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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

STOCK · MU

まちまち狭い (競争優位はあるが盤石でない)
MUMicron Technology情報技術 (Information Technology)16

MU — AIメモリのスーパーサイクルに乗るDRAM/HBM専業、粗利率81%とコモディティの宿命を天秤にかける

Micron (MU) は DRAM (売上の約8割) / NAND (約2割) / HBM のメモリ専業大手。AIデータセンター需要で FY Q2 2026 (2月期) は売上 +194%・粗利率約75%・データセンター売上 +150% 超と過去最高を更新し、Q3 は売上 $33.5B・粗利率約81%・EPS $19.15 をガイド (結果は 2026/6/24)。HBM は2026年分が完売、HBM4 は NVIDIA Vera Rubin で3社認定済み。ただし HBM は SK Hynix が約6割超で先行し Micron の HBM4 配分は3番手。メモリは価格次第のコモディティで、粗利が81%から1桁台へ振れる宿命。WDC 急騰で火がついたAIストレージ物色の本命格だが、フォワード P/E 約10〜12倍は『ピーク利益の罠』に注意。判定は mixed。

AIメモリのスーパーサイクルに乗る DRAM / NAND / HBM 専業。粗利率80%超と HBM 完売が示す構造変化を、コモディティ (価格変動) の宿命と HBM4 の3番手という現実とどう天秤にかけるか。

スナップショット

2026-06-17 (株価・時価総額は時点依存。時価総額は概ね $800B〜$1T 規模、本文では定性で扱う) 時点

株価

$0.00

時価総額

$800B+

52 週レンジ

$0.00 $0.00

バリュエーション

指標比較補足
フォワード P/E (FY2027 EPS基準)約10〜12倍半導体セクター中央値より低いFY2027 EPS $100超想定で割安に見えるが、ピーク利益×低倍率という典型的なコモディティの罠。EPSが想定通り実現するかが前提
トレーリング P/E約50倍前後歴史的高水準直近12か月EPS基準だと高い。フォワードとの巨大な乖離=サイクル急回復を市場が織り込み済みの証左
P/B (株価純資産倍率)約15〜17倍セクター中央値を大幅に上回る資産集約型のメモリ企業としては割高。サイクルボトムのP/B (1倍割れ) との落差がダウンサイドの目安
EV / サイクル正常化利益算定困難粗利率が38%→56%→75%→81%へ1年で激変。単年EPSでなく『サイクル平均利益』で見ないと評価を誤る
配当30%増配を実施利回りは低い (成長株扱い)フリーキャッシュフロー $6.9B (四半期過去最高) を背景に株主還元を拡充。ただし巨額設備投資が優先で利回り目的の銘柄ではない

競合との比較HBM市場シェアとフォワード P/E、AIメモリ/ストレージ感応度

企業自社との対比補足
WDCWestern Digital6/15に+16%・目標$650 (JPM/MS)AIストレージ物色の象徴・HDD側AI由来でHDD供給が需要に10〜15%不足との見方で急騰。NANDはMicronと競合、HDD偏重で『AIストレージ』テーマの相方。MUと連動しやすい
STXSeagate TechnologyWDCと並ぶHDD大手AIニアライン/大容量HDDWDCと同じAIデータ保管の追い風。HDDはMUのNANDと一部代替・一部補完。AIストレージ物色の連れ高対象
SNDKSandiskNAND専業 (WDから分離)NANDピュアプレイNAND市況に純粋連動。MUのNAND部門の市況を映す鏡。NAND ASPは前四半期比約70%上昇とDRAM以上の伸び
NVDANVIDIAHBM最大の需要家川下のAIアクセラレータVera RubinでHBM4を3社調達。MUのHBM需要の源泉だが、配分はSK Hynix>Samsung>Micronの順でMUは3番手

ファンダメンタルズ

FY Q2 2026 売上 (2月期)

約$23.7B

+194% YoY

DRAM $18.8B (全体の79%) / NAND $5B (21%)。成長のほぼ全てがASP (単価) 上昇由来で、数量は中〜低一桁%増にとどまる点が両刃

粗利率 (非GAAP)

約75% → Q3ガイド約81%

前四半期56%・1年前38%

HBMと値上がりしたDRAMが牽引。歴史的にはサイクル悪化で15〜20pt圧縮するリスク

Q3 2026 見通し

売上 $33.5B±$0.75B / EPS $19.15±$0.40

結果は2026/6/24発表。アナリスト売上予想は$33.7B〜$40.9Bと$7B超のレンジ=ランプ速度への不確実性が大きい

データセンター売上

+150%超 (YoY)

