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まちまち狭い (競争優位はあるが盤石でない)SMR (NuScale Power) — 米国唯一の NRC 設計承認という先行性 vs. 確定受注ゼロと現金・時間軸の現実
NuScale は米国で唯一 NRC (米原子力規制委員会) の設計承認を取得した SMR (小型モジュール炉) 企業。77MWe 設計の標準設計承認 (SDA) も 2025 年 5 月に取得し、規制の先行性は本物。だがプレレベニュー (売上ごく僅少・赤字・キャッシュバーン) で、収益化は早くて 2030 年代初頭、ハイパースケーラー固有の確定受注はゼロ。論点は『認証 → 受注 → 着工 → 運転開始』の時間軸が進むか、希薄化を抑え現金が持つか、build-own-operate の Oklo に先行性を侵食されないか。総合判定は強弱まちまち。
米国で唯一 NRC 設計承認を取得した SMR 企業。先行性 (堀) は本物だが、確定受注ゼロ・収益化は 2030 年代初頭・希薄化常態化という『時間軸と現金の現実』が、株価の織り込む将来基数と乖離する。見立て 4 本は時間軸イベントで検証。
スナップショット
2026-05-31 時点株価
$12.68
時価総額
$4.4B
52 週レンジ
$8.85 – $57.42
バリュエーション
| 指標 | 値 | 比較 | 補足 |
|---|---|---|---|
| PSR (実績) | N/M (算出不能) | 売上ほぼゼロ | プレレベニューのため定義上意味をなさない |
| 実績 PER | N/M (算出不能) | 赤字 | 純損失のため算出不可 |
| 52週高値からの下落率 | 約 −78% | 高値 $57.42 → $12.68 | テーマ先行の評価倍率の切り下げが進行 (5/31 時点) |
| 織り込まれた将来基数 | 数十モジュール規模 | 確定受注は実質ゼロ | 時価 44億ドルの正当化には 6GW 級プログラムの複数実現が前提 |
競合との比較— NRC 認証段階 / 初号機の運転開始 (COD) 目標 / ビジネスモデル
| 企業 | 値 | 自社との対比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| OKLOOklo | 認証段階/COD/モデル: 事前許可承認 (2026/5) / COD 2027末 (試験炉) / 自社保有運営 | 認証は後発だが運営モデルと契約で先行 | Meta 1.2GW 案件を確保。時価約 93-113億ドルと SMR の 2倍超 |
| NNENano Nuclear | 認証段階/COD/モデル: 建設許可申請 受理 / 試作 2027 / マイクロ炉 | 規模も段階も後方 | 時価約 14億ドル。燃料まで垂直統合する設計 |
| GEHGE Hitachi (BWRX-300) | 認証段階/COD/モデル: 加 Darlington 着工済 (2025/5) / COD 2030 / 大型 300MWe | 実建設では北米最先行 | GE Vernova 傘下で独立上場せず。北米初の商業 SMR 建設中 |
| CEGConstellation | 対比 (既存原子力): 既存稼働炉でデータセンター PPA 締結済 | 『いま稼ぐ原子力』で時間軸が一世代先行 | 直接競合ではないが当面の電力需要を吸収し、SMR の緊急性を相対的に下げる |
ファンダメンタルズ
売上 (2026 Q1)
$0.57M
−95.8%
2025年の技術ライセンス / FEED 剥落。繰り返し発生する収益基盤が無い
純損失 (2026 Q1、全体)
−$46.7M
拡大
Class A 株主帰属は −$44.0M
営業キャッシュフロー (2026 Q1)
−$314.7M
悪化
ENTRA1 への拠出 $259.9M (一過性) を含む。実力バーンは約 $40-45M/四半期
手元流動性 (2026/3末)
約 $1.01B
無借金
現金 $341M + 短期投資 $549M + 長期投資 $119M
発行済株式 (2026/3末)
343.1M 株
増加中
授権株式枠を 3.32億→6.62億株へ倍増。ATM (時価発行) で希薄化進行中
強気材料 / 弱気材料
強気材料
唯一の NRC 設計承認
50MWe の設計認証 (DCA) + 77MWe の標準設計承認 (SDA、2025/5) を取得。米国の他 SMR 勢は初期段階で、規制の先行性は本物の参入障壁。
RoPower の最終投資決定 (FID) 達成
