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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

MONTHLY · 2026 / 8月

2026年8月 マンスリー — S&P500 +2.62% の上昇は、最初の 5 営業日で終わっていた。利上げ確率が往復して戻ってきた月

2026年8月の米国株は S&P500 が月間 +2.62% (7,686.14) と、7月の -0.13% から反転して終えた。NASDAQ Composite +3.93%、NASDAQ 100 +4.18% と、7月に -20.61% の弱気圏へ沈んだ半導体を含むテック側が買い戻された月である。だが月間騰落という 1 つの数字は、この月の形をほとんど伝えていない。上昇の全部は最初の 5 営業日 (7/31 → 8/7 で +3.58%) で作られ、残る 3 週半は合計 -0.93% と下げていた。S&P500 の月内高値 7,798.99 は 8/13 で、そこから月末まで -1.45% 削られている。月の弧を決めたのは金融政策の観測だった。8/7 の 7月雇用統計が -2.3 万人と減少して 9月の利上げ確率は 67% から 44.4% へ落ち、株も金も同じ符号で買われた。ところが 8/28 のジャクソンホールで Warsh 議長がインフレとの対決姿勢を示すと、確率はほぼ五分五分まで戻った。市場は同じ月のうちに「利上げは消えた」と「利上げは来る」を往復し、出発点の近くで終わった。その裏で勝者は Mag7 の外側へ移り、Palantir +51.45%、Micron +16.49% が指数を上回った。

執筆: kinjo22 分で読了中立

上昇は最初の 1 週間で終わっていた。市場は同じ月のうちに「利上げは消えた」と「利上げは来る」を往復し、振り出しの近くで 8 月を終えた。

今月のまとめ

2026年8月の S&P500 は月間 +2.62% (7,686.14) と 7月の -0.13% から反転した。NASDAQ Comp +3.93%、NASDAQ 100 +4.18%、半導体 SOX も +1.98% と、7月に -20.61% で弱気圏へ沈んだテック側の買い戻しが指数を押し上げている。ただし上昇の全部は最初の 5 営業日 (7/31 → 8/7 で +3.58%) で作られ、残り 3 週半は -0.93%。月内高値 7,798.99 は 8/13 で、そこから月末まで -1.45% 削られた。弧を決めたのは金融政策の観測で、8/7 の 7月雇用統計 -2.3 万人が 9月利上げ確率を 67% → 44.4% へ落とし、8/28 のジャクソンホールで Warsh 議長がタカ派姿勢を示すとほぼ五分五分へ戻った。往復して振り出しに近い場所で終わった月である。勝者は Mag7 の外側へ移り、Palantir +51.45%・Micron +16.49% が指数を大きく上回った一方、Mag7 内部の格差は 7月の 50.6pt から 22.9pt へ縮んだ。金は +9.43% と、10 年債利回り (+1.3bp) もドル (-0.37%) もほぼ動かない中で単独で上昇している。

月末マーケット スナップショット

月間騰落 (前月末終値比)。最終 US セッション (2026年8月31日(月)) の引け値ベース。

SPX+2.62%

S&P 500 (8/31 確定)

7,686.14

+196.42

IXIC+3.93%

NASDAQ Comp (8/31 確定)

26,370.89

+997.04

NDX+4.18%

NASDAQ 100 (8/31 確定)

29,456.97

+1,182.77

DJI+1.34%

Dow 30 (8/31 確定)

53,185.90

+700.87

RUT+0.86%

Russell 2000 (8/31 確定)

2,956.45

+25.11

SOX+1.98%

SOX 半導体 (8/31 確定)

11,535.05

+223.97

RSP+2.04%

S&P500 等加重 (8/31)

219.39

+4.38

VIX6.69%

VIX (8/31 終値)

14.92

-1.07

SPX
+2.62%
IXIC
+3.93%
NDX
+4.18%
DJI
+1.34%
RUT
+0.86%
SOX
+1.98%
RSP
+2.04%
VIX
-6.69%
主要指数の月間騰落 (%)。中央が 0、緑=上昇・赤=下落で、バー長は変化率の大きさに比例。