HBM3EがNVIDIA/AMD等のAIアクセラレータ向けに伸長。事業構造がPC/モバイル中心からAIデータセンター中心へシフト

設備投資 (CapEx)

FY2026 $25B超、FY2027さらに増

米国 (Idaho DRAM・NY Clay fab) で約$200B規模の長期計画。CHIPS法$6.4B+NY州$5.5Bの補助。需要が続く前提の巨額投資

フリーキャッシュフロー

四半期過去最高 約$6.9B

価格上昇局面ではメモリは強烈なキャッシュ創出力。ただしサイクル反転時は設備投資先行で一気に細る

強気材料 / 弱気材料

強気材料

  • AIメモリ需要の構造的拡大

    ハイパースケーラのAI投資でHBM・データセンターDRAMが牽引。HBMは2026年分が3社とも完売、Micronも価格・数量を契約済み。NANDも『当面、供給を大幅に上回る需要』と会社側がコメント。単なる在庫循環でなく需要の地殻変動

  • 粗利率の急拡大とミックス改善

    粗利率が1年で38%→約81% (Q3ガイド) へ。コモディティDRAMより製造難度が高く付加価値の大きいHBMの比率上昇が、サイクルのボラを構造的に和らげる可能性。フリーキャッシュフローも四半期過去最高

  • フォワード P/E の低さ

    FY2027 EPS $100超想定でフォワード P/E 約10〜12倍。利益が想定通り出れば株価に対し利益が割安で、利益実現に伴う再評価 (倍率の切り上げ) の余地

  • 米国内製造とCHIPS法

    Idaho・NYで約$200B規模の国内fab計画、CHIPS法$6.4B+NY州$5.5Bの補助。サプライチェーン分散と地政学耐性、2035年に先端メモリ世界生産の約10% (現状<2%) を狙う

  • AIストレージ物色の本命

    WDCの+16%急騰 ($650目標) で火がついたAIストレージ/メモリ物色テーマで、HBM+DRAM+NANDをフルラインで持つMUは中核。6/24決算が同テーマの実需を試す試金石

弱気材料

  • メモリ価格下落の宿命

    成長のほぼ全てがASP上昇由来。過去5年でDRAMの年間ASP変化は+40%台〜-40%台と激しく、粗利率は50%超から1桁・赤字まで振れた実績。価格反転に極めて脆弱で、81%の粗利は守りにくい

  • HBM4で3番手

    NVIDIA Vera RubinのHBM4配分はSK Hynix 60〜70% / Samsung 25〜30% / Micron 約10〜15%。最も成長するHBM4でMicronの取り分が小さく、ピア比で成長ペースが制約される。一部では『初期Rubinビルドから外れる』との懸念報道も

  • 中国勢 (CXMT/YMTC) の台頭

    CXMT/YMTCがマージン度外視の数量戦略で低〜中価格DRAM/NANDのシェア (推定5〜10%) を拡大。先端HBMはまだ非対応だがコモディティ領域の価格を押し下げ、2026後半にかけ市況悪化を早めるリスク

  • 巨額設備投資のレバレッジ

    FY2026 $25B超、FY2027さらに$10B超増。需要が想定通り続く前提の投資で、サイクル反転時はフリーキャッシュフローが急速に細り損益分岐が悪化。資産集約型ゆえダウンサイドが大きい

  • ピーク利益の罠と高い期待

    目標株価が6月に$1,500超へ一斉上方修正されるなど期待が過熱。ピーク利益×低倍率のコモディティは、利益が崩れる前に株価が崩れる (過去$98→$48等) のが定石

投資の見立てと「外れる条件」

各見立ては「何を予想しているか」だけでなく「何が起きたら外れか」をセットで明示する。下の「外れる条件」が満たされたら、その見立ては見直しが必要になる。

AI由来のHBM/データセンターDRAM需要が2027年まで続き、Micronの粗利率は高位 (おおむね70%超) を維持してEPS拡大が実現する

成立
反証条件
DRAM/NANDのASPがQoQで明確に下落に転じる、または会社の粗利率見通しが四半期で複数pt下方修正される
確認方法
2026/6/24 (FY Q3決算) 以降の四半期ごとのASP・粗利率

