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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

DAILY · 2026 / W32

2026/08/04 — 原油 -6% が呼び込んだ全面高でダウが最高値。Amazon が時価総額 3 兆ドル突破、Palantir は米国商業 +149% で時間外 +15%

US 8/3 (月) は S&P500 +1.48% (7,600.50)・NASDAQ +2.13% (25,913.90)・ダウ +1.32% (53,178.41) で、ダウが過去最高値を更新した。起点はトランプ大統領が対イラン攻撃を中止し交渉再開を表明したことで、WTI 原油が 6% 前後急落。原油経由のインフレ期待が後退して 10 年債利回りが 4.69% へ低下し、割引率の低下が高デュレーション資産であるメガキャップ テックを押し上げた。Amazon が +4.6% で時価総額 3 兆ドルを初突破、Meta +6.2%、Microsoft +5.5%、Alphabet +4.3% と決算後の再評価が続く。同日 10:00 ET 発表の 7 月 ISM 製造業 PMI は 55.6 (予想 54.0) と 2022 年 5 月以来の高水準で、雇用指数が 33 か月ぶりに拡大圏へ戻った一方、仕入価格 71.1 は 22 か月連続の 70 超。ラッセル 2000 も +1.70% と追随し、7 月まで続いた『メガキャップだけが上がる』構図から一時的に離れた広いブレッドスの日となった。引け後には Palantir が米国商業 +149%・通期見通し 6.5% 上方修正で時間外 +14.97%。

執筆: kinjo34 分で読了強気

TL;DR

US 8/3 (月) は S&P500 +1.48% (7,600.50)・NASDAQ +2.13% (25,913.90)・ダウ +1.32% (53,178.41) でダウが最高値更新。起点は対イラン攻撃中止と交渉再開表明による WTI 原油の 6% 前後の急落で、インフレ期待後退から 10 年債利回りが 4.69% へ低下し、割引率低下がメガキャップ テックを押し上げた。Amazon +4.6% で時価総額 3 兆ドル初突破、Meta +6.2%、Microsoft +5.5%。同日の 7 月 ISM 製造業 PMI は 55.6 (予想 54.0) と 4 年 2 か月ぶりの高水準で雇用が 33 か月ぶり拡大圏、ただし仕入価格 71.1 は 22 か月連続 70 超。ラッセル 2000 も +1.70% と追随し、7 月の『メガキャップだけ』構図から離れた広い上昇だった。引け後 Palantir が米国商業 +149% で時間外 +14.97%。

マーケット スナップショット

SPX+1.48%

S&P 500 (8/3 終値)

7,600.50

+110.78

IXIC+2.13%

NASDAQ Comp (8/3 終値)

25,913.90

+540.05

DJI+1.32%

Dow (8/3 終値)

53,178.41

+693.38

RUT+1.70%

Russell 2000 (8/3 終値)

2,981.91

+50.57

VIX0.81%

VIX (8/3 終値)

15.86

-0.13

US10Y1.05%

10Y Yield (8/3)

4.69

-0.05

DXY0.19%

Dollar Index (8/3)

99.72

-0.19

USOIL6.70%

WTI 原油 (8/3)

79.00

-5.67

SPX
+1.48%
IXIC
+2.13%
DJI
+1.32%
RUT
+1.70%
VIX
-0.81%
US10Y
-1.05%
DXY
-0.19%
USOIL
-6.70%
主要指数の前日比 (%)。中央が 0、緑=上昇・赤=下落で、バー長は変化率の大きさに比例。

