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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q3 FY26

まちまち
AVGOBroadcom Inc.·2026年9月02日(水) AMC11

AVGO Q3 FY26 — AI 半導体 +221% で前四半期比 +54%。それでも全社ガイダンスが 1% 足りず 2 期連続で売られた

Broadcom (AVGO) の Q3 FY26 は売上 296 億ドル (前年同期比 +86%)、非 GAAP EPS 3.32 ドル (+96%)、フリーキャッシュフロー 137 億ドル (売上比 46%) と主要項目が過去最高を更新した。AI 半導体売上は 167 億ドルで前年同期比 +221%、前四半期比でも +54% と加速している。3 か月前の Q2 決算時に会社が示した Q3 の AI ガイダンス 160 億ドルも上回った。それでも株価は決算翌日の 9/3 に -2.75% 下げ、週間では -2.95% で終えている。理由は第 4 四半期の全社売上ガイダンスが約 348 億ドルと、市場予想の約 350.3 億ドルにわずかに届かなかったことである。差は 1% に満たず、このガイダンス自体が前年比 +93% の成長を意味する。前四半期 (Q2 FY26) も AI +143% の過去最高決算に対して時間外 -13.7% だった。2 四半期続けて「過去最高でも売られる」が起きたことになり、論点は事業の勢いではなく、株価に織り込まれた期待の高さそのものに移っている。

AI は前四半期比 +54% で加速し、自社ガイダンスも上回った。それでも売られた。問われているのは事業ではなく、株価に入っている期待の高さである。

数字サマリ

EPS

$3.32コンセンサス $3.24上振れ

REVENUE

$29.60Bコンセンサス $29.36B上振れ

EPS

コンセンサス
$3.24
実績
$3.32
上振れ

売上

コンセンサス
$29.36B
実績
$29.60B
上振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

四半期推移

EPS 実績
$3.32Q2 FY26Q3 FY26
AVGO の決算 EPS 実績の推移。
売上 実績
$29.60BQ2 FY26Q3 FY26
AVGO の決算 売上実績の推移。

主要 KPI

AI 半導体売上

$16.7B

+221% YoY / +54% QoQ

Q2 時点の会社ガイダンス $16B を上回った。AI 中心の成長は 14 四半期連続

半導体ソリューション

$20.8B

+127% YoY

全社売上の 70%。うち AI が 167 億ドルで、非 AI は約 41 億ドル

インフラ ソフトウェア

$8.8B

+29% YoY

全社売上の 30%。VMware の統合効果が続く

フリーキャッシュフロー

$13.7B

+95% YoY

売上比 46% で過去最高。営業キャッシュフローは 142 億ドル

調整後 EBITDA マージン

約 68%

売上に対する比率。規模拡大に伴う改善が続く

GAAP 希薄化後 EPS

$2.68

+215% YoY

GAAP 純利益は 131 億ドル

ガイダンス

項目判定補足
Q4 FY26 全社売上約 $34.8Bコンセンサス未達前年比 +93% だが、コンセンサス 約 $35.03B に 1% 未満届かず。下落の主因
Q4 FY26 AI 半導体売上$21.7B上方修正前年比 +236%。前四半期比でも +30% の加速見通し
Q4 非 GAAP 営業利益率売上の 66%据え置き高水準を維持
FY2026 AI 売上 (通期)約 $58B上方修正会社が示した通期見通し
FY2027 / FY2028 AI 売上$115B / $230Bコンセンサス超え複数年の見通しを提示。実現すれば 2 年で約 4 倍

1 行サマリ

AI 半導体は前四半期比 +54% と加速し、3 か月前に会社自身が示した Q3 ガイダンス 160 億ドルも上回った。それでも株価は下げた。問われているのは事業の勢いではなく、株価に既に入っている期待の高さである。

「過去最高でも、株は下げた。Broadcom Q3 FY26 決算」の文字が入った図版。夜明けの崖を昇る巨大な石段は金色に照らされ、頂上のさらに一段だけが青い影の中にある
前年比 +93% の成長見通しが「未達」と判定された。登りきった高さではなく、あと一段の差だけが値段になる

数字の中身

主要項目はほぼすべて過去最高を更新している。

売上・利益

項目Q3 FY26前年同期比備考
売上高296 億ドル+86%コンセンサス 293.6 億ドルを上回る
半導体ソリューション208 億ドル+127%全社の 70%
インフラ ソフトウェア88 億ドル+29%全社の 30%
非 GAAP 純利益164 億ドル
非 GAAP 希薄化後 EPS3.32 ドル+96%コンセンサス 3.24 ドル
GAAP 純利益131 億ドル
GAAP 希薄化後 EPS2.68 ドル+215%