今月の数字

2026年8月を数字で振り返る

ピーク接近

S&P 500 月間騰落

+2.62%

7月 -0.13% から反転。7,489.72 → 7,686.14

上昇の内訳

+3.58% / -0.93%

最初の 5 営業日 / 残り 3 週半

NASDAQ 100 月間

+4.18%

7月 -6.61% の反動。半導体 SOX も +1.98% へ回復

等加重 RSP vs SPX

+2.04% / +2.62%

時価総額加重が 0.58pt 優位 (7月とは逆)

Q2 EPS 成長率

+50.4%

ただし 2 社の投資評価益を除くと +32.0% (FactSet 8/7)

EPS ビート率

86%

5年平均 78% / 10年平均 76%。2021 Q2 以来の高さ

今月を定義したテーマ

1 ヶ月の値動きの底流にあった構造的なストーリー。

01

月の上昇は最初の 5 営業日で終わっていた

7/31 の 7,489.72 から 8/7 の 7,757.64 まで +3.58%。この 1 週間だけで月間騰落 (+2.62%) を上回る上昇を作り、残る 3 週半は合計 -0.93% と下げている。月内高値 7,798.99 は 8/13 で、月末は そこから -1.45% の位置だった。月間騰落だけを見ると「上昇した月」だが、月の後半だけを生きた投資家の体感は逆になる。

02

「利上げは消えた」と「利上げは来る」を同じ月で往復した

8/7 の 7月雇用統計が -2.3 万人と減少し、過去 2 か月も計 -10.3 万人の下方改定を受けたことで、9月の利上げ確率は 67% から 44.4% へ落ちた。株も金も同じ符号で買われたのがこの局面である。ところが 8/19 の FOMC 議事要旨で「多くの参加者」が利上げの必要性を認めていたことが判明し、8/28 のジャクソンホールで Warsh 議長がインフレとの対決姿勢を示すと、確率はほぼ五分五分まで戻った。金融政策の観測が一周して振り出しの近くへ帰ってきた月である。

03

勝者が Mag7 の外側へ移った

月間の首位は Palantir +51.45%、次いで Tesla +18.23%、Micron +16.49%。一方 Mag7 内部の最大格差は 7月の 50.6pt から 22.9pt へ縮み、Alphabet -4.71% と Amazon -4.35% は 7月の勝ち組から下落側へ回った。7月が「Mag7 という括りが壊れた月」だったとすれば、8月は「勝者を探す場所が Mag7 の外へ移った月」である。

04

金だけが単独で上がった

金は月間 +9.43% と大きく上昇したが、同じ期間に 10 年債利回りは +1.3bp、ドル指数は -0.37% とほとんど動いていない。金利低下でもドル安でもない状況での金高は、実質金利や為替では説明しきれない需要 (中央銀行の買い、通貨価値そのものへの懸念、地政学) が背景にあるとされる。断定はできないが、株が上がった月に金も同じだけ上がったという事実は記録しておく価値がある。

セクター ローテーション

11 セクター (SPDR ETF) の月間騰落。資金がどこに向かい、どこから逃げたか。

XLE
+7.4%
XLK
+6.4%
XLV
+4.9%
XLB
+4.5%
XLC
+3.0%
XLF
+1.4%
XLY
+0.4%
XLP
-0.1%
XLRE
-2.1%
XLI
-2.6%
XLU
-4.8%
セクター ETF の月間騰落 (%)。緑=資金流入・赤=資金流出。
XLE

