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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q2 FY26

まちまち
AMDAdvanced Micro Devices, Inc.·2026年8月04日(火) AMC18

AMD Q2 FY26 — 売上 +50%・データセンター +107% の三点上振れで時間外 -8.8%。市場が求めたのは Helios の数字だった

AMD は US 8/4 (火) 引け後に Q2 FY26 決算を発表し、売上 $115.4 億 (前年比 +50%)・調整後 EPS $1.66 (予想 $1.62)・Q3 見通し $130 億 ± $3 億 (予想 $125.2 億) と売上・利益・見通しの三点すべてで予想を上回った。データセンター部門は $67.2 億 (前年比 +107%) と初めて 2 倍を超え、前年同期の $1.55 億の営業赤字から $21.03 億 (営業利益率 31%) へ黒字転換している。それでも時間外は $472 前後まで -8.8% 下落した。売られた理由は数字の未達ではない。決算前 5 営業日で株価が +21% 上げており、市場が織り込んでいたのは上振れではなくラック規模システム Helios 主導の爆発的な見通しだった。Helios は Q3 後半に初期出荷が始まり Q4 で段階的に増えるという定性的な説明にとどまり、$130 億という Q3 見通しはほぼ Helios 抜きの数字である。期待値と実績の差ではなく期待値と期待値の差で売られた四半期であり、セルサイドは決算後に目標株価を軒並み引き上げている。

売上・EPS・Q3 見通しの三点で上振れ、データセンターは +107% で初の 2 倍超。それでも時間外 -8.8%。市場が求めたのは上振れではなく Helios の数字だった。

数字サマリ

EPS

$1.66コンセンサス $1.62上振れ

REVENUE

$11.54Bコンセンサス $11.31B上振れ

EPS

コンセンサス
$1.62
実績
$1.66
上振れ

売上

コンセンサス
$11.31B
実績
$11.54B
上振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

四半期推移

EPS 実績
$1.66Q1 FY26Q2 FY26
AMD の決算 EPS 実績の推移。
売上 実績
$11.54BQ1 FY26Q2 FY26
AMD の決算 売上実績の推移。

主要 KPI

データセンター売上

$67.2 億

+107% YoY

全社売上の 58%。営業利益 $21.03 億 (利益率 31%)、前年同期は $1.55 億の赤字

クライアント売上

$30.6 億

+23% YoY

Ryzen の需要が継続

ゲーミング売上

$7.8 億

-31% YoY

セミカスタム (家庭用ゲーム機向け) の減少。サイクル後半の構造的な減衰

組込み売上

$9.8 億

+19% YoY

営業利益率 40% と全社最高

粗利率 (調整後)

56%

+13pt YoY

コンセンサス一致。Q3 見通しも 56% で横ばい据置

フリーキャッシュフロー (FCF)

$16 億

FCF マージン 14%

手元現金は過去最高の $131 億

設備投資

$8.08 億

前年 $3.89 億から 2 倍超

Helios 生産の先行投資。売られた一因

ガイダンス

項目判定補足
Q3 FY26 売上$130 億 ± $3 億コンセンサス超えコンセンサス $125.2 億を上回る。前年比 +41%、前期比 +13% (中央値)
Q3 FY26 粗利率約 56%コンセンサス並みQ2 から横ばい。ラック規模システム比率の上昇で希薄化圧力
Q3 FY26 営業費用約 $36.5 億コンセンサス並みQ2 の $34 億から増加
FY26 通期売上成長率は従来目標 +35% 超を大幅に上回る上方修正年間 EPS $20 目標も大幅超過見込みと CEO が上方修正
FY27 データセンター前年比 2 倍超上方修正2026 年下期のサーバー売上は前年比 +80% 超を見込む

株価反応

引け値

$518.58

時間外

$472.20

-8.94%

公式情報源

1 行サマリ

AMD は売上・EPS・Q3 見通しの三点すべてでコンセンサスを上回り、データセンター売上は前年同期比 +107% と初めて 2 倍を超えた。それでも時間外で -8.8% 売られた。

理由は数字の未達ではない。決算前 5 営業日で株価は +21%、決算当日の通常セッションだけでも +7.00% ($518.58) と上げきっており、この水準が織り込んでいたのは「上振れ」ではなく「ラック規模システム Helios 主導の爆発的な見通し」だった。AMD が示したのは従来どおり保守的な数字である。期待値と実績の差ではなく、期待値と期待値の差で売られた四半期といえる。

