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Bull Note米国株 デイリー戦略ノート

EARNINGS · Q1 FY27

まちまち
ORCLOracle Corporation·2026年9月10日(木) AMC14

ORCL Q1 FY27 — 受注残 6,640 億ドルは過去最大。それでも株価は 52 週高値から 5 割安い

Oracle (ORCL) の FY2027 第 1 四半期 (2026年8月31日締め) は、売上高 193.5 億ドル (前年比 +30%)、non-GAAP 希薄化後 EPS 1.92 ドル (予想 1.74 ドル) で、いずれも市場予想を上回った。クラウド (IaaS+SaaS) は 116 億ドル (+62%)、うちクラウド インフラ (OCI) は 74 億ドルで +121% と加速している。看板の残存履行義務 (RPO) は 6,640 億ドルとコンセンサス 6,306 億ドルを上回り、前年同期比では +2,090 億ドル増えた。四半期中に 850MW・30 万基超の GPU を稼働させ、利用率は 97% 台、契約更改は従来比 2 割高い条件で結ばれたという。それでも同社株は決算前の通常取引で -5.38% (152.94 ドル) と売られ、52 週高値 345.72 ドルからは 5 割以上安い。理由は損益計算書ではなくキャッシュフロー計算書にある。当四半期の設備投資は 285 億ドルで営業キャッシュフロー 231 億ドルを上回り、フリーキャッシュフローは -53.96 億ドルだった。受注は現金ではなく、現金に変えるにはデータセンターを建てる必要がある。

受注残は過去最大を更新し続けている。それでも株価が戻らないのは、市場が採点している項目が「売れたか」から「建てられるか、払えるか」へ移ったからである。

数字サマリ

EPS

$1.92コンセンサス $1.74上振れ

REVENUE

$19.34Bコンセンサス $19.14B上振れ

EPS

コンセンサス
$1.74
実績
$1.92
上振れ

売上

コンセンサス
$19.14B
実績
$19.34B
上振れ
バー長はコンセンサス予想と実績の大きさに比例。緑=上振れ、赤=下振れ。

四半期推移

EPS 実績
$1.92Q4 FY26Q1 FY27
ORCL の決算 EPS 実績の推移。
売上 実績
$19.34BQ4 FY26Q1 FY27
ORCL の決算 売上実績の推移。

主要 KPI

残存履行義務 (RPO)

$664B

+$209B YoY

コンセンサス 6,306 億ドルを上回った。この決算の看板

クラウド (IaaS+SaaS)

$11.6B

+62% YoY

売上の 6 割がクラウドになった

クラウド インフラ (OCI / IaaS)

$7.4B

+121% YoY

成長率が加速している。AI 学習需要が中心

クラウド アプリ (SaaS)

$4.2B

+10% YoY

従来型の業務ソフト。伸びは緩やか

ソフトウェア (ライセンス・保守)

$5.5B

-3% YoY

唯一の減収セグメント。移行が進んでいる裏返し

non-GAAP 営業利益率

42%

ほぼ横ばい

営業利益 82 億ドル (+31%)。売上の伸びと同じペース

GAAP 営業利益率

35%

+640bp

GAAP 営業利益 67 億ドル (+57%)

設備投資 (当四半期)

$28.5B

営業 CF を上回る

営業 CF 231 億ドル、フリー CF は -53.96 億ドル

ガイダンス

項目判定補足
Q2 FY27 売上成長+30〜34%コンセンサス超え為替一定ベース・ドルベースとも同水準
Q2 FY27 クラウド成長+65〜71%上方修正ドルベース。為替一定では +64〜70%
Q2 FY27 non-GAAP EPS$1.85〜1.93コンセンサス並み為替一定では 1.83〜1.91 ドル
FY27 通期 売上高900 億ドル以上据え置きLSEG コンセンサス 897.6 億ドル
FY27 通期 non-GAAP EPS$8.10コンセンサス並みLSEG コンセンサス 8.07 ドル
FY27 通期 設備投資900〜950 億ドル上方修正顧客前受金 200〜250 億ドルを除いたネットの現金支出は 700 億ドル以下 (CFO Hilary Maxson)

