STOCK · GS
まちまち狭い (競争優位はあるが盤石でない)Goldman Sachs (GS) 投資テーゼ — M&A・トレーディング回復で記録的四半期、堀は拡大も最大の弱点は収益の循環性
Goldman Sachs (GS) は M&A 助言・引受とトレーディングを中核とする Global Banking & Markets と、運用資産 $3.65 兆の Asset & Wealth Management が二本柱。Q1 2026 は総収益 +14%・純利益 +19% と記録的だが、ROE 水準は MS・JPM に劣後し、収益の市場依存・景気循環性が構造的弱点。M&A リーグテーブル首位で堀(ディール網)は拡大方向、Basel III の資本中立再提案と金融ローテーションが追い風。論点は強気か弱気かではなく「回復の持続性 vs 循環性」をどの数字で判定するか。総合判定は mixed。
M&A・引受・トレーディングの回復で記録的な四半期を出す GS。堀(ディール網)は拡大も、ROE 水準は MS・JPM に劣後し、収益の循環性が最大の弱点。
スナップショット
2026-06-16 時点株価
$0.00
時価総額
$330B+
52 週レンジ
$0.00 – $0.00
バリュエーション
| 指標 | 値 | 比較 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 予想 PER (Forward P/E) | 約 15x | 過去 10 年平均 PER 約 12.5x | 実績 PER は約 17x。利益のピーク懸念があるため倍率は控えめだが、歴史的平均は上回る |
| PBR (株価純資産倍率) | 約 2.6x | 1 株純資産 $361 | GS としては歴史的に高い水準。ROE 改善期待が織り込まれており、循環反転で剥落しやすい |
| 配当利回り | 約 1.6-2.0% | 四半期配当 $4.50 (前年比 +50%) | 2026/4 に増配。配当 + 自社株買いで Q1 だけで $6.38B を株主還元 |
| 株価 1 年騰落 | 約 +70% | 52 週安値 $623 → 高値 $1,098 | 金融ローテーション + 規制緩和期待で大幅上昇。良いニュースの相当部分は織り込み済み |
競合との比較— ROTE / ROTCE (有形自己資本利益率, Q1 2026)
| 企業 | 値 | 自社との対比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| GSGoldman Sachs | 21.3% | ROE 19.8% | 絶対水準は高いが 3 社中最下位。トレーディング・IB 依存で振れ幅が大きい |
| MSMorgan Stanley | 27.1% | ROTCE | ウェルスマネジメント比率が高く、GS より安定的に高 ROTE を出す |
| JPMJPMorgan Chase | 約 23% | ROTCE | 預金・カード・IB の多角化で景気耐性が最も高い |
| BACBank of America | — | ROTCE は 10% 台が定常 | 金利感応度が高く、投資銀行比率は GS より低い。比較の下限グループ |
ファンダメンタルズ
総収益 (Q1 2026)
$17.23B
+14% YoY
四半期として記録的水準。GBM が牽引
純利益 (Q1 2026)
$5.63B
+19% YoY
EPS $17.55 は同社史上 2 番目
ROE (年率, Q1 2026)
19.8%
+2.9pp YoY
ROTE は 21.3% (+3.3pp)。ただし MS・JPM には劣後
投資銀行手数料 (Q1 2026)
$2.84B
+48% YoY
M&A 完了案件と株式引受の回復が主因。受注残は 4 年ぶり高水準
CET1 比率 (標準的手法)
12.5%
横ばい圏
市場予想をやや下回り、近い将来の還元余地に制約。規制緩和で必要水準は低下方向
運用資産 (AUS)
$3.65T
記録更新
AWM の手数料収益基盤。循環性の低い安定収益源として戦略上重要
強気材料 / 弱気材料
強気材料
M&A・引受サイクルの本格回復
Q1 2026 の投資銀行手数料は +48% YoY、受注残は 4 年ぶり高水準。2026 年のグローバル案件総額は $3.9 兆 (+15%) 見通しで、私募ファンドの出口・AI 関連 IPO 再開が追い風。
ディール網の堀が拡大方向
2025 年通年で M&A リーグテーブル首位、助言手数料 $4.6B で 2 位 JPM ($3.1B)・3 位 MS ($3B) を大きく引き離す。Q1 2026 も助言 73 件で首位独走、トップとの差は近年最大。