🎯 要点: セルサイドの反応は株価と正反対だった。 決算後 24-72 時間で目標株価を引き上げたハウスは 10 社以上あり、格下げは 1 件も確認できない。中期の数字 (2027 年データセンター売上倍増) は上方修正され、短期の期待値超過だけが不足したという、時間軸のずれである。


数字の中身 — 三点上振れ、収益性は別次元へ

項目実績コンセンサス判定前年同期比
売上$115.4 億$112.8-113.1 億上振れ (+2%)+50%
EPS (調整後)$1.66$1.61-1.62上振れ (+2.5-3.1%)+246%
EPS (GAAP)$1.38+156%
粗利率 (調整後)56%56%一致+13pt
粗利率 (GAAP)54%+14pt
営業利益 (調整後)$30.9 億+245%
純利益 (調整後)$27.6 億+253%

前期比でも売上 +13%、粗利率 +1pt と加速している。フリーキャッシュフロー (FCF) は $16 億 (FCF マージン 14%)、手元現金は過去最高の $131 億に積み上がった。

⚠️ 注記: 粗利率について誤読が広がっている。 一部の解説が「54% が 56% のコンセンサスに届かなかった」と書いているが、これは GAAP 値 (54%) と調整後ベースのコンセンサス (56%) を突き合わせた誤りである。IR の正本では調整後粗利率は 56% でコンセンサスと一致しており、粗利率は売られた主因ではない

📚 用語: GAAP と調整後 (Non-GAAP) の違い GAAP は米国会計基準に厳密に従った利益で、調整後 (Non-GAAP) は株式報酬費用・買収関連の無形資産償却・リストラ費用などを除いた経営陣ベースの利益指標である。AMD の場合、Xilinx 買収に伴う無形資産の償却が大きいため GAAP EPS ($1.38) と調整後 EPS ($1.66) に $0.28 の差が出る。アナリストのコンセンサス EPS は原則として調整後ベースで作られるため、上振れ・下振れの判定は調整後同士で比較しなければならない。異なる基準の数字を突き合わせると、今回の粗利率のように「未達」という誤った結論が生まれる。


セグメント別 — データセンターが全社の 58% を占める企業へ

セグメント売上前年同期比営業利益 (営業利益率)
データセンター (Data Center)$67.2 億+107%$21.03 億 (31%)
クライアント (Client、PC 向け)$30.6 億+23%Client+Gaming 合算 $5.82 億 (15%)
ゲーミング (Gaming)$7.8 億-31%同上
組込み (Embedded、産業機器向け)$9.8 億+19%$3.86 億 (40%)

この決算の本質は、データセンターの営業利益が前年同期の $1.55 億の赤字から $21.03 億の黒字へ転換したことにある。 営業利益率 31% は単なる増収ではなく、構造的な利益率の跳ね上がりを意味する。EPS が +246% になった正体はここである。

Instinct (MI シリーズ) 単体の売上は AMD が開示していない。決算コールで Lisa Su CEO は次のように述べるにとどまった。

"Instinct sales more than doubled year-over-year with the continued ramp of our Instinct MI350 Series." — Lisa Su, AMD CEO

この非開示が、後述する「Helios の数字が欲しかった」という不満の伏線になっている。NVIDIA が四半期ごとにデータセンター売上を明示するのと対照的で、投資家は AI 売上の絶対額を推計するしかない。

ゲーミングの -31% はセミカスタム (Sony・Microsoft の家庭用ゲーム機向け) の減少によるもので、コンソール サイクル後半の構造的な減衰である。全社に占める比率は既に 7% 未満まで下がっており、ノイズ扱いされる規模になった。


Q3 見通し — 上振れだが「爆発」ではなかった

項目ガイダンスコンセンサス判定
売上$130 億 ± $3 億$125.2 億上振れ (+3.8%)
前年同期比+41% (中央値)
前期比+13% (中央値)
粗利率 (調整後)約 56%横ばい
営業費用 (調整後)約 $36.5 億Q2 の $34 億から増

年間目標も引き上げられた。Lisa Su CEO は通期について次のように明言している。

"We now expect revenue to grow substantially above our prior target of greater than 35%, and we expect to significantly exceed our $20 annual EPS target." — Lisa Su, AMD CEO

さらに 2027 年についても踏み込んだ。

"We now expect data center segment revenue to more than double year-over-year in 2027... we expect server revenue to grow more than 80% year-over-year in the second half of 2026." — Lisa Su, AMD CEO

