 +6.6% を使う。
ガイダンス分析
この決算が市場の論争にどう答えたか
強気派の見立てへの回答:
- ✅ 会員収入 +10.7% / 更新率 92.2% (過去最強) で会員モデルの堅牢性を実証
- ✅ エグゼクティブ会員 +9.6% で収益の質が継続的に向上
- ✅ e-commerce +21.5% で成長余地、関税環境下でも値下げ攻勢でシェア獲得
弱気派の見立てへの回答 (反応薄が答え):
- ⚠️ 予想 P/E 約 50 倍は小売株として極端な高水準
- ⚠️ EPS ビート幅が $0.01-0.02 と小さく、高い期待を超えるサプライズ余地が乏しい
- ⚠️ 会費値上げ効果が次 Q で一巡 → 会員収入成長率の鈍化リスク
結論: 中立。事業に毀損サインはなく、反応薄はバリュエーションの問題。
会費値上げ・特別配当・関税
- 会費値上げ: 今 Q では新規値上げなし。直近は 2024 年 9 月 (Gold Star $60→$65、Executive $120→$130)。値上げ効果はあと約 1 四半期で一巡見込み
- 特別配当: 今 Q では発表なし。直近は 2025 年 12 月発表・2026 年 1 月支払いの 1 株 $12 (総額約 $5.3B)。CFO は「現在のバリュエーションでは、成長投資の柔軟性を犠牲にせず余剰資金を還元する手段として特別配当が最も効果的」と将来の含みを残した
- 関税 (tariff): COO Ron Vachris は「関税の今後の影響は極めて流動的だ。撤廃された IEEPA 関税が、少なくとも今後 150 日間の新たなグローバル関税に置き換わった」と言及。価格戦略は「値下げは最も早く、値上げは最も遅く」。バイヤーが調達先を機動的に切り替え会員への価格影響を抑えており、関税はマージン圧迫要因として顕在化していない
株価反応
- 引け値 $995.20 (-0.85%) → 時間外 (AH) 約 +0.4%
- 「強い成長だが株価は反応薄」— EPS が僅か $0.01-0.02 の上振れにとどまり、約 50 倍 P/E に織り込まれた高い期待を超えるサプライズに届かなかった。会費値上げ・特別配当の新発表もなく、触媒を欠いた
決算後のニュース・反応
アナリスト目標株価 / 格付け変更
| ハウス | 格付け | ターゲット 前 → 後 |
|---|---|---|
| UBS | Buy | $1,205 → $1,275 |
| Morgan Stanley | Overweight | $1,150 → $1,225 |
| Oppenheimer | Outperform | $1,100 → $1,160 |
| BofA | Buy | $1,185 (維持) |
| Wells Fargo | Equal-Weight | $950 → $1,000 |
| DA Davidson | Neutral | $1,000 (据置) |
重要な観察
強気勢 (UBS / Morgan Stanley / Oppenheimer) は目標株価を $50-70 引き上げる一方、Wells Fargo は目標を上げても格付けは Equal-Weight 据置、DA Davidson は Neutral $1,000。「ファンダではなくバリュエーションで中立」という二極化が鮮明です。コンセンサス目標は約 $1,082。
経営陣コメント (電話会議トランスクリプトより)
- 「四半期末でエグゼクティブ会員は 4,120 万人、前年比 9.6% 増。エグゼクティブ会員は一般により多く支出し、より頻繁に来店する」 — CFO Gary Millerchip
- 「(粗利のコア低下について) フレッシュフードと食料雑貨で、卵や牛肉など日用品の価格を下げる投資を行った」 — CFO Gary Millerchip
- 「関税の今後の影響は極めて流動的だ。我々の目標は値下げは最も早く、値上げは最も遅くすること」 — COO Ron Vachris
Costco Q3 FY26 決算コール トランスクリプト →
長期投資家の視点
立場別の判断
| 立場 | 見方 |
|---|---|
| 未保有 | ファンダは文句なしだが約 50 倍 P/E は歴史的高水準。会費値上げ一巡 (次 Q) で会員収入成長率が鈍化する局面の押し目を待つ選択肢 |
| 保有中 (含み益) | 決算は強気論を裏付け。会員モデルの堅牢性 (更新率 92.2%、エグゼクティブ +9.6%) は不変で、長期保有の前提に変化なし |
| 保有中 (含み損) | 直近の含み損は決算内容ではなくバリュエーション調整が主因。事業に毀損サインはなく、慌てて損切りする決算材料は出ていない |
次の四半期で確認すべき指標
- 会費収入の成長率 — 2024/9 値上げ一巡後も二桁を維持できるか (会員数増だけで支えられるか)
- 米国・カナダ更新率 — 92.2% の高位安定が続くか (会員ロイヤルティの先行指標)
- エグゼクティブ会員比率と成長率 — 収益の質を左右する最重要 KPI
- 調整後既存店 (ガソリン・為替除き) — 全社 +6.6% の実質トラフィック・客単価トレンド
- コア粗利率 (ガソリン除き) — 関税コストと値下げ投資のバランス (今 Q はコア -46bp)
マクロ・他銘柄への含意
- 個人消費の温度感 — 既存店 (調整後) +6.6% は、米国の裁量・必需消費が依然底堅いことを示す。ただし「卵・牛肉の値下げ投資」は価格感応な消費者が増えている裏返しとも読める
- 生活必需 (XLP) セクターへの含意 — Costco の堅調は会員制という独自モデルゆえで、一般の小売・生活必需株にそのまま当てはまるわけではない点に注意
- 長期投資家として — 「堅調な決算でも高 P/E ゆえに反応薄」は、優良企業ほど起こりやすい。事業の質と株価のバリュエーションは別問題で、エントリーのタイミングは「完璧な決算で反応薄 → 時間調整」を待つのが定石
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