主要シグナル

空売り比率 / AD ライン / Put/Call / VIX / 機関フロー など

今日の主役

原油 -6% とメガキャップ

対イラン攻撃中止 → 原油急落 → 金利低下 → 高デュレーション資産の全面高

市場テーマ

地政学プレミアムの剥落

7月の『エネルギー買い / テック売り』が一日で逆回転した

ブレッドス

ラッセル2000 +1.70%

7月まで続いたメガキャップ偏重から一時的に離れ、上昇の裾野が広がった

節目の突破

AMZN 時価総額 3 兆ドル

初突破。ダウは 53,178.41 で過去最高値を更新

警戒シグナル

ISM 仕入価格 71.1

22 か月連続 70 超。景気の強さ自体が 9 月利上げ論の燃料になる

リスクオン度

8 / 10

VIX 15.86・10Y-3M 106bp と順イールド。ただし原油次第で巻き戻る脆さがある

引け後の主役

PLTR 時間外 +14.97%

米国商業 +149%・通期見通し 6.5% 上方修正。52 週高値からはなお 3 割下

今週の山場

JST 8/7 (金) 21:30

7月 米雇用統計 (NFP)。ISM 雇用の 33 か月ぶり拡大転換の答え合わせ

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この日に発表された決算の詳細レポート

0. 今日のヘッドライン

  • 🏆 今日の主役: WTI 原油の 6% 前後の急落。トランプ大統領が対イラン攻撃を中止し交渉再開を表明したことで、地政学プレミアムが一気に剥落した
  • 🌊 隠れたテーマ: 原油安が下げたのは価格だけではない。インフレ期待が後退して 10 年債利回りが 4.69% へ低下し、その割引率の低下が高デュレーション資産であるメガキャップ テックを押し上げた
  • ⚠️ 警戒: 同日の 7 月 ISM 製造業 PMI は 55.6 と 4 年 2 か月ぶりの高水準で、仕入価格 71.1 は 22 か月連続の 70 超。景気の強さそのものが 9 月利上げ論の燃料になる
  • 📅 今週の山場: JST 8/7 (金) 21:30 の 7 月米雇用統計 (NFP)。ISM 雇用指数が 33 か月ぶりに拡大圏へ戻った直後の答え合わせになる

0.5 引け後の速報 — Palantir が米国商業 +149%

US 8/3 (月) 引け後 (AMC) に PLTR が Q2 FY26 決算を発表した。売上 $1.935B (前年比 +93%)・調整後 EPS $0.41 がともにコンセンサスを上回り、通期見通しを $7.66B から $8.15B へ 6.5% 引き上げた。時間外は $125.65 → $144.45 (+14.97%)

詳細は個別記事 (PLTR Q2 FY26 決算) にまとめた。


1. US 8/3 (月) 引け値レビュー — 原油が下がると、なぜ株が上がるのか

🎯 要点: この日の上昇は「原油 -6% → インフレ期待後退 → 金利低下 → 割引率低下」という 1 本の連鎖で説明できる。 ダウ +693pt の派手さより、10 年債利回りが 5bp 低下したという地味な事実のほうが、値動きの構造を正確に語っている。

数字

指数終値前日比コメント
S&P 5007,600.50+1.48%初めて 7,600 台で引け
NASDAQ Comp25,913.90+2.13%メガキャップ テックが牽引
Dow 3053,178.41+1.32%+693pt で過去最高値を更新
Russell 20002,981.91+1.70%金利低下で小型株も素直に上昇
VIX15.86-0.81%数か月ぶりの低水準圏
10Y Yield4.69%-5bp 前後一時 4.73% から低下
30Y Yield5.23%-4bp 前後2007 年以来の高水準圏は維持
WTI 原油$79 前後-6% 前後一時 -7%。$80 割れ
DXY99.72-0.19%5 営業日続落

セクターは 11 業種中 10 業種が上昇した。リーダーは情報技術 (XLK)・通信サービス (XLC)・一般消費財 (XLY) で、資本財 (XLI)・金融 (XLF) が続く。唯一の明確な下落セクターはエネルギー (XLE) で、原油 6% 安を直撃で受けた。ヘルスケア (XLV) は AstraZeneca が -7% と重石になり相対的に劣後している。

なぜこうなったか — 3 つのドライバー

① 対イラン攻撃の中止が、原油とインフレ期待を同時に下げた

トランプ大統領は「大規模」と表現していた対イラン攻撃を土壇場で中止し、湾岸諸国の要請を理由にホルムズ海峡と核開発を議題とする交渉再開を表明した。これでホルムズ海峡の供給途絶リスクが後退し、原油は年内最大級の下落となった。

ここが重要で、下落したのは原油だけではない。原油は米国のインフレ期待に直結する。原油が下がればガソリン・輸送・素材のコストが下がり、消費者物価指数 (CPI) の見通しも下がる。その結果 10 年債利回りが 5bp 前後低下した。

長期金利の低下は、将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率を下げる。利益の大半が遠い将来にあるグロース株ほど、この割引率低下の恩恵が大きい。この日メガキャップ テックが軒並み 4〜6% 上昇したのは、その典型的な反応である。