数字だけ見れば、ガイダンスは上振れかつ引き上げである。 それでも株価が下がった理由を次節で分解する。


なぜ好決算で -8.8% だったのか — 3 つの要因

① 期待値のインフレ — 「上振れ」ではなく「圧勝」が要求されていた

決算前 5 営業日で株価は +21%、決算当日の通常セッションだけで +7.00% と、決算を待たずに上げきっていた。売上の上振れ幅は約 +2% で、FactSet の集計による Q2 FY26 の S&P500 平均 (Alphabet を除く EPS サプライズ +12.6%、上振れ企業比率 86%) と比べるとむしろ控えめである。

つまり AMD は「市場平均以下の上振れ幅で、市場平均を大きく上回る事前期待を背負っていた」ことになる。Futurum Group の Daniel Newman CEO の総括が的確だ。

"AMD earnings were good... Market wanted a blowout guide driven by Helios." — Daniel Newman, Futurum Group CEO

📚 用語: 完璧に織り込まれた状態 (Priced for Perfection) とは 株価が良い結果を前提に織り込みきっており、期待どおりの好決算では上昇できない状態を指す。この局面では上振れですら売り材料になりうる。判定の目安は決算前の値動きで、AMD のように発表前 5 営業日で +21% 上げている銘柄は、コンセンサスではなく「非公式に流通する期待値」を基準に採点される。公表コンセンサス EPS $1.62 に対し、Earnings Whisper が集計した非公式の期待値は $1.69 で、実績 $1.66 はこれに届かなかった。決算の良し悪しを判断する前に、株価が決算までに何%動いたかを確認する習慣が、この種の逆説を避ける最も簡単な方法である。

② Helios の売上寄与が数量化されなかった

投資家が最も見たかったのは、ラック規模 AI システム Helios が Q3-Q4 にいくら売上を積むかという具体的な数字だった。Lisa Su CEO の説明はこうである。

"Helios is now in production with initial shipments on track to begin later this quarter and ramp through the fourth quarter and into 2027... Q3 is the very beginning of the ramp, Q4 is a step up, and then Q1 will be a further step up." — Lisa Su, AMD CEO

段階的な立ち上がりは示されたが、$130 億という Q3 見通しはほぼ Helios 抜きの数字である。裏を返せば上乗せ幅が数量化されないまま終わった。「量産が遅れている」のではなく「タイミングの説明にとどまった」というのが正確な理解になる。

設備投資が四半期で 2 倍超に膨らんだ

設備投資は前年同期の $3.89 億から $8.08 億へ 2 倍超になった。Helios のラック生産・検証設備への先行投資として説明はつくが、粗利率が 56% で横ばい据置とセットになると「規模拡大のコストが利益率を食い始めるのでは」という懸念に転化する

Jean Hu CFO はサーバー CPU 側の利益率改善が相殺すると説明したが、明確な粗利率引き上げ見通しは出さなかった。

"The server business is expanding very significantly... from gross margin perspective is accretive to our overall gross margin." — Jean Hu, AMD CFO

📚 用語: ラック規模システム (Rack-Scale System) とは GPU 単体やサーバーボード単位ではなく、GPU・CPU・ネットワーク・冷却を 1 つのラック筐体に統合して丸ごと販売する形態を指す。AMD の Helios は 72 基の MI455X に HBM4 (高帯域メモリ) 31TB を搭載する構成である。売上単価は 1 ラックあたり数百万ドル規模へ跳ね上がる一方、外部から調達する部材の比率が上がるため粗利率は希薄化しやすい。NVIDIA の GB200 NVL72 と同じ土俵にあり、AMD が GPU 部品ベンダーからシステムベンダーへ移行することを意味する。この移行期には「売上は伸びるが利益率は伸びない」局面が挟まりやすく、今回の粗利率横ばい据置はその典型といえる。


決算コールの要点 — 2027 年に賭けた四半期

MI ロードマップ: 現在の主力は MI350 シリーズで、MI355X はクラウド事業者での提供が拡大中。次世代の MI450 シリーズ (Helios に搭載、MI455X が中核) は 2027 年前半から本格展開される。その先の MI500 について Lisa Su CEO は「Instinct 史上最大の世代間の飛躍」と表現し、4 年で推論性能を 2,000 倍以上に高める計画だと述べた。

大口顧客: Anthropic が MI450 シリーズを最大 2 ギガワット規模で Helios に導入する計画で、最初の 1 ギガワットは 2027 年前半から展開が始まる。Microsoft は Azure 上でフロンティアモデルの推論向けに Helios を大規模導入する。OpenAI・Meta・Oracle も計算需要を増やしている。

Epyc サーバー CPU: Lisa Su CEO は x86 サーバー売上シェアの前年比拡大を明言した。第 5 世代 EPYC Turin と第 4 世代 EPYC Genoa の両系列で導入が拡大しており、2026 年下期のサーバー売上は前年比 +80% 超を見込む。AI GPU に注目が集まる裏で、Epyc の粗利率貢献が全社利益率を支える構図が鮮明になった。