AI 半導体 — この決算の中心

項目
Q3 AI 半導体売上167 億ドル
前年同期比+221%
前四半期比+54%
Q2 時点の会社ガイダンス160 億ドル → 上回った
Q4 ガイダンス217 億ドル (+236%)

🎯 要点: 前四半期比 +54% という数字が、この決算で最も重い。 前年同期比は比較対象が小さければ大きく出るが、四半期をまたいだ +54% は「いま現に加速している」ことの直接的な証拠である。AI 中心の成長は 14 四半期連続で、単発のブームではなく設備投資サイクルとして進んでいることを裏づけている。

📚 用語: カスタム AI アクセラレータ (XPU) とは 特定の顧客のために設計された AI 計算用の専用チップのこと。誰でも買える汎用の GPU と違い、大手クラウド事業者が自社の処理内容に合わせて設計を発注する。Broadcom はこの設計と、チップ同士をつなぐネットワーキングを担う。顧客が自社専用チップを持てば汎用 GPU への依存を下げられるため、汎用 GPU の最大手にとっては競合、クラウド事業者にとっては交渉手段という位置づけになる。

夕暮れの貨物ヤードを俯瞰した情景。金色に輝く一つの巨大な塊がほぼ全体を占め、隅に小さな塊がわずかに残っている
半導体部門 208 億ドルのうち 167 億ドルが AI。非 AI は約 41 億ドルで、事業の形そのものが 2 年前とは別物になっている

キャッシュフロー

項目Q3 FY26前年同期比
営業キャッシュフロー142 億ドル
フリーキャッシュフロー137 億ドル+95%
売上に対する FCF 比率46%過去最高

📚 用語: フリーキャッシュフロー (Free Cash Flow) 比率とは 営業活動で稼いだ現金から設備投資を差し引いた残りが、売上の何割にあたるかを示す指標。利益が会計上の数字であるのに対し、フリーキャッシュフローは実際に手元に残った現金なので、会計処理の影響を受けにくい。売上の 46% が現金として残るのは製造業では極めて高い水準で、設計に特化して製造を外部に委託する事業モデルの特性が表れている。


ガイダンス分析 — なぜ「+93% 成長」が失望になったのか

下落の原因は 1 か所だけである。

項目会社ガイダンスコンセンサス
Q4 全社売上約 348 億ドル約 350.3 億ドル-1% 未満
Q4 AI 半導体売上217 億ドル (+236%)引き上げ

Q4 の全社売上ガイダンス約 348 億ドルは、前年同期比で +93% の成長を意味する。それでもコンセンサスの約 350.3 億ドルに届かなかったため、株価は決算翌日に -2.75% 下げた。差額は約 2 億ドル、350 億ドルの土台に対して 1% に満たない。

🎯 要点: 「未達」と判定される基準そのものが、事業の実力から離れている。 年率 +93% で伸びる会社に対し、市場は +94% を期待していた、というのがこの決算の実態である。株価に織り込まれた期待が事業の成長率を上回っているとき、good news は株価を上げる材料にならない。

前四半期との比較 — 同じ形が 2 回続いた

Q2 FY26 (6/3 発表)Q3 FY26 (9/2 発表)
AI 半導体売上108 億ドル (+143%)167 億ドル (+221%)
実績の評価全項目で過去最高主要項目で過去最高
ガイダンスの評価Q3 AI ガイド 160 億ドルが期待 172 億ドルに未達Q4 全社売上が予想に 1% 未満届かず
株価反応時間外 -13.7%翌日終値 -2.75%

Q2 のときに市場が「足りない」と言った Q3 の AI ガイダンス 160 億ドルに対して、実績は 167 億ドルだった。会社は約束を超えて着地させたが、そのときには次の基準が上がっていた。

⚠️ 注記: 反応幅は縮んでいる。 Q2 の -13.7% に対し Q3 は -2.75%。同じ「ガイダンス未達」でも、市場の失望の度合いは大きく小さくなっている。期待の過熱が一巡しつつある兆候と読むこともできるが、1 四半期の比較で断定はできない。