📚 用語: 高デュレーション資産 (Long-Duration Asset) とは 債券のデュレーションは「金利が 1% 動いたとき価格が何 % 動くか」を示す指標だが、株式にも同じ概念が使える。利益やキャッシュフローが遠い将来に偏っている企業ほど、割引率 (長期金利) の変化に価格が敏感になる。この性質を持つ株を高デュレーション資産と呼ぶ。赤字でも将来の成長を買われるグロース株が典型で、金利低下局面では大きく買われ、金利上昇局面では大きく売られる。この日の「原油安 → 金利低下 → テック高」という連鎖は、株式を債券のように扱う市場の見方を可視化している。

② 決算後のメガキャップ再評価が、7 月の下げを取り返した

7 月末の大型決算で提示された AI 設備投資 (CapEx) への疑念が、週明けに安心買いへ転じた。

AMZN は +4.6% で時価総額 3 兆ドルを初突破META +6.2%、MSFT +5.5%、GOOGL +4.3%、NVDA +2.9% と続いた。クラウド 3 社の伸び (Azure +43%、AWS +37%、Google Cloud +82%) が設備投資を正当化したという解釈が広がり、7 月の下げを取り戻す動きになっている。

③ ISM 製造業 55.6 が「良い数字」として素直に買われた

同日 10:00 ET (JST 8/3 (月) 23:00) 発表の 7 月 ISM 製造業 PMI (ISM Manufacturing PMI) は 55.6 (予想 54.0、前月 53.3) と 2022 年 5 月以来の高水準になった。生産 58.5・新規受注 56.7 と内訳も改善し、雇用は 52.8 と 33 か月ぶりに拡大圏へ復帰している。

通常なら「強い経済 = 利上げ懸念」で株にはマイナスに働くが、この日は原油下落がインフレ懸念を相殺したため、景気の底堅さだけが素直に評価された。詳細は個別記事 (7 月分 ISM 製造業 PMI) にまとめている。

前日の振り返り — 構造変化のサイン

  • ラッセル 2000 が +1.70% と指数に追随した = 7 月まで繰り返し記録してきた「指数は緑でも小型株は逆行安」という構図から、この日は明確に離れた。金利低下局面では小型株が買われるという教科書どおりの反応で、上昇の裾野が広かったことを示す。ただし 1 日だけの現象であり、局面転換と断定するのは早い
  • 半導体の内部が割れた = 場中に「チップ安」と報じられたが、引けでは NVDA が日中安値 $197 台から切り返して +2.9% で終えた一方、AMD は -2.2% と下落を維持した。全面安ではなくチップ内部の選別であり、AI アクセラレータの価格競争懸念という個別要因が効いている

2. 今日のテーマ分析 — 市場が何を語っているか

テーマ 1: 地政学プレミアムの剥落は、7 月の逆回転である

7 月に起きた「エネルギー買い / テック売り」が、8/3 の 1 日でほぼ逆向きに巻き戻った。

7 月は原油急騰を背景にエネルギーが最強セクターとなり、半導体 SOX は月間 -20.61% と大きく崩れた。8/3 はその真逆で、エネルギーが唯一の下落セクターとなり、情報技術と通信サービスが上昇を主導した。

構造的に見れば、これは同じコインの裏表である。地政学リスクが高まればエネルギーが買われテックが売られ、リスクが後退すればその逆が起きる。7 月と 8/3 の値動きは、どちらも原油という単一変数への反応として説明できてしまう。

だからこそ注意が要る。この日の株高の相当部分が原油急落に依存している以上、交渉決裂の報が出れば原油は急反発し、全面安に戻るリスクがある。実際イラン外務省は直接交渉の開始を否定しており、実態はオマーン仲介にとどまる。合意は確定していない。

🎯 要点: 8/3 の上昇は「良いニュースが出た」のではなく「悪いニュースが引っ込んだ」ことによる。 前者は積み上がるが後者は元に戻りうる。原油関連のヘッドラインへの感応度が、今週は指標や決算と同等かそれ以上に高い状態が続く。

テーマ 2: 割引率が下がる前提は、もう置けない

ISM の仕入価格 71.1 と 7/29 FOMC の 3 反対票が示すのは、議論の軸が「利下げか据え置きか」から「据え置きか利上げか」へ移ったことである。

7/29 の FOMC は 9 対 3 で政策金利を 3.50-3.75% に据え置いたが、反対した 3 総裁 (Hammack・Kashkari・Logan) はいずれも 25bp の利上げを主張した。利上げ方向への 3 票の反対は 2016 年 9 月以来である。