⚠️ 注記: 顧客集中リスクは NVIDIA より高い。 AMD の AI 売上は Anthropic・OpenAI・Microsoft・Meta・Oracle という少数の巨大顧客に集中しており、1 社の設備投資計画の変更が四半期業績を大きく振らせる構造にある。2027 年のデータセンター売上倍増という見通しも、この数社の計画が前提になっている点は割り引いて読む必要がある。


アナリスト反応 — 目標株価は軒並み引き上げ

ハウス新目標旧目標格付け
UBS$730$700Buy 維持
KeyBanc$725$530Buy 維持
Benchmark$685$485Buy 維持
Jefferies$640$515維持
Bank of America$620引き上げ
Mizuho$625$615Outperform 維持
Wells Fargo$615$505Overweight 維持
Wedbush$600$450Outperform 維持
Susquehanna$500$450Positive 維持

格下げ・格付け引き下げは 1 件も確認できない。 「時間外 -8.8%」と「目標株価の一斉引き上げ」が同時に起きているのは、セルサイドが 2027 年のデータセンター売上倍増と Anthropic の 2 ギガワット案件を評価して中期の数字を上方修正した一方、株価は短期の期待値超過が不足したことに反応したためである。解釈が割れているのではなく、見ている時間軸が違う。

コンセンサス目標株価は $579 前後で、決算前終値 $518.58 に対して +12% 程度の上値余地がある計算になる。


バリュエーションと NVIDIA との相対

指標AMDNVDA
AI アクセラレータ シェア5-7% 程度75-80% 程度
データセンター成長率+107% YoY
時価総額$8,456 億

AMD は AI アクセラレータ市場でシェア 5-7% と NVIDIA の 75-80% に大きく劣後する一方、分母が小さいぶん成長率では圧倒する。PER が NVIDIA を上回るという「割高さ」は、この成長率格差が何年続くかへの賭けである。今回の決算で示された「2027 年データセンター売上倍増」は、その賭けの根拠を 1 段階強めた。

⚠️ 注記: 予想 PER はソース間で 49 倍から 69 倍まで大きくばらつく。 分母に使う予想 EPS の年度 (FY26 か FY27 か) が統一されていないためである。今回 CEO が「年間 EPS $20 目標を大幅に超える」と示したことで FY26 ベースの分母は上方修正されるため、単一の PER 数値を鵜呑みにせず、どの年度の EPS を分母にしているかを確認する必要がある。


立場別の考え方

立場考え方
未保有時間外の $472 前後は決算前 5 営業日の急騰分を吐き出した水準。Q3 決算 (発表予定 JST 2026/11 上旬) で Helios の初期売上が数字で確認できるまでは、まだ実現していない期待に払う形になる。Helios の実績を待って分割で入る選択肢がある
含み益年初来で大きく上昇した後の決算だが、内容自体は上振れ・見通し引き上げで、見立て (2027 年データセンター倍増) は損なわれていない。一部利益確定でポジションを平常サイズへ戻しつつ、中核部分は Helios の立ち上がり確認まで保有する整理が合理的
含み損直近の高値圏で入った場合。決算内容に瑕疵はなく、粗利率横ばいと設備投資増という懸念材料も Helios 立ち上げの前段コストとして説明がつく。損切りより、Q3 決算での Helios 売上と粗利率の実績を見てから見立ての是非を判定する方が筋が通る

次の四半期 (Q3 FY26) で確認すべき 5 項目

  1. Helios の売上寄与額 — Q3 は立ち上がりの初期。絶対額または「データセンター AI 売上に占める比率」が開示されるか。数量化されない場合、期待値のギャップは Q4 へ持ち越される
  2. 調整後粗利率が 56% を超えるか — ラック規模システムの比率上昇で希薄化するのか、Epyc の利益率改善が上回るのか。AMD のビジネスモデル転換の成否を決める単一指標である
  3. データセンター売上と営業利益率 — Q2 は $67.2 億・31%。Q3 で前期比 +20% 以上かつ利益率 31% 維持なら、成長と利益率の両立が確認される
  4. ゲーミングの底打ち — -31% が続くのか、コンソールサイクルの底が見えるのか
  5. 設備投資の推移 — Q2 の $8.08 億からどこまで増えるか。FCF マージン 14% を維持できるかとセットで見る

出典


免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載された内容は執筆時点で入手可能な情報に基づくものであり、その正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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