規制緩和という構造的追い風
2026/3 に Basel III Endgame が『資本中立』で再提案され、19% の資本上乗せ案は撤回。GSIB に CET1 約 4.8% 相当の緩和余地、SLR 緩和も。必要資本低下 → 自社株買い・ROE 押し上げに直結。
トレーディングの実力底上げ
Q1 2026 の Equities は +27% で記録更新。市場ボラティリティ局面での収益捕捉力が高く、FICC が -10% でも全体を牽引。シェア奪取が続いている。
厚い株主還元
Q1 だけで $6.38B 還元 (自社株買い $5.0B + 配当 $1.38B)。2026/4 に四半期配当を $4.50 へ増配 (前年比 +50%)。資本緩和が進めば還元余地はさらに拡大。
弱気材料
収益の循環性が最大の弱点
IB 手数料とトレーディングは市場環境に強く依存。M&A・IPO は景気後退やボラティリティ急騰で凍結しやすく、記録的な四半期は『良い局面の上限』を示している可能性がある。
ROE 水準は競合に劣後
ROTE 21.3% は高いが MS 27.1%・JPM 約 23% を下回る。ウェルス・預金比率が低く、ピーク時でも安定収益源が薄いため、評価倍率の上値が抑えられやすい。
良いニュースの織り込み
株価は 1 年で約 +70%、PBR 約 2.6x は GS として歴史的高水準。M&A 回復・規制緩和・トレーディング好調が相当程度織り込まれ、未達なら倍率の切り下げ余地が大きい。
CET1 が予想下回り還元に制約
Q1 の CET1 12.5% は市場予想をやや下回り、近い将来の自社株買い余地を一時的に制約。資本緩和の最終確定までは還元加速にブレーキがかかる。
マクロショックでパイプライン凍結リスク
GS 自身の予測でも原油 $105-115 への急騰で米景気後退確率 30%。リスクオフで M&A パイプラインが凍結、AWM の私募融資で評価減・解約増の懸念。
投資の見立てと「外れる条件」
各見立ては「何を予想しているか」だけでなく「何が起きたら外れか」をセットで明示する。下の「外れる条件」が満たされたら、その見立ては見直しが必要になる。
M&A・引受サイクルの回復で、投資銀行手数料は前年比 2 桁成長を当面維持し、GBM の ROE は 20% 超を保つ
成立- 反証条件
- 投資銀行手数料が 2 四半期連続で前年比マイナス、または受注残が 4 年ぶり高水準から明確に縮小に転じる
- 確認方法
- 四半期決算の Global Banking & Markets 内訳 (投資銀行手数料・受注残コメント、直近は 2026 年 7 月中旬の Q2 決算)
Basel III Endgame の資本中立再提案で必要資本が低下し、CET1 バッファが還元加速 (自社株買い増額) に回る
成立- 反証条件
- 最終規則が GSIB に対し資本中立を覆す上乗せとなる、または CET1 が 12% を割り込み還元が縮小する
- 確認方法
- Fed/FDIC/OCC の最終規則発表 (2026 年内見込み) と四半期の CET1 比率・自社株買い実績
ディール網の堀 (リーグテーブル首位・助言手数料断トツ) が維持され、M&A 助言シェアの優位が広がる
成立- 反証条件
- M&A 助言手数料で JPM または MS に首位を明け渡す、または年間助言シェアが 30% を明確に下回る
- 確認方法
- 四半期・通年の M&A リーグテーブル (助言手数料・案件数・市場シェア)
AWM の運用資産 (AUS) 拡大で循環性の低い手数料収益が増え、収益の振れ幅が緩和する
評価中- 反証条件
- AUS が記録水準 ($3.65T) から 2 四半期連続で減少、または管理手数料収益が前年比マイナスに転じる
- 確認方法
- 四半期決算の Asset & Wealth Management セグメント (AUS・管理手数料)
リスク
| リスク要因 | 重大度 | 補足 |
|---|---|---|
| 収益の景気循環性・市場依存 | 高 | IB 手数料とトレーディングが収益の中核。景気後退・ボラティリティ急騰で M&A/IPO が凍結すると利益が急減する構造的脆弱性。 |
| マクロショック (原油急騰・リスクオフ) | 高 | 原油 $105-115 で米景気後退確率 30% (GS 自社予測)。リスクオフ局面でパイプライン凍結と AWM の私募融資評価減リスク。 |
| 規制最終化の不確実性 | 中 | 資本中立の再提案は方向性であって最終規則ではない。政権・人事の変動で資本緩和が後退すれば還元シナリオが崩れる。 |
| バリュエーションの剥落リスク | 中 | PBR 約 2.6x・1 年 +70% は循環ピーク特有の高評価。利益の前年比減速だけで倍率の切り下げ (de-rate) が起きやすい。 |