そこへ 7 月 ISM が「成長は加速、しかしインフレは粘る」という材料を持ち込んだ。仕入価格 71.1 は 3 か月連続で低下しているが、なお 22 か月連続の 70 超。回答者のネガティブ コメントの 57% が価格変動に言及し、地政学リスク (43%) を抜いて第一の懸念に浮上している。

CME FedWatch の 9 月利上げ確率は 8/3 午前時点で 64.5%。強い ISM にもかかわらず前週から小幅低下したのは、原油急落によるインフレ期待の後退が効いたためだ。裏を返せば、原油が戻れば利上げ確率も戻るという関係にある。

📚 用語: 拡散指数 (Diffusion Index) の読み方 ISM の各指数は「前月比で増えた企業の比率 + 変化なしの企業の半分」で計算される拡散指数である。実額ではなく方向を測るため、景気の転換点を実体統計より早く捉えられる。ここで注意すべきは、52.8 という雇用指数は「増やした企業がかろうじて多数派になった」水準であって、力強い採用ブームを意味しないこと。実際 18 業種のうち雇用増を報告したのは 6 業種にとどまる。拡散指数を人数の話と混同すると、JST 8/7 (金) の米雇用統計 (NFP) を過大に期待することになる。

テーマ 3: AI 投資は「支出する側」だけが正当化された

情報技術セクターが最強だった裏で、構成銘柄は真っ二つに割れていた。

ハイパースケーラー (自社でクラウド収益を計上する側) が +4〜6% で上昇を牽引した一方、彼らに半導体を売る側の AMD は -2.2% と逆行安になった。この日の「AI 設備投資は正当化された」という物語は、正確には「支出する側の株価だけが正当化された」である。

引け後の PLTR (時間外 +14.97%、米国商業 +149%) も同じ構図に属する。GPU やデータセンターに直接投資せず、既存モデルの上に業務適用層を載せる企業が、売上の 63% をキャッシュに変換しながら +93% 成長した。AI 支出が実装フェーズに入った証拠と読める。

ISM のデータもこれを裏づける。品薄品目の一覧にはメモリ (7 か月連続)・半導体 (5 か月連続)・電子部品 (17 か月連続) が並び、機械セクターの回答者は「当社の半導体最終製品の需要は活況を呈している」と述べた。需要は確かに強いが、その強さが供給制約とコスト高として跳ね返っているのが今の局面だ。7 月末に Apple が 9 月期ガイダンスを下げた理由がメモリ価格の高騰だったことは、この構図の帰結である。

🎯 要点: 「AI 関連」を一括りにした投資判断は、この局面ではもう機能しない。 支出する側 (ハイパースケーラー)・受け取る側 (半導体)・その上に乗る側 (アプリケーション) で、同じテーマの下でも株価の方向が逆になっている。3〜12 か月の視点では、各社が AI 支出のどの位置にいるかを分けて見る必要がある。


3. 注目銘柄 — 深掘り 3 社

3.1 AMZN (Amazon) — 時価総額 3 兆ドルの意味

📎 公式情報源: IR ページSEC EDGAR直近決算 PRSeeking Alpha 決算

観点詳細
何が起きたか8/3 に +4.6% で時価総額 3 兆ドルを初突破。7/31 の +15.32% (2012 年以来最大の単日上昇) に続く 2 段上げ
なぜ売られにくいかAWS が +36.7% と 18 四半期ぶりの最速成長を示し、設備投資を増やしても収益に変換できることを証明した。7/31 時点で 52 週高値まで -2.51% と、主要メガキャップで最も高値に近い
逆風リスク3 兆ドルという水準は、AWS の再加速が今後も続く前提を織り込んでいる。クラウド成長率が 30% を割れば評価の前提が崩れる。関税による物流コスト増も小売部門の重石
長期で見るべき指標(1) AWS の前年比成長率 (今回 +36.7%)、(2) 営業利益率の推移、(3) 設備投資額と AWS 売上の比率
短期で警戒すべきこと7/31 の出来高は平均比 2.83 倍、8/3 も続伸で短期的な過熱感がある。RSI 64 (7/31 時点) は過熱圏ではないが、5 営業日で 20% 近い上昇の後は反落しやすい

長期投資家としての見方: 保有してきた人にとっては、AWS の再加速という当初の投資仮説が数字で裏づけられた局面である。これから買う人にとっては、2 営業日で 20% 上昇した直後という点が悩ましい。3 兆ドルは通過点であって到達点ではないが、押し目を待つ設計のほうが期待値は高い。