HBMミックスの上昇により、本サイクルは過去のメモリサイクルよりダウンサイドが浅い (粗利の振れが構造的に縮小する)

評価中
反証条件
HBM単価が下落し汎用DRAM並みのコモディティ化が進む、または中国勢のHBM参入が前倒しで現実味を帯びる
確認方法
2027年のHBM4E量産動向 (TSMC協業)

WDC急騰で点いたAIストレージ/メモリ物色は実需に裏打ちされ、MUの6/24決算がそれを追認する

評価中
反証条件
2026/6/24決算後に見通しが市場予想 (売上$33.7B〜$40.9Bレンジの上振れ期待) に届かず失望売りとなる
確認方法
2026/6/24 決算反応

HBM4の3番手という劣後は、汎用DRAM超タイトとNAND不足が補い、全社利益成長を大きくは損なわない

揺らぎ
反証条件
HBM4でのシェアがさらに低下し、かつ汎用メモリ市況も同時に悪化する『二正面』が起きる
確認方法
四半期ごとのHBM配分・DRAM ASP動向

リスク

リスク要因重大度補足
メモリ価格の急反転 (供給過剰)サイクルのコアリスク。ASP下落で粗利率が二桁ptで圧縮し、株価がEPS悪化に先行して崩れる。中国勢の増産が引き金になり得る
HBM4でのシェア劣後最も成長するHBM4でSK Hynix/Samsungに先行され、配分3番手。成長ペースがピア比で見劣りし、初期Rubinビルドから外れる懸念報道もある
巨額設備投資の需要前提崩れ$200B規模の国内投資はAI需要継続が前提。AI設備投資がピークアウトすればフリーキャッシュフローが急速に細り、減価償却負担で損益が悪化
バリュエーション/期待過熱目標株価が$1,500超へ急騰するなど楽観が極端。見通し未達やマクロ悪化で、期待剥落による調整幅が大きい

今後の注目イベント

イベント時期注目度補足
FY Q3 2026 決算 (5月期) 発表2026/6/24 (引け後)売上$33.5B・粗利率81%・EPS $19.15ガイドの達否、Q4見通し、HBM4配分とFY2027設備投資方針が焦点。AIメモリ物色の試金石
HBM4の本格ランプとNVIDIA Vera Rubin出荷2026年後半〜2027年Vera Rubin向けHBM4の量産・出荷が始まり、Micronの実取り分 (数量・ASP) が判明。3番手の劣後がどこまで響くかを確認
DRAM/NAND ASP・契約価格の四半期推移継続 (四半期ごと)DRAMはCY26に2倍超、CY27も二桁増の見方。ASPが上昇を続けるか反転するかがサイクル判定の最重要シグナル
中国勢 (CXMT/YMTC) の増産・HBM参入動向2026年後半〜低価格DRAM/NANDの増産ペースと、HBM参入の前倒し有無。コモディティ市況の悪化を早めるか否か

公式情報源

投資の見立て

🎯 要点: MU の論点は『AIメモリの構造変化を信じる度合い』と『コモディティの宿命をどれだけ割り引くか』のせめぎ合いに集約される。 粗利率が1年で38%→約81%へ激変し HBM は完売——これは需要の地殻変動に見える。だが製品が規格品 (コモディティ) である以上、需給が緩めば81%の粗利は容赦なく剥落する。この記事は「いつ・どの数字でこの見立てが崩れるか」を、検証できる外れる条件とセットで示す。

Micron Technology (MU) は、米国アイダホ州ボイジー本拠のメモリ半導体専業大手だ。製品は DRAM (全社売上の約8割) と NAND型フラッシュメモリ (NAND Flash) (約2割)、そして両者をまたぐ成長ドライバーが高帯域メモリ HBM (高帯域メモリ) である。ロジック半導体 (NVIDIA / TSMC) と違い、製品が規格品=価格次第のコモディティであり、業績が市況サイクルに強く振られるのが宿命だ。

足元の FY Q2 2026 (2月期) は売上 +194%・粗利率約75%・データセンター売上 +150% 超と過去最高を更新し、Q3 (5月期) は売上 $33.5B・粗利率約81%・EPS $19.15 をガイドした (結果は JST 2026/6/24 引け後)。WDC の急騰で火がついた「AIストレージ/メモリ物色」の本命格だが、フォワード P/E 約10〜12倍は「割安」とは限らない。私の見立ては中立〜やや強気 (mixed)。理由と「外れる条件」を以下で具体化する。