今後の注目イベント
| イベント | 時期 | 注目度 | 補足 |
|---|---|---|---|
| Q2 2026 決算 | 2026 年 7 月中旬 | 高 | IB 手数料・受注残・トレーディング収益・CET1 の続伸有無。見立て『回復の持続性』の最初の検証点。 |
| Basel III Endgame 最終規則 | 2026 年内見込み | 高 | 資本中立が確定すれば必要資本低下 → 自社株買い加速 → ROE 押し上げ。規制緩和の流れと直結。 |
| M&A/IPO パイプラインの実現 | 2026 年下期 | 中 | ヘルスケア・グリーンエネルギーのメガディール、AI・航空宇宙 IPO の上場進捗が手数料収益に直結。 |
| Fed の追加規制緩和 (SLR 等) | 2026 年随時 | 中 | SLR を一律 5% → 3.4-4.3% へ緩和する案。レバレッジ制約緩和でトレーディング資本効率が改善。 |
公式情報源
Goldman Sachs (GS) は、M&A 助言・株式/債券引受とトレーディングを束ねる Global Banking & Markets を中核に、運用資産 $3.65 兆の Asset & Wealth Management を第二の柱とする投資銀行です。2026 年は M&A・IPO の回復、規制緩和、金融セクターへのローテーションが重なり記録的な四半期を出していますが、論点は「強気か弱気か」ではなく「この水準がどれだけ持続するか」にあります。
投資の見立て
🎯 要点: GS は 2026 年 6 月時点で「循環の良い局面の頂点付近」にいる銘柄です。堀 (ディール網) は拡大方向ですが、ROE 水準で競合に劣後し、株価が良い材料を相当織り込んでいるため、総合判定は mixed とします。
Q1 2026 は総収益 $17.23B (+14% YoY)、純利益 $5.63B (+19%)、EPS $17.55 (同社史上 2 番目)、ROE 19.8%・ROTE 21.3% と記録的でした。問題は、この水準がどれだけ続くかです。判定の核は強気/弱気の二択ではなく、「回復の持続性 vs 循環性」をどの数字で見るかにあります。
📚 用語: ROE / ROTE ROE (Return on Equity, 自己資本利益率) は純利益を株主資本で割った収益性指標。ROTE (Return on Tangible Equity, 有形自己資本利益率) は、のれん等の無形資産を除いた有形株主資本ベースで測る指標で、買収を重ねた金融機関の「実質的な稼ぐ力」を比較しやすくする。銀行どうしの収益性比較では ROTE/ROTCE がよく使われる。
GS は「良い局面で大きく稼ぎ、悪い局面で大きく落ち込む」典型的なシクリカル (景気敏感) 銘柄です。記録的な数字そのものより、その数字が「上限を示しているのか、新しい巡航速度なのか」を見極めることが、この銘柄を理解する鍵になります。
会社概要 — 何で稼いでいるか
🎯 要点: 収益の太宗は循環性の高い Global Banking & Markets (GBM)。第二の柱 Asset & Wealth Management (AWM) が循環性の低い安定収益源で、収益の振れ幅を緩和する戦略上の鍵です。
GS は 3 セグメントで構成されます。中核の Global Banking & Markets (GBM) が Q1 2026 で $12.74B (+19% YoY) と全体を牽引しました。内訳は次のとおりです。
- 投資銀行手数料 $2.84B (+48% YoY) — M&A 完了案件と株式引受の回復が主因
- Equities トレーディング $5.33B (+27%、記録更新)
- FICC (債券・通貨・コモディティ) トレーディング $4.01B (-10%)
投資銀行と Equities の急回復が FICC の減速を吸収した構図で、今サイクルの主役は投資銀行 (M&A・引受) の回復だと分かります。
第二の柱 Asset & Wealth Management (AWM) は $4.08B (+10%)、運用資産 (AUS) は $3.65 兆と記録を更新しました。AWM は市場環境に左右されにくい手数料収益源で、収益の振れ幅を緩和する戦略上の鍵です。
第三の Platform Solutions は $411M (-33%) と落ちましたが、これは Apple Card ローン債権の売却目的保有への移管に伴う評価減という一過性要因で、本業の実力悪化ではありません。