3.2 PLTR (Palantir Technologies) — 業績は加速、株価は先に調整済み

📎 公式情報源: IR ページSEC EDGARQ2 FY26 決算 PRSeeking Alpha 決算

観点詳細
何が起きたかQ2 FY26 は売上 $1.935B (+93%)・調整後 EPS $0.41 でともに上振れ、通期見通しを 6.5% 上方修正。米国商業 +149%、純収益維持率 (NDR) 157%。時間外 +14.97%
なぜ売られにくいかGAAP 純利益が初めて $10 億を突破し、GAAP EPS と調整後 EPS がともに $0.41 で一致した。株式報酬を差し引いた後でも同水準の利益が出る収益構造で、現金 $9.2B に対し負債ゼロ
逆風リスクPSR は通期見通し基準で約 42 倍。会社自身が通期見通し +82% と Q2 実績 +93% より低い数字を置いており、下期の減速を織り込んでいる。国際商業 +26% (前四半期比 +2%) が唯一の弱点
長期で見るべき指標(1) 米国商業売上の前年比 (今回 +149%)、(2) NDR (今回 157%)、(3) 米国商業 TCV (今回 +153%、売上に先行する)
短期で警戒すべきこと時間外 $144 は 52 週高値 $207.52 のなお 3 割下。上昇分の持続性は US 8/4 (火) 以降の値動きで確認が要る

長期投資家としての見方: この決算で注目すべきは、株価が 15% 上がったのに売上倍率がほとんど変わらなかったことである。旧見通し基準で約 41 倍、新見通し基準で約 42 倍。今回の上昇は評価の切り上げではなく、分母の増加を株価が追いかけただけだ。保有者は中核維持が基本、未保有者は Q3 の米国商業成長率を確認しながら分割で入る設計が現実的である。詳細は PLTR Q2 FY26 決算 を参照。

3.3 XLE (エネルギー セレクト SPDR) — 全面高の日に唯一沈んだセクター

📎 公式情報源: ファンド概要 (SSGA)構成銘柄EIA 週次在庫統計OPEC 月報

観点詳細
何が起きたか11 業種中 10 業種が上昇した日に、唯一の明確な下落セクターとなった。WTI 原油の 6% 前後の急落を直撃で受けた
なぜ売られにくいか7 月は原油高で最強セクターだった。地政学リスクは消滅ではなく後退にすぎず、イラン外務省は直接交渉を否定している。ホルムズ海峡の通航量も紛争前水準を回復していない
逆風リスク交渉が実際に進展すれば、供給プレミアムの剥落は継続する。ISM の入荷遅延 58.9 が示す物流障害も、正常化すればコスト面の支えを失う
長期で見るべき指標(1) WTI と Brent のスプレッド、(2) ホルムズ海峡のタンカー通航量、(3) 米エネルギー企業の資本規律 (増産か還元か)
短期で警戒すべきこと8/6 (木) の ConocoPhillips (COP) 決算で、原油急落直後の資本配分方針が語られる。ヘッドライン ドリブンの値動きが続きやすい

長期投資家としての見方: エネルギーは 2026 年前半に強かったぶん、地政学プレミアムの剥落局面では最も傷つきやすい。保有してきた人は、原油価格そのものではなく企業の資本規律 (増産に走るか、還元を維持するか) を見ることで、ヘッドラインに振り回されにくくなる。これから買う人にとっては、交渉の進展待ちで下値を探る局面であり、急ぐ理由は乏しい。


4. 今週の経済カレンダー — それぞれがなぜ重要か

JST 日付 / 時刻イベント重要度解釈
JST 8/3 (月) 23:00 【済】7月 ISM 製造業 PMI★★★55.6 (予想 54.0)。4 年 2 か月ぶりの高水準。→ 詳細
JST 8/4 (火) 21:306月 貿易収支★★関税下の輸入動態。GDP 寄与の手がかり
JST 8/4 (火) 23:006月 JOLTS 求人件数★★求人と失業者の比率が Fed の重要参照。NFP の地ならし
JST 8/5 (水) 21:157月 ADP 雇用者数★★★前回 +98,000 と 3 か月ぶり低水準。NFP の前哨戦
JST 8/5 (水) 23:007月 ISM 非製造業 PMI★★★★米 GDP の約 7 割を占めるサービス業。価格サブ指数が最大の焦点
JST 8/6 (木) 21:30新規失業保険申請件数★★NFP 前日で注目度が上がる
JST 8/6 (木) 21:30Q2 労働生産性・単位労働コスト (速報)★★単位労働コストはインフレの基調圧力を示す
JST 8/7 (金) 21:307月 米雇用統計 (NFP)★★★★★今週最大の山場。下記サイドバー参照