エネルギー +7.4%

月間首位。8/10-14 週の原油 +7.67% が中心。中東情勢が月を通じて燃料

XLK

情報技術 +6.4%

7月の -8.0% から反転。半導体の買い戻しが主因

XLV

ヘルスケア +4.9%

7月に続き堅調。ディフェンシブの中では明確に選好された

XLB

素材 +4.5%

金の +9.43% を含む商品高の受け皿

XLC

通信サービス +3.0%

Netflix +13.02% が牽引。Alphabet -4.71% が重石

XLF

金融 +1.4%

7月の +6.2% から鈍化。長期金利が横ばいで利ざやの追い風が消えた

XLY

一般消費財 +0.4%

Tesla +18.23% がなければマイナス。消費関連の実需は弱かった

XLP

生活必需品 -0.1%

横ばい。7月の +2.4% からディフェンシブ買いが後退

XLRE

不動産 -2.1%

住宅着工 -12.4% と月末の利上げ観測復活が重なった

XLI

資本財 -2.6%

2 か月連続の下落。景気敏感の弱さが続く

XLU

公益 -4.8%

月間最下位。リスクオンでディフェンシブが売られ、金利観測の復活も逆風

主要シグナル

月間の相場局面を示す指標 (ブレッドス / VIX / 機関フロー / バリュエーション など)

今月の地合い

往復して振り出しへ

利上げ確率 67% → 44.4% → ほぼ五分五分。同じ月で観測が一周した。→ §4

上昇の集中

最初の 5 営業日で +3.58%

月間 +2.62% に対し、残り 3 週半は -0.93%。→ §1

月間の主役

Palantir +51.45%

8/3 決算で米国商業 +149%、通期を 6.5% 上方修正。→ §2.3

月内高値からの距離

-1.45%

8/13 の 7,798.99 が月内ピーク。月末は 7,686.14。→ §1

Mag7 の格差

22.9pt

7月の 50.6pt から縮小。首位 TSLA +18.23% / 最下位 GOOGL -4.71%。→ §2.3

長期金利

10Y 4.758% (+1.3bp)

月間ほぼ変わらず。7月の +32bp とは対照的。→ §4

金の単独高

Gold +9.43%

利回りもドルもほぼ動かない中での上昇。→ §2.4

バリュエーション

フォワード P/E 20.0

5年平均 19.9 / 10年平均 19.0 をともに上回る (FactSet 8/7 時点)。→ §5

来月の主要イベント

経済指標・決算・金融政策・政治イベントを重要度順に。時刻は JST 表記。

★★★ 重要度 (7)
JST 9/11 (金) 21:30経済指標

8月 消費者物価指数 (CPI)

FOMC 前の最後の主要インフレ指標。9/1 の原油 +5.20% はまだ届かない月の数字

JST 9/11 (金) 05:05 頃決算

Oracle Q1 FY27 / Adobe Q3 FY26 決算

US 9/10 引け後に同時。AI 需要を受注残 (RPO) 側から測り直す

JST 9/17 (木) 03:00金融政策

FOMC 声明 + ドット (9/15-16 会合)

0.25% 利上げの織り込みはほぼ五分五分。現行 3.50-3.75%。8月の往復に決着がつく

JST 9/18 (金)金融政策

日銀 (BOJ) 金融政策決定会合

0.25% 利上げの織り込みは 85-88%。円建てリターンを直接動かす

JST 9/16 (水) 21:30経済指標

8月 小売売上高 (Retail Sales)

FOMC 決定の数時間前に出る。コントロール グループが Q3 GDP に直結

JST 9/30 (水) 21:30経済指標

8月 コア PCE + Q2 GDP 確定値

Fed の物価正本。例年より遅い月末公表で、四半期末と重なる

US 9/30 (水) 引け後決算

Micron FQ4 2026 決算

8月に +16.49% だったメモリの答え合わせ。HBM 出荷とガイド

★★ 重要度 (3)
JST 9/5 (土) 〜 9/18 (金)金融政策

FOMC ブラックアウト期間

9/15-16 会合に向けて Fed 高官の金融政策発言が止まる。指標だけが織り込みを動かす

JST 9/18 (金)その他

メジャー SQ (トリプルウィッチング)