株価反応

引け値

$152.94

時間外

$159.26

+4.13%

公式情報源

1 行サマリ

Oracle の第 1 四半期は、売上・利益・受注残のすべてが市場予想を上回った。それでも株価は 52 週高値の半分以下にある。

売上高は 193.5 億ドルで前年比 +30%、non-GAAP 希薄化後 EPS は 1.92 ドル (予想 1.74 ドル) だった。看板の残存履行義務 (RPO) は 6,640 億ドルで、前年同期比 +2,090 億ドルである。数字だけを並べれば文句のつけようがない。

それでも同社株は US 9/10 (木) の通常取引で -5.38% の 152.94 ドルまで売られ、引け後の時間外でようやく 159.26 ドル (+4.13%) へ戻した。52 週高値は 345.72 ドルである。

🎯 要点: この決算の読み方 損益計算書は文句なし、キャッシュフロー計算書は厳しい。当四半期の設備投資 285 億ドルは営業キャッシュフロー 231 億ドルを上回り、フリーキャッシュフローは -53.96 億ドルになった。市場が採点しているのは「売れたか」ではなく「建てられるか、払えるか」である。


数字の中身 — 会社の形がクラウドへ入れ替わった

売上の 6 割がクラウドになり、旧来のソフトウェア事業は減収に転じた。

セグメントQ1 FY27Q1 FY26前年比
クラウド (IaaS + SaaS)116 億ドル72 億ドル+62%
├ クラウド インフラ (OCI / IaaS)74 億ドル33 億ドル+121%
└ クラウド アプリ (SaaS)42 億ドル38 億ドル+10%
ソフトウェア (ライセンス・保守)55 億ドル57 億ドル-3%
ハードウェア7.74 億ドル6.70 億ドル+15%
サービス14 億ドル13 億ドル+5%
合計193.45 億ドル149.26 億ドル+30%

伸びているのはクラウド インフラ (OCI) の 1 本である。+121% という数字は、前四半期までの伸びからさらに加速している。一方でソフトウェアは -3% と唯一の減収で、顧客がオンプレミスからクラウドへ移った分がそのまま出ている

利益面では GAAP 営業利益が 67 億ドル (+57%)、営業利益率は 35% となり、前年同期の 28.6% から 640bp 改善した。non-GAAP では営業利益 82 億ドル (+31%)、営業利益率 42% で、こちらは前年とほぼ横ばいである。

📚 用語: GAAP と non-GAAP の差とは GAAP は米国会計基準どおりに計算した数字、non-GAAP は企業が「本業の実力」とみなす調整後の数字で、株式報酬費用や買収に伴う無形資産の償却などを除く。差が大きいほど、株式報酬や買収が損益に効いていることを意味する。Oracle の場合、GAAP EPS 1.56 ドルに対し non-GAAP EPS は 1.92 ドルで、その差は 1 株あたり 0.36 ドル (約 23%) にあたる。どちらか一方だけを見ると、報酬コストか実力かのどちらかを見落とす。


RPO 6,640 億ドル — 受注残という指標の読み方

この決算で最も注目された数字は、売上でも利益でもなく受注残だった。

残存履行義務 (RPO) は 6,640 億ドルで、市場予想の 6,306 億ドルを上回った。前年同期比では +2,090 億ドル増えている。同社は四半期中に 300 億ドル超の AI 契約を追加で締結し、それに追加の資本調達を必要としなかったと説明している。

契約更改の条件も強い。共同 CEO の Clay Magouyrk 氏によれば、更改は従来契約に対して 2 割高い条件で結ばれ、GPU の稼働率は 97% 台で推移しているという。供給が需要に追いついていないという同社の主張は、この稼働率で裏づけられている。

認識の時期についても説明がある。経営陣は RPO のおよそ半分が今後 36 ヶ月で売上に変わる見込みだと述べた。裏を返せば、残り半分は 3 年より先の話である。

受注残 → 土地と建屋 → 電力の確保 → 設備の設置 → 入金 と進む図解。中間の 3 工程に「ここに設備投資と時間がかかる」と注記がある
6,640 億ドルは契約の残高であって現金ではない。あいだにある 3 工程が、この決算でいちばん重い部分である