📚 用語: HBM (High Bandwidth Memory、高帯域メモリ) — DRAM のダイ (チップ) を縦に何層も積層し、AIアクセラレータ (GPU/TPU) のすぐ隣に置いて超広帯域でデータをやり取りする高付加価値メモリ。製造難度が汎用 DRAM より格段に高く、AI学習・推論のボトルネック解消に不可欠。Micron・SK Hynix・Samsung の「メモリ3強」が供給を握る。

会社概要 — 何で稼いでいるか

Micron は単一の事業を「3つの製品 × 4つの需要先」で売る会社だ。製品別では DRAM が圧倒的主力で、FY Q2 2026 (2月期) の売上内訳は DRAM $18.8B (全体の79%、前年比 +207%)、NAND $5.0B (21%、+169%)。需要先別ではデータセンター、PC (クライアント)、モバイル、車載・産業に分かれ、いまや事業構造の重心が PC/モバイル中心から AIデータセンター中心へ移っている(データセンター売上 +150% 超)。

製品セグメントFY Q2 2026 売上構成比前年比
DRAM約 $18.8B約79%+207%
NAND約 $5.0B約21%+169%
全社約 $23.7B100%+194%

注目すべきは、成長のほぼ全てが ASP (Average Selling Price、平均販売単価) の上昇に由来し、数量 (ビット出荷) は DRAM 中一桁%・NAND 低一桁%増にとどまる点だ。これは追い風 (価格上昇のレバレッジ) であると同時に、価格反転に対する脆弱性そのものでもある。

📚 用語: ASP (平均販売単価) とビット成長 — メモリの売上は「出荷したビット数 × ビットあたり単価 (ASP)」に分解できる。ビット成長が需要の数量、ASP がメモリ価格そのもの。Micron の足元の売上急増は ASP 急騰が主因で、数量増は限定的。つまり「価格上昇に乗っている」状態で、価格が反転すれば売上・利益が一気に縮む構造になっている。

競争優位 (堀) の分析 — どこにあるか

Micron の競争優位 (堀) は (1) HBM の技術・歩留まり・パッケージング (TSMC協業) の参入障壁(2) 上位顧客との複数年・価格数量込みの供給契約(3) 資本集約的な先端プロセスの3点に立つ。HBM は DRAM ダイを高精度で積層する難度が高く、世界で実質3社しか量産できない。

ただし堀の判定は narrow (狭い)。製品が規格品である以上、ロジック半導体のような価格決定力は持たないからだ。粗利率81%は「堀の強さ」というより「サイクルのピークの強さ」であり、ここが評価の核心になる。需給が緩めば、寡占構造があっても価格は崩れる。

📚 用語: コモディティと価格決定力 — コモディティ (規格品) とは、メーカーが違っても性能・規格が同じで、買い手が価格だけで選べる製品。汎用 DRAM はその典型で、供給者は「市場価格を受け入れる (price taker)」立場になり、自社で値段を決める力 (価格決定力) を持ちにくい。HBM はカスタム性が高く価格決定力がやや残るが、それでも需給で大きく振れる。

⚠️ 注記: 堀の「最も脆い縁」は HBM4 での3番手という劣後と、中国勢のコモディティ攻勢。 最も成長する次世代 HBM4 で Micron の取り分が小さく (後述)、汎用メモリ領域では中国の CXMT/YMTC がマージン度外視で価格を押し下げにかかっている。この2つの縁が、「メモリ3強の一角」という堀を内側と外側から削りうる。

競合との比較 — 絶対評価で終わらせない

HBM 市場では SK Hynix が CY2025 Q2 で約62%と圧倒的に先行し、Micron は Samsung を抜いて2位 (約21%) に浮上した。だが最重要論点は次世代 HBM4 (NVIDIA Vera Rubin 向け) の配分で、ここでは SK Hynix 60〜70% / Samsung 25〜30% / Micron 約10〜15% と3番手に後退する。NVIDIA は Vera Rubin 向けに3社を認定済みで、Micron も 6/10 に HBM4 のサンプル/量産で3強の上位に到達したと発表したが、最も成長するセグメントでの取り分が小さい事実は成長ペースの制約になる。

時系列の方向で見ると、Micron は HBM3E で Samsung を抜いてシェアを伸ばした (優位拡大) 一方、HBM4 では配分順位で再び劣後する (優位縮小) という、世代をまたぐと優位が揺れる構図にある。frontmatter の競合相対 (peers) では、AIストレージ物色での連動相手 (WDC / STX / SNDK) と需要家 (NVDA) を横並びにしている。