四半期満期。FOMC 翌々日という並びで需給が振れやすい

US 9/24 (木) 引け後決算

Costco Q4 FY26 決算

既存店売上 (SSS) と会員更新率。米消費の実測値として質が高い

0. 今月のヘッドライン

  • 🏆 今月の結果: S&P500 は月間 +2.62% (7,686.14) で、7月の -0.13% から反転した。NASDAQ 100 は +4.18%、7月に -20.61% と弱気圏へ沈んだ半導体 (SOX) も +1.98% と戻している
  • 🌊 隠れたテーマ: その上昇の全部は最初の 5 営業日で作られた。7/31 から 8/7 までで +3.58%、残る 3 週半は合計 -0.93%。月内高値 7,798.99 は 8/13 で、月末はそこから -1.45% の位置だった
  • ⚠️ 警戒: 市場は同じ月のうちに「利上げは消えた」と「利上げは来る」を往復した。9月の利上げ確率は 67% → 44.4% → ほぼ五分五分と一周し、振り出しの近くで 8 月を終えている
  • 📅 来月の山場: JST 9/11 (金) 21:30 の 8月 CPI と、JST 9/17 (木) 03:00 の FOMC 声明。8月に往復した観測に、9月は決着がつく
夜明けの山稜。左端で急峻に高みへ達したあと、稜線は長く平坦に、わずかに下りながら青い霞へ続いている
月間 +2.62% の形。最初の 5 営業日で高みまで登り切り、残る 3 週半は長く緩やかに下っていた

1. 今月の値動き — 上昇は最初の 1 週間に集中していた

月間騰落 +2.62% という 1 つの数字は、この月の形をほとんど伝えていない。

月間の数字

指数8/31 終値月間騰落7月との対比
S&P 5007,686.14+2.62%7月 -0.13% から反転
NASDAQ Comp26,370.89+3.93%7月 -3.20% から反転
NASDAQ 10029,456.97+4.18%7月 -6.61% から反転
Dow 3053,185.90+1.34%5 か月連続の上昇
Russell 20002,956.45+0.86%大型に大きく劣後
SOX 半導体11,535.05+1.98%7月 -20.61% に対する戻りは限定的
S&P500 等加重 (RSP)219.39+2.04%時価総額加重に 0.58pt 劣後
VIX14.92-6.69%月内高値は 8/4 の 16.50

月の弧 — 週次の終値で見る

週末S&P 500前週比その週に起きたこと
7/31 (金)7,489.72出発点。FOMC タカ派据え置き (9対3) の直後
8/07 (金)7,757.64+3.58%7月雇用統計 -2.3 万人 → 利上げ確率 67% → 44.4%
8/14 (金)7,785.76+0.36%CPI・PPI ともに鈍化。8/13 に月内高値 7,798.99
8/21 (金)7,674.37-1.43%消費指標の悪化と FOMC 議事要旨のタカ派解釈
8/28 (金)7,711.76+0.49%NVIDIA の 7 連敗が止まる。8/28 ジャクソンホール
8/31 (月)7,686.14-0.33%月末。高値から -1.45%

🎯 要点: 月間 +2.62% のうち、+3.58% は最初の 1 週間で稼がれている。 残る 3 週半を合計すると -0.93% で、実際には下げていた。「8月は上がった月」という要約は、月の前半だけを見た人にしか当てはまらない。 月次のリターンは、その月をどう過ごしたかをほとんど説明しないことがある。


2. 今月を定義したテーマ

4 つとも「指数の数字が中身を隠した」という同じ形をしている。

2.1 上昇は最初の 5 営業日で終わっていた

8/3 の週、市場は 1 週間で +3.58% 上げた。きっかけは 8/7 (金) の 7月米雇用統計 (NFP) である。雇用者数は -2.3 万人と減少し、過去 2 か月も合計 -10.3 万人の下方改定を受けた。景気が弱いという事実が、そのまま「9月の利上げはもう無い」という読みに変換され、株が買われた。

