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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q2 FY26

まちまち
TSMTaiwan Semiconductor Manufacturing (TSMC)·2026年7月16日(木) BMO14

TSMC Q2 FY26 — 純利益 +77% の記録的増益でも「設備投資 $60-64B ショック」で売られた AI 覇者

TSMC が US 7/16 (木) 寄り前に Q2 FY26 決算を発表。売上 $40.20B (+33.7% YoY)・純利益は前年比 +77% と過去最高で、ADR EPS $4.31 はコンセンサス ($3.81) を約 13% 上回る記録的ビート。粗利益率 67.7%、HPC (AI 含む) が売上の 66% を占めた。にもかかわらず、2026 通期の設備投資 (CapEx) ガイダンスを従来 $52-56B から $60-64B へ電撃的に上方修正したことで、2nm ランプによる粗利益率希薄化 (通期 3-4pp) とフリー キャッシュフロー圧迫が嫌気され、ADR (TSM) はプレマーケット -4.6% → 引け -2.32% ($419.48) と 6 連敗。NVIDIA / AMD / ASML / AMAT など半導体全般に波及しナスダックを -1.47% 押し下げた。アナリストはむしろ目標株価を軒並み引き上げ、株式市場とプロの読みが真逆に振れた 1 日。

TSMC Q2 FY26 は純利益 +77% YoY・ADR EPS $4.31 と予想比 +13% の記録的ビート、粗利益率 67.7%。だが設備投資を $52-56B→$60-64B へ電撃上方修正し、2nm ランプの粗利益率希薄化 (通期 3-4pp) と FCF 圧迫を嫌気して ADR はプレマーケット -4.6% → 引け -2.32% で 6 連敗。アナリストは逆に目標株価を引き上げ強気。

数字サマリ

EPS

$4.31コンセンサス $3.81上振れ

REVENUE

$40.20Bコンセンサス $39.76B上振れ

EPS

コンセンサス
$3.81
実績
$4.31
上振れ

売上

コンセンサス
$39.76B
実績
$40.20B
上振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

主要 KPI

売上高 (US$)

$40.20B

+33.7% YoY / +12.0% QoQ

四半期として過去最高。NT$ ベース NT$1,270.38B (+36.0% YoY)

純利益 (NT$)

NT$706.56B

+77.4% YoY / +23.4% QoQ

5 四半期連続で最高益を更新

粗利益率

67.7%

+1.5pp QoQ

為替・海外工場の希薄化を吸収

営業利益率

60.3%

+2.2pp QoQ

純利益率 55.6%

HPC (AI 含む) 比率

66%

$26.5B、売上の 3 分の 2

AI 向けがスマホ (22%) を大きく上回る

先端ノード比率

77%

5nm 33% / 3nm 30% / 7nm 11% / 2nm 3%

N2 (2nm) が初の商用貢献

ガイダンス

項目判定補足
Q3 FY26 売上$44.6-45.8Bコンセンサス超え中央値で QoQ +12% / YoY +37%、AI 需要継続
Q3 FY26 粗利益率65-67%コンセンサス未達2nm ランプで単体 ~1.7pp 低下。一部予想 ~67.5% を下回る
FY26 売上成長率40% 超上方修正従来「30% 以上」から上方修正 (米ドルベース)
FY26 設備投資$60-64B上方修正従来 $52-56B から電撃上方修正。コンセンサス ~$58B 超。売られた主因

株価反応

引け値

$429.22

時間外

$400.19

-4.60%

公式情報源

1 行サマリ

TSMC (台湾積体電路製造) の Q2 FY26 は、売上 $40.20B (+33.7% YoY・+12.0% QoQ)、純利益は前年比 +77.4% と過去最高を更新し、ADR ベース EPS $4.31 はコンセンサス ($3.81) を約 13% 上回る記録的なビートだった。粗利益率 67.7%・営業利益率 60.3% と収益性も一段と改善し、HPC (高性能計算、AI アクセラレータを含む) が売上の 66% = $26.5B を占めた。数字だけ見れば「AI 相場の勝ち組」を絵に描いたような四半期だ。