主要決算: JST 8/5 (水) 05:00 頃に AMD (US 8/4 引け後)、JST 8/4 (火) 夜に CATMRKMCD (いずれも US 8/4 寄り前)、JST 8/5 (水) 夜に LLYDIS (US 8/5 寄り前)。

AMD は今週最大の個別カタリストになる。コンセンサスは EPS $1.62・売上 $11.3B (前年比 +47%) で、データセンター売上が前年比ほぼ倍増の $65 億規模に達するかが焦点。8/3 に AMD だけが逆行安になったのは、AI アクセラレータの価格競争懸念が意識されたためで、この決算はその答え合わせになる。

📚 用語: なぜ ISM 非製造業 (ISM Services) が製造業より重いのか 米国 GDP に占める製造業の割合は約 1 割にすぎず、サービス業が約 7 割を占める。したがって景気の実体を測るうえでは ISM 非製造業のほうが重要度が高い。とくに今週は価格サブ指数が焦点になる。8/3 の製造業で「パンデミック期より悪い」とされたインフレ懸念がサービス側にも波及していれば、Fed が最も重視する粘着インフレ (Sticky Inflation) の本丸が動いたことになり、9 月の利上げ論は一気に現実味を帯びる。

今週最大の山場: JST 8/7 (金) 21:30 の 7 月米雇用統計 (NFP)

項目予想前回 (6月)
非農業部門雇用者数 (NFP)+85,000〜120,000 人+57,000 人 (予想 110,000 を大幅未達)
失業率4.3% (上昇見込み)4.2%
平均時給 (前月比)+0.3%

7 月分が 6 月から改善する見込みの主因は、レジャー・接客業の反動増という技術的要因が大きい。つまりヘッドラインが改善しても基調の弱さは変わらない可能性が高く、失業率 4.3% への上昇が同時に起これば「雇用の質は劣化」という読みになる。5 月分が 129,000 人へ下方修正された経緯もあり、過去分の改定幅も注視点だ。

ISM 雇用指数が 33 か月ぶりに拡大圏へ戻ったことは、長く NFP の重石だった製造業雇用が反転しうることを示す。+150,000 人を超えれば緩和の根拠は一段と乏しくなり長期金利に上昇圧力がかかる。逆に +50,000 人を下回れば ISM とのシグナル乖離が生じ、9 月利上げ確率は大きく後退する。


5. 今週の政策ウォッチ — 「8/10 の壁」

🎯 要点: 議会は 8/7 (金) で事実上の店じまいになる。 上院は 8/10 から 5 週間の休会に入り復帰は 9/14、下院はすでに地区活動期間で復帰は 9/2。今週が 9 月中旬までの最後の立法ウィンドウであり、ここで動かない法案は 9 月の歳出交渉に押し込まれる。

法案ステータス次の山場影響セクター・銘柄向き
CLARITY Act (暗号資産の市場構造法)下院 294-134 で可決、上院銀行委 15-9 で可決も本会議日程なし8/10 の休会入りが事実上の期限COIN / HOOD🟡
AI OVERWATCH Act (先端 AI チップの輸出規制)下院外交委 42-2 で可決。7/15 に上院 NDAA へ修正条項として組み込みNDAA 両院協議 (9/14 上院復帰後)NVDA / AMD / MU🔴
Section 48D 延長 (半導体の投資税額控除)委員会審議中。現行制度は 2026/12/31 の着工期限で失効12/31 の失効期限。年末税制パッケージが唯一の乗り物TSM / INTC / MU🟢
FY2027 NDAA (国防授権法)下院 216-212 で可決。上院は 7/14 の手続き投票 50-46 で審議入りできず9/14 の上院復帰後に再挑戦LMT / RTX / PLTR🟢
SPEED Act (許認可改革)下院可決済み、上院 EPW 付託。超党派交渉が継続上院 EPW マークアップは 9 月以降VST / CEG / GEV🟢
つなぎ予算 (H.R.9770)下院 220-205 で可決。FY2026 水準を 12/4 まで延長9/30 の歳出期限。上院採決は 9 月中下旬防衛全般・政府調達🟡