この構図は 8/09 のウィークリー で「雇用が減った週に株が最も上がった」と書いたとおりである。株も金も、同じ符号で買われた。

その後は伸びなかった。8/13 に 7,798.99 の月内高値をつけたあと、月末までの 12 営業日で -1.45% 削られている。

📚 用語: 悪いニュースが良いニュースになる (Bad News is Good News) とは 景気の悪化を示すデータが、金融政策の緩和期待を通じて株高につながる状態のこと。株価の分子 (企業の利益) より分母 (金利) のほうを市場が強く見ているときに起きる。この関係は永続せず、景気悪化が利益予想を削り始めた時点で「悪いニュースはただの悪いニュース」に戻る。どちらの局面にいるかは、金利低下と株価が同じ方向に動いているかで判別できる。

2.2 「利上げは消えた」と「利上げは来る」を同じ月で往復した

8月の金融政策観測は、きれいな往復を描いた。

時点出来事9月の利上げ確率
7月末FOMC タカ派据え置き (9対3、3 地方連銀総裁が利上げを主張)約 67%
8/77月雇用統計 -2.3 万人 + 過去 2 か月の下方改定44.4% へ低下
8/12-137月 CPI コア 2.5% (5 か月ぶりの低さ)、PPI 前年 5.5% → 4.7%低下が続く
8/197月 FOMC 議事要旨 — 「多くの参加者」が利上げの必要性を認識反転が始まる
8/28ジャクソンホール。Warsh 議長がインフレとの対決姿勢を明言ほぼ五分五分へ
薄暗い石造りの広間で、振り切った軌跡の光を残したまま中央でほぼ静止している真鍮の振り子
利上げ確率は 67% → 44.4% → ほぼ五分五分と一周した。大きく振れた末に、出発点の近くへ戻ってきた月だった

インフレ指標はむしろ鈍化していた。それでも確率が戻ったのは、データではなく Fed の姿勢そのものが変わったからである。7月の FOMC で 3 人の地方連銀総裁が利上げを主張して反対票を投じ、議事要旨ではそれが少数意見ではなかったことが明らかになり、月末に議長自身が対決姿勢を示した。

🎯 要点: 8月に動いたのは物価ではなく、Fed が物価をどう扱うつもりかという方針だった。 指標を追っていた投資家は月の後半の下げを説明できず、Fed の内部分裂を追っていた投資家には 8/19 の議事要旨が前触れになっていた。データだけを見ていると読み違える局面がある。

2.3 勝者が Mag7 の外側へ移った

7月のマンスリーでは「Mag7 という括りが機能しなくなった」と書いた。首位 Microsoft +24.58% と最下位 Tesla -26.01% の差が 50.6pt に開いた月だったからである。8月はその続きだが、形が違う。

銘柄8月騰落7月騰落変化
Palantir (PLTR)+51.45%8/3 決算で米国商業 +149%、通期を 6.5% 上方修正
Tesla (TSLA)+18.23%-26.01%月間最大の反転
Micron (MU)+16.49%+15〜18%メモリ高が 2 か月続けて追い風
Netflix (NFLX)+13.02%通信サービスを牽引
NVIDIA (NVDA)+9.98%+0.33%月内に 7 営業日の連敗を挟んだ
Microsoft (MSFT)+9.16%+24.58%2 か月連続の上昇
Amazon (AMZN)-4.35%+13.95%勝ち組から下落側へ
Alphabet (GOOGL)-4.71%-0.35%Mag7 の最下位
Broadcom (AVGO)-4.87%月間では下落

Mag7 内部の最大格差は 22.9pt (首位 Tesla +18.23% / 最下位 Alphabet -4.71%) と、7月の 50.6pt から半分以下に縮んだ。代わりに月間の首位に立ったのは Mag7 の外にある Palantir (+51.45%) である。

薄暗い平原の中央に固まった 7 つの石球はどれも一様に暗く、遠く離れた 1 つの小さな球だけが金色に強く輝いている
Mag7 は中位に収束し、月間の首位は括りの外側から出た。勝ち負けの軸が「どの巨大テックか」から「巨大テックかどうか」へ移った

🎯 要点: 分散が縮んだことは「落ち着いた」ことを意味しない。 7月は Mag7 の内側で勝敗が割れ、8月は Mag7 全体が中位に収束して、勝者はその外側に現れた。勝ち負けの軸が「どの巨大テックか」から「巨大テックかどうか」へ移ったと読める。