にもかかわらず、ADR (TSM) は US 7/16 (木) にプレマーケットで一時 -4.6% まで売られ、引けは -2.32% ($419.48) とやや戻したものの下落。これで 6 連敗、6/30 の最高値 $479 から -14% となった。引き金は、2026 通期の設備投資 (CapEx、Capital Expenditure) ガイダンスを従来 $52-56B から $60-64B へ電撃的に上方修正したことだ。売上成長率の見通しも「40% 超」へ引き上げたが、投資が先行してフリー キャッシュフロー (FCF、Free Cash Flow) が細り、2nm の量産立ち上げが粗利益率を通期で 3-4pp 希薄化する構図に、市場は「投資回収は本当に見合うのか」というバリュエーションの問いを突きつけた。

🎯 要点: これは前週から続く「需要は本物だが、株価は AI を織り込みすぎ」というテーマを、AI サプライチェーンの中核企業の決算そのものが裏書きした事例だ。記録的な受注 (設備投資の上方修正はその裏返し) が、逆に「株価が既にそこまで期待している」ことの確認になり、好材料出尽くしとして売られた。総合判断: 決算の中身は文句なしの強気 × 短期の株価は織り込み過剰の中立〜弱気

数字の中身

EPS / 売上 — 全項目で過去最高を更新

項目Q2 FY26 実績コンセンサスYoYQoQ
売上高 (US$)$40.20B~$39.76B+33.7%+12.0%
売上高 (NT$)NT$1,270.38B+36.0%+12.0%
ADR EPS$4.31$3.81+77.4%
純利益 (NT$)NT$706.56B~NT$632.6B+77.4%+23.4%
粗利益率67.7%~67%(Q1: 66.2%)+1.5pp
営業利益率60.3%(Q1: 58.1%)+2.2pp

売上・利益ともに四半期として過去最高を更新し、これで 5 四半期連続の最高益となった。ADR の $4.31 は決算前の FactSet 予想 $3.81 を約 13%、純利益では市場予想を約 12% 上回るクリーンなビートで、AI 向けの先端ノード需要がいかに強いかを裏付けた。前四半期 (Q1 FY26: 売上 $35.90B、EPS $3.49) から粗利益率が 1.5pp 改善しており、収益の質も向上している。

プロセスノード別・プラットフォーム別

プロセスノード売上比率プラットフォーム売上比率
5nm33%HPC (AI 含む)66%
3nm30%スマートフォン (Smartphone)22%
7nm11%IoT / 自動車 (Automotive) 他12%
2nm (N2)3%

先端ノード (7nm 以細) が売上の 77% を占める構造で、N2 (2nm) が初の商用貢献 (3%) を果たした。プラットフォーム別では HPC が 66% と過半を大きく超え、TSMC が「スマホの受託製造業者」から「AI 計算インフラの独占的な製造基盤」へ完全に軸足を移したことがわかる。CEO の C.C. Wei は AI の需給ギャップを「非常に大きい (very big)」とし、3nm ラインは稼働率 100% 超で供給制約が続くと明言した。

📚 用語: HPC (高性能計算、High Performance Computing) とは TSMC の売上分類で、AI アクセラレータ (NVIDIA / AMD の GPU)・データセンター向け CPU・ネットワーク チップなどをまとめたセグメント。生成 AI ブームでこのカテゴリが急拡大し、いまや TSMC 最大の収益源になった。スマホ (Smartphone) セグメントを大きく上回っており、「AI がスマホを抜いた」ことが TSMC の売上構成にも表れている。