📚 用語: 残存履行義務 (RPO, Remaining Performance Obligations) とは 契約済みでまだ売上に計上していない金額の残高を指す会計上の開示項目である。将来の売上見通しを測る材料になるが、入金予定表ではない点に注意が要る。契約期間が長いほど遠い将来に配分され、途中で解約・条件変更される余地もある。RPO が伸びているのに営業キャッシュフローが伸びない企業は、受注と現金化のあいだに大きな設備投資を抱えている。


キャッシュフロー — この決算でいちばん重い数字

受注を売上に変えるための費用が、営業で稼いだ現金を上回った。

項目 (2026年8月31日締め 3 ヶ月)金額
営業活動によるキャッシュフロー231.03 億ドル
設備投資 (CapEx)-284.99 億ドル
フリーキャッシュフロー-53.96 億ドル
四半期配当1 株 0.50 ドル

📚 用語: フリーキャッシュフロー (FCF) とは 営業活動で稼いだ現金から、設備投資に使った現金を差し引いた残りを指す。配当・自社株買い・借入返済に回せる「本当に自由に使えるお金」であり、会計上の利益が黒字でも FCF がマイナスなら、その差は借入か手元資金で埋めていることになる。成長のために大きく投資する企業では一時的にマイナスになるのが普通だが、マイナスが何四半期続くか、そのあいだ何で埋めるかが投資判断の分かれ目になる。

この 1 四半期の設備投資 285 億ドルは、報道されている FY2026 通期の設備投資 557 億ドルの半分を超える規模である。投資のペースそのものが四半期単位で切り上がっている。

同社はこの四半期に 850MW の AI 向け容量を稼働させ、30 万基を超える GPU を搭載したと説明している。前四半期の実績の約 3 倍にあたる。受注残を売上に変えるには、この物理的な建設が先に必要になる。

差額は何で埋めているか — 答えは顧客前受金と借入である

決算説明会で、会社はこの問いに数字で答えている。

CFO の Hilary Maxson 氏は、FY2027 通期の設備投資を グロスで 900〜950 億ドル、ただし 顧客前受金 200〜250 億ドルを除いたネットの現金支出は 700 億ドル以下に抑えると説明した。当四半期も同じ構造で、設備投資 285 億ドルに対して実際の現金支出は約 180 億ドルである。

つまり 「建てる金の一部を、使う前の顧客に先に払わせている」。これは資金繰りとしては強い一方、前受金を払う顧客がどれだけ分散しているかという問いに直結する。

⚠️ 注記: S&P は 2026/7/9 に BBB- へ引き下げている 格付けは投資適格の最下位で、投機的等級の 1 ノッチ上になった (見通しは安定的)。S&P が挙げた理由は、OpenAI が RPO の約半分を占める顧客集中、総債務 1,600〜1,670 億ドル、FY2027 の営業フリーキャッシュフローが -420 億ドルになるという見通しである。S&P は同時に FY2027 の設備投資見通しを 600 億ドルから 900〜950 億ドルへ引き上げている。受注残の大きさと信用力の低下が同じ原因から出ている、というのがこの銘柄の構造である。


ガイダンス — 会社は減速を織り込んでいない

通期の見通しはコンセンサスをわずかに上回る水準で、驚きを狙った出し方ではない。

項目ガイダンスコンセンサス
Q2 FY27 売上成長+30〜34%
Q2 FY27 クラウド成長 (ドルベース)+65〜71%
Q2 FY27 non-GAAP EPS1.85〜1.93 ドル
FY27 通期 売上高900 億ドル以上897.6 億ドル (LSEG)
FY27 通期 non-GAAP EPS8.10 ドル8.07 ドル (LSEG)