📎 個別の詳細は Palantir Q2 FY26 決算 を参照。

2.4 金だけが単独で上がった

金は月間 +9.43% と大きく上昇した。だが同じ期間に 10 年債利回りは +1.3bp、ドル指数は -0.37% と、ほとんど動いていない。

金が上がる典型的な理由は「実質金利の低下」か「ドル安」だが、8月はそのどちらでもない。教科書的な説明が効かない上昇である。

⚠️ 注記: 説明できない動きを、無理に説明しない。 中央銀行の買い、通貨価値そのものへの懸念、地政学リスクなどが背景として挙げられるが、当ブログはどれかに断定できるだけの根拠を持たない。記録しておくべきなのは「株が上がった月に、金が株以上に上がった」という事実そのものである。リスク資産と保険が同時に買われる状態は長くは続かないので、どちらが先に折れるかが次の手がかりになる。

風のない夜の塩湖。一切が静止した青い風景の中央から、金色の光の柱が 1 本だけまっすぐ立ち上っている
利回りもドルもほとんど動かない中で、金だけが +9.43% 上がった。教科書的な説明が効かない上昇は、記録しておくことしかできない

3. セクター ローテーション

11 セクター中 7 つが上昇。7月に最下位だった情報技術が 2 位へ、7月に上位だったディフェンシブが下位へ回った。

エネルギー (+7.41%) の首位は 7月からの連続だが、中身は違う。7月は月を通じた原油高だったのに対し、8月は 8/10-14 週の原油 +7.67% に集中している。

情報技術 (+6.36%) は 7月の -8.0% からの反転で、半導体の買い戻しが主因である。ただし SOX は月間 +1.98% にとどまり、7月に失った -20.61% の一部しか取り戻していない。

下位 3 つ (不動産 -2.13%、資本財 -2.62%、公益 -4.78%) には共通点がある。いずれも金利に敏感か、景気敏感である。 月末に利上げ観測が戻ったことが、月間の順位表の下側にそのまま出た。

📚 用語: ディフェンシブ セクターとは 公益・生活必需品・ヘルスケアなど、景気の変動に業績が左右されにくい業種のこと。不況局面で相対的に選好される一方、リスクオンの局面では資金が流出して指数に劣後する。8月の公益 -4.78% は、業績が悪化したというより、資金がテックへ戻った結果として読むのが自然である。


4. マクロ環境の総括 — 指標は鈍化し、方針は硬化した

8月の特徴は、物価指標が改善する一方で金融政策の姿勢が引き締め方向へ動いた、という食い違いにある。

指標 (発表日)結果意味
7月 NFP (8/7)-2.3 万人、過去 2 か月 -10.3 万人の下方改定労働市場の明確な減速。→ 記事
7月 CPI (8/12)コア +2.5% (5 か月ぶりの低さ)、4 項目すべて予想と一致2 か月連続の鈍化。→ 記事
7月 PPI (8/13)前月比 0.0%、前年比 5.5% → 4.7%川上の物価も減速。→ 記事
7月 小売売上高 (8/14)前月比 -0.6%、9 か月ぶりの減少消費の一服。→ 記事
8月 ミシガン大 (8/14)51.0 へ急落下がったのは「国の景気」の評価。→ 記事
7月 住宅着工 (8/18)年率 123.9 万戸、前月比 -12.4%ただし建設許可は +5.0%。→ 記事
7月 FOMC 議事要旨 (8/19)9-3 で据え置き。「多くの参加者」が利上げの必要性を認識月の後半を決めた。→ 記事

長期金利はほとんど動かなかった。10 年債利回りは月間 +1.3bp、30 年債は -2.6bp である。7月が +32bp だったことを考えると、8月の債券市場は方向を決めかねていたと言える。