ガイダンス分析 — 上方修正が「売り材料」になった逆説

設備投資 $60-64B への引き上げ

この決算の核心は、EPS でも売上でもなく 2026 通期の設備投資ガイダンスを $52-56B → $60-64B へ引き上げたことにある。中央値でみると約 $54B → $62B の増額で、コンセンサス (~$58B) を明確に超過した。理由は明快で、AI 向けの先端ノード (N2 = 2nm) と先端パッケージング (CoWoS) の生産能力を、需要に追いつくために前倒しで増強する必要があるからだ。CFO の Wendell Huang は「顧客からの構造的需要が引き続き強いため」と説明した。

通常、設備投資の上方修正は「受注が強い」という強気材料だ。実際 TSMC は通期売上成長率の見通しも「40% 超」へ引き上げている。それでも株価が売られたのは、以下の 3 点が同時に意識されたためだ。

  1. 粗利益率の希薄化 — CFO は N2 の急ランプアップが粗利益率を通期で約 3-4pp 希薄化すると明言。Q3 単体でも 2nm ランプで約 1.7pp 低下し、Q3 ガイダンス 65-67% は一部予想 (~67.5%) を下回った。
  2. FCF の減少 — $62B もの投資が先行するぶん、当期のフリー キャッシュフローは細る。株主還元の原資が圧迫される懸念。
  3. 好材料の出尽くし — 記録的な決算と強いガイダンスは、株価が既にそこまで織り込んでいたことの裏返しでもある。「これ以上のサプライズ余地が乏しい」と読まれた。

📚 用語: CapEx (設備投資、Capital Expenditure) とは 工場・製造装置など、長期にわたって使う資産への投資。半導体製造は「設備投資こそが競争力」の装置産業で、TSMC の CapEx ガイダンスは「今後の AI 需要をどれだけ強気に見ているか」の直接の温度計になる。ただし投資は先に出て回収は後から来るため、上方修正は「将来の需要は強いが、目先の FCF と利益率は削られる」という両面を持つ。

📚 用語: CoWoS (Chip-on-Wafer-on-Substrate / 先端パッケージング) とは 複数のチップ (GPU ダイと HBM メモリ) を 1 つのパッケージに高密度実装する TSMC の先端パッケージング技術。AI アクセラレータの製造で不可欠な工程で、TSMC は世界シェア 9 割超を握る。NVIDIA の GPU 供給のボトルネックになってきた分野で、月産約 9 万枚を年末までに約 12 万枚へ増強する計画。設備投資増額の相当部分がここに向かう。

株価反応 — プレマーケット -4.6% → 引け -2.32% にフェード

好決算にもかかわらず、ADR (TSM) は US 7/16 (木) のプレマーケットで一時 -4.60% ($400.19) まで売られ、レギュラーセッションでは -2.32% (-$9.74、$419.48) で引けた。下げをやや戻したとはいえ、「記録的ビート → それでも下落」という反応は、市場が既に強い決算を完全に織り込んでいたことを示している。この日で TSM は 6 連敗となり、7 月月間では -15% と 2022 年 9 月以来最悪のペースになった。

問題は、この売りが TSMC 単体に留まらなかったことだ。TSMC は AI 半導体サプライチェーンの中核なので、その設備投資姿勢は装置・部材メーカーの需要を左右する。US 7/16 (木) は Lam Research (LRCX) -5.3%・Intel (INTC) -2.8%・Micron (MU) -6.55%・AMD -3.6%・NVIDIA (NVDA) -2.8% など半導体関連が軒並み下落し、半導体 ETF (SMH) は -2.8% ($574.45)。フィラデルフィア半導体指数 (SOX) は 6 月ピークから 3 週間で -20% 超と弱気圏入りした。半導体安がナスダック (-1.47%、25,881.95) を押し下げる主因になり、同日の Alphabet の AI モデル遅延報道 (-4.4%) と重なって「AI 相場の織り込み過剰」への警戒を強めた。

