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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q2 FY26

弱気
LULUlululemon athletica inc.·2026年9月03日(木) AMC11

LULU Q2 FY26 — EPS も粗利益率も上振れ。だが良かった数字はどちらも関税還付でできていた

Lululemon (LULU) の Q2 FY26 は、EPS 2.92 ドルが予想 1.80 ドルを 6 割以上上回り、粗利益率も 200bp 改善して 60.5% になった。見出しだけ見れば good news だが、株価は翌 9/4 に -17.38% と急落し、約 8 年ぶりの安値をつけた。理由は、上振れした 2 つの数字がどちらも一度きりの要因でできていたからである。EPS のうち 0.86 ドルは関税還付によるもので、粗利益率の 200bp 改善も 150bp が同じ関税還付、100bp が効率化施策によるもので、差し引きすると本業の商品構成はむしろ 50bp 悪化していた。売上高は 24.2 億ドルで前年同期比 -4% と予想を下回り、既存店売上は -9% (為替一定ベースで -10%)、うち米州は -12% と二桁の減少である。そして通期見通しは 3 月以降これで 3 度目の引き下げとなり、売上は 103.5-105.0 億ドル (従来比 5-7% 減)、EPS は 9.48-9.73 ドル (従来 10.95-11.15 ドル) へ切り下げられた。営業利益率は通期で 530bp の悪化を見込む。

上振れた EPS も粗利益率も、剥がすと一度きりの関税還付が残った。3 度目の下方修正で、市場は「一時的な不振」という説明を採らなくなった。

数字サマリ

EPS

$2.92コンセンサス $1.80上振れ

REVENUE

$2.42Bコンセンサス $2.47B下振れ

EPS

コンセンサス
$1.80
実績
$2.92
上振れ

売上

コンセンサス
$2.47B
実績
$2.42B
下振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

主要 KPI

既存店売上 (全社)

-9%

為替一定ベースで -10%

この決算の本質。売上の減少は一時的な要因では説明できない

└ 米州 (Americas)

-12%

二桁の減少

最大市場での落ち込みが全体を押し下げた

└ 中国本土 (China Mainland)

-8%

減少

通期では高一桁の増収を見込むとしている

売上高

$2.42B

-4% YoY

予想を下回った。減収局面に入っている

粗利益率

60.5%

+200bp

うち 150bp は関税還付、100bp は効率化。差し引き本業は -50bp

EPS のうち関税還付分

$0.86

一度きり

EPS 2.92 ドルから除くと 2.06 ドル。それでも予想 1.80 ドルは上回る

ガイダンス

項目判定補足
FY2026 売上$10.35-10.50B下方修正従来 $11.0-11.15B から 5-7% 減。2025 年比でも減収
FY2026 EPS$9.48-9.73下方修正従来 $10.95-11.15 から大幅切り下げ。3 月以降 3 度目
FY2026 粗利益率前年比 -80bp下方修正Q2 の +200bp が続かないことを会社自身が示している
FY2026 販管費 (SG&A)前年比 +450bp下方修正減収下でのコスト比率上昇
FY2026 営業利益率前年比 -530bp下方修正粗利益率の悪化と販管費の上昇が重なる
北米 / 中国本土 通期低二桁減 / 高一桁増下方修正地域で方向が正反対になる見通し

1 行サマリ

上振れした EPS と粗利益率を分解すると、どちらも中身は関税還付だった。売上は -4%、既存店売上は -9%、米州は -12%。そして通期見通しは 3 月以降 3 度目の引き下げになった。

「良かった数字は、還付でできていた。Lululemon Q2 FY26 決算」の文字が入った図版。夕暮れの平原に立つ石像から金箔が剥がれ落ち、下から素の灰色の石が現れている
EPS も粗利益率も、金箔にあたる一時的要因を剥がすと下から別の数字が出てくる

数字の中身

「上回った項目」と「下回った項目」が、きれいに一時的要因と本業で分かれている。

上振れた 2 つ — どちらも関税還付でできている

項目実績予想中身
EPS2.92 ドル1.80 ドルうち 0.86 ドルが関税還付
粗利益率60.5%+200bp のうち 150bp が関税還付、100bp が効率化

粗利益率の内訳が、この決算を最もよく表している。前年比 +200bp の改善のうち、150bp は関税還付、100bp は業務効率化によるものだった。合計 250bp のプラス要因があって実際の改善が 200bp なので、差し引き 50bp は本業の商品構成が悪化していたことになる。

EPS も同じ構造である。2.92 ドルから関税還付の 0.86 ドルを除くと 2.06 ドル。それでも予想 1.80 ドルは上回るが、見出しの「6 割超の上振れ」という印象とはまったく違う数字になる。

📚 用語: 一時的要因 (One-off / Non-recurring Item) とは 関税の還付、資産売却益、訴訟の和解金など、その期にだけ発生して翌期以降は繰り返されない損益のこと。会計上の利益には含まれるが、企業の稼ぐ力を表さない。決算の見出しが良いときほど、一時的要因の有無を先に確認するのが実務的な順序になる。会社側は通常こうした内訳を開示しているので、探せば見つかる。

下振れた項目 — こちらが本業

項目実績備考
売上高24.2 億ドル前年同期比 -4%、予想を下回る
既存店売上 (全社)-9%為替一定ベースでは -10%
└ 米州-12%最大市場での二桁減
└ 中国本土-8%減少

🎯 要点: 売上は一時的要因で作れない。 関税還付は利益と利益率を押し上げられるが、店頭で商品が売れた数は動かせない。既存店売上 -9%、米州 -12% という数字は、この会社の商品が以前ほど選ばれていないことを、還付を挟まずに直接示している。

📚 用語: 既存店売上 (SSS / Comparable Sales) とは 一定期間 (通常 1 年以上) 営業している店舗だけを対象に、前年同期と売上を比べた数字。新規出店による増加を除くため、既存の顧客基盤が育っているか縮んでいるかを直接測れる。小売業では総売上より重視される指標で、出店を続ければ総売上は伸ばせても、既存店売上が減っていれば 1 店あたりの集客力は落ちていることになる。為替の影響を除いた「為替一定ベース」も併記されるのが一般的。


ガイダンス分析 — 3 度目という回数が意味を変えた

1 度なら不運、2 度なら偶然、3 度なら構造。市場はこの回で 3 つ目を選んだ。

項目新ガイダンス従来変化
FY2026 売上103.5-105.0 億ドル110.0-111.5 億ドル-5〜7%
FY2026 EPS9.48-9.73 ドル10.95-11.15 ドル大幅切り下げ
通期 粗利益率前年比 -80bpQ2 の +200bp は続かない
通期 販管費 (SG&A)前年比 +450bp減収でコスト比率が上昇
通期 営業利益率前年比 -530bp粗利益率と販管費の悪化が重なる

売上見通しの 103.5-105.0 億ドルは、2025 年に対しても 5-7% の減収を意味する。成長が止まったのではなく、縮んでいる。

そして注目すべきは回数である。会社は 3 月以降、通期見通しを 3 度引き下げた。しかも 3 回とも「EPS は予想を上回り、売上は予想を下回り、見通しを下げる」という同じ形を繰り返している。

夕暮れの丘を下る三段の石のテラス。上段はわずかに金色を残し、下段ほど青い影に沈んでいく
同じ形の引き下げが 3 回続いた。1 度なら不運、2 度なら偶然、3 度なら構造として扱われる

🎯 要点: 同じ形が 3 回続いたら、一時的な不振ではなく需要側の構造変化を疑う。 1 回目は季節要因や在庫のタイミングで説明できる。2 回目も外部環境で説明できる。3 回目に同じ説明を使うと、その説明はもう検証できない仮説になる。 市場が -17.38% で反応したのは、単四半期の数字ではなくこの回数のほうだと考えられる。

地域で方向が逆になる見通し

通期の地域別見通しは、北米が低二桁の減収、中国本土が高一桁の増収と、方向そのものが分かれている。中国本土は Q2 の既存店売上こそ -8% だったが、通期では増収を見込むという構図である。

夕暮れの平原を一本の水路が二分し、左は乾いて青い影に沈み、右は潤って金色に照らされている
同じブランドの同じ商品でも、北米は低二桁の減収、中国本土は高一桁の増収という正反対の見通しになっている

北米の弱さについて、会社は商品の新規性不足と在庫の適正化を挙げ、新しいスタイルの投入と在庫の絞り込みで立て直す方針を示している。出店計画も抑制し、純増店舗数を 35 店に、ポップアップ店を 65 から約 40 へ削減するとしている。


株価反応

8 年分の株価が、1 日で戻された。

日付終値変化
US 9/3 (木)121.77 ドル引け後に決算発表
US 9/4 (金)100.61 ドル-17.38%
週間 (8/28 → 9/4)-16.72%

終値ベースで約 8 年ぶりの安値である。同じ日、一般消費財セクター (XLY) は -1.96% と 11 セクター中の最下位で、この 1 銘柄がセクターの足を引っ張った形になった。


背景 — 創業者が取締役会に迫った年である

この決算は、経営陣が「時間を与えられた」直後に出ている。

この決算には、株価以外の文脈がある。

創業者の Chip Wilson 氏は 2026 年、約 2 年で 65% という株価下落を理由に取締役会の刷新を求め、独自の取締役候補 3 名を立てて委任状争奪戦 (プロキシ ファイト) を仕掛けた。この争いは 5/26 の協力合意 (Cooperation Agreement) によって決着し、候補は 6/25 の年次株主総会の前に取り下げられている。

⚠️ 注記: 経営陣に与えられた猶予の中で出た決算である。 創業者の要求が取り下げられたのは「経営陣に立て直しの時間を与える」という合意によるもので、業績が改善したからではない。その合意から約 3 か月後に 3 度目の下方修正が出たという順序は、次の株主総会に向けた圧力の材料になりうる。ただし当ブログは今後の展開を予測する立場にはない。

📚 用語: 委任状争奪戦 (プロキシ ファイト) とは 株主が、経営陣とは別の取締役候補を立てて他の株主から議決権行使の委任を集め、株主総会での投票によって取締役会の構成を変えようとすること。買収と違って株式を買い集める必要がないため、少数株主でも仕掛けられる。決着の形は「投票で決する」「経営陣が一部の要求を受け入れて和解する」のどちらかが多く、後者を協力合意と呼ぶ。


長期投資家の視点

ブランドの毀損か、商品サイクルの谷か。この 2 つは同じ数字に見えて、回復までの時間がまったく違う。

強気の見立て

  • 粗利益率 60.5% という水準そのものは、アパレルとしてなお高い。 値引きに頼らず売る力が完全に失われたわけではない
  • 中国本土は通期で高一桁の増収見通し。 市場全体が拒否しているのではなく、地域差がある
  • 出店とポップアップの削減は、需要に合わせた縮小である。 減収局面で固定費を先に絞るのは合理的な対応

弱気の見立て

  • 既存店売上 -9%、米州 -12% は、店舗数や為替では説明できない。 同じ店で売れた量が減っている
  • 通期営業利益率 -530bp は、減収と固定費の組み合わせが効き始めていることを示す。売上が戻らない限り自動的には解消しない
  • 3 度目の下方修正。 会社自身が需要を見通せていないことの証拠でもある

何が起きたら見立てが間違いか

  • 既存店売上の前年比が改善に転じたら、商品サイクルの谷という解釈が有力になる
  • 粗利益率が関税還付を除いてなお改善したら、値引きに頼らず売れている証拠になる
  • 北米の在庫が前年比で減り、かつ売上が横ばい以上なら、正常化が進んでいる

次の四半期で確認すべき指標

  1. 米州の既存店売上 — -12% がさらに悪化するか、下げ止まるか。この 1 項目が最も重い
  2. 関税還付を除いた粗利益率 — 一時的要因を外した実力値
  3. 在庫の前年比と値引き率 — 商品が滞留していないか
  4. 4 度目の下方修正があるか — あれば「構造」の解釈がほぼ確定する

マクロ・他銘柄への含意

この決算は、個社の問題と消費全体の弱さの両方を含んでいる。

同じ週、原油 (WTI) は +9.69% と急騰した。ガソリン代の上昇は家計の裁量支出を直接削るため、価格帯の高いブランドから先に影響が出る。一般消費財セクターが 11 セクター中の最下位だったことは、Lululemon 1 社では説明しきれない。

ただし、この決算を「消費が弱いから」で片づけるのは早い。同じ環境で売上を伸ばしている競合がいるなら、それは業界の問題ではなく市場シェアの問題である。次の四半期に同業他社の既存店売上を並べて確認したい。

先々週には DICK'S Sporting Goods が通期見通しの引き下げで -30.68% となったが、そのときも本体の既存店売上は +4.9% と好調で、崩れたのは買収先のほうだった。消費は一様に弱いのではなく、業態とブランドで割れている。


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出典

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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