ルーマニア案件 (6モジュール・462MWe) が 2026/2/12 に FID 承認。初の FID 済み商業リファレンスになる。
ENTRA1 / TVA の 6GW 構想
最大約 72-78 モジュールの『米国史上最大の原子力展開プログラム』の枠組み。拘束力ある発注に昇格すれば収益基盤が一変。
強固なバランスシート
無借金で流動性 約 10.1億ドル。実力バーン $40-45M/四半期なら数年単位のランウェイ。
AI データセンター電力テーマの追い風
ハイパースケーラーの電力需要急増が SMR セクター全体の関心を底上げ。
弱気材料
ハイパースケーラー固有の確定受注がゼロ
Meta の 6.6GW 原子力案件 (2026/1) で NuScale は選外 (Oklo / Vistra / TerraPower が獲得)。テーマの追い風は浴びても固有の確定受注に変換できていない。
収益化が早くて 2030 年代初頭
認証から商業運転まで時間が長く、その間に競合 (特に Oklo) が追いつくリスク。
希薄化の常態化
2025 年に ATM (時価発行) で計 12.25億ドル調達 (52.5M 株)。2026/2 に新たに最大 10億ドルの ATM 枠を設定し、授権株式枠を 3.32億→6.62億株へ倍増。
Fluor の全株売却
親会社的存在だった Fluor が約 40M 株 (約 24.3億ドル) を 2025/9 以降に市場で全売却。技術・財務の後ろ盾喪失と需給悪化。
過去の中止前科 (CFPP)
ユタ州 UAMPS 向け初号機をコスト膨張で 2023/11 に中止。実行リスクの実績がある。
リスク
| リスク要因 | 重大度 | 補足 |
|---|---|---|
| 競合のモデル優位 (build-own-operate) | 高 | Oklo がハイパースケーラー契約と運転開始時期で先行。機器供給モデルが構造的に不利になる恐れ |
| 希薄化 / 資金調達 | 高 | 10億ドルの ATM 枠と授権株式の倍増。受注遅延が続けば希薄化が止まらない |
| プロジェクト遅延・中止 | 高 | CFPP の前科。RoPower も留保条件付きで規模縮小・中止リスクが残る |
| テーマ依存のボラティリティ | 中 | AI 電力テーマや政策で株価が大きく振れるが固有ファンダと乖離 |
| 規制・燃料サプライチェーン | 中 | 建設運転一括認可 (COL) 取得の長期化、HALEU (高純度低濃縮ウラン) 等の燃料供給制約 |
今後の注目イベント
| イベント | 時期 | 注目度 | 補足 |
|---|---|---|---|
| RoPower の進行 (Stage 3 移行) | 2026年央〜 | 高 | 初の FID 済み案件の前進確認 |
| TVA / ENTRA1 の拘束力ある発注 | 2026-2027 | 高 | 6GW 構想が受注残 (backlog) に変わる瞬間 |
| ハイパースケーラーの確定契約 | 未定 | 高 | テーマを固有受注に変換できるか |
| 四半期ごとの ATM 消化ペース | 各四半期決算 | 中 | 希薄化の実態 |
| Fluor 株売却の完了 | 2026 Q2 目標 | 中 | 需給の重し (オーバーハング) の解消 |
公式情報源
投資の見立て
NuScale は 米国で唯一 NRC (米原子力規制委員会) の設計承認を取得した SMR (Small Modular Reactor、小型モジュール炉) 企業であり、規制の先行性という明確な無形資産を持つ。だが投資判断はそこで終わらない。問題は「認証 → 商業受注 → 着工 → 運転開始」というバリューチェーンの中で、同社がまだ最初の関門 (認証) しか越えておらず、収益化は早くて 2030 年代初頭という点にある。
NuScale はプレレベニュー (売上ごく僅少・年間赤字・キャッシュバーン継続) の企業なので、PER や PSR (株価売上倍率) は意味をなさない。論点は (1) 次の規制・受注の山場が時間軸どおり進むか、(2) その間に現金が希薄化を抑えて持つか、(3) build-own-operate (自社で発電所を保有・運営する) モデルの Oklo に先行性を侵食されないか、の 3 点に絞られる。総合判定は強弱まちまち——先行性は本物だが、株価が織り込む「数十基の受注実現」と「現金・時間軸の現実」の乖離が大きい、最も冷静さが要る大型テーマ株の 1 つである。
