用語 · ファンダ
EV/EBITDA約 3 分EV/EBITDAとは|意味・算出式・P/Eとの違いをわかりやすく解説
読み: イーブイ・イービットディーエー
EV/EBITDA は企業価値(EV=時価総額+純有利子負債)を EBITDA で割った倍率。資本構成・税・減価償却の影響を除くため、負債水準の異なる企業や国をまたいだ比較、M&A 評価で P/E より使われる。何年分の本業利益で会社を丸ごと買えるかを示す。
ひとことで言うと: EV/EBITDA は「会社を丸ごと買ったら、本業のキャッシュ創出力の何年分で元が取れるか」を示す倍率。資本構成・税・減価償却の差を消すので、P/E より公平に企業を横並び比較できる。
EV/EBITDAとは
EV/EBITDA は、企業価値 (Enterprise Value, EV) を EBITDA (利払い・税引き・減価償却前利益) で割った倍率。「EBITDA 1ドルあたり投資家がいくら払っているか」を測る相対バリュエーション指標で、M&A や同業比較 (コンプス分析) の定番として使われる。
分子の EV = 株式時価総額 + 純有利子負債 (有利子負債から現金・現金同等物を引いたもの)。株主だけでなく債権者も含めた「会社全体を買い取るのに必要な値段」を表す。
分母の EBITDA = 営業利益 + 減価償却費・償却費 (= 営業利益に減価償却・償却を足し戻したもの)。当期純利益を起点にすると 当期純利益 + 利息 + 税 + 減価償却・償却 とも書ける。いずれの式でも設備投資が大きい会計上の歪みを除き、本業が生むキャッシュの近似値として機能する。
両者を割った EV/EBITDA は、「買収価格を、本業利益の何年分で回収できるか」という直感的な意味を持つ。倍率が低いほど割安とされるのが一般的だ。
なぜ重要か / 株式市場での見方
最大の利点は 資本構成・税・減価償却に中立な点。P/E は株価 (= 株主価値) を当期純利益で割るため、(1) 借入の多寡で利息費用が変わり、(2) 法人税率の差、(3) 減価償却方針の違いがそのまま分母に効いてしまう。EV/EBITDA はこれらをすべて足し戻すので、負債水準の異なる企業同士や、税制・会計基準が違う国をまたいだクロスボーダー比較で P/E より公平になる。買い手が買収後に資本構成を組み替えることを前提とする M&A では、特に EV/EBITDA が物差しになる。
目安は業界依存だが、一般にアナリストは 10倍以下を割安寄りと見ることが多い。一方、ソフトウェアなど高成長セクターでは 20倍超でも普通で、公益や資本集約型ではもっと低い。業界横断の絶対比較は意味が薄く、必ず同業 (ピア) と比べるのが鉄則だ。
誤解しやすい点は二つ。第一に EBITDA は設備投資 (CapEx) を無視するため、工場・航空機・鉱山など CapEx 重い業界では「本当の手元キャッシュ」を過大評価しがち。第二に、EBITDA は GAAP の利益ではなく、企業が定義を調整 (Adjusted EBITDA) しやすい。フォワード EV/EBITDA を使うなら EBITDA 予想の前提も確認したい。
関連する用語・指標
株主価値ベースの代表格であるフォワード P/Eとは対になる存在で、両方を併用すると資本構成の影響を切り分けられる。CapEx 控除後の真の手元キャッシュを見るFCFやFCF マージンは EV/EBITDA の弱点を補う。会計利益の質を測るGAAP vs Non-GAAP EPSの視点は、Adjusted EBITDA の調整を読むときにも効く。倍率の縮小局面を指すディレーティングも併せて押さえたい。
関連する用語
Forward P/E
フォワード P/E (予想 PER)
株価を「今後 12 か月の予想 1 株利益 (EPS)」で割った予想株価収益率。実績ではなく将来予想を使うのが特徴で、単独の数値ではなく 5 年・10 年平均との比較で割高・割安を判断するのが鉄則。
FCF
FCF (フリーキャッシュフロー)
営業キャッシュフローから設備投資 (CapEx) を差し引いた、事業が生み出す自由に使える現金。会計上の利益と違って実際の現金の増減を捉えるため「本当に稼ぐ力」を映す指標とされる。
FCF Margin
FCF マージン (フリーキャッシュフロー利益率)
フリーキャッシュフロー (FCF) を売上で割った比率。売上 1 ドルのうち何セントが自由に使える現金に変わるかを示し、会計上の利益ではなく実際の現金創出力で企業の質を測る指標。
GAAP / Non-GAAP EPS
GAAP EPS と Non-GAAP EPS
GAAP EPS は会計基準どおりに計算した 1 株利益、Non-GAAP EPS はそこから一時要因や非現金費用を除いた「調整後」の 1 株利益。両者がどう違い、なぜ両方を見るべきかを解説。
De-rating
評価倍率の巻き戻し (De-rating)
利益 (EPS) が変わらない、あるいは増えていても、市場が許容する評価倍率 (P/E など) が下がることで株価が下落する現象。金利上昇や成長期待のはがれで起きる「マルチプル・コントラクション」の下げ方向を指す。
CAPE / Shiller P/E
CAPE (景気循環調整後 P/E)
株価をインフレ調整済みの過去 10 年平均利益で割って算出する長期バリュエーション指標。1 年の利益のブレを均すことで景気循環の影響を取り除き、市場が割高か割安かを長期目線で測る。ロバート・シラーが普及させ「Shiller P/E」とも呼ばれる。