DAILY · 2026 / W34
2026/08/19 — 半導体が崩れた日、下落率を決めたのは AI との距離ではなく借金の量だった
US 8/18 (火) は S&P500 が 7,691.76 (-0.69%) と 4 営業日続落した。半導体が総崩れで SOXX -4.96%、Micron -7.02%、ARM -6.67%。だが引き金は決算でも AI 需要の減速でもない。30 年債利回りが日中 5.33% と 2007 年以来の高水準を付け、借入コストの上昇が資本集約型の銘柄を直撃した。証拠は下落率の序列にある。実質無借金の NVIDIA が -2.34% で済んだ一方、長期負債 300 億ドル・自己資本比率で見た負債倍率 14 倍超の CoreWeave は -12.10% だった。同じ AI 銘柄でも、借金の量が下落率を決めている。背景には AI 関連企業の社債発行が 7 月までで 2,440 億ドルと 2025 年通年 (1,080 億ドル) の 2 倍を超え、Bank of America が『長期国債の需要を押しのけている』と指摘する構図がある。AI ブームは今や、米国財務省と同じ資金を奪い合う存在になった。同日発表の 7 月 住宅着工は年率 123.9 万戸 (前月比 -12.4%) と予想を大きく下回り、8/14 の小売売上高 -0.6%・ミシガン大 51.0 と合わせて需要側の弱さが 3 指標で揃っている。
TL;DR
US 8/18 (火) は S&P500 7,691.76 (-0.69%) と 4 営業日続落。半導体が総崩れとなり SOXX -4.96%、Micron -7.02%、ARM -6.67% と下げたが、原因は決算でも AI 需要の減速でもなかった。30 年債利回りが日中 5.33% と 2007 年以来の高水準を付け、借入コストの上昇が資本集約型の銘柄を直撃した形である。証拠は下落率の並びにある。実質無借金の NVIDIA は -2.34% にとどまり、長期負債 300 億ドルの CoreWeave は -12.10% と 5 倍以上下げた。同じ AI テーマでも借金の量が下落率を決めている。背景は AI 関連の社債発行が 7 月までで 2,440 億ドルと前年通年の 2 倍を超えたことで、Bank of America は長期国債の需要を押しのけていると指摘する。一方でヘルスケア +1.60%・エネルギー +1.76% が上昇し、VIX も 15.84 と低位。これは投げ売りではなく資金の配置換えである。7 月 住宅着工は 123.9 万戸 (-12.4%) と予想割れし、需要側の弱さは 3 指標で揃った。
マーケット スナップショット
S&P 500 (8/18 終値)
7,691.76
-53.30
NASDAQ Comp (8/18 終値)
26,289.71
-355.20
NASDAQ 100 (8/18 終値)
29,490.96
-504.42
Dow (8/18 終値)
53,343.40
-116.38
Russell 2000 (8/18 終値)
3,017.89
-39.65
VIX (8/18 終値)
15.84
+0.65
10Y Yield (8/18)
4.71
-0.02
30Y Yield (8/18)
5.29
-0.02
主要シグナル
空売り比率 / AD ライン / Put/Call / VIX / 機関フロー など
今日の主役
半導体の総崩れ
SOXX -4.96% / SMH -4.09%。だが原因は決算ではなく金利
市場テーマ
借金の量が下落率を決めた
NVDA -2.34% に対し CoreWeave -12.10%。同じ AI でも負債で差がついた
構造変化
AI が国債と資金を奪い合う
AI 社債発行 7 月まで 2,440 億ドル。2025 年通年 1,080 億ドルの 2 倍超
30 年債利回り
日中 5.33%
2007 年以来の高水準。終値は 5.285% で前日比 -2.4bp
需要側の弱さ
3 指標が予想割れ
小売 -0.6% / ミシガン大 51.0 / 住宅着工 123.9 万戸
投げ売りではない
VIX 15.84
XLV +1.60% / XLE +1.76%。パニックでなく資金の配置換え
最大の下落
Klarna -22%
初の四半期黒字でも通期ガイダンス引き下げで急落
次の山場
JST 8/20 (木) 3:00
FOMC 議事要旨 (7/28-29 分)。Warsh 体制の利上げ論の温度を見る
この月のマンスリー戦略ノート
この日を含む 1 ヶ月の総括と来月の主要イベント
MONTHLY · 2026年8月
2026年8月 マンスリー — S&P500 +2.62% の上昇は、最初の 5 営業日で終わっていた。利上げ確率が往復して戻ってきた月
上昇は最初の 1 週間で終わっていた。市場は同じ月のうちに「利上げは消えた」と「利上げは来る」を往復し、振り出しの近くで 8 月を終えた。
0. 今日のヘッドライン