📚 用語: SMR (Small Modular Reactor、小型モジュール炉) — 従来の大型原子炉 (1基あたり 1,000MWe 級) を、工場で量産できる小型ユニット (数十〜300MWe) に分割し、現場で組み立てる設計思想。建設費と工期を抑え、需要に応じて基数を増減できるのが売り。NuScale の 1 モジュールは 77MWe で、4 / 6 / 12 基束ねて VOYGR プラントを構成する。
会社概要 — 何で稼ぐか (「ライセンス + 機器供給」モデルへの転換)
NuScale は 77MWe の NuScale Power Module (加圧水型) を束ねる VOYGR プラントを設計し、技術ライセンスと長納期機器 (圧力容器等) の供給で稼ぐ設計・ライセンス企業だ。自社で発電所を保有・運営しない点が、後述の Oklo と決定的に異なる。
事業構造を理解するうえで外せないのが 2023 年 11 月の CFPP (Carbon Free Power Project) 中止だ。ユタ州 UAMPS 向けの初号機計画は、建設費見積もりが 2020 年の 36億ドル (720MWe) から 93億ドル (462MWe) へ膨張し頓挫した。この躓きを受け、NuScale は顧客 (電力会社) と直接契約する従来モデルから、ENTRA1 Energy が開発・資金調達・PPA (Power Purchase Agreement、電力販売契約) の組成を担う仲介モデルへ転換。NuScale は技術と機器を供給し、案件リスクを ENTRA1 に外出しする構造になった。
直近の売上構成は事実上「プロジェクト初期エンジニアリング (FEED) と技術ライセンスの一時収益」のみだ。2026 Q1 (1-3月期、2026年5月公表) の売上は 56.5万ドルで、前年同期の 1,338万ドルから 95.8% 減。これは 2025 年に計上した RoPower (ルーマニア) の技術ライセンスと FEED フェーズ 2 が剥落したためで、繰り返し発生する収益基盤が無いことを示す。
競争優位 (堀) の分析 — 「唯一の NRC 承認」はどこまで効くか (評価: 狭い)
堀の出所は規制ライセンスという無形資産だ。NuScale は 50MWe 設計で 2023 年に設計認証 (DCA) を取得済みで、さらに大型の 77MWe (US460 設計) の標準設計承認 (SDA) を 2025 年 5 月 29 日に取得した。NRC は技術審査を 2 年弱・予算内・前倒しで完了しており、これは「米国で実際に NRC 承認を取得した唯一の SMR」という象徴的な先行性になる。
ただし堀の最も脆い縁が 2 つある。第一に、SDA はあくまで「設計の承認」であり、顧客が実際に建設するには別途 COL (Combined License、建設・運転一括認可) が必要で、商業運転は早くて 2030 年代初頭。認証の先行性が収益に変換されるまでの時間が長すぎる間に、競合が追いついてしまう。第二に、ビジネスモデルが「機器供給」に留まり自社で発電・運営しないため、ハイパースケーラーが求める「behind-the-meter (送電網を介さず施設の裏側で) で電気を売ってくれる相手」になりきれない。総合すると堀は「狭い」——存在するが、収益化までの時間で侵食されやすい。
競合相対 — SMR レースの位置取り
「米国唯一の認証取得だから堀が広い」で止めると、先行性が広がっているのか縮んでいるのかを見落とす。競争優位を象徴する 3 軸 (NRC 認証段階・初号機の運転開始 (COD) 目標・ビジネスモデル) で横並びにすると、評価は立体的になる。
| ティッカー | 企業 | NRC 認証段階 | 初号機 COD 目標 | 時価総額 (概算) | モデル |
|---|---|---|---|---|---|
| SMR | NuScale | SDA 取得済 (77MWe、2025/5) | 2030 年代初頭 | 約 44億ドル | 機器・ライセンス供給 |
| OKLO | Oklo | 事前許可承認 (2026/5) | 2027末 (試験炉)〜2030 (商業) | 約 93-113億ドル | 自社保有運営 |
| NNE | Nano Nuclear | 建設許可申請 受理 | 2027 試作 / 商業はその後 | 約 14億ドル | マイクロ炉 + 燃料垂直統合 |
| (非上場/GE) | GE Hitachi (BWRX-300) | 加 Darlington 着工済 (2025/5) | 2030 商業 (北米最先行) | — | 大型 300MWe 型 SMR |
