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Housing Starts約 6 分住宅着工件数 (Housing Starts) とは|意味・株式市場での見方をわかりやすく解説
読み: じゅうたくちゃっこうけんすう
米国勢調査局と HUD が毎月発表する新設住宅の着工数。基礎工事の開始時点でカウントし年率換算 (SAAR) で公表される。金利感応度が最も高く、景気の先行指標として重視される一方、単月の振れが極端に大きい指標でもある。
ひとことで言うと: 米国勢調査局 (US Census Bureau) と住宅都市開発省 (HUD) が毎月共同発表する新設住宅の着工数。金利感応度が最も高いセクターの入口を映すため景気の先行指標として重視されるが、単月の振れが極端に大きく、1 か月の数字だけで判断してはいけない指標の代表格でもある。
住宅着工件数とは
住宅着工件数 (Housing Starts) は、新設住宅建設統計 (New Residential Construction) レポートの中心指標である。建物の基礎 (footings / foundation) の掘削が始まった時点で「着工」としてカウントする。数える単位は建物ではなく住戸 (housing unit) で、集合住宅では掘削開始時にその建物の全住戸がまとめて着工扱いになる。移動式住宅 (HUD-code manufactured homes) は含まない。
公表値は季節調整済み年率換算 (SAAR) で、季節調整後の月次の値を 12 倍したものである。「そのペースが 1 年続いたら年間何戸になるか」を示す換算値であり、将来の予測値ではない点に注意したい。
建設許可 → 着工 → 完成という時間軸
同じレポートで発表される 3 つの兄弟指標は、住宅建設のパイプラインを時系列で切り取ったものである。
| 指標 | 位置 | 意味 |
|---|---|---|
| 建設許可 (Building Permits) | 先行 | 建てる許可を取った段階。着手前の意思表示 |
| 着工 (Housing Starts) | 中間 | 実際に基礎の掘削が始まった段階 |
| 完成 (Housing Completions) | 遅行 | 仕上げ完了。供給が市場に到着 |
許可が先行指標として最も重視されるのは、着工より前の段階の意思決定を捉えるうえ、行政の許可記録という悉皆に近いデータに基づくため振れが小さいからである。建設業者が金利や需要の変化に反応したとき、最初に現れるのが許可、次に着工、最後に完成という順序になる。
許可が増えて着工が減っている月は、パイプラインに仕事は積まれているが着工が止められている状態を意味する。逆に許可が減り始めたら、その先の着工減少はほぼ避けられない。
なぜ重要か — 金融政策の入口
住宅は金利感応度が最も高いセクターであり、金融政策が実体経済に波及する入口にあたる。政策金利の変化は住宅ローン金利を通じて住宅の購入可能額に直結し、需要の変化が建設業者の許可・着工判断に跳ね返る。金融引き締めの効果が実体経済のどこよりも早く現れる場所、という位置づけである。
景気後退の先行指標としての実績もある。Edward Leamer は NBER 論文「Housing IS the Business Cycle」(2007) で、住宅投資が景気後退の最良の早期警戒サインであり、戦後の景気後退の多くが住宅と耐久消費財の悪化に先行されたと論じた。ただし同論文は、1953 年や 2001 年のように需要側の要因で起きたのではない後退では住宅が先行しなかったことも認めている。万能の予言装置ではなく、需要主導のサイクルで効く指標と理解するのが正しい。
株式市場では住宅建設株や資材・住宅関連小売が直接の連想先になる。ただし着工の弱さが「金利低下期待」として株式全体にはむしろ好感される局面もあり、指標の方向がそのまま株価の方向にはならない。景気循環のどの局面にいるかとセットで読む必要がある。
単月の数字で判断してはいけない
この指標を扱ううえで最も重要な注意点である。Census 自身がレポートの説明注記で、トレンドを確認するには建設許可で 3 か月、着工で 6 か月、完成で 6 か月かかると明記している。公表当日に出る前月比の増減は、それ単体ではトレンドの証拠にならない。
さらに Census は変化率に90% 信頼区間を併記している。「2 (±3) パーセントの増加」という表記は、実際の変化率が -1% 〜 +5% の範囲にある可能性が高いという意味である。範囲がゼロをまたぐ場合、増加したのか減少したのかすら統計的には確定していない。着工の月次変化では、この信頼区間が変化率そのものより大きくなることが珍しくない。見出しの数字が二桁の増減でも、統計的に有意でない可能性を疑う習慣を持ちたい。