- 🏆 今日の主役: 半導体が総崩れになった (SOXX -4.96%、SMH -4.09%)。だが引き金は決算でも AI 需要の減速でもなく、30 年債利回りが日中 5.33% と 2007 年以来の高水準を付けたことである
- 🌊 隠れたテーマ: 下落率の序列が負債の量に比例していた。実質無借金の NVIDIA が -2.34% で済んだのに対し、長期負債 300 億ドルの CoreWeave は -12.10%。同じ AI テーマでも借金の量で明暗が分かれた
- ⚠️ 警戒: AI 関連企業の社債発行が 7 月までで 2,440 億ドルに達し、2025 年通年の 2 倍を超えた。AI ブームが米国財務省と同じ資金を奪い合う構図が長期金利を押し上げている
- 📅 次の山場: JST 8/20 (木) 3:00 の FOMC 議事要旨 (7/28-29 分)
1. US 8/18 (火) 引け値レビュー — 4 営業日続落、だが投げ売りではない
指数は 4 日連続で下げたが、VIX は 16 未満にとどまりディフェンシブ セクターは上昇した。売られた資金は市場の外へ出ていない。
数字
| 指数 | 終値 | 騰落 | コメント |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 7,691.76 | -0.69% | 4 営業日続落 |
| NASDAQ Comp | 26,289.71 | -1.33% | 半導体が主導した下げ |
| NASDAQ 100 | 29,490.96 | -1.68% | 指数間で最大の下落 |
| Dow | 53,343.40 | -0.22% | ディフェンシブが下支え |
| Russell 2000 | 3,017.89 | -1.30% | 金利上昇は小型株にも逆風 |
| VIX | 15.84 | +4.28% | 上昇したが依然 16 未満 |
🎯 要点: 指数の下げ幅より、内部の構造の方が情報量が多い日だった。 VIX が 15.84 と低位にとどまり、ヘルスケアとエネルギーが上昇していることは、これがパニック的な投げ売りではなく資金の配置換えであることを示している。
セクターは明確に二分された。
| 上昇 | 下落 |
|---|---|
| エネルギー (XLE) +1.76% | テクノロジー (XLK) -2.47% |
| ヘルスケア (XLV) +1.60% | 資本財 (XLI) -1.48% |
| 生活必需品 (XLP) +1.06% | 素材 (XLB) -0.88% |
| 金融 (XLF) +0.45% | 裁量消費 (XLY) -0.33% |
エネルギーの上昇は原油高、ヘルスケアと生活必需品の上昇はディフェンシブへの避難である。 個別では Eli Lilly (LLY) が +3.60%、Johnson & Johnson (JNJ) が +3.33% と上げている。売られた資金が現金化されずセクターを移動したという点が、この日の性格を決めている。
前日の構造変化のサイン
サイン 1: 下落率が「AI との距離」ではなく「負債の量」で並んだ。 後述するが、これはこの日の最大の発見である。
サイン 2: 高ベータと低ボラティリティの差が開いた。 高ベータ (SPHB) が -3.38% だった一方、低ボラティリティ (SPLV) は +0.38% と上昇している。同じ市場の中でリスク資産だけが選択的に売られた。
2. なぜ半導体が崩れたか — 決算ではなく借入コストだった
この日、半導体各社から悪材料は出ていない。動いたのは金利であり、痛んだのは借金で設備投資をしている企業だった。
ここがこの日の核心である。
半導体は指数を上回る下げとなった。SOXX -4.96%、SMH -4.09%。個別では Seagate (STX) -9.16%、Teradyne (TER) -8.77%、Western Digital (WDC) -7.43%、Corning (GLW) -7.68%、Micron (MU) -7.02%、ARM -6.67%、Intel (INTC) -6.57%、KLA (KLAC) -5.33% と、広範囲に及んでいる。
しかしこの日、半導体各社から悪い決算やガイダンス引き下げが出たわけではない。 実際に起きたのは、長期金利の上昇が資本集約型のビジネスモデルを直撃したことである。
📚 用語: 金利が株価を下げる 2 つの経路 金利上昇が株価を圧迫する経路は 2 つある。1 つは割引率の経路で、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く率が上がるため、利益が遠い将来に偏る成長株ほど評価が下がる。もう 1 つは実際の調達コストの経路で、借金をして設備投資をしている企業は支払利息そのものが増える。前者は全ての成長株に効くが、後者は借金をしている企業にだけ効く。この日は後者が主役だった。
証拠は下落率の序列にある
同じ「AI 関連」でありながら、下落率には明確な差がついた。