🎯 要点: 物価が下がっているのに引き締め観測が強まる、という組み合わせは長続きしない。 どちらかが折れる。物価の鈍化が続けば Fed は動けなくなるし、Fed が本気なら物価指標の改善は「まだ足りない」と扱われる。9月の CPI と FOMC は、この食い違いに決着をつける 2 つのイベントである。

夕暮れの平原に並ぶ二つの巨大な石扉。左は開いて金色の光を放ち、右は閉じて青い影に沈んでいく
物価は緩み、方針は締まった。同じ月に逆向きへ動いた 2 つは、9月のどこかで揃わなければならない

5. 決算シーズンの総括 — 数字は歴史的、ただし 2 社の影響が大きい

集計値は 2021 年以来の強さだが、その一部は本業の稼ぐ力ではない。

Q2 2026 の決算シーズンは、集計値で見ると極めて強い月だった。以下は FactSet Earnings Insight の 8/7 時点の数字である。

項目比較
ブレンド EPS 成長率+50.4%前週 +47.4% から上昇
ブレンド売上成長率+15.0%前週 +14.2% から上昇
EPS ビート率86%5年平均 78% / 10年平均 76%。2021 Q2 以来の高さ
フォワード 12M P/E20.05年平均 19.9 / 10年平均 19.0 をともに上回る

⚠️ 注記: +50.4% を額面どおりに受け取らない。 この数字は Alphabet の他収益 980 億ドル (保有株式の未実現評価益) と Amazon の 534 億ドル (主に Anthropic への投資) で大きく膨らんでいる。FactSet 自身が「この 2 社を除くと成長率は +32.0% へ下がる」と明記している。 +32.0% でも十分に強いが、+50.4% と +32.0% では意味が違う。非現金・非経常の項目が集計値を動かしているときは、必ず除外後の数字を確認する。

バリュエーションは月末に向けて重くなった。フォワード P/E 20.0 は 5年・10年平均をともに上回る水準で、7月末の 19.6 (5年平均を下回っていた) から反転している。8月の株価上昇は、益成長よりも P/E の拡張で作られた部分が大きい。


6. 来月の展望 — 8月の往復に決着がつく月

9月は 2 つの日付に集約される。CPI (9/11) と FOMC (9/17 未明) である。

9月の主要イベント

⚠️ 注記: 本記事は JST 9/6 (日) に公開している。 9月の第 1 週 (9/1-9/4) は既に終了しており、その週の詳細は 9/6 のウィークリー にまとめてある。以下は 9/8 以降が中心である。

JST 日時イベント重要度
9/5 (土) 〜 9/18 (金)FOMC ブラックアウト期間★★
9/7 (月)US 市場休場 (Labor Day)
9/10 (木) 21:308月 生産者物価指数 (PPI)★★
9/11 (金) 05:05 頃Oracle Q1 FY27 / Adobe Q3 FY26 決算 (US 9/10 引け後)★★★
9/11 (金) 21:308月 消費者物価指数 (CPI)★★★
9/17 (木) 03:00FOMC 声明 + ドット (9/15-16 会合)★★★
9/16 (水) 21:308月 小売売上高 (Retail Sales)★★★
9/18 (金)日銀 (BOJ) 金融政策決定会合★★★
9/18 (金)メジャー SQ (トリプルウィッチング)★★
9/25 (金) 06:00 頃Costco Q4 FY26 決算 (US 9/24 引け後)★★
9/30 (水) 21:308月 コア PCE (Core PCE) + Q2 GDP 確定値★★★
10/1 (木) 05:30 頃Micron FQ4 2026 決算 (US 9/30 引け後)★★★

🎯 要点: 9月は「頭」と「尻尾」に山場が集中している。 9/16 の小売売上高は FOMC の決定が出る数時間前という並びで、8月に -0.6% と 9 か月ぶりに減った消費が戻ったかを Fed が見る最後のデータになる。そして月末の 9/30 には、コア PCE (Fed の物価正本) と Q2 GDP 確定値と Micron 決算が同じ 24 時間に重なる。コア PCE の公表が月末ぎりぎりまで下がったのは例年より遅く、四半期末のリバランスと同じ日に当たる点は覚えておきたい。