実務的な読み方は、単月ではなく3 か月移動平均や前年同月比で方向を見ること、そして振れの小さい建設許可を主役に据えることである。
一戸建てと集合住宅を分けて読む
内訳の読み分けも欠かせない。一戸建て (Single-family) は 1 件ずつ積み上がるため月次の振れが相対的に小さく、実需とローン金利環境を素直に反映する。
一方集合住宅 (Multi-family、5 戸以上) は極端に振れやすい。前述のとおり掘削開始時に建物の全住戸がまとめて計上されるため、300 戸の大型プロジェクト 1 件が着工しただけでその月に 300 戸が乗る。翌月に同規模の案件がなければ大きく落ち込む。総数の急変動は集合住宅 1 件で説明がつくことが多いので、見出しが大きく動いたらまず内訳を確認する。実需のシグナルとしては一戸建てのほうが安定している。
関連する用語・指標
住宅関連ではさらに前段に NAHB 住宅市場指数 (NAHB/Wells Fargo Housing Market Index) がある。建設業者への調査に基づく景況感指数で、着工・許可よりさらに早く業者のマインドの変化を捉える。取引量では中古住宅販売 (Existing Home Sales) が市場規模として新築を大きく上回り、価格面では S&P/Case-Shiller 住宅価格指数が同一物件の反復売買から価格変動を測る (公表が数か月遅れる遅行指標)。
需要側の駆動因子としては住宅ローン金利が中心で、その背後にある長期金利の形成を理解するにはイールドカーブや実質金利が手がかりになる。また単月と趨勢の区別という論点は前年同月比と前月比の使い分けそのもので、住宅着工はこの区別が最も効く指標の 1 つと言える。
関連する用語
Yield Curve / Inverted Yield Curve
イールドカーブ (逆イールド)
イールドカーブは年限別の国債利回りを結んだ曲線。短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」は、2年10年・3か月10年スプレッドのマイナス化で測られ、過去の米国の景気後退をほぼ先取りしてきた代表的な先行指標。スティープ化/フラット化の意味と、株式投資での読み方を整理する。
Real Interest Rate
実質金利
名目金利から期待インフレ率を差し引いた、購買力ベースの「本当の利回り」。あらゆる資産の割引率の土台であり、高PERグロース株や金 (Gold) の地合いを左右する。TIPS利回りで直接観測できる。
YoY / MoM
YoY (前年同月比) と MoM (前月比) の乖離
経済指標を「前年同月比 (YoY)」と「前月比 (MoM)」のどちらで見るかで景気の勢いの印象が変わる。両者の算出式の違いと、過去の月が外れて生じるベース効果による乖離の読み方を解説。
Sector Rotation
セクターローテーション
景気循環の局面に応じて、強い業種 (セクター) へ資金が移っていく現象・戦略。景気敏感株と景気防衛株の間を資金が回ることで、相場の局面転換のサインになる。
Defensive vs Cyclical
ディフェンシブ株とシクリカル株
景気敏感度でセクターを2分する考え方。ディフェンシブ株は生活必需品・ヘルスケア・公益などで景気に左右されにくく低ベータ・高配当。シクリカル株は一般消費財・資本財・素材・金融など景気サイクルに業績が連動し高ベータ。景気局面ごとにどちらが主役になるか (セクターローテーション) を読む土台になる。
Duration
デュレーション (金利感応度)
もともとは債券の金利感応度を表す指標。株式に応用すると、価値の多くを遠い将来のキャッシュフローに頼る高PERグロース株ほど「デュレーションが長く」、金利上昇に弱いという見方ができる。
出典
- US Census Bureau — New Residential Construction (Monthly Report)
- US Census Bureau — Survey of Construction (SOC) Definitions
- US Census Bureau / HUD — Monthly New Residential Construction (PDF)
- Edward E. Leamer, "Housing IS the Business Cycle", NBER Working Paper 13428 (2007)
- FRED — New Privately-Owned Housing Units Started: Total Units (HOUST)