| 銘柄 | 8/18 騰落率 | 財務の特徴 |
|---|---|---|
| NVIDIA (NVDA) | -2.34% | 実質無借金。潤沢な手元資金 |
| AMD | -4.27% | 相対的に健全 |
| Micron (MU) | -7.02% | 装置投資が重いメモリ製造 |
| Nebius (NBIS) | -7.60% | データセンター拡張中 |
| Applied Digital (APLD) | -8.56% | データセンター拡張中 |
| CoreWeave (CRWV) | -12.10% | 長期負債 約 300 億ドル、負債倍率 14 倍超 |
AI テーマの中心にいる NVIDIA が最も下げ幅が小さく、AI 需要の恩恵を最も受けるはずの CoreWeave が最も大きく下げた。 テーマへの近さで説明できない以上、別の変数が働いている。それが負債である。
前営業日との対比が、この構図をさらに裏づける。 US 8/17 (月) には SanDisk が +8%、Western Digital が +6%、Micron が +4〜5% と、メモリ関連だけが指数全面安の中で独歩高になっていた。AI の制約がメモリにあるという見方が買われたのである。それが翌 8/18 には揃って反転した。 需要のストーリーは 1 日で変わらない。変わったのは金利の水準だけである。
CoreWeave は 8/18 に $93.17 (-12.10%) で引けた。同社は Q2 だけで 94 億ドルの設備投資を計上し、長期負債は約 300 億ドルに達する。負債倍率は 14 倍を超え、なお上昇している。借入で計算資源を積み増すモデルは、金利が上がれば直接的に採算が悪化する。
🎯 要点: この日の下落は「AI テーマの否定」ではなく「AI の資金調達コストの再評価」である。 需要が減ったという材料は出ていない。変わったのは、その需要に応えるための資金が高くなったという一点である。
3. 隠れたテーマ — AI が米国財務省と資金を奪い合っている
この日の値動きを本当に理解するには、株式市場の外を見る必要がある。
AI 関連企業の社債発行が急増している。 ハイパースケーラーによる起債は 2026 年 7 月までで約 2,440 億ドルに達し、2025 年通年の 1,080 億ドルの 2 倍を超えた。Meta (META)・NVIDIA (NVDA)・Oracle (ORCL) がそれぞれ 250 億ドル規模の起債を複数回行い、Meta は単独では過去最大となる 300 億ドルの投資適格債を発行している。Morgan Stanley は 2026 年通年で 3,500〜4,000 億ドルに達すると見込む。
問題は、この資金の出し手が国債の買い手と同じであることだ。年金基金や保険会社といった長期の投資家が持つ資金量は有限で、そこに巨額の社債が供給されれば、国債は相対的に高い利回りを提示しなければ買われなくなる。
Bank of America のエコノミストは、AI の借入が「長期国債の需要を押しのけている (crowding out long-end Treasury demand)」可能性を指摘し、利回り上昇の主要因の 1 つに挙げている。
📚 用語: 押しのけ効果 (Crowding Out) の逆転 教科書的な「押しのけ効果」は、政府の借入が民間の資金調達を圧迫する現象を指す。国債が大量に発行されると金利が上がり、企業の設備投資が抑制されるという流れである。ところが今起きているのはその逆で、民間 (AI 企業) の巨額の借入が、国債の買い手を奪っている。教科書の矢印が逆を向いているという意味で、これは記録しておく価値のある局面である。
需給の逼迫は実際の起債条件にも現れている。Amazon (AMZN) は 250 億ドルの起債にあたり、最も年限の長い債券で 18〜21bp の上乗せ利回りを提示する必要があった。買い手を確保するのに追加のコストがかかり始めている。
つまり 8/18 に起きたのは、株式市場と債券市場で同じ 1 つのトレードだった。 AI への投資が債券市場で資金を吸い上げ、それが長期金利を押し上げ、その長期金利が最も借金に依存した AI 銘柄を叩いた。AI ブームが、自分自身の資金調達環境を悪化させているという循環がここにある。
4. 同日の経済指標 — 需要側の弱さが 3 指標で揃った
7 月の住宅着工は予想を大きく下回ったが、先行指標の建設許可は増えている。そして小売・消費者信頼感と合わせ、需要側は 3 指標連続で予想割れとなった。
US 8/18 (火) 21:30 (JST) に 7 月の住宅着工件数 (Housing Starts) が発表された。
| 項目 | 実績 (年率) | 予想 | 前月 (改定) |
|---|---|---|---|
| 住宅着工 | 123.9 万戸 | 135.0 万戸 | 141.5 万戸 (-12.4%) |
| 一戸建て | 80.8 万戸 | — | 89.7 万戸 (-9.9%) |