実務的な読み方: 法案は「委員会通過」のニュースではなく、乗り物の確保と期限の接近で加速する。AI OVERWATCH は NDAA という必ず成立する法案に乗ったため成立確率が上がり、Section 48D は乗り物が年末税制パッケージしかないまま 12/31 の失効期限が迫る。議会が動かないこと自体が逆風になる法案 (48D) を、動けば追い風になる法案と分けて管理するのが肝になる。

なお 8/10〜9/14 の 5 週間は新規の採決が出ないため、法案由来のニュースフローが止まる。この間の関連銘柄の値動きは法案要因ではないと切り分けられる。


6. 来週への布石

JST 8/12 (水) 21:30 の 7 月消費者物価指数 (CPI) が、来週の単独最大の山場になる。

JST 日付イベント重要度
JST 8/11 (火) 19:007月 NFIB 中小企業楽観指数
JST 8/12 (水) 06:00CoreWeave (CRWV) 決算 (US 8/11 引け後)★★★
JST 8/12 (水) 21:307月 消費者物価指数 (CPI)★★★★★
JST 8/13 (木) 02:0010 年国債入札 ($320 億)★★
JST 8/13 (木) 21:307月 生産者物価指数 (PPI)★★
JST 8/14 (金) 21:307月 小売売上高 (Retail Sales)★★★
JST 8/14 (金) 23:008月 ミシガン大 消費者信頼感 (速報)★★
JST 8/14 (金)Q2 分の Form 13F 提出期限★★

7 月 CPI のコンセンサスは総合が前月比 +0.2%・前年比 2.8%、コアが前月比 +0.3%・前年比 3.0%。ここでの捻れが重要で、総合は 3.5% から 2.8% へ大きく低下する一方、コアは 2.6% から 3.0% へ再加速するという予想になっている。総合の低下はエネルギー要因であり、実勢の物価圧力を示すコアは逆に悪化するという構図だ。市場は見出しの数字ではなくコアの前月比 0.3% が 0.4% に振れるかを見る。

大型決算は Walmart (8/20) と Cisco (8/19) がいずれも翌週にずれるため、来週は指標がほぼ単独で相場を動かす構造になる。

📚 季節性・アノマリー: 8 月は 1950 年以降の S&P500 平均リターンが +0.07% と年間で最も弱い月の一つで、8 月と 9 月は 1945 年以降で最弱の連続 2 か月にあたる。より重要なのはボラティリティの季節性で、月間 -10% 超の下落 9 回のうち 6 回が 8〜11 月に集中している。典型パターンは「8 月前半は夏枯れの薄商いで小幅上昇 → 中旬の CPI 前後で方向感が決まる → 下旬のジャクソンホールを経て 9 月に調整」で、来週はまさにこの中旬の分岐点にあたる。ただしアノマリーは傾きであって毎回当たるものではなく、今年は Warsh 体制のタカ派化・関税・AI 設備投資という個別要因が季節性を上書きしうる。


7. 今日の学び — 長期投資家として覚えておくべきこと

用語 / 概念

  1. 高デュレーション資産 (Long-Duration Asset) — 利益やキャッシュフローが遠い将来に偏っている資産のこと。割引率 (長期金利) の変化に価格が敏感で、金利低下局面では大きく買われる。この日メガキャップ テックが 4〜6% 上昇したのは、原油安による金利低下の恩恵をこの性質で受けたためである
  2. 拡散指数 (Diffusion Index) — 「増えた企業の比率 + 変化なしの半分」で計算される指数。実額ではなく方向を測るため転換点の検知が早いが、人数や金額の大きさは分からない。ISM 雇用 52.8 を「雇用が力強く増えた」と読むのは誤りで、正しくは「増やした企業がかろうじて多数派になった」である
  3. 純収益維持率 (NDR、Net Dollar Retention) — 既存顧客だけで売上が 1 年間にどれだけ増減したかを示す指標。新規顧客を含まないため、新規獲得に頼らず既存顧客の利用拡大だけで成長できているかが分かる。SaaS では 120% 超で優秀とされ、PLTR の 157% はその水準を大きく超える

パターン / 経験則

  • 「悪いニュースが引っ込んだ」上昇は、「良いニュースが出た」上昇より脆い — 前者は元の状態に戻りうるが、後者は積み上がる。8/3 の株高は前者 (地政学リスクの後退) に大きく依存しており、交渉決裂の報が出れば原油とともに巻き戻る。上昇の理由が「消えたリスク」なのか「増えた利益」なのかを毎回切り分けておくと、持続性の判断を誤りにくい