⚠️ 注記: Platform Solutions の減収は本業の劣化ではない Q1 2026 の Platform Solutions -33% は Apple Card 関連の会計上の移管 (評価減) によるもの。むしろこれを除けば本業のモメンタムはさらに強い。純利益 $5.63B には大きな評価益・税効果のかさ上げは見当たらず、営業段階の実力値に近い。EPS +24% は自社株買いによる株数減も寄与している。
競争優位 (堀) の分析
🎯 要点: 堀の出所はブランド・人材・ディール網という無形資産。M&A 助言の市場地位がその象徴で、リーグテーブル首位という形で堀は「広がって」います。ただし収益性 (ROTE) では競合に劣後し、堀は narrow (狭い) と評価します。
GS の堀の出所は、ブランド・トップ人材・ディール網 (案件の依頼が集まる無形のネットワーク) です。これを 1 指標で見ると、M&A 助言の市場地位が象徴的になります。
2025 年通年で GS は助言手数料 $4.6B で首位に立ち、2 位 JPM ($3.1B)・3 位 MS ($3B) を大きく引き離しました。Q1 2026 も助言 73 件 (+46% QoQ) で首位独走、トップとの差は近年最大です。堀は「維持」ではなく「広がっている」段階にあります。
📚 用語: 堀 (moat) / リーグテーブル 堀 (moat) は競合が真似しにくい持続的な競争優位の比喩。投資銀行業界では、案件規模・件数・助言手数料で各社を順位付けした「リーグテーブル」が市場地位の代理指標になる。首位を取り続けること自体が、大型案件の依頼が集まりやすくなる正のループ (ネットワーク効果に近い無形資産) を生む。
競合との比較
堀の弱い縁は収益性に現れます。GS の ROTE 21.3% は絶対水準では高いものの、競合 2 社に劣後します。
- MS (Morgan Stanley) — ROTCE 27.1%。ウェルスマネジメント比率が高く、GS より安定的に高い収益性を出す
- JPM (JPMorgan Chase) — ROTCE 約 23%。預金・カード・IB の多角化で景気耐性が最も高い
- GS (Goldman Sachs) — ROTE 21.3%。3 社中最下位。トレーディング・IB 依存で振れ幅が大きい
- BAC (Bank of America) — ROTCE は 10% 台が定常。金利感応度が高く投資銀行比率は低い、比較の下限グループ
MS はウェルスマネジメント、JPM は預金・カード・IB の多角化で安定収益源が厚く、ピーク時でも GS の方が振れ幅が大きいという構造差が出ています。堀の最も脆い縁は「助言での優位が、トレーディング・IB の循環ボラティリティを相殺できない」点にあります。堀そのものは本物ですが、収益の安定性まで守ってくれるわけではないため、moat は narrow と評価します。
ファンダメンタルズ
🎯 要点: Q1 2026 は総収益 +14%・純利益 +19% と記録的。資本 (CET1 12.5%) は市場予想をやや下回り、株主還元は Q1 だけで $6.38B と厚い。規制緩和が進めば必要資本は低下し、還元余地はさらに広がります。
収益性は記録的水準にあります。総収益 $17.23B (+14% YoY)、純利益 $5.63B (+19%)、EPS $17.55、ROE 19.8%・ROTE 21.3% (それぞれ前年から +2.9pp・+3.3pp 改善) と、四半期として強い数字です。投資銀行手数料 $2.84B (+48%) と受注残の 4 年ぶり高水準が、回復の持続性を支える材料になっています。
📚 用語: CET1 比率 / 受注残 (backlog) CET1 (Common Equity Tier 1) 比率は、銀行の中核的自己資本をリスク資産で割った健全性指標。規制で最低水準が定められ、これが高いほど損失吸収力があるが、低いほど (規制の許す範囲で) 自社株買い・配当に資本を回せる。受注残 (backlog) は、契約済みだが未完了の M&A 案件など将来の手数料収益の先行指標で、増減が今後の投資銀行収益を予告する。
資本面の CET1 比率 (標準的手法) 12.5% は、市場予想をやや下回りました。近い将来の還元余地を一時的に制約する数字ですが、規制緩和で必要水準は低下方向にあります。株主還元は Q1 だけで $6.38B (自社株買い $5.0B + 配当 $1.38B)、四半期配当は 2026/4 に $4.50 へ増配 (前年比 +50%) と厚く、資本緩和が進めば還元はさらに加速し得ます。
循環性の低い AWM の運用資産 (AUS) が $3.65 兆と記録を更新した点も、収益の振れ幅を緩和する材料として戦略上重要です。
バリュエーション