読み筋はこうだ。認証段階では NuScale が最先行だが、初号機の運転開始時期では Oklo (2027末、米 INL の試験炉) と GE Hitachi (2030、カナダ Darlington、北米初の商業 SMR 建設中) に逆転されつつある。さらに Oklo は build-own-operate で Meta との 1.2GW 案件 (2026/1) を確保しており、ハイパースケーラーとの直接契約という点で NuScale を出し抜いた。時価総額で Oklo が NuScale の 2 倍超なのは、市場が「認証の先行性」より「契約と運営モデル」を評価していることを示す。先行性の優位は絶対的には存在するが、相対的には狭まっている。
なお Constellation (CEG) や Vistra (VST) は「いま発電して稼いでいる原子力」で、AI データセンター向け PPA (Vistra は AWS と約 3,800MW、Meta と 2,609MW 等) を既存稼働炉で締結済みだ。SMR が「将来の電気」を売る話なのに対し、既存炉は「2026-27 年に供給する電気」を売る。時間軸が一世代違うため直接競合ではないが、ハイパースケーラーの当面の電力需要を既存炉が吸収する分、SMR の緊急性は相対的に下がる。
📚 用語: build-own-operate と機器供給モデル — SMR の稼ぎ方は二系統ある。NuScale は炉の設計と機器を売る「機器供給」型で、発電所は顧客が建てる。Oklo は自社で発電所を建て・保有し・電気を売る「build-own-operate」型。後者はハイパースケーラーと直接 PPA を結びやすく、収益も継続的になりやすい一方、巨額の建設資本を自社で背負う。どちらが優れるかは一概に言えないが、いまのデータセンター需要には後者が刺さりやすい。
ファンダメンタルズ — 一過性要因を剥がした実力バーン
(基準日: 2026 Q1 の四半期報告書 (10-Q)、JST 2026年5月公表、対象四半期末 2026/3/31)
- 売上: 56.5万ドル (前年同期 1,338万ドル、−95.8%)
- 純損失 (全体): 4,669万ドル (前年同期 3,040万ドル)。うち Class A 株主帰属 4,402万ドル
- 営業キャッシュフロー: マイナス 3億1,468万ドル — ただしこの中に ENTRA1 への拠出 2億5,988万ドルという一過性が含まれる。これを除いた実力ベースのバーンは四半期あたり約 4,000-5,500万ドル (会社・市場が示す $40-45M/四半期と整合)
- 手元流動性: 現金等 3.41億ドル + 短期投資 5.49億ドル + 長期投資 1.19億ドル = 合計 約 10.1億ドル、無借金
注意したいのは営業キャッシュフローの読み方だ。マイナス 3.15億ドルという数字をそのまま四半期バーンと見て「流動性 10.1億ドルは 3 四半期で尽きる」と早合点すると、ランウェイ評価を致命的に誤る。流出の大半は ENTRA1 との独占商業化契約に伴う拠出 (将来の独占的商業化権の対価で、2025-2026 で累計 5.07億ドルを費用認識) で、営業損失そのものとは性質が異なる。日々のオペレーションを回す実力バーンは $40-45M/四半期で、これが「数年単位のランウェイ」の根拠になる。
バリュエーション — PER/PSR ではなく「織り込まれた将来基数」で読む
(基準日: 2026/5/31 終値 12.68ドル、52週レンジ 8.85-57.42ドル、時価総額 約 44億ドル)
PSR / PER は売上がほぼゼロなので定義上意味をなさない。代わりに「時価総額 44億ドルは何基相当の受注を織り込んでいるか」で読む。NuScale が 1 モジュール (77MWe) あたり得る機器・ライセンス収益は数千万〜1億ドル規模とされ、44億ドルの時価総額を正当化するには、ENTRA1 / TVA の 6GW (最大約 72-78 モジュール) 級プログラムが複数、確実に着工・収益化する前提が要る。
重要なのは、株価が 52週高値 57.42ドルから 12.68ドルへ約 78% 下落している点だ。これは「テーマ先行で膨らんだ評価倍率の切り下げ」が既に進行したことを意味する。2026/1 の 20ドル台 (時価総額 約 57億ドル) からも約 4 割下落した。市場は「認証の先行性」を一度は高く評価したが、確定受注の不在と希薄化を見て期待を巻き戻している最中だ。割安か割高かの議論ではなく、織り込まれた将来基数が実現するかどうかの二択に近い。