| 建設許可 | 144.3 万戸 | 138.0 万戸 | 137.4 万戸 (+5.0%) |
📚 用語: 季節調整済み年率換算 (SAAR) が振れを増幅する 住宅着工は「その月のペースが 1 年続いたら年間何戸か」に換算して公表される。実数を 12 倍する形なので、単月のわずかな振れが年率では十数万戸の差として現れる。加えて Census は今回の前月比 -12.4% に ±9.5% の信頼区間を併記しており、統計を作る当局自身が「単月で判断するな」と注記している。見出しの二桁の減少は、統計的にはまだ「弱い 1 点」以上のものではない。
着工は大幅な予想割れだが、先行指標である建設許可は逆に増えている。この不一致は「需要が消えた」ではなく「着工を後ろ倒ししている」と読むのが妥当である。詳細は個別記事にまとめた。
→ 7月分 住宅着工件数 (Housing Starts) — 年率 123.9 万戸で前月比 -12.4%。だが同時に建設許可は +5.0% と増えている
重要なのは、この 3 週間で需要側の指標が 3 つ連続で予想を下回ったことである。
| 発表日 (JST) | 指標 | 実績 | 予想 |
|---|---|---|---|
| 8/14 (金) | 7 月 小売売上高 (Retail Sales) | -0.6% | +0.1% |
| 8/14 (金) | 8 月 ミシガン大 消費者信頼感 (速報) | 51.0 | 54.5 |
| 8/18 (火) | 7 月 住宅着工 (Housing Starts) | 123.9 万戸 | 135.0 万戸 |
一方で物価は 8/12 の CPI (コア前年比 2.5%)、8/13 の PPI (前月比 0.0%) といずれも鈍化していた。物価は落ち着き、需要も落ちている。 これは軟着陸の理想形にも、需要失速の入口にも見える。
⚠️ 注記: 前回のデイリー (8/14) では、7 月 小売売上高の市場予想を +0.2〜0.3% として「雇用が減っても消費は保つか」を論点に挙げていた。実績は -0.6% と、予想を大きく下回る結果になった。 消費は保たなかった、というのがこの答え合わせである。同時に、8/14 の記事で「上振れが株高を保証しない」と注記した Applied Materials は、売上・EPS・ガイダンスすべてが予想を上回りながら当日 -5.35% で引けている。この点は予想どおりだった。
5. その他の注目銘柄
内容の良い決算がガイダンス引き下げで打ち消された Klarna と、原油高に乗ったエネルギー。この日の二極化を個別で示す 2 例である。
Klarna (KLAR) — 初の四半期黒字でも -22%
買い物の後払いサービスを手がける Klarna (KLAR) は、四半期として初の純利益 900 万ドルを計上し、売上も 10.4 億ドル (前年比 +27%) と市場予想を上回ったにもかかわらず、株価は 19〜22% 下落した (下落率はソースにより幅がある)。
理由は通期見通しの引き下げである。通期売上を 43 億ドルから 40.8〜41.6 億ドルへ、取扱高 (GMV) を 1,550 億ドル超から 1,490〜1,510 億ドルへ下方修正した。要因として為替と、最大市場であるドイツの販売の減速を挙げている。加えて CFO と CMO の退任が同時に発表された。
この 2 週間で 4 社目の「良い決算が売られた」事例である (AMD・SpaceX・Cisco・Applied Materials に続く)。ただし Klarna の場合は実績が良くてもガイダンスを下げているため、Cisco 型 (全項目上振れでも下落) とは性格が違う。ここで注目すべきは、下方修正の理由が消費の減速だったことである。 米国の小売売上高と消費者信頼感の弱さは、欧州の消費データとも符合している。
Targa Resources (TRGP) — 原油高で +7.13%
原油が上昇し (Brent は 91 ドル近辺)、エネルギー関連が買われた。Targa Resources (TRGP) は +7.13% と S&P500 で最大級の上昇となっている。背景は米国とイランの和平協議の停滞で、Trump 大統領がホルムズ海峡を巡りオマーンへの軍事行動に言及したことが報じられた。
6. 今週の残り — 議事要旨と PMI
焦点は「利下げか据え置きか」ではなく「据え置きか利上げか」である。議事要旨で利上げ論の温度を測る週になる。
| JST 日付 | イベント | 重要度 |
|---|---|---|
| JST 8/20 (木) 3:00 | FOMC 議事要旨 (7/28-29 分) | ★★★★ |
| JST 8/20 (木) 20:00 | Walmart (WMT) 決算 (US 8/20 寄り前) | ★★★★ |
| JST 8/20 (木) 21:30 | 新規失業保険申請件数 | ★★ |