第 2 四半期のクラウド成長率 +65〜71% は、第 1 四半期の +62% からさらに加速する前提になっている。


株価反応 — 決算の前にすでに売られていた

US 9/10 (木) の値動きは、決算そのものより「決算を待つあいだの不安」を映していた。

時点株価前日比
US 9/9 (水) 終値161.63 ドル-0.55%
US 9/10 (木) 終値 (決算発表日)152.94 ドル-5.38%
US 9/10 (木) 時間外159.26 ドル+4.13%
(参考) 52 週高値345.72 ドル
(参考) 52 週安値114.50 ドル

出来高は 5,683 万株と膨らんだ。決算前に -5.38% 下げ、決算後に +4.13% 戻したので、時間外で取り戻したのはこの日の下げ幅の範囲内である。年初来では -17.8% 程度で、52 週高値からは 5 割以上安い。

決算前に売られた理由として報じられているのは、AI 向け設備投資の資金繰りへの警戒である。FY2026 の設備投資は 557 億ドル (前年 212 億ドル)、フリーキャッシュフローは -237 億ドルだったとされる。借入で建てて、稼働してから回収するという形が、金利上昇局面でどう評価されるかが問われている。

⚠️ 注記: US 9/11 (金) の通常取引の反応は本記事の執筆時点で未確定 本記事は JST 9/11 (金) 午前、US 9/10 (木) の引け後決算を受けて執筆している。時間外では +4.13% (一部報道では +7% 前後) だが、通常取引での評価はまだ出ていない。確定した終値ベースの反応は、後日この記事および次回のデイリーで補記する。


アナリストの見方 — 目標株価のばらつきが大きい

平均値よりも、上下の開きの大きさがこの銘柄の性格を表している。

決算前の時点で、27 名のアナリストによる平均目標株価は 257.36 ドル前後とされ、当時の株価に対して 5 割以上の上値余地を示していた。ただし個別のばらつきが極端に大きい。

  • Guggenheim: 400 ドル — 強気の極。AI 需要の取り込みを評価
  • Bernstein: 325 ドル — 決算前に 213 ドルへ引き上げた報道もあり、機関により改定が頻繁
  • Bank of America: 240 ドル
  • Morgan Stanley: 210 ドル — 主要行のなかでは慎重

上と下で倍近い開きがあるということは、同じ RPO を見ながら、その現金化の確度についてまったく違う前提を置いているということである。目標株価の平均値よりも、この分散の大きさ自体がこの銘柄のリスクを表している


長期投資家として見るべきこと

この会社の評価軸は、すでに「受注が取れるか」から「受注を現金に変えられるか」へ移っている。

  1. RPO のうち 12 ヶ月以内に売上計上される割合 — 総額 6,640 億ドルのうち、近い将来に請求書になる部分がどれだけあるか
  2. 営業キャッシュフローと設備投資の差 — この四半期は -53.96 億ドル。この差が縮み始める四半期が転換点になる
  3. クラウド インフラの粗利益率 — GPU の原価を賄えているかどうか。ここが薄いままなら、売上成長は利益成長に変わらない
  4. 顧客前受金の推移 — ネットの設備投資 (グロス - 前受金) が、営業キャッシュフローの範囲に収まる四半期が来るか
  5. 稼働容量 (MW) と GPU 基数の積み上がり — 今四半期は 850MW・30 万基超。供給が需要に追いつくとき、価格交渉力は逆を向く

🎯 要点: 保有者と新規で見るべき数字が違う 保有してきた人にとっては、RPO の増加率よりも設備投資と営業キャッシュフローの差を四半期ごとに追うことが本筋になる。これから見る人にとっては、受注残の見出し数字と株価の乖離そのものが、市場が抱えている問いの在り処を示している。上値余地の大きさは、その問いが解けたときの振れ幅でもある。


関連記事

同じ日の市場全体の動きは、デイリーと PPI のノートに書いた。


データソース・引用

数値は SEC 提出の決算プレスリリース (8-K Exhibit 99.1) を基準に、株価は stockanalysis.com で照合している。

免責

本記事は情報提供のみを目的としています。投資勧誘や個別銘柄の売買推奨ではありません。記載の数値は取得時点のもので、市場開閉や訂正により変動します。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の見解は執筆者個人のもので、所属組織の見解を代表するものではありません。

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