📚 用語: プレレベニュー企業のバリュエーション — 売上がほぼゼロの会社は PER も PSR も使えない。代わりに「時価総額が織り込む将来 = 何基・何件の受注が前提か」を逆算する。期待が先行すると評価倍率が膨らみ、受注が出ないと評価倍率の切り下げで株価が急落する。NuScale が 52週で 78% 下落したのは、その典型例だ。
強気材料 / 弱気材料
強気派の見立ての核は 唯一の NRC 設計承認 だ。50MWe の設計認証に加え、より大型の 77MWe SDA を 2025/5 に取得しており、他の SMR 勢が建設許可・設計基準の初期段階にあるなかで、規制の先行性は本物の参入障壁になる。加えて 2026/2/12 にルーマニア RoPower (6モジュール・462MWe) が FID (Final Investment Decision、最終投資決定) を承認し、初の FID 済み商業リファレンスを得た。無借金で流動性 約 10.1億ドルというバランスシートも、実力バーン前提なら数年戦える。
弱気派の見立ての核は ハイパースケーラー固有の確定受注がゼロ であることだ。2026/1 の Meta 6.6GW 原子力案件で NuScale は選ばれず、Oklo・Vistra・TerraPower に流れた。「AI 電力テーマの追い風」は浴びても「自社の確定受注」に変換できていない。次いで 希薄化の常態化——2025 年に ATM (時価発行) で計 12.25億ドル調達 (52.5M 株)、2026/2 に新たに最大 10億ドルの ATM 枠を設定し、授権株式枠を倍増した。増資を前提とした資本構造だ。さらに親会社的存在だった Fluor が約 40M 株を全売却し、後ろ盾を失った。
投資の見立てと「外れる条件」 (時間軸イベントで検証)
両論併記は材料の整理にすぎない。ここからは立場を取り、それぞれの見立てが「何が起きたら間違いか」を時間軸イベントで示す。プレレベニュー銘柄では「いつ受注が現金化するか」「いつ着工するか」という日付が外れる条件の核になる。読んだ人が「自分の見立てが崩れる瞬間」を持ち帰れることが、このセクションの目的だ。
なお、当初この銘柄で語られた「77MWe SDA が 2026 中に下りるか」「RoPower の FID が出るか」は どちらも既に達成済み (SDA = 2025/5/29、RoPower FID = 2026/2/12) で、見立てはその先の未達イベントへ再設定している。
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「RoPower 初号機が時間軸どおり前進する」(現状: 成立) — ルーマニア RoPower (6モジュール、FID 済み) が EPC (設計・調達・建設) 前段階の Stage 3 を経て、2027 年内に EPC 本契約または着工準備へ進む、という見立て。外れる条件は「運転開始目標が 2030 年代初頭から再び後ろ倒しされる、または機密の留保条件が満たされず『実行不可能』判定が出る」。FID は達成済みだが留保条件付きで、ここが崩れると初の商業リファレンスが消える。
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「ENTRA1 / TVA の 6GW 構想が拘束力ある契約に昇格する」(現状: 揺らぎ) — TVA-ENTRA1 の 6GW 枠組み (現状は非拘束の覚書) が、2027 年末までに最低 1 プラント分の拘束力ある発注 (機器発注または FID) に変わる、という見立て。外れる条件は「2027末を過ぎても拘束力ある発注がゼロ、または TVA が枠組みを縮小・撤回する」。受注残 (backlog) に計上額が立つかどうかが分岐点。
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「ハイパースケーラーの確定受注を 1 件獲得する」(現状: 揺らぎ) — 2027 年末までに、ハイパースケーラー (またはデータセンター事業者) と拘束力あるデータセンター向け SMR 供給契約を 1 件締結する、という見立て。外れる条件は「2027末まで確定契約ゼロのまま、競合 (Oklo 等) がさらにハイパースケーラー案件を積み増す」。Meta 案件で選外になった現状、最も評価が割れる戦線だ。覚書 (MOU) や「協議中」ではなく、拘束力ある PPA / 機器発注で判定する。
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「現金ランウェイが次の大型 FID まで希薄化を抑えて持つ」(現状: 評価中) — 実力バーン $40-45M/四半期に対し流動性 約 10.1億ドルがあり、向こう数年は大型増資なしで持つ、という見立て。外れる条件は「2026 年内に 10億ドルの ATM 枠の半分超 (5億ドル超) を消化する、または ENTRA1 への追加拠出でバーンが恒常的に $80M/四半期超へ加速する」。希薄化のペースが受注の進展を上回ると、含み損が固定化する。