| JST 8/21 (金) 22:45 | S&P グローバル PMI 速報 (8 月) | ★★★ |
FOMC 議事要旨が当面の焦点である。 Warsh 議長の下で 7/28-29 の会合は据え置きとなったが、議事要旨で読むべきは「利上げを主張した参加者が何人いたか」と「原油高を一時的と見ているか、二次的な波及リスクと見ているか」の 2 点である。
⚠️ 注記: 現在の市場が議論しているのは「利下げか据え置きか」ではなく「据え置きか利上げか」である。 7 月の雇用統計が減少に転じた一方で、CPI は前年比 3.4% と目標を上回り続けており、そこに原油高が乗る。この局面では弱い経済指標が「利上げ回避」として株にプラスに働きうるという、通常とは逆の反応が起きる。8/18 の住宅着工の弱さに対して 10 年債利回りが低下したのは、この経路である。
Walmart (WMT) 決算は、消費の実態を確認する最良の一次データになる。 小売売上高 -0.6%・ミシガン大 51.0 という環境で、生活必需品の比率が高い Walmart がどう着地するか。ここが弱ければ、他の小売はさらに弱いという読みになる。
来週は JST 8/26 (水) 21:30 の PCE デフレータ + GDP 改定値 + 耐久財受注、そして JST 8/27 (木) 早朝の NVIDIA 決算が同じ日に重なる。さらに JST 8/28 (金) には Warsh 議長の Jackson Hole 初講演が控える (正確な時刻は未確定)。8 月最終週にイベントが凝縮している。
7. 今日の学び
用語 / 概念
- 金利が株を下げる 2 つの経路 — 割引率の上昇 (全ての成長株に効く) と、調達コストの上昇 (借金をしている企業だけに効く)。この 2 つを分けて考えると、同じテーマ内の下落率の差が説明できる
- 押しのけ効果 (Crowding Out) の逆転 — 通常は政府の借入が民間を圧迫するが、いま起きているのは民間 (AI 企業) の巨額の借入が国債の買い手を奪う逆方向の現象
- 日中値と終値の区別 — 「30 年債が 2007 年以来の高水準」は日中高値の話であり、8/18 の終値では 10 年債・30 年債とも小幅低下している。カーブの形を判断するときは終値どうしを比べる
パターン / 経験則
同じテーマの銘柄が一斉に下げた日は、下落率の序列を見る。 テーマ全体が否定されたのなら、下落率はテーマへの近さに比例するはずである。ところが 8/18 は逆で、テーマの中心にいる NVIDIA (-2.34%) が最も軽傷で、周辺の CoreWeave (-12.10%) が最も重傷だった。このねじれは「テーマの否定」ではなく「別の変数が効いている」ことのサインである。 この日の変数は負債だった。
セクターやテーマで一括りにされている銘柄群も、財務構造は大きく違う。強気相場では同じように上がるが、金利や信用環境が変わると、その違いが一気に表面化する。 保有銘柄がレバレッジで成長しているのか、稼いだ現金で成長しているのかを、平時のうちに確認しておく価値がある。
もう 1 つ。VIX とセクターの内訳を見れば、下げの性格が分かる。 この日は指数が下げたがヘルスケアとエネルギーは上がり、VIX は 16 未満にとどまった。これは投げ売りではなく資金の配置換えである。全セクターが下げて VIX が急騰する日とは、対処法がまったく違う。
監視指標の閾値表
| 指標 | 現水準 (8/18) | 注意 | 警戒 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 30Y Yield | 5.285% (日中 5.33%) | 5.40% 超 | 5.60% 超 | 借入依存企業への直接的な圧力 |
| 10Y Yield | 4.706% | 4.85% 超 | 5.0% 超 | 成長株のバリュエーション圧迫 |
| VIX | 15.84 | 20 超 | 25 超 | 配置換えか投げ売りかの分岐 |
| Brent 原油 | 91 ドル近辺 | 95 ドル 超 | 100 ドル 超 | インフレ再燃と利上げ論の燃料 |
| CPI (前年比) | 3.4% | 3.5% 超 | 4.0% 超 | 利上げ再開の根拠 |
8. 定点観測 12 指標
| 指標 | 値 | 前日 | 判定 |
|---|---|---|---|
| VIX | 15.84 | 15.19 | 🟢 |
| VIX ターム構造 | 0.914 | 0.858 | 🟢 |
| MOVE | 70.88 | 68.16 | 🟢 |
| SKEW | 143.6 | 142.91 | 🟢 |
| Put/Call OI 比 | — | — | ⚪ |
| HYG/LQD 20 日変化 | +0.80% | +1.28% | 🟢 |
| セクター 50 日線超 | 9 本 | 9 本 | 🟢 |
| CNN Fear & Greed | 53.6 | 54.4 | 🟢 |
| DXY 20 日変化 | -1.64% | -1.51% | 🟢 |