🎯 要点: 予想 PER 約 15x・PBR 約 2.6x はいずれも GS の歴史的水準を上回り、株価は 1 年で約 +70%。良いニュースが相当織り込まれており、循環反転時に倍率が剥落しやすい状態です。
倍率は割安ではありません。
- 予想 PER 約 15x — 過去 10 年平均の約 12.5x を上回る (実績 PER は約 17x)。利益のピーク懸念から PER 自体は控えめだが、歴史的平均比では高い
- PBR 約 2.6x — 1 株純資産 $361 に対し、GS として歴史的に高い水準。ROE 改善の持続を織り込んでいる
- 配当利回り 約 1.6-2.0% — 四半期配当 $4.50 (前年比 +50%)
- 株価 1 年騰落 約 +70% — 52 週安値 $623 (2025/6) から高値 $1,098 (2026/6/5) まで上昇、6/16 時点で $1,090 前後
PER が控えめなのは利益のピーク懸念の裏返しですが、PBR 約 2.6x は「ROE 改善が続く」という前提を織り込んでいます。循環が反転して利益が前年比で減速するだけで、この PBR は剥落しやすいという点が、バリュエーション面の最大の注意点です。
⚠️ 注記: 株価の精密な水準は時点依存 上記の株価・倍率は 2026 年 6 月中旬時点の概況。シクリカル銘柄は局面によって倍率が大きく動くため、判断時には最新の決算 (利益のトレンド) と株価水準を必ず確認すること。
強気材料と弱気材料
🎯 要点: 強気は「M&A・引受の本格回復」「拡大する堀」「規制緩和」、弱気は「収益の循環性」「ROE 劣後」「織り込み済みの好材料」。両者を貫く共通軸は『収益の循環性』です。
強気材料 (Bull):
- M&A・引受サイクルの本格回復 — Q1 2026 の投資銀行手数料 +48% YoY、受注残は 4 年ぶり高水準。2026 年のグローバル案件総額は $3.9 兆 (+15%) 見通しで、私募ファンドの出口・AI 関連 IPO 再開が追い風
- ディール網の堀が拡大方向 — 2025 年通年で M&A リーグテーブル首位、助言手数料 $4.6B で 2 位 JPM・3 位 MS を大きく引き離す。Q1 2026 も助言 73 件で首位独走
- 規制緩和という構造的追い風 — Basel III Endgame の資本中立再提案で 19% 上乗せ案は撤回。CET1 約 4.8% 相当の緩和余地と SLR 緩和が必要資本低下 → 自社株買い・ROE 押し上げに直結
- トレーディングの実力底上げ — Q1 2026 の Equities は +27% で記録更新。FICC が -10% でも全体を牽引するシェア奪取力
- 厚い株主還元 — Q1 だけで $6.38B 還元、2026/4 に四半期配当を $4.50 へ +50% 増配
弱気材料 (Bear):
- 収益の循環性が最大の弱点 — IB 手数料とトレーディングは市場環境に強く依存。記録的な四半期は「良い局面の上限」を示している可能性
- ROE 水準は競合に劣後 — ROTE 21.3% は MS 27.1%・JPM 約 23% を下回る。安定収益源が薄く、評価倍率の上値が抑えられやすい
- 良いニュースの織り込み — 株価 1 年で約 +70%、PBR 約 2.6x は歴史的高水準。未達なら倍率の切り下げ余地が大きい
- CET1 が予想下回り還元に制約 — Q1 の CET1 12.5% は市場予想をやや下回り、近い将来の自社株買い余地を一時的に制約
- マクロショックでパイプライン凍結リスク — 原油 $105-115 で米景気後退確率 30% (GS 自社予測)。リスクオフで M&A 凍結・AWM 評価減の懸念
検証できる見立て
🎯 要点: この銘柄の判断は「強気/弱気」ではなく「次の数字でどう外れるか」を先に決めておくのが教育的です。4 つの見立てと、それぞれの『外れる条件』を数値・期限付きで置きます。
-
見立て (回復の持続性) — M&A・引受の回復で投資銀行手数料は前年比 2 桁成長を当面維持し、GBM の ROE は 20% 超を保つ
- 外れる条件: 投資銀行手数料が 2 四半期連続で前年比マイナス、または受注残が 4 年ぶり高水準から明確に縮小に転じる
- 確認先: 四半期決算の GBM 内訳 (直近は 2026 年 7 月中旬の Q2 決算)
- 現状: on-track
-
見立て (規制緩和 → 還元加速) — Basel III の資本中立再提案で必要資本が低下し、CET1 バッファが自社株買い増額に回る
- 外れる条件: 最終規則が資本中立を覆す上乗せとなる、または CET1 が 12% を割り込み還元が縮小する
- 確認先: Fed/FDIC/OCC の最終規則発表 (2026 年内見込み) と四半期の CET1 比率・自社株買い実績
- 現状: on-track
