MARKET INSIGHT · 季節性アノマリー
中立夏のアノマリー総点検 — 2026 は『Sell in May』が効く悪い半年 + 中間選挙年、4月ピーク→10月底→年末反発の地図
6月のいま、米国株の季節性 (アノマリー) を 2 つの軸で点検する。①半年軸 — 5〜10月は『悪い半年 (Worst Six Months)』で、S&P500 のリターンは平均 +2% 前後と 11〜4月の +7% 前後に大きく見劣りし、8〜9月が歴史的に最弱。②4 年軸 — 2026 は中間選挙年で、4 年サイクルのなかで最も荒れやすい年。歴史的には 4月ごろにピークをつけ夏〜秋に弱含み、10月前後に年内安値、そこから年末へ反発する形が多い。中間選挙年の安値から大統領選前年の高値までは歴史的に強烈な上昇 (ダウ平均 +46.8%) を見せてきた。アノマリーはあくまで『傾き』であって毎回当たるわけではないが、夏の弱さに過剰反応せず秋の押し目を待つ心理的な地図として使える。
2026 は『悪い半年 (5〜10月)』× 中間選挙年のダブル逆風。歴史的には 4月ピーク→10月底→年末反発。夏の弱さに過剰反応せず秋の押し目を待つ地図として使う。
集計スコアカード
季節性データ 1950-2024 ベース
11〜4月 (良い半年)
約 +7%
S&P500 配当込み平均 (1950-2024)。市場上昇の大半が集中
5〜10月 (悪い半年・現在地)
約 +2%
Worst Six Months。プラスだが伸びは鈍い
8月 / 9月 (単月)
≒0% / -0.8%
1945 年以降、歴史的に最弱の連続 2 ヶ月
中間選挙年の年内ドローダウン
平均 -18%
4 年サイクルで最大。選挙前 12 ヶ月では -20% 超の集計も
中間選挙後 12 ヶ月
平均 +16.3%
1962 年以降マイナスなし。安値は絶好の押し目に
中間安値→前年高値 (ダウ)
+46.8%
1914 年以降平均。NASDAQ は +68.2% (1974-)
注目ポイント
- 2026 は『悪い半年 (5〜10月)』と『中間選挙年』が重なるダブルの季節的逆風。ただし両方とも『平均』であって毎回下がるわけではない
- 中間選挙年の定番は 4月ピーク → 夏〜秋に弱含み → 10月前後に年内安値 → 年末へ反発。1950 年以降の多数の中間選挙年で観測
- サンタクロースラリー (12月末5+1月頭2営業日) は平均 +1.6%・勝率 77%、1月の三役そろい踏み (Trifecta) がそろうと年間 90.6% の確率で +17.7%
- 1月効果 (小型株の1月優位) は 1980 年以降あいまい化。広く知られたアノマリーは先回りされて薄れる典型例
- アノマリーは主役 (業績・金利・バリュエーション) を上書きせず、『同じ条件ならどちらに転びやすいか』を補強する脇役として使う
0. ヘッドライン
決算や指標の合間に、いったん カレンダー から市場を眺めてみます。いまは 6月 — そして 2026 年は 米中間選挙の年。この 2 つだけで、米国株には歴史的に 2 つの「季節的な傾き」がかかっています。
一つは 半年軸。5〜10月は俗に 「悪い半年 (Worst Six Months)」 と呼ばれ、S&P500 の配当込みリターンは平均 +2% 前後と、11〜4月の 「良い半年」 の +7% 前後に大きく見劣りします。これが有名な 「Sell in May and Go Away (5月に売って秋まで離れていろ)」 の正体です。もう一つは 4 年軸。2026 は 中間選挙年 で、大統領選サイクルのなかで最も荒れやすい年。歴史的には 4月ごろにピーク → 夏から秋に弱含み → 10月前後に年内安値 → 年末へ反発 という形が繰り返されてきました。
ただし、これは投資判断の主役ではありません。アノマリー (anomaly) は「過去そうだった」という確率の傾きにすぎず、毎回当たるわけでも、業績・金利・バリュエーションを上書きするものでもありません。本記事は、季節性を 「夏の弱さに過剰反応せず、秋の押し目を冷静に待つための地図」 として整理し、正しい距離感の取り方まで示します。
季節性の数値は ページ上部のスコアカードにまとめています。本文では数字を繰り返さず、いまの局面でどう使うかに集中します。
1. 半年軸 — いまは「悪い半年」のど真ん中
「Sell in May」は、相場格言のなかでもデータの裏付けがはっきりしているものの一つです。S&P500 の配当込みリターン (おおよそ 1950-2024 年) では、11〜4月が約 +7% に対し、5〜10月は約 +2%。ダウ平均でも 1950 年以降、良い半年の平均 +7.3% に対し悪い半年は +0.8% という集計があります。市場の上昇の 大半が冬から春に集中 し、夏はやせ細る、という非対称が長期にわたって観測されてきました。