監視指標の閾値表

指標現在値 (8/3)警戒水域含意
VIX15.86> 20 で警戒、> 25 で守備数か月ぶりの低水準圏。楽観に寄っている
10Y Yield4.69%> 4.80% で株売り加速原油安で低下したが、原油次第で戻る
WTI 原油$79 前後> $90 でインフレ再燃、< $70 で需要懸念イラン交渉の進展次第で両方向に振れる
ISM 仕入価格71.1> 70 でインフレ圧力継続22 か月連続 70 超。70 割れが利上げ回避の条件
USD/JPY156 台> 160 で介入リスク日米協調介入後で当面は落ち着く

8. 定点観測 12 指標 (継続観察)

指標前日閾値 (注意/警戒)判定
VIX15.9917.0920 / 28🟢
VIX ターム構造 (VIX÷VIX3M)0.910.86>1.0 でバックワーデーション🟢
MOVE (債券版 VIX)70.8868.16100 / 130🟢
SKEW (テール リスク)141.23139.90145 / 160🟢
Put-Call OI 比 (SPY+QQQ)>1.2 (弱気) / <0.7 (楽観過熱)
HYG÷LQD 20 日変化+1.95%+1.77%−1.5% / −3.0%🟢
セクター ETF 50 日線超本数 (11 本中)77<6 / <4🟢
CNN Fear & Greed45.9745.83<25 (恐怖) / >75 (強欲)🟢
DXY 20 日変化-0.82%-1.05%+2% / +4%🟢
10Y−3M スプレッド (bp)106.398.8<0 (逆転) / <−50🟢
銅金比 20 日変化+8.15%+6.91%−3% / −6%🟢
BTC-SPY 30 日相関0.230.32<0.0 (逆相関) / >0.8 (過熱同期)🟢

🔴 が 3 個以上 → §2 のテーマ分析でリスクオフの背景を必ず言及する。この日は 🔴・🟡 ともにゼロで、ストレス指標は総じて平穏だった。VIX 15.99・ターム構造 0.91 (コンタンゴが健全)・MOVE 70.88 と、株式・債券ともボラティリティは落ち着いている。10Y−3M スプレッドは 106.3bp と十分な順イールドを保ち、景気後退の先行シグナルは点灯していない。銅金比 +8.15% は景気敏感の銅が金に対して優勢という前向きなサインである。

なお Put-Call OI 比はデータ取得に失敗したため とした。前日 (7/31) は 1.48 と弱気に振れており、この日の楽観が持続的かどうかを判断する材料が 1 つ欠けている点は割り引いて読みたい。

⚠️ 訂正: 10Y−3M スプレッドについて、これまでのデイリー §8 では算出スクリプトの単位換算の誤りにより実際の 1/10 の値 (例: 10.6bp) を掲載し、「逆イールド接近 🟡」と判定していた。正しくは 106.3bp で、順イールドは十分に保たれている。過去記事も遡って修正済みである。


9. リスク管理 — 個人投資家向け原則

  • 原油ヘッドラインだけで動かない — 8/3 の株高は対イラン交渉再開という「消えたリスク」に依存している。イラン外務省は直接交渉を否定しており、合意は確定していない。ニュース 1 本で反転しうる上昇に、レバレッジを重ねない
  • 「全面高だから安心」と読み替えない — 11 業種中 10 業種が上昇した日でも、AMD は -2.2% と逆行した。指数の緑は個別銘柄の安全を意味しない
  • JST 8/7 (金) 21:30 の米雇用統計 (NFP) 前にポジションを膨らませない — ISM 雇用の 33 か月ぶり拡大転換で上下どちらにも振れやすい。+150,000 人超なら金利上昇、+50,000 人未満なら景気後退警戒と、同じイベントで逆方向のリスクがある
  • VIX 15.86 で買うべきはヘッジではなく現金 — ボラティリティが低い局面ではオプションのヘッジコストも安いが、方向が読めないときに最も効くのは現金比率である。8〜11 月は歴史的に大きな下落が集中する期間でもある
  • 決算後の初動に飛び乗らないPLTR の時間外 +14.97% は 52 週高値のなお 3 割下での反発である。時間外の値動きは流動性が薄く、翌日の寄り付きで大きく変わりうる

10. データソース・引用

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政策ウォッチ 引用 URL

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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本記事と同期間に発表された決算で、相場文脈に影響したもの。

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