9月のシナリオ — 強気 / 弱気の分岐点

  • 強気シナリオ: 8月 CPI が落ち着き、9/16 の FOMC が据え置きを選べば、8月後半に押された金利敏感セクター (公益・不動産・資本財) が買い戻される。8月に劣後した等加重 RSP が時価総額加重に追いつく形の上昇なら、地合いとしては健全である
  • 弱気シナリオ: CPI が上振れて実際に利上げが行われれば、フォワード P/E 20.0 という 5年・10年平均を上回る水準が重石になる。8月の上昇が益成長ではなく P/E の拡張で作られていた分、金利上昇に対する感応度は高い。さらに 9月後半は SQ (9/18) → SQ 明けの季節的な弱さ → 四半期末リバランス → 9/30 のコア PCE と、イベントと需給が同じ方向に重なりやすい配置になっている
  • 分岐点: 最大の不確実性は Fed が 8月に示した姿勢をどこまで実行するかである。市場は 8月を通じてこの一点を測りかね、確率を 67% → 44.4% → 五分五分と往復させた。9/16 はその測定が終わる日になる

📚 季節性・アノマリー: 9月は S&P500 の月平均リターンが 12 か月で唯一のマイナスとされ、歴史的に最も弱い月として知られる。ただし弱さは月内に均等に散らばっていない。Stock Trader's Almanac の Jeffrey Hirsch は、9月のトリプルウィッチング (SQ) 明けの週が過去 34 年で 27 年下落していると指摘しており、要因として四半期末のポートフォリオ組み替えを挙げている。今年で言えば 9/21 (月) からの週が該当する。

一方で、これは長期平均の傾きであって毎年当たるものではない。「9月だから売る」ではなく「9月は下振れの分散が大きく、しかも月の後半に偏る局面に入る」と理解して、想定外に驚かないための材料にするのが実用的である。詳細はアノマリーの項を参照。


7. 今月の学び

8月が教えたのは、月次のリターンはその月の中身をほとんど説明しない、ということだった。

用語 / 概念

  1. 悪いニュースが良いニュースになる局面 — 景気悪化が金利低下期待を通じて株高になる状態。分子 (利益) より分母 (金利) を市場が強く見ているときに起きる。8/7 の雇用統計はその典型だった
  2. 投資評価益による集計の歪み — 保有株式の未実現評価益は会計上の利益に入るが、本業の稼ぐ力ではない。Q2 の EPS +50.4% は 2 社を除くと +32.0% になる。集計値を見るときは、必ず除外後の数字があるかを確認する
  3. P/E 拡張による上昇と益成長による上昇 — 同じ株価上昇でも、利益が増えたのか、同じ利益に払う値段が上がったのかで、金利上昇に対する脆さが違う。8月はフォワード P/E が 19.6 → 20.0 へ上がっており、後者の色が濃い

パターン / 経験則

  • 月間騰落を見るときは、その月のどこで稼いだかを必ず分解する。 8月は +2.62% だが、最初の 5 営業日を除くと -0.93% である。「上がった月」と「上がり続けた月」はまったく違う状態で、後者だけが順張りの成功を意味する。週次終値を 5 つ並べるだけで判別できる

監視指標の閾値表

指標8月末値警戒水域含意
VIX14.92> 20 で警戒、> 25 で守備月内最大でも 16.50。恐怖は一度も定着しなかった
10Y Yield4.758%> 4.85% で株売り加速月間 +1.3bp と動かず。9月の CPI 次第
フォワード P/E20.05年平均 19.9 を超えたら上値が重い7月末 19.6 から反転。P/E 拡張主導の上昇
等加重 RSP vs SPX-0.58pt劣後の継続は上昇の集中を示す7月は等加重が優位 (RSP +1.05% / SPY +0.03%) だった。符号が逆転
金 (Gold)+9.43% (月間)株と同時に上がり続けるのは不安定どちらが先に折れるかが手がかり

8. データソース・引用

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