しかも夏のなかでも谷は深い。8月 (平均 ≒ 0%) と 9月 (平均 -0.8%) は 1945 年以降、最も弱い連続 2 ヶ月 とされ、9月は 12 ヶ月で平均リターンが最低の月です。いま (6月) はその入り口に立っているわけです。
ただし重要なのは、「悪い半年 = 必ず下がる」ではない こと。悪い半年でもプラスの年は多く、金融緩和・好業績・強気相場が重なれば夏でも大きく上昇します。実際、毎年機械的に「5月に売って11月に買い戻す」スイッチ戦略が、手数料と税金を払ってまでバイ・アンド・ホールドに勝てるとは限りません。使い方は「夏は伸びが鈍りやすい局面 → 悪材料に過敏になりやすい → 下げても季節性の範囲かもしれない」と 心理的な構えを整える材料 に留めるのが穏当です。
📚 用語: Sell in May (Halloween 効果) とは 5〜10月のリターンが 11〜4月より明確に低いという季節性アノマリー。11月から買い戻すことに着目して Halloween 効果とも呼ぶ。夏休みで出来高が細り流動性が下がる、機関投資家が夏前に利益を確定する、といった要因の組み合わせと推測されるが定説はない。「平均の話であって毎年ではない」のが肝心。
2. 4 年軸 — 中間選挙年は「最も荒れる年」、だが安値は押し目
季節性のもう一つの主役が 大統領選サイクル (4 年サイクル) です。米大統領の任期 4 年に沿って株価のリズムが変わるという経験則で、年ごとの傾向はこう整理されます。
- 1 年目 (就任年): 新政権の政策が見えにくく、平均的〜やや弱め。
- 2 年目 (中間選挙年 = 2026 はここ): 4 年で最も荒れやすい。年内のどこかで大きめの調整が入りやすい。
- 3 年目 (大統領選前年): 歴史的に最も強い年。1939 年以降ほぼ負けなしという集計も。
- 4 年目 (大統領選年): おおむね堅調。
中間選挙年のパターンはとりわけ際立ちます。歴史的に 4月ごろにピーク → 夏〜秋に弱含み → 10月前後に年内安値 → 年末へ反発 という形が多く、年内のドローダウン (高値からの下落) は平均で 18% 前後、選挙前 12 ヶ月では -20% 超 という集計もあります。1 年に何度か来る月次アノマリーと違い、中間選挙年は 4 年に 1 度しか来ないためサンプル数は少なく、確からしさは月次より弱めですが、「荒れやすい」という傾向はかなり安定して観測されています。
そして、ここが投資家にとって重要な点です。中間選挙年の安値は、歴史的に絶好の押し目 になってきました。
- 中間選挙の安値から大統領選前年の高値まで、ダウ平均は 1914 年以降平均 +46.8%、NASDAQ は 1974 年以降平均 +68.2%。
- 中間選挙後の 12 ヶ月は 1962 年以降一度もマイナスがなく、平均 +16.3%。
つまり「中間選挙年の夏〜秋の弱さ」は、4 年サイクルのなかでは 次の強い局面 (大統領選前年) の仕込み場 として機能してきた、というのが歴史の含意です。
📚 用語: 大統領選サイクル (Presidential Cycle) とは 米大統領の任期 4 年で株価のリズムが変わる季節性アノマリー。中間選挙年 (2 年目) が最も荒れやすく、就任 3 年目 (大統領選前年) が歴史的に最も強い。中間選挙年は 4月ピーク → 10月底 → 年末反発が定番で、安値が絶好の押し目になりやすい。ただしサンプル数が少なく、ファンダや外生ショック (危機・パンデミック) は簡単にこの傾きを打ち消す。
3. 2 つの軸を重ねる — 2026 夏の「地図」
半年軸と 4 年軸を重ねると、2026 年の夏〜秋は 「悪い半年」× 「中間選挙年」のダブルの季節的逆風 がかかっている局面、と整理できます。どちらも単独で「夏は伸び悩みやすい」と言い、合わさると弱含みやすさの確率はさらに傾きます。
ただし、これを 「だから売る」と読むのは誤読 です。アノマリーが示すのはあくまで「同じ条件なら、どちらに転びやすいか」という確率の傾きであって、
- 平均であって毎回ではない — 強気相場では夏でも上がる。
- 広く知られた効果は薄れうる — 皆が同じ動きをすれば先回りされる。
- 主役はファンダとバリュエーション — 業績・金利の本筋が傾きを上書きする。
この 3 つを忘れなければ、季節性は 「夏の悪材料に過剰反応せず、秋 (10月前後) の押し目を冷静に待つ地図」 として機能します。逆に言えば、11月以降の「良い半年」かつ「大統領選前年」へ向かう局面は、歴史的には追い風が重なる時間帯。いまはその 仕込みのタイミングを探る季節 と位置づけられます。
4. 年末年始のアノマリー — 先回りして地図に入れておく
夏の話の延長で、年末年始の季節性も先に地図へ入れておきます。