リスク
最大の構造リスクは 競合のモデル優位 (build-own-operate) だ。自社運営の Oklo がハイパースケーラー契約と運転開始時期で先行しており、NuScale の「機器供給」モデルが構造的に不利になる恐れがある (深刻度: 高)。同格で 希薄化 / 資金調達——10億ドルの ATM 枠と授権株式の倍増は、受注遅延が続けば希薄化が止まらない構造を意味する (高)。さらに プロジェクト遅延・中止 は CFPP の前科があり、RoPower も留保条件付きで規模縮小・中止リスクが残る (高)。以下、テーマ依存のボラティリティ、建設運転一括認可 (COL) の長期化や HALEU (高純度低濃縮ウラン) の燃料供給制約が中位で続く。
今後の注目イベント — 株価を動かす材料
直近の点検ポイントは RoPower の Stage 3 移行 (2026年央〜) で、初の FID 済み案件が前進するかが焦点。中期では TVA / ENTRA1 の拘束力ある発注 (2026-2027) が最大の分岐で、6GW 構想が受注残に変わる瞬間だ。並んで ハイパースケーラーの確定契約 (時期未定) が、テーマを固有受注に変換できるかを示す。四半期ごとの ATM 消化ペース (希薄化の実態) と、Fluor 株売却の完了 (2026 Q2 目標、需給の重しの解消) が中位で続く。
立場別の視点
| 立場 | 確認すべき条件 (売買命令ではない) |
|---|---|
| 未保有 | 見立て 3 (ハイパースケーラー確定受注) が成立する兆候、かつ 10億ドルの ATM 枠の消化が緩やかであることを確認してから検討。テーマ過熱時の高値掴みに注意 (52週高値 57ドル → 現在 12ドル台の振れ幅)。 |
| 含み益 | 見立て 2・3 が「揺らぎ」のまま 2027末に近づいたら、織り込まれた将来基数の前提が崩れていないか点検。FID の連鎖が止まれば利益確定の論拠になる。 |
| 含み損 | 見立て 4 の外れる条件 (2026 年内に 5億ドル超の ATM 消化) に該当すると、希薄化が損失を固定化する。ランウェイと受注進捗のどちらが先に動くかを四半期ごとに確認。 |
長期で確認すべき指標 5 つ
上の 4 つの見立ての外れる条件と対応させると、何を見れば見立ての生死が分かるかが一貫する。
- RoPower の Stage 3 移行 / 運転開始目標年の維持 (見立て 1) — 目標年の後ろ倒しが警報
- TVA / ENTRA1 の拘束力ある発注の有無 (見立て 2) — 受注残 (backlog) に計上額が立つか
- ハイパースケーラー確定契約の件数 (見立て 3) — 0 のまま競合が積み増せば見立ては外れ
- 四半期ごとの ATM 発行株数・調達額 (見立て 4) — 希薄化のペース。年内 5億ドル超の消化が警報
- 競合 Oklo の運転開始 (COD) 進捗 — 相対的な先行性がどれだけ侵食されるか
出典
- NuScale Power Reports First Quarter 2026 Results (会社 IR) — https://www.nuscalepower.com/press-releases/2026/nuscale-power-reports-first-quarter-2026-results
- NuScale 8-K Q1 2026 (SEC EDGAR) — https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001822966/000182296626000052/a2026-05x07xnuscaleq1202.htm
- NuScale 2026 Q1 10-Q (stocktitan ミラー) — https://www.stocktitan.net/sec-filings/SMR/10-q-nuscale-power-corp-quarterly-earnings-report-2092d36c3029.html
- NuScale US460 SDA Achieved (会社 IR) — https://www.nuscalepower.com/press-releases/2025/nuscale-powers-small-modular-reactor-smr-achieves-standard-design-approval-from-us-nuclear-regulatory-commission-for-77-mwe