⚠️ 注記: 装置メーカーには「設備投資増額はむしろ追い風」の側面もある。TSMC の CapEx 増額は、ASMLAMATLRCX にとっては受注増を意味する。したがって同日の装置株安は「TSMC 決算そのもの」より「半導体セクター全体の高値警戒・利益確定売り」の色が濃く、論理的にはねじれがある。中期では設備投資サイクルの恩恵を受ける立場である点は、短期の値動きと切り分けて見る必要がある。

決算後の反応 — アナリストは「CapEx 増 = 強気」と読み替え目標株価を引き上げ

好決算・弱い株価反応にもかかわらず、大手はむしろ強気を強めた。UBS は「サプライズの CapEx 引き上げは AI サプライチェーンへの確信を補強する」と評価した。株価が売られた当日に、プロは目標株価を軒並み引き上げている。

ハウス新目標株価 (ADR)変更レーティング
Barclays$625$470 → $625 (Street 最高値)Buy 継続
Goldman Sachs$600$550 → $600Buy
Susquehanna$600$575 → $600Positive 継続
Bank of America$590引き上げBuy 継続
Morgan Stanley$590$490 → $590Overweight 継続

株価が売られた当日にアナリストが強気を強めたのは、「CapEx 増は将来の需要確信の裏返し」というプロの読みと、短期の粗利益率・FCF を嫌気した株式市場の反応が真逆に振れた典型だ。この乖離こそが「良い決算の逆説」の本質を映している。

長期投資家の視点

立場別の判断

  • 強気派の見立て: AI 向け需要は少なくとも数年単位で構造的に強く、TSMC は 2nm / CoWoS で代替の効かない独占的地位にある。設備投資の増額は将来の売上を先取りする布石で、粗利益率 67.7% の高収益を維持したまま成長率 40% 超を実現できるなら、目先の FCF 減少は問題にならない。アナリストの目標株価引き上げはこの読みを反映している。
  • 弱気派の見立て: 株価は既に「完璧な AI シナリオ」を織り込んでおり、記録的決算でも上値を追えない。$62B の設備投資は、AI 需要が想定より早く鈍化した場合に過剰設備の減損リスクを抱える。半導体は歴史的にブーム後の供給過剰で急落してきた業種で、いまはサイクルの最も楽観的な局面にある可能性がある。6 連敗・月間 -15% は、その最初の亀裂かもしれない。

次の四半期 (Q3 FY26) で確認すべき指標

  1. 粗利益率が 65-67% ガイダンスの上限/下限どちらに着地するか — N2 希薄化 (~1.7pp) の実測値。
  2. N2 (2nm) の売上構成比 — Q2 の 3% からどこまで伸びるか。ランプ速度が次世代の収益源を決める。
  3. HPC 比率の推移 — 66% からさらに上がるか。AI 需要の実弾 (受注) の持続性。
  4. CapEx の実行ペースと FCF — ガイダンス $60-64B の上限側で着地するか、FCF 圧迫の程度。

マクロ・他銘柄への含意

TSMC の決算は、単なる 1 銘柄のイベントを超えて AI 半導体サプライチェーン全体の温度計として機能する。今回の「記録的ビートでも売られる」反応は、決算シーズンの序盤に S&P500 のブレンド EPS 成長率が +23% 台と好調で、なおかつ Micron と NVIDIA の 2 銘柄だけで指数の EPS 成長の約 4 割を占める「極端な集中」相場において、その集中の頂点にいる銘柄でさえ「良い数字が既に株価に入っている」段階に来ていることを示す。

政策面では、上院の国防授権法 (NDAA) に相乗りした AI OVERWATCH Act が、NVIDIA の Blackwell クラスの対中販売を約 2 年間禁止する条項を含み、成立すれば半導体の需要見通しに影を落とす。TSMC の顧客 (NVIDIA・AMD) の対中規制リスクは、間接的に TSMC の稼働率にも波及しうる。

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データソース・引用


免責: 本記事は情報提供のみを目的とし、投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。数値は発表時点の暫定・報道ベースを含み、正式な財務諸表・確報で修正される場合があります。

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