- サンタクロースラリー: 12月最終 5 営業日 + 1月最初 2 営業日 (計 7 営業日) の S&P500 リターンは平均 +1.6%・勝率 77% と、通常の 7 営業日 (+0.2%) を大きく上回ります。むしろ 「不発」のときが翌年の警戒サイン とされます。
- 1月のバロメーター: 「1月の動きがその年を占う」という経験則。サンタクロースラリー・1月最初 5 営業日・1月全体の 三役そろい踏み (Trifecta) がすべて上昇した年は、S&P500 が 90.6% の確率で年間 +17.7% 上昇したという集計があります。
- 1月効果 (小型株の 1月優位): 上記とは別物で、年末の損出し売りの反動とされます。1940〜70 年代に顕著でしたが、1980 年以降は広く知られて先回りされ、あいまい化。アノマリーが「効きすぎると消える」典型例です。
📚 用語: 1月のバロメーター (January Barometer) とは 「1月の S&P500 がプラスなら年間も上がりやすい」という季節性アノマリー。サンタクロースラリー・1月最初 5 営業日・1月全体の 3 指標がそろう (January Trifecta) と勝率が跳ね上がる。ただし相関であって因果ではなく、大きく外す年もある。小型株が 1月に強い「1月効果」とは別概念なので混同に注意。
5. 長期投資家への含意 — アノマリーとの正しい距離感
季節性アノマリーは、上手に付き合えば「地合いの先験的な傾き」を与えてくれる便利な道具ですが、距離を誤ると高くつきます。3〜12 ヶ月の視点で、いまの局面に効く使い方を 3 点に絞ります。
- 夏の弱さは「想定内」として受け止める。悪い半年 × 中間選挙年で弱含んでも、それが構造的な悪化 (景気後退・信用不安) でなければ「季節性の範囲」と割り切り、慌てて投げない。
- 10月前後を押し目の候補として意識する。中間選挙年の年内安値は歴史的に絶好の仕込み場になってきた。ただし「10月に必ず底」ではないので、価格やバリュエーションと併せて段階的に。
- 年末〜来年の追い風を地図に入れておく。良い半年 (11〜4月) かつ大統領選前年へ向かう局面は、季節性が最も味方しやすい時間帯。サンタクロースラリーと 1月のバロメーターは、その地合いを測る温度計として使う。
繰り返しになりますが、これらはすべて 「平均」 です。アノマリーは投資判断の主役ではなく、業績・金利・バリュエーションという本筋を補強する脇役。次の確認ポイントは、(1) 夏〜秋の下げが季節性の範囲か構造的悪化か (クレジットスプレッド・景気指標で判別)、(2) 10月前後に出来高を伴う底打ちのサインが出るか、(3) 年末にサンタクロースラリーが点くか不発か、の 3 点です。
6. 出典・データの扱い
本記事の季節性データは、CFA Institute・U.S. Bank・Capital Group・Stock Trader's Almanac 系の集計および学術研究 (Bouman & Jacobsen, 2002) を複数突き合わせたものです。各種の「平均リターン」は集計期間 (主に 1950-2024 年) と算出方法 (配当込み/除く、指数の違い) によって数字が前後するため、本文・スコアカードでは おおよその水準 として丸めて示しています。厳密な数値は出典リンク先の原典をご確認ください。
⚠️ 本記事は公開データ・学術研究を複数ソースで照合し、編集部の解釈を加えた独自分析です。記載の季節性・アノマリーはいずれも 過去の平均的傾向 であり、将来のリターンを保証するものではありません。投資判断は業績・バリュエーション・マクロ環境を主軸に、季節性は補助的な参考材料としてご利用ください。
出典・データソース
- CFA Institute — The Halloween Indicator, A Stock Market Anomaly Stronger than Ever
- U.S. Bank — How midterm elections affect the stock market
- Capital Group — Can midterm elections move markets? 5 charts to watch
- Bouman & Jacobsen — The Halloween Indicator (American Economic Review, 2002)
- Financial Planning Association — Yes, Virginia, There Is a Santa Claus Rally
- Investopedia — Sell in May and Go Away / Presidential Election Cycle
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