📚 用語: HBM4 と Vera Rubin — HBM4 は次世代の高帯域メモリ規格で、NVIDIA の次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」に搭載される。AI需要の中核ゆえ、ここでのシェア配分がメモリ各社の成長を左右する。Micron は HBM4 を量産開始済みだが、NVIDIA の調達配分では SK Hynix・Samsung に次ぐ3番手とされ、最大成長分野での取り分が小さい点が弱気材料になっている。

ファンダメンタルズ — 数字で見る健全性

FY Q2 2026 (2月期) の実績は会社の絶頂を映している。

  • 売上 約$23.7B (前年比 +194%、過去最高を更新)
  • 非GAAP 粗利率 約75% (前四半期56%、1年前38%から急拡大)
  • フリーキャッシュフロー 四半期過去最高の約$6.9B30%の増配も発表
  • データセンター売上 +150% 超、事業の重心が AIデータセンターへ

粗利率の軌跡 (38%→56%→75%→Q3ガイド81%) は驚異的だが、この急拡大こそ両刃だ。歴史的にメモリ粗利率はサイクル悪化で15〜20pt 圧縮し、過去には1桁台・赤字まで沈んだ実績がある。81%は「実力の天井」であって「守れる床」ではない。

⚠️ 注記: 巨額の設備投資 (CapEx) は強気の根拠であると同時に、最大のリスク反転装置でもある。 Micron は FY2026 で $25B 超、FY2027 にさらに $10B 超を上乗せする計画で、Idaho の DRAM fab・NY Clay fab を含め米国内で約 $200B 規模の長期投資を進める (CHIPS法 $6.4B + NY州 $5.5B の補助込み)。需要が想定通り続けば成長投資だが、AI設備投資がピークアウトした瞬間、減価償却負担が重くのしかかりフリーキャッシュフローが急速に細る。資産集約型ゆえダウンサイドが大きい。

Q3 (5月期) の見通しは売上 $33.5B±$0.75B、非GAAP 粗利率約81%、EPS $19.15±$0.40。結果は JST 2026/6/24 引け後に発表される (本プロファイル作成は 6/17 時点=決算前)。アナリストの売上予想は $33.7B〜$40.9B と $7B 超のレンジに開いており、ランプ速度への不確実性が極めて大きい。6/24 は「HBM スーパーサイクルが本物か、頂点を打ちつつあるか」を市場が試すイベントになる。

バリュエーション — 高いのか安いのか

MU は「フォワード P/E (予想 PER) 単独では測れない」典型だ。トレーリング P/E は約50倍と高いが、フォワード (FY2027 EPS $100超想定) では約10〜12倍と低い。この巨大な乖離は「サイクル急回復を市場が織り込み済み」の証左であり、どちらの倍率が「正しい」かは、想定 EPS が実現するか次第になる。

🎯 要点: コモディティ循環株の鉄則は「低 P/E=割安ではなく、ピーク利益 × 低 P/E は天井のサイン」。 好況期は利益が最大化して P/E が低く見え、不況期は利益が消えて P/E が高く (または計測不能に) 見える——だから循環株は「サイクルのどの位置にいるか」を併せて読む必要がある。Micron は過去にも強い予想を持ちながら株価が $98→$48 (2021年10月→2022年10月) のように崩れた。評価は単年 EPS でなく「サイクル平均利益」「EV/正常化 EBITDA」で見るべきで、ダウンサイドの目安は P/B (現在約15〜17倍、サイクルボトムは1倍前後)。

📚 用語: トレーリング P/E と フォワード P/E — トレーリング P/E は「直近12か月の実績 EPS」基準、フォワード P/E は「来期の予想 EPS」基準。Micron のように両者が50倍と10〜12倍へ大きく乖離する場合、市場は「今後 EPS が急拡大する」と織り込んでいる。だがコモディティ株では、その想定 EPS こそがサイクルのピークで、外れると倍率と利益の両方が同時に下がる「二重の下押し」が起こりうる。

なお、目標株価が6月に TD Cowen $1,500、UBS $1,625、Aletheia $1,600 などへ一斉に上方修正される異例の局面にあるが、これは期待過熱のシグナルでもある。株価・目標株価の絶対水準は時点依存なので、本記事では定性で捉える。