| 10Y-3M | +100.1bp | +102.1bp | 🟢 |
| 銅金比 20 日変化 | -5.57% | -7.16% | 🟡 |
| BTC-SPY 30 日相関 | +0.293 | +0.316 | 🟢 |
🎯 要点: 12 指標のうち 10 が緑で、市場のストレス指標そのものは落ち着いている。 銅金比の 20 日変化が黄色 (景気サイクルの弱含み) である点だけが、この日の需要側指標の弱さと符合している。Put/Call 比はオプション チェーンの取得に失敗したため欠測とした。
9. まとめ
US 8/18 (火) は S&P500 が 4 営業日続落した。だがこの日の価値は下落幅ではなく、下落の内訳が明確なメッセージを持っていたことにある。
半導体が崩れた原因は決算でも AI 需要の減速でもなく、長期金利の上昇による借入コストの再評価だった。その証拠に、下落率は AI テーマへの近さではなく負債の量に比例して並んだ。そして長期金利を押し上げている要因の 1 つが、AI 企業自身の巨額の社債発行である。AI ブームは、自らの資金調達環境を悪化させる規模にまで育った。
同時に、需要側の指標は 3 週連続で予想を下回っている。物価が落ち着き需要も落ちるという組み合わせの解釈は、JST 8/26 (水) 21:30 の PCE デフレータと、JST 8/27 (木) 早朝の NVIDIA 決算で問い直されることになる。
10. データソース・引用
- Yahoo Finance — Stock market today: Dow, S&P 500, Nasdaq fall as chip stocks sell off, bond yields rattle markets (8/18)
- Motley Fool — Stock Market Today, Aug. 18: CoreWeave Falls as Debt-Financing Concerns and Capital Spending Pressures Rise With Interest Rates
- Benzinga — AI's Half-Trillion-Dollar Borrowing Binge Is Competing With Uncle Sam for Bond Buyers
- Yahoo Finance / Bloomberg — AI Is Driving Up Treasury Yields: 'It Just Touches Everything'
- Yahoo Finance — US 30-year yields hit highest level since 2007 as war, oil worries fester
- US Census Bureau / HUD — Monthly New Residential Construction, July 2026 (CB26-127)
- Yahoo Finance — Klarna stock plunges 22% on trimmed guidance as German retail sales slow
- Invezz — Klarna stock plunges 21% as weak outlook overshadows surprise profit (8/18)
- CNBC — S&P 500 falls for a third day, as elevated global bond yields and oil prices weigh on market (8/17)
- Fortune — The AI boom is increasingly built on debt as hyperscalers ramp up their bond blitz
- Sage Advisory — AI Buildout Fuels Hyperscaler Bond Issuance and Credit Spread Volatility
- University of Michigan Survey of Consumers — August 2026 (Preliminary)
- NAHB — Affordability Pressures Keep Builder Confidence Low (2026年8月)
- Federal Reserve — FOMC calendars and information
- 24/7 Wall St. — Marvell Technology Drops 6% as Rising Treasury Yields Swamp a Bullish UBS AI Note (8/18)
免責: 本記事は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。記載された数値は執筆時点の公表値に基づいており、改定される可能性があります。