- NRC: NuScale US460 Standard Design Approval (一次資料) — https://www.nrc.gov/reactors/new-reactors/advanced/who-were-working-with/applicant-projects/nuscale-us460
- Federal Register: NuScale US460 SDA — https://www.federalregister.gov/documents/2025/06/04/2025-10123/nuscale-power-llc-nuscale-us460-small-modular-reactor-standard-design-approval
- Romania's Coal-to-NuScale SMR Conversion Secures FID (POWER) — https://www.powermag.com/romanias-coal-to-nuscale-smr-conversion-secures-fid-moves-into-implementation-with-caveats/
- NuScale, UAMPS terminate CFPP project (Utility Dive) — https://www.utilitydive.com/news/nuscale-uamps-terminate-small-modular-nuclear-reactor-smr-project-idaho/699281/
- TVA and Entra1 to deploy 6 GW of NuScale SMRs (ANS) — https://www.ans.org/news/2025-09-03/article-7342/tva-and-entra1-to-deploy-6-gw-of-nuscale-smrs/
- Oklo, Meta Announce 1.2 GW Agreement (会社 IR) — https://oklo.com/newsroom/news-details/2026/Oklo-Meta-Announce-Agreement-in-Support-of-1-2-GW-Nuclear-Energy-Development-in-Southern-Ohio/default.aspx
- Fluor and NuScale Stake Monetization (会社 IR) — https://www.nuscalepower.com/press-releases/2025/fluor-and-nuscale-announce-agreement-regarding-stake-monetization
- Ontario Authorizes OPG BWRX-300 Construction (POWER) — https://www.powermag.com/ontario-authorizes-opg-to-start-construction-of-first-commercial-nuclear-smr/
- Meta inks nuclear deals for 6.6 GW (Utility Dive) — https://www.utilitydive.com/news/meta-nuclear-deal-oklo-vistra-terrapower-ai-data-centers/809215/
- Nuclear regulatory approval drives NuScale interest, but no deals yet (Utility Dive) — https://www.utilitydive.com/news/nuclear-regulatory-approval-drives-nuscale-customer-interest-but-no-deals/757318/
- NuScale Power (SMR) Stock Overview (stockanalysis) — https://stockanalysis.com/stocks/smr/
本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。記載の数値は 2026年6月1日時点の公開情報に基づき、一部はミラーソース・推計を含みます。