強気材料 / 弱気材料

強気と弱気は、ともに「AIメモリ需要の持続性」という同じ軸の表裏で成り立っている (frontmatter の強気材料・弱気材料を参照)。最大の対立軸は 粗利率81%の解釈だ。強気派は「HBM ミックス上昇による構造的な利益率の底上げ」と読み、弱気派は「コモディティ循環のピークで、いずれ二桁pt 剥落する」と読む。同じ数字が真逆に解釈される点に、この銘柄の難しさが凝縮している。

もう一つの対立は HBM4 の3番手をどう評価するかで、強気派は「汎用 DRAM 超タイトと NAND 不足が補う」とし、弱気派は「最大成長分野で劣後=成長の頭打ち」とする。

投資の見立てと「外れる条件」

この記事の核は、4つの検証可能な見立てにそれぞれ数値の「外れる条件」を付けたこと (frontmatter の thesis を参照)。要約すると:

  • 見立て A (粗利率 70% 超を維持し EPS 拡大) = on-track。Q2 で75%、Q3 ガイド81%。外れる条件は「ASP が QoQ で明確に下落転換」または「粗利率見通しが四半期で複数pt 下方修正」。
  • 見立て B (HBM ミックスでサイクルのダウンサイドが構造的に浅くなる) = unknown。外れる条件は「HBM 単価が下落し汎用 DRAM 並みにコモディティ化」または「中国勢の HBM 参入が前倒し」。
  • 見立て C (AIメモリ物色は実需に裏打ち、6/24 決算が追認) = unknown。外れる条件は「6/24 決算後に見通しが市場予想レンジの上振れ期待に届かず失望売り」。
  • 見立て D (HBM4 の3番手は汎用メモリの逼迫が補い、全社利益を大きく損なわない) = at-risk。外れる条件は「HBM4 シェアがさらに低下し、かつ汎用メモリ市況も同時悪化する『二正面』」。最も揺らいでいる見立て。

リスク

最大リスクはメモリ価格の急反転 (供給過剰) で、ASP 下落により粗利率が二桁pt で圧縮し、株価が EPS 悪化に先行して崩れるサイクルのコアリスク (severity: high)。引き金は中国勢 (CXMT/YMTC) の増産になり得る。次いで HBM4 でのシェア劣後巨額設備投資の需要前提崩れバリュエーション/期待過熱(いずれ medium)。詳細は frontmatter の risks を参照。

今後の注目イベント — 株価を動かす材料

最重要は FY Q3 2026 決算 (JST 2026/6/24 引け後) で、売上$33.5B・粗利率81%・EPS $19.15 ガイドの達否、Q4 見通し、HBM4 配分と FY2027 設備投資方針が見立て A・C・D を直接検証する。次いで HBM4 の本格ランプと NVIDIA Vera Rubin 出荷(見立て D)、DRAM/NAND の ASP・契約価格の四半期推移(見立て A・B)、中国勢の増産・HBM 参入動向(見立て B)。

立場別の視点

立場確認すべき条件 (売買命令ではない)
未保有「いま入る = AIメモリの構造変化と6/24決算の上振れに賭ける」。見立て C・D が崩れる兆し (決算ガイド未達・HBM4 さらなる劣後報道) が無いかを入る前に確認する
含み益見立て A の外れる条件 (ASP の QoQ 下落・粗利率の複数pt 下方修正) が、利益確定を考える客観ラインになる
含み損急落が「メモリ市況の構造反転 (ASP 下落)」か「半導体全体の地合い」かを切り分ける。後者なら本業 KPI (粗利率・ASP・HBM 配分) は無傷のことが多い

長期で確認すべき指標 5 つ

KPI直近値強気維持ライン警戒ライン
非GAAP 粗利率約75% (Q2) → 81% ガイド (Q3)70% 以上を維持四半期で複数pt 下方修正
DRAM/NAND ASP (QoQ)上昇継続 (NAND は前四半期比 約+70%)上方バイアス継続QoQ で明確にマイナス転換
HBM4 配分順位3番手 (約10〜15%)維持〜改善さらに低下 / 初期 Rubin から除外
データセンター売上 (YoY)+150% 超三桁% 維持二桁%へ急減速
フリーキャッシュフロー / 設備投資FCF $6.9B (過去最高) / CapEx FY26 $25B超FCF プラス維持設備投資先行で FCF 急減

出典

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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免責: 本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。 最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。