-
見立て (堀の維持) — リーグテーブル首位・助言手数料断トツが維持され、M&A 助言シェアの優位が広がる
-
見立て (循環性の緩和) — AWM の運用資産拡大で循環性の低い手数料収益が増え、収益の振れ幅が緩和する
- 外れる条件: AUS が記録水準 ($3.65T) から 2 四半期連続で減少、または管理手数料収益が前年比マイナスに転じる
- 確認先: 四半期決算の AWM セグメント (AUS・管理手数料)
- 現状: unknown (緩和が実際に効いているかは継続観察が必要)
リスク
🎯 要点: 最大のリスクは収益の景気循環性とマクロショックで、いずれもパイプライン凍結を通じて利益を急減させ得ます。規制最終化の不確実性とバリュエーション剥落が次点です。
- 収益の景気循環性・市場依存 (高) — IB 手数料とトレーディングが収益の中核。景気後退・ボラティリティ急騰で M&A/IPO が凍結すると利益が急減する構造的脆弱性
- マクロショック (原油急騰・リスクオフ) (高) — 原油 $105-115 で米景気後退確率 30% (GS 自社予測)。リスクオフ局面でパイプライン凍結と AWM の私募融資評価減リスク
- 規制最終化の不確実性 (中) — 資本中立の再提案は方向性であって最終規則ではない。政権・人事の変動で資本緩和が後退すれば還元シナリオが崩れる
- バリュエーションの剥落リスク (中) — PBR 約 2.6x・1 年 +70% は循環ピーク特有の高評価。利益の前年比減速だけで倍率の切り下げ (de-rate) が起きやすい
⚠️ 注記: 立場別に確認すべき条件 未保有なら、循環ピーク特有の高 PBR を踏まえ「回復の持続 (IB 手数料の前年比 2 桁・受注残維持)」が次の決算で続くかを確認してから判断するのが教育的。含み益なら、外れる条件 (IB 手数料 2 四半期連続マイナス / CET1 の 12% 割れ) に近づいていないかを点検。含み損なら、堀の指標 (M&A リーグテーブル首位) と規制緩和の最終化が崩れていないかが立て直しの軸。いずれの立場でも『収益の循環性』が共通の監視軸になる。
今後の注目イベント
🎯 要点: 最初の検証点は 2026 年 7 月中旬の Q2 2026 決算。年内見込みの Basel III 最終規則が、還元加速シナリオの確定/否定を決めます。
- Q2 2026 決算 (2026 年 7 月中旬, 重要度: 高) — IB 手数料・受注残・トレーディング収益・CET1 の続伸有無。見立て『回復の持続性』の最初の検証点
- Basel III Endgame 最終規則 (2026 年内見込み, 重要度: 高) — 資本中立が確定すれば必要資本低下 → 自社株買い加速 → ROE 押し上げ。規制緩和の流れと直結
- M&A/IPO パイプラインの実現 (2026 年下期, 重要度: 中) — ヘルスケア・グリーンエネルギーのメガディール、AI・航空宇宙 IPO の上場進捗が手数料収益に直結
- Fed の追加規制緩和 (SLR 等) (2026 年随時, 重要度: 中) — SLR を一律 5% → 3.4-4.3% へ緩和する案。レバレッジ制約緩和でトレーディング資本効率が改善
出典
- GS Q1 2026 Earnings Results (SEC 8-K, 一次資料)
- GS Q1 2026 EPS $17.55, ROE 19.8% (StockTitan, 一次データ咀嚼)
- GS FY2025 Form 10-K (SEC, 事業セグメント)
- GS Q1 2026 Earnings Results Presentation (公式 PDF)
- Morgan Stanley Q1 2026 record results (ROTCE 比較)
- JPMorgan Q1 2026 23% ROTCE (Investing.com)
- Basel III Endgame 資本中立再提案 (Fox Rothschild)
- Bowman capital-neutral pivot (FinancialContent)
- GS M&A League Tables 2025 $1.48T シェア 32% (European Business)
- GS PE Ratio / バリュエーション (MacroTrends)
本記事は情報提供のみを目的としたものであり、投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載された数値・見通しは執筆時点の情報に基づくものであり、将来の成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
関連デイリー