株価反応

下げたのは本人で、上げたのは周りだった。

日付終値変化内容
US 9/2 (水)367.24 ドル引け後に決算発表
US 9/3 (木)357.16 ドル-2.75%ガイダンスへの反応
US 9/4 (金)357.90 ドル+0.21%ほぼ動かず
週間 (8/28 → 9/4)-2.95%同じ週に Micron +8.98%、AMD +2.58%

決算翌々日の 9/4 に、Broadcom 自身はほとんど動かないまま、Micron が +6.10%、AMD が +4.69% 上げた。 市場はこの決算を「Broadcom の点数」ではなく「AI 半導体産業の需要そのものの手がかり」として読み替えたことになる。

夕暮れの湖。手前の青銅の鐘は暗く静止したまま、遠くの水面にだけ金色の波紋が広がっている
鳴らしたのは本人だが、光ったのは遠くの水面だった。Broadcom +0.21% の日に Micron は +6.10% 上げている

🎯 要点: 好材料が既に株価に入っている銘柄では、同じ材料が本人ではなく周辺を動かす。 8 月下旬に半導体が売られた理由は「メモリ価格の高騰が AI サーバーのコストを押し上げ、需要を壊すのではないか」というコスト懸念だった。Broadcom の +221% はその懸念への反証として働き、同じメモリ高が今度は Micron の追い風として読み直された


長期投資家の視点

事業の見立てと株価の見立てを、分けて持つ必要がある局面である。

強気の見立て

  • AI 半導体が前四半期比 +54% で加速している。 前年同期比だけでなく直近の四半期比でも伸びているため、成長は現在進行形である
  • フリーキャッシュフローが売上の 46%。 成長のために現金を消耗する段階ではなく、成長しながら現金を積み上げられている
  • 複数年の見通しを会社が数字で示した (FY2026 約 580 億ドル → 2027 年 1,150 億ドル → 2028 年 2,300 億ドル)。実現すれば 2 年で約 4 倍

弱気の見立て

  • 2 四半期連続で、過去最高の決算に対して株価が下げた。 事業の good news が株価の good news に変換されない状態が続いている
  • 成長率そのものより「加速しているか減速しているか」で評価される段階に入っており、+93% の見通しですら「減速」と読まれうる
  • 複数年の見通しは検証に時間がかかる。 2028 年の 2,300 億ドルは、達成できなかったときに初めて分かる種類の数字である

何が起きたら見立てが間違いか

  • AI 半導体売上の前四半期比が 1 桁台に鈍化したら、設備投資サイクルの踊り場を疑う (今回は +54%)
  • フリーキャッシュフロー比率が 40% を下回ったら、価格競争か設備投資の増加が始まった可能性がある
  • 非 AI 半導体 (約 41 億ドル) が縮み続けたら、AI 以外の事業が支えにならなくなる

次の四半期で確認すべき指標

  1. AI 半導体売上が Q4 ガイダンス 217 億ドルに届くか — 前四半期比 +30% の見通し
  2. インフラ ソフトウェアの +29% が維持されるか — VMware の値上げ効果が一巡した後の実力
  3. 非 AI 半導体の底打ち — 全社の 14% 程度を占める部分の方向

マクロ・他銘柄への含意

この決算は、AI 設備投資を供給側から測った 1 つの測定値である。

この決算は、AI 設備投資が減速していないことを供給側から確認したという意味を持つ。Broadcom はカスタム AI アクセラレータとネットワーキングの供給者なので、その売上は顧客 (大手クラウド事業者) の投資額をほぼ直接映す。

同じ需要を別の角度から測り直す機会が、この直後に 2 つ控えている。

  • Oracle Q1 FY27 (US 9/10 引け後)受注残 (RPO) は「顧客が何年ぶんの支払いを約束したか」を示す。供給側の売上と、顧客側の支払い約束が同じ方向を向いているかを照合できる
  • Micron FQ4 2026 (US 9/30 引け後) — AI サーバーに載るメモリの出荷とガイダンス。今回の決算で最も強く反応した銘柄の答え合わせになる

📚 用語: 読み替え (read-through) とは ある企業の決算を、その企業の評価ではなく取引先・競合・同業の業績を推し量る材料として使うこと。Broadcom の AI 売上が伸びているなら、そこに載るメモリも、競合の加速器も売れているはずだ、という推論がこれにあたる。決算当日の主役より、翌日いちばん上がった「発表していない銘柄」のほうが局面を